名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(70);石田流と玉頭位取り

2016-02-19 | 大山将棋研究
昭和47年11月、中原先生とNHKの新年特別対局です。まだタイトル戦のさなかですが、NHKもやるものですね。11月半ばに収録するのは二人が忙しいからということでしょう。


中原先生の三間飛車。まあ手の内は見せないように少し変わったことをしようと。

大山先生は相振り飛車をしないので居飛車に。

玉頭位取りとなり、あとは囲うのかと思ったら動きます。

79角を見せて13角を誘い、5筋から動きます。

5筋を押えて角を引きます。なるほど、これなら35の歩を取れそうです。

中原先生に33桂と使われて、あわてて35銀は57歩から45桂で危険です。じっと端をつくのは落ち着いています。

45歩を突かせたのでこの歩もあまり怖くはありません。

56歩を打つのは75歩を取られます。それはしゃくなので24歩。少し怖いですが。

飛車を切って角を打ちこみます。

これに自陣飛車の受け。38歩から飛角交換は歩得でよいと。ここで考えればわかりますが、どこで気が付いていたのでしょう。

歩切れなので54歩を受けられないから飛車の打ち込みくらいですが、飛車交換。

角銀交換くらいですが、後手を引くのでは大山先生が有利です。

飛車打ちは当然ですが、角打ちは57の地点をカバーする攻防の手です。

底歩で受けさせて33桂を飛車で取るのが筋ですか。だから44から角を打たないのですね。そして54歩がピッタリです。取れば74桂が入ります。

53歩成を受けるために中原先生が苦心の手順。25飛から角を取ります。

55角44角同角同竜と位置を変えさせてから銀打。

けれど香車を拾えば銀と飛桂香の交換。後手玉が堅いけれど長期戦なら問題なしです。

しっかりした受けで、大山先生の中押し勝ちです。


大山先生は玉頭位取りでもしっかり囲うのは好まないようです。金が低いので大駒交換ならばよいと強気の姿勢で46銀から動きました。中原先生の美濃囲いは堅いとはいえ、飛角桂だけの攻めしかありません。35銀から24歩は間違うとひどいのですが、33桂をさばかせなければ受けきれます。自陣飛車など、細かい丁寧な受けが勉強になります。35角~33飛成~54歩というセンスの良さもさすがです。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山王将
後手:中原名人
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 6六歩(67)
4 3五歩(34)
5 5六歩(57)
6 3二飛(82)
7 6八銀(79)
8 4二銀(31)
9 6七銀(68)
10 6二玉(51)
11 4八銀(39)
12 7二玉(62)
13 6八玉(59)
14 5四歩(53)
15 7八玉(68)
16 5三銀(42)
17 5七銀(48)
18 6四歩(63)
19 7五歩(76)
20 8二玉(72)
21 2六歩(27)
22 1四歩(13)
23 4六銀(57)
24 4四歩(43)
25 2五歩(26)
26 1三角(22)
27 5五歩(56)
28 7二銀(71)
29 5四歩(55)
30 同 銀(53)
31 5八飛(28)
32 5二飛(32)
33 5五歩打
34 6三銀(54)
35 7九角(88)
36 3三桂(21)
37 1六歩(17)
38 4五歩(44)
39 3五銀(46)
40 5七歩打
41 同 角(79)
42 5五飛(52)
43 2四歩(25)
44 5二金(41)
45 3六歩(37)
46 5七飛成(55)
47 同 飛(58)
48 2七角打
49 3九飛打
50 3八歩打
51 同 飛(39)
52 同 角成(27)
53 同 金(49)
54 4九飛打
55 5九飛(57)
56 同 飛成(49)
57 同 金(69)
58 2四角(13)
59 同 銀(35)
60 同 歩(23)
61 3一飛打
62 7四歩(73)
63 3五角打
64 5一歩打
65 3三飛成(31)
66 7五歩(74)
67 5四歩打
68 2五飛打
69 2八歩打
70 3五飛(25)
71 同 歩(36)
72 5五角打
73 4四角打
74 同 角(55)
75 同 龍(33)
76 4三銀打
77 2四龍(44)
78 5四銀(43)
79 5五歩打
80 4三銀(54)
81 2二角打
82 1三角打
83 同 角成(22)
84 同 香(11)
85 同 龍(24)
86 4四角打
87 2四龍(13)
88 6五歩(64)
89 5八香打
90 中断
まで89手で中断

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20160219今日の一手<その279>; 違いを見つける

2016-02-19 | 今日の一手
20160219今日の一手

12月19日の名南将棋大会からHさんとSさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。





昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
先手の2歩得です。後手は歩切れなので駒得です。
玉の堅さは同程度。
先手の攻め駒は68飛と持ち駒角で2枚。
後手の攻め駒は62飛と持ち駒角で2枚。

総合すればやや先手有利です。

大局観として
せっかくの歩得ですから、後手には歩を渡したくはありません。渡す時にはある程度有利な形にしたいです。互いに堅い玉ですから、小さな差が勝敗を分けます。この局面のあたり、中盤戦で有利になればそのまま勝ちになりやすいです。
また、問題図では先手の左桂だけ77に跳ねられます。後手の右桂は今は使えなくて取られるだけでしょう。今は小さな違いですが、この場合は大きな違いになりえます。手番を生かして有利を確定させたいところです。


△ 実戦は55角でした。

後手が歩切れなのでうまく角を追えないから、手放してもよいという判断です。もし37桂とはねている形なら45歩があるのでより有力です。後手は53金と繰り出したので66角64飛77桂。

この桂馬が不用意でした。65歩同飛77桂とするか、56銀とするか、桂馬を跳ねて手を渡してはいけませんでした。

角を打たれて飛車を逃げられません。桂馬を跳ねたので88に利きが無くなったのをとがめられました。65歩に68角成同金88飛58金寄

飛車の取り合いは角を手放しているのでやりにくく、先手で飛車を打たれてしまいました。ここでは形勢互角です。
74飛75角43金64歩45歩

64歩ではなく63角はありそうでした。どちらにせよ後手は金を引いたほうがよかったのではないかと思います。この45歩に弱気になって48金寄46歩58銀75飛同歩55角

これで逆転です。45歩は手抜いて と金を作れば先手が指せていたのですが。

55角は悪い手ではないのですが、後手に歩を手に入れられると少し損な感じです。


○ 77桂は戦力を増やす自然な手です。

64飛に65歩62飛66飛では88角があります。


ですから64飛には72角と打って有利を求めに行くと67角

67角で92角は65歩で馬を作れるので大丈夫です。67角は取れないので65歩62飛81角成76角成

これは互角のようでも6筋の歩の位置が違うので後手が指せるでしょう。

先手は64飛に82から角を打てば

香車を打てるのでこれなら先手有利です。

77桂には64飛ではなく87角が気になる手です。

54角64飛81角成76角成

これは後手が有利です。

87角には66飛78角成68金

これで54角を見れば先手十分でしょう。


○ 54角と打てば桂馬が取れそうです。

92角なら66飛で

53金63歩成54金62と

これなら先手優勢。

54角には64飛しかありません。

81角成に67角

このときにあっさり91馬89角成73馬61飛63歩

と指して64桂を見れば先手有利です。

91馬ではなく65歩同飛77桂と欲張ると

これも指せそうなのですが、

65歩には84飛が馬取り。91馬86飛で

67の角は取れても守りの金が無くなりますし、飛車の働きが違います。これは後手が有利です。


○ 66飛は堂々とした手で

55角(88角には77角もある)65飛99角成54角61香

これは飛車交換になります。81角成64飛同飛同香61飛69飛54馬。

最後の馬引きが好手。馬を使わないと勝てません。64の香を取られないようにするには63歩しかありませんが、それなら91飛成から56香が後手の歩切れを突く好打になります。これで先手有利です。

また、54角では63歩成も軽い手です。

飛車交換は後手の金が離れていきます。63同金なら64歩同金85飛82歩71角

この後は42飛82角成45歩91馬46歩同銀同飛47香

という指し方がよいでしょう。81桂は飛車で取って、91香は角で取るのが理想的な取り方です。


☆ まとめ

問題図では先手がやや有利ですから、ほとんどの自然な手は正解です。
堂々と66同飛でもよいですし、77桂も自然な手です。
実戦の55角はややおとなしいというか意地悪な手ですが、ゆっくり指せば悪くはなりません。
54角は積極的によくしようという手で、落とし穴に自分ではまることもあるのですが、桂香を先に拾ってしまえば少し良いようです。


対抗型で左美濃(両方美濃囲い)や相穴熊はどちらが堅いかという比較が形勢を左右しやすいです。この問題では互いに4枚美濃でしたからなおさらで、堅さは互角、あとは攻め駒(となる玉と反対側の駒)がどちらが使えるかで形勢は決まってしまいます。中盤で差がついてしまうとそのまま終わってしまいがちで、序盤研究を行い、どちらがいい形で仕掛けられるか(あるいは仕掛けをとがめられるか)という勝負です。感覚だけでは指せないので、読みの力が必要です。
ところで普通の振り飛車に対する左美濃は藤井システムで絶滅したはず。どうやって組んだのでしょうか?さらによく見れば22玉の形ですし、これは藤井システム以前に77角の筋を生かして攻められると指しにくく、消えてしまった戦法です。後手は5筋の歩を捨て、先手が歩得だからとやや妥協して問題図の局面にもっていったのです。後手の作戦成功とは言えません。










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