名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
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大山将棋研究(61);三間飛車に鳥刺し含みの急戦

2016-02-10 | 大山将棋研究
昭和47年10月、内藤先生との第27期A級順位戦です。


大山先生の後手三間飛車。後手三間飛車には37桂の急戦で指せるという結論が一応出たのはもっと後のことです。内藤先生が角筋を開けないのは鳥刺しの含み。

右銀も動かさずに左銀でつっかけます。三間飛車に向かってついていくのですから、大丈夫なのか?と思いますね。79角としないのは工夫なのですが、鳥刺しを見てみたいです。

控えて歩を打つのは35銀とぶつける意味。これは近年になって渡辺竜王が一手損角換わりに対しての早繰り銀で復活させた手筋です。控えて歩を打つこと自体は他の形で時々出てきます。

51角と引かれては35銀とはぶつけられず、76歩と突くことに。これで定跡のようで定跡ではない形になりました。36歩ではなく38飛の形では51角が変な手なので、それでも定跡書にはなさそうです。どちらが得かは難しく、先手は36歩が不満、後手は51角が不満、というやり取りです。

内藤先生は3筋だけでは手にならず、5筋にも手を付けます。大山先生の52飛は戦いの起こる筋に移動する振り飛車の手筋ですね。

これは振り飛車が指したい左桂のさばきです。

けれど桂香と銀の2枚換えで、内藤先生がペースを握ったかと思えば

22銀と打つとは何事かと思ったら、銀が死んでいます。

22の銀を33に上がりました。指されてみれば意味は解りますが、まず思い浮かびません。53金は逃げられない(53香から清算して22馬)から遊んでいる銀を使うのだとわかります。

内藤先生は金を打って桂馬を使います。でもこれはあまり得ではない手です。仕方なく。

内藤先生の53銀と打って手に対して銀を合わせます。銀打に銀を合わせるというのは角換わりの将棋で見たことはありますが(森下先生だったか)、33銀が桂馬に当たっているのですから考えにくい手です。52歩があるのでこう指すものなんですね。これで45の桂馬を取ることができて大山先生が駒得。有利になってきました。互いに攻防のある中盤戦ですが、戦力差が出てきます。

大山先生のじっと歩を突き出す手。26飛の横利きを消すのが大きいのだと。これも思いつきません。だいたい52歩成とされてもいいのだとは思いませんから。73成銀同桂52歩成なら65桂で指せるのだということでしょう。

これは銀で54香を取るように催促した手ですがあまり効果がなく、代わりの手も難しいから、ここでは大山先生が有利だということでしょう。

46の歩を伸ばして飛車の横利きを通します。でもさっき止めたのを修正するだけの手ですから2手かけた意味はないです。これしかないのでは形勢に差が出てきたということです。

65銀打で玉頭の勢力は後手が優位に立ち、桂馬を跳ねて大山先生の寄せの始まり。

88には馬の利きもあっても金を放り込めば銀で取れず。

これで投了図です。

内藤先生が工夫した序盤戦でしたが、2枚換えで馬を作っても22銀から55歩で銀を取られるのではうまくいきませんでした。大山先生の33桂、22銀、33銀、44銀打、56歩、65銀と好手が多い中盤戦でした。それがすぐに見える手ではないのでびっくりしながらの棋譜並べです。ぜひ先手後手逆にして並べてみてください。驚きます。当たりません。
また、大山先生の寄せの速さも感心するところで、力をためた後なので簡単に寄せられるのでしょう。勉強になります。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:内藤王位
後手:大山王将
手数----指手--
1 2六歩(27)
2 3四歩(33)
3 5六歩(57)
4 3二飛(82)
5 6八玉(59)
6 4二銀(31)
7 7八玉(68)
8 6二玉(51)
9 6八銀(79)
10 7二玉(62)
11 2五歩(26)
12 3三角(22)
13 3六歩(37)
14 4四歩(43)
15 5七銀(68)
16 4三銀(42)
17 4六銀(57)
18 8二玉(72)
19 3五歩(36)
20 7二銀(71)
21 4八銀(39)
22 5四歩(53)
23 3四歩(35)
24 同 銀(43)
25 5八金(49)
26 5二金(41)
27 9六歩(97)
28 9四歩(93)
29 3六歩打
30 5一角(33)
31 7六歩(77)
32 5三金(52)
33 1六歩(17)
34 7四歩(73)
35 2六飛(28)
36 6四歩(63)
37 5五歩(56)
38 5二飛(32)
39 5七銀(48)
40 4三銀(34)
41 5四歩(55)
42 同 銀(43)
43 3五歩(36)
44 3三桂(21)
45 5六銀(57)
46 4五桂(33)
47 同 銀(46)
48 同 歩(44)
49 1一角成(88)
50 2二銀打
51 2一馬(11)
52 5五歩打
53 4五銀(56)
54 同 銀(54)
55 3七桂(29)
56 5四銀(45)
57 4五桂打
58 3三銀(22)
59 5三桂成(45)
60 同 飛(52)
61 4五金打
62 同 銀(54)
63 同 桂(37)
64 7三飛(53)
65 5三銀打
66 4四銀打
67 6四銀成(53)
68 4五銀(44)
69 5四香打
70 4二角(51)
71 5三歩打
72 5六歩(55)
73 6八金(69)
74 8四桂打
75 4六歩(47)
76 5四銀(45)
77 同 馬(21)
78 6三香打
79 7三成銀(64)
80 同 桂(81)
81 4五歩(46)
82 6五銀打
83 5五馬(54)
84 7六桂(84)
85 7七銀打
86 6八桂成(76)
87 同 金(58)
88 7六桂打
89 8六桂打
90 8八金打
91 6九玉(78)
92 6八桂成(76)
93 同 銀(77)
94 5七金打
95 投了
まで94手で後手の勝ち





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20160210今日の一手<その270>; と金を使う

2016-02-10 | 今日の一手
20160210今日の一手

12月13日の名南将棋大会からMさんとNさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さの比較は難しく、後手玉は横の攻めに強く先手玉は広くて上部に厚い感じです。同程度と見ておきます。
先手の攻め駒は11角23と で2枚。
後手の攻め駒は47と 持ち駒角で2枚。

総合すれば互角です。

大局観として
ほとんど互角の局面です。攻め駒が少ないので増やすことを考えるのですが、23と を移動して飛車が成り込むというのが自然な考え方です。また、後手の攻め駒を増やさないという意味で、42飛を抑え込むというのも一つの考え方です。後手からは39角があり、細いかもしれませんが攻めはあります。受けきりはできないでしょう。どこかで飛車を成って寄せ合いに行くことになりそうです。


○ 実戦は22とでした。重いのですが確実な手です。

44飛12と46飛21飛成58と

先手は桂香を得しましたが、後手は と金を捨てて飛車の活用を優先します。58同金49飛成59香47歩57銀39角

ここで先手Kさんは48歩成が受からないからと85歩から動いたのですが

うまく寄り付けませんでした。

85歩ではなく54歩がありました。

54同歩なら66角成で受かります。


54歩に48歩成同銀同角成の時に

59香の利きを生かして53歩成同銀48金59竜66馬


あるいは59竜で48同竜53香成同金66角成

と、66角成を実現することで手厚く受けることができました。

また、先手としては12とではなく32とのほうを選択して

この図になります。香車は取っていませんが と金が使えます。68金右79角87玉68角成同金99竜76玉

2枚換えでも上部の広さを生かした戦い方にすることもできました。桂馬を取っているので角金交換で42ともありますから長くなれば有利です。


△ 22角成は欲張った手なので少し指しにくいでしょうか。

44飛とさせない手です。でも馬は質駒になります。39角26飛22飛同と33桂

32と45桂21飛成57と31飛

この局面は互角ですが、2枚飛車に と金のほうが速そうで、先手が勝てそうな展開です。


× 12とは駒得を優先する手です。

44飛22角成46飛

飛車成が遅くなると39角を狙われてまずそうです。

44飛に22飛成と行けば58と

58同金49飛成では実戦の手順では21竜となっていたわけですから1手損で形勢不利。52竜でも同金44角成69と で後手有利。後手は46飛を省略できたということになります。


○ 最後は32と

32同飛なら22角成42飛11馬

22歩には12馬

飛車を抑えられては悪くなるので36歩同歩44飛45香34角というのがさばきの手筋ですが

飛車を取ってもいいですし、34同馬同飛22飛成で

42香成や25角があるので先手が有利です。

32と に44飛が仕方ないのでしょう。

22角成46飛12馬39角でどうか。

21飛成66角成(あるいは66飛かも)同金同飛42と

あっさり2枚換えでも と金を活用すればよさそうです。12馬が受けに利いています。

☆ まとめ

問題図では と金を作り合ったのでその と金をどちらがうまく使うかという展開かと思ったのですが、Kさんは桂香を拾ってと金の活用はせず、Nさんは と金を捨てて飛車を成り、また垂れ歩で と金を作りに行きました。実戦というのは不思議なものです。
実戦では11角が使えないままの寄せ合いになってしまったのですが、54歩から66角成に気が付けば先手が指せたはずです。

それよりも、12と では働かないから32と とできる順を考えるのがスマートだと思います。すぐに32とと捨てて指せるかどうかは読まないとわかりません。本筋に見えるので時間があれば読みたいです。

22と から32と と使うのがわかりやすかったかと思います。後手に58と と捨てられた時に焦るのですが、79角を許しても後手の攻め駒が少ないので上に逃げて指せそうだと気が付けば(というか香を持っていなければそれしかない)十分指せるでしょう。

ですから、最初に12と というのは候補になりません。他が悪い時に一応考えてみる手です。

22角成は質駒なので、目には映っても後回しで考える手でしょう。そのあと32とまでは許してくれなくて、すぐに飛車を切られることになります。22同と の味が悪く、そのあとの寄せ合いに成算が持てればやっと決行する手です。
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