名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
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大山将棋研究(62);四間飛車穴熊に左64銀

2016-02-11 | 大山将棋研究
昭和47年10月、芹沢先生との第22回NHK杯選手権です。


大山先生の四間飛車に芹沢先生は正統派らしく急戦、でもやって来いと大山先生は穴熊です。

左64銀になりました。

大山先生は78金と備えて、芹沢先生は位取りに切り替えました。攻めるなら73桂から84飛の形なのですが、研究しておかないと早指しでは指せないでしょう。

大山先生が袖飛車にするのも定番。

駒組みの後互いに1歩交換します。

ここから大山先生の軽い仕掛けが始まります。5,7,6筋を突き捨てて

角筋を通します。

さらに5筋に飛車を回って銀をぶつけます。ここで芹沢先生からの57歩が気になるのですが。57歩65銀58歩成は居飛車がよいでしょう。57同金は56銀同金47銀57飛56銀成同飛で、これのつもりなのでしょうか。57同飛同角成同金56銀同金69飛はやや居飛車がよさそう。分岐点ではありました。

芹沢先生は銀を交換して歩を垂らします。これはいい感じの手筋。

大山先生は角筋を止める歩。同角は76飛ではなく66金でしょうか。でも同角同飛48銀も相当で、踏み込まなかったのでここから大山先生が指しやすくなります。

54歩も落ち着いた手ですが、84角が働かなくなったのが大きいです。

金を寄せる手。こういう手が最初に思い浮かぶようになりたいです。45桂で当たってくるので指しづらそうなのですが。

角を出て45金を狙います。これで金がさばけます。

24歩がつらい手。でも2筋の歩が切れると26歩同歩27歩という筋ができるので、指したくはなります。結果的にはこれが敗着だという気がします。芹沢先生が指すとは思いませんが、24金48角46歩という展開なら難しいでしょう。

24歩と捨てたので33銀が手順に玉を固めたことになるのですが、大山先生の角の筋が変わって57桂成や46歩がなくなったことも大きいのです。

角を使う手(これが本筋ですが)に86歩が軽い手。角を質駒にはしにくいです。

芹沢先生は飛角を使えないので金を投入。

さらに成桂を作れば勝負になったようですが

互いにと金を作り飛車取りを逃げます。63と は許せない(と思うのですが78とのほうがいいのかも)ので73角に

82歩が手筋。82同飛は83歩から連打。なので と金を入って寄せ合いです。

81歩成が角取りになるので72歩が必要なのは痛いです。だから73角は問題なのかも。大山先生は取った桂馬をすぐに使います。芹沢先生は銀を逃げる我慢はできなかったのでしょうか。

期待した飛車成も底歩で止まっては大勢が決しました。あとはどう寄せるかです。

角を覗いて24歩を強要。

金を上ずらされては桂馬を打つしかないです。

この銀打ちが決め手です。

投了図。大山先生の寄せは速いです。


力の差が出たような中終盤戦でした。形勢互角のような局面で、いつの間にかリードしてしまうのは大山先生の強いところです。時間の短い将棋のほうが互いにミスをしやすいのですが、大山先生は長くなるのをいとわないので平均点以上の手を積み重ね、相手はどこかでミスをして差が開いていきます。仕掛けの56銀に同銀は正解か、75歩に54歩が正解か、最初の15角に24歩は正解か、と3回は分岐点があり、どれも芹沢先生が悪手にはみえないけれど間違えたのかな、という将棋です。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山王将
後手:芹沢8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八銀(79)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 6八飛(28)
8 4二玉(51)
9 4八玉(59)
10 3二玉(42)
11 3八玉(48)
12 5四歩(53)
13 2八玉(38)
14 7四歩(73)
15 1八香(19)
16 5二金(61)
17 1九玉(28)
18 4二銀(31)
19 2八銀(39)
20 5三銀(42)
21 6七銀(78)
22 8五歩(84)
23 7七角(88)
24 6四銀(53)
25 7八金(69)
26 5五歩(54)
27 3九金(49)
28 5三銀(62)
29 3六歩(37)
30 5四銀(53)
31 3八飛(68)
32 4四角(22)
33 5九角(77)
34 4二金(41)
35 4六歩(47)
36 6二角(44)
37 5八銀(67)
38 4四歩(43)
39 4七銀(58)
40 4三金(52)
41 6七金(78)
42 5三銀(64)
43 3五歩(36)
44 同 歩(34)
45 同 飛(38)
46 3四歩打
47 3八飛(35)
48 4五歩(44)
49 同 歩(46)
50 同 銀(54)
51 4六歩打
52 5四銀(45)
53 7八飛(38)
54 8四角(62)
55 8八飛(78)
56 6二角(84)
57 3七角(59)
58 6四歩(63)
59 5六歩(57)
60 同 歩(55)
61 7五歩(76)
62 同 歩(74)
63 6五歩(66)
64 同 銀(54)
65 4五歩(46)
66 7六歩(75)
67 5八飛(88)
68 8四角(62)
69 5六銀(47)
70 同 銀(65)
71 同 飛(58)
72 4七歩打
73 7五歩打
74 5四歩打
75 7六飛(56)
76 3三桂(21)
77 2六角(37)
78 4八歩成(47)
79 同 角(26)
80 5五歩(54)
81 5七金(67)
82 4五桂(33)
83 4六金(57)
84 4四銀(53)
85 2六角(48)
86 3五銀打
87 同 金(46)
88 同 銀(44)
89 1五角(26)
90 2四歩(23)
91 3六歩打
92 4四銀(35)
93 2四角(15)
94 3三銀(44)
95 7九角(24)
96 9五角(84)
97 8六歩(87)
98 7八歩打
99 4六角(79)
100 6五金打
101 7八飛(76)
102 5六金(65)
103 4七歩打
104 5七桂成(45)
105 3七角(46)
106 8六歩(85)
107 7四歩(75)
108 8七歩成(86)
109 7三歩成(74)
110 8六飛(82)
111 7四飛(78)
112 7三角(95)
113 8二歩打
114 7八と(87)
115 8一歩成(82)
116 7二歩打
117 4五桂打
118 8九飛成(86)
119 3三桂成(45)
120 同 金(42)
121 5九歩打
122 4七金(56)
123 1五角(37)
124 2四歩打
125 4四歩打
126 同 金(33)
127 2四角(15)
128 3三桂打
129 4五歩打
130 同 金(44)
131 7三飛成(74)
132 同 歩(72)
133 5二銀打
134 4四金(45)
135 4一銀打
136 4二玉(32)
137 3一角打
138 投了
まで137手で先手の勝ち






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20160211今日の一手<その271>; 寄せ合いの速度計算

2016-02-11 | 今日の一手
20160211今日の一手

12月19日の名南将棋大会からHさんとSさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。





昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
銀と飛桂の交換で、先手は竜が2枚、後手は と金を作っています。と金は金1枚と交換になるとして、やや先手が駒得です。終盤なのでこれくらいの差は考慮しません。
玉の堅さは一路遠いので後手玉のほうが堅いです。
先手の攻め駒は後手玉に迫っているものだけ数えると持ち駒角桂で2枚。41銀がいらない駒です。
後手の攻め駒は57と 持ち駒銀銀で3枚。46角も数えていいでしょう、4枚です。

総合すれば後手が有利です。

終盤の寄せ合いでは駒の損得はほぼ無視されて、どちらの玉がより堅いか、どちらの攻めが強いか、ということだけになります。

もっと詳しく見るには何手で詰めろ(1手すき)になるかを数えます。後手玉は52銀成~61竜で詰めろなので3手すき。先手玉は58と~69と で詰めろなので3手すき。ですから互角に近く、先手の番なので先手有利すなわち勝ちになるのではないか、といえます。

終盤の寄せ合いなので、大局観は必要ではないです。どうやったら詰めろがかかるか、その時に自玉はどうなるか、という速度計算が必要です。


× 実戦は42竜でした。

金を取るのは当たり前のようですが、58と とされると

次に52銀成としても後手玉は詰めろになりません。すなわち、後手玉は3手すきのままです。金を持ち駒にしての効果があればいいのですが、無いのなら1手パスの悪手です。先手玉は69と が詰めろになるので受けるしかありません。58同金79金77玉89金

これが詰めろ。後手玉はほぼゼット(何を渡しても詰まない)ですから、受けるしかないですが手は延びず、後手の勝ちになりました。


× 寄せのセオリーでは74桂の王手は無効、72銀に迫る84桂や54角も効果なし、61金に働きかけるということになります。小さな駒から考えて、53桂は同金で無効。



× 有力なのは52銀成です。

58と に61成銀は69と で

後手玉は詰みません。先手玉は詰めろ。受けても1手1手で手が伸びません。

ですから61竜と行くしかありません。

これで後手玉は72竜からの詰めろです。これで勝ちかというと、61同銀の時同竜か同成銀しかなく、68飛で

77玉88銀86玉85銀同玉93桂

ぴったり詰んでしまいます。
飛車を渡すと先手玉が3手すきだったのが2手すきに変わっていた、ということです。飛車を渡さない制限があると後手玉は3手すきではなく4手すきだった、ともいえます。

ということは、素直に寄せ合いに行くと負けなわけで、受けて先手玉を3手すきから4手すき以上にする必要があるということです。1手かけて5手すきになれば勝ちが見えます。あるいは攻防の手を見つけて、先手玉は1手入れて4手すきだけれど、後手玉は4手すきから3手すきに変わっていた、ということがあればそれも勝ちになります。



○ 受けてみます。57同金と取れば

57同角成に52銀成で状況を確認します。

後手玉は61竜で詰めろですから、2手すき。後手は先手玉に詰めろが続けば勝ちです。先ほどは飛車を手に入れての詰めろがあった(58と)のですが、今度はどうか。
この図で先手玉に迫る66銀は詰めろですが同歩で無効。69金に働きかけるには58銀で、58同金同馬。そこで61成銀としたら

先手は銀1枚持ち駒が増えたので、後手玉は詰めろです。61同銀の時にも71角から詰みがあります。つまり後手玉は受け無しで、先手玉は詰みません。先手勝ちです。

ということはひとつ前の図で

先手玉は58銀で詰めろなので2手すき、後手は61竜は飛を渡すのでだめで61成銀といく3手すき。でも58銀は同金ととれば3手すき(58同馬で2手すき)、後手玉は銀をもらったので61成銀と行くのも2手すきに変わった、ということです。
ややこしいですが、58同金が攻防の手になったということですね。

58銀の他では、56銀は飛車をもらえば詰めろですが、この手自体が詰めろではないので、61成銀で後手の負けです。

ということで、今度は後手が受けなければいけません。この図では後手玉は61竜からの2手すき(あるいは61成銀から42竜の3手すき)です。1手かけるので、3手すき以上になるの手で受けて、どこかで4手すきにできれば勝ちもあるのです。あるいは桂馬他を手に入れて先手玉が詰めろになる(66桂から)というようなことがあれば攻防になって逆転です。

51歩とすれば

61成銀同銀51竜

後手は銀をもらいましたが先手玉は詰みません。馬取りでもありますし、受ける形もありません。

41金打は

61成銀同銀42竜同金61竜

後手は金を手放して銀と飛を手に入れましたが、先手玉は詰まないようです。途中先手が間違えれば危ないのですが。後手玉は詰めろで1手1手。

52同金寄は

61竜同銀同竜

後手は銀と飛を手に入れましたが、これでも先手玉は詰みません。受けるなら72飛ですが(72金は52竜が詰めろ馬取り)71銀同飛52竜

王手馬取りで、長くはなりますが先手が優勢です。


○ 実は後で気が付いたのですが、52銀不成から行けば、58と61銀不成で

この図の後手玉が詰めろです。41金打か41銀かで受けても、72銀成同玉42竜同銀54角

合駒に尻金で追いかければ詰みです。駒を渡さないで3手すきだったのですね。3手すきと3手すきなら手番が勝ちです。52銀不成に同金などは手が延びない、というのは前の変化と同じようなことですから省略します。


△ 57同金以外の受けを見ておくと、47歩は

58と46歩69と同玉57金78玉

ここまでは進むでしょう。先手玉はまだ詰めろはかからず、41銀は質駒ですが、後手玉が上部に逃げ出す形によって41同竜のところで詰めろになるかもしれません。後手は金銀4枚で攻めてが、小駒は足が遅いので詰めろの形も難しく、何とも言えません。形勢互角、後手が勝ちなのかも、というくらいの局面です。


× 59金引は58歩で

59歩成~69と が詰めろで状況は変わらず。49金と逃げれば68銀

これは状況が悪化しています。


実戦の42竜は普通の手ですが終盤では悪手です。1手の価値がありませんでした。これはどうやったら詰めろがかかるか、ということを考える習慣があればやらなかったでしょう。

52銀成で勝ちがあると考えを掘り下げてみて、飛車を渡したら危ないのだと気が付くかどうか。

52銀不成から61銀不成なら飛車を渡さないで詰めろですから一番わかりやすい勝ちでした。41銀か金打の時に詰みまで見えないと難しいのですが。(61成銀なら1枚とって71角なので無効)

寄せ合いは危ないから受けておこう、というのは時間がない時の危機感覚です。52銀成から61飛成は駒を渡すし、42金の存在が思わぬ受けがあるかもしれないと。金銀を持っていれば57同金同馬68金打とかを考えるでしょう。問題図では金銀は持っていなかったのですが、後手が金銀だけなので寄り付きが難しく、先手が勝ちになる(優勢になる)順がありました。


1手争いの終盤戦は難しいです。でも、何手かければ詰めろになるかという速度計算は強くなるためには必修です。初段くらいの力がついて、もっと上に行こうと思えば、寄せ合いを勝つことが要求されます。

終盤力を強化するためには
①まずは寄せのセオリーを理解することです。
②最短何手かけて詰めろになるか、と考えることはとても良い訓練になります。プロの将棋を観戦あるいは棋譜並べするときにも楽しみが増えますし、自分の将棋を振り返って寄せ合いを検討するとかなり強くなります。
③最終的には、この形は詰み、詰みがない、という感覚を身につけることです。また、その形にどうやって持っていけるかという感覚も必要です。アマチュアの将棋は時間が短いですし、その場で答えを出さなければいけません。


かくいう私も訓練途中なわけで、読むのは苦手です。詰将棋よりは必至問題のほうが有効だと思いますが、そういう問題を解くのもいいです。実戦の中での判断や感覚の確認、感想戦や棋譜の検討での振り返りのほうが歳を取っていく中ではより有効なのかなと思っています。一度はたっぷり時間をかけて自分の将棋を検討してみてください。強い方に教えてもらったら、ぜひその方の読みや感覚を聞いてみてください。自分の足りないものがわかるでしょう。


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