昭和47年10月、芹沢先生との第22回NHK杯選手権です。

大山先生の四間飛車に芹沢先生は正統派らしく急戦、でもやって来いと大山先生は穴熊です。

左64銀になりました。

大山先生は78金と備えて、芹沢先生は位取りに切り替えました。攻めるなら73桂から84飛の形なのですが、研究しておかないと早指しでは指せないでしょう。

大山先生が袖飛車にするのも定番。

駒組みの後互いに1歩交換します。

ここから大山先生の軽い仕掛けが始まります。5,7,6筋を突き捨てて

角筋を通します。

さらに5筋に飛車を回って銀をぶつけます。ここで芹沢先生からの57歩が気になるのですが。57歩65銀58歩成は居飛車がよいでしょう。57同金は56銀同金47銀57飛56銀成同飛で、これのつもりなのでしょうか。57同飛同角成同金56銀同金69飛はやや居飛車がよさそう。分岐点ではありました。

芹沢先生は銀を交換して歩を垂らします。これはいい感じの手筋。

大山先生は角筋を止める歩。同角は76飛ではなく66金でしょうか。でも同角同飛48銀も相当で、踏み込まなかったのでここから大山先生が指しやすくなります。

54歩も落ち着いた手ですが、84角が働かなくなったのが大きいです。

金を寄せる手。こういう手が最初に思い浮かぶようになりたいです。45桂で当たってくるので指しづらそうなのですが。

角を出て45金を狙います。これで金がさばけます。

24歩がつらい手。でも2筋の歩が切れると26歩同歩27歩という筋ができるので、指したくはなります。結果的にはこれが敗着だという気がします。芹沢先生が指すとは思いませんが、24金48角46歩という展開なら難しいでしょう。

24歩と捨てたので33銀が手順に玉を固めたことになるのですが、大山先生の角の筋が変わって57桂成や46歩がなくなったことも大きいのです。

角を使う手(これが本筋ですが)に86歩が軽い手。角を質駒にはしにくいです。

芹沢先生は飛角を使えないので金を投入。

さらに成桂を作れば勝負になったようですが

互いにと金を作り飛車取りを逃げます。63と は許せない(と思うのですが78とのほうがいいのかも)ので73角に

82歩が手筋。82同飛は83歩から連打。なので と金を入って寄せ合いです。

81歩成が角取りになるので72歩が必要なのは痛いです。だから73角は問題なのかも。大山先生は取った桂馬をすぐに使います。芹沢先生は銀を逃げる我慢はできなかったのでしょうか。

期待した飛車成も底歩で止まっては大勢が決しました。あとはどう寄せるかです。

角を覗いて24歩を強要。

金を上ずらされては桂馬を打つしかないです。

この銀打ちが決め手です。

投了図。大山先生の寄せは速いです。
力の差が出たような中終盤戦でした。形勢互角のような局面で、いつの間にかリードしてしまうのは大山先生の強いところです。時間の短い将棋のほうが互いにミスをしやすいのですが、大山先生は長くなるのをいとわないので平均点以上の手を積み重ね、相手はどこかでミスをして差が開いていきます。仕掛けの56銀に同銀は正解か、75歩に54歩が正解か、最初の15角に24歩は正解か、と3回は分岐点があり、どれも芹沢先生が悪手にはみえないけれど間違えたのかな、という将棋です。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山王将
後手:芹沢8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八銀(79)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 6八飛(28)
8 4二玉(51)
9 4八玉(59)
10 3二玉(42)
11 3八玉(48)
12 5四歩(53)
13 2八玉(38)
14 7四歩(73)
15 1八香(19)
16 5二金(61)
17 1九玉(28)
18 4二銀(31)
19 2八銀(39)
20 5三銀(42)
21 6七銀(78)
22 8五歩(84)
23 7七角(88)
24 6四銀(53)
25 7八金(69)
26 5五歩(54)
27 3九金(49)
28 5三銀(62)
29 3六歩(37)
30 5四銀(53)
31 3八飛(68)
32 4四角(22)
33 5九角(77)
34 4二金(41)
35 4六歩(47)
36 6二角(44)
37 5八銀(67)
38 4四歩(43)
39 4七銀(58)
40 4三金(52)
41 6七金(78)
42 5三銀(64)
43 3五歩(36)
44 同 歩(34)
45 同 飛(38)
46 3四歩打
47 3八飛(35)
48 4五歩(44)
49 同 歩(46)
50 同 銀(54)
51 4六歩打
52 5四銀(45)
53 7八飛(38)
54 8四角(62)
55 8八飛(78)
56 6二角(84)
57 3七角(59)
58 6四歩(63)
59 5六歩(57)
60 同 歩(55)
61 7五歩(76)
62 同 歩(74)
63 6五歩(66)
64 同 銀(54)
65 4五歩(46)
66 7六歩(75)
67 5八飛(88)
68 8四角(62)
69 5六銀(47)
70 同 銀(65)
71 同 飛(58)
72 4七歩打
73 7五歩打
74 5四歩打
75 7六飛(56)
76 3三桂(21)
77 2六角(37)
78 4八歩成(47)
79 同 角(26)
80 5五歩(54)
81 5七金(67)
82 4五桂(33)
83 4六金(57)
84 4四銀(53)
85 2六角(48)
86 3五銀打
87 同 金(46)
88 同 銀(44)
89 1五角(26)
90 2四歩(23)
91 3六歩打
92 4四銀(35)
93 2四角(15)
94 3三銀(44)
95 7九角(24)
96 9五角(84)
97 8六歩(87)
98 7八歩打
99 4六角(79)
100 6五金打
101 7八飛(76)
102 5六金(65)
103 4七歩打
104 5七桂成(45)
105 3七角(46)
106 8六歩(85)
107 7四歩(75)
108 8七歩成(86)
109 7三歩成(74)
110 8六飛(82)
111 7四飛(78)
112 7三角(95)
113 8二歩打
114 7八と(87)
115 8一歩成(82)
116 7二歩打
117 4五桂打
118 8九飛成(86)
119 3三桂成(45)
120 同 金(42)
121 5九歩打
122 4七金(56)
123 1五角(37)
124 2四歩打
125 4四歩打
126 同 金(33)
127 2四角(15)
128 3三桂打
129 4五歩打
130 同 金(44)
131 7三飛成(74)
132 同 歩(72)
133 5二銀打
134 4四金(45)
135 4一銀打
136 4二玉(32)
137 3一角打
138 投了
まで137手で先手の勝ち

大山先生の四間飛車に芹沢先生は正統派らしく急戦、でもやって来いと大山先生は穴熊です。

左64銀になりました。

大山先生は78金と備えて、芹沢先生は位取りに切り替えました。攻めるなら73桂から84飛の形なのですが、研究しておかないと早指しでは指せないでしょう。

大山先生が袖飛車にするのも定番。

駒組みの後互いに1歩交換します。

ここから大山先生の軽い仕掛けが始まります。5,7,6筋を突き捨てて

角筋を通します。

さらに5筋に飛車を回って銀をぶつけます。ここで芹沢先生からの57歩が気になるのですが。57歩65銀58歩成は居飛車がよいでしょう。57同金は56銀同金47銀57飛56銀成同飛で、これのつもりなのでしょうか。57同飛同角成同金56銀同金69飛はやや居飛車がよさそう。分岐点ではありました。

芹沢先生は銀を交換して歩を垂らします。これはいい感じの手筋。

大山先生は角筋を止める歩。同角は76飛ではなく66金でしょうか。でも同角同飛48銀も相当で、踏み込まなかったのでここから大山先生が指しやすくなります。

54歩も落ち着いた手ですが、84角が働かなくなったのが大きいです。

金を寄せる手。こういう手が最初に思い浮かぶようになりたいです。45桂で当たってくるので指しづらそうなのですが。

角を出て45金を狙います。これで金がさばけます。

24歩がつらい手。でも2筋の歩が切れると26歩同歩27歩という筋ができるので、指したくはなります。結果的にはこれが敗着だという気がします。芹沢先生が指すとは思いませんが、24金48角46歩という展開なら難しいでしょう。

24歩と捨てたので33銀が手順に玉を固めたことになるのですが、大山先生の角の筋が変わって57桂成や46歩がなくなったことも大きいのです。

角を使う手(これが本筋ですが)に86歩が軽い手。角を質駒にはしにくいです。

芹沢先生は飛角を使えないので金を投入。

さらに成桂を作れば勝負になったようですが

互いにと金を作り飛車取りを逃げます。63と は許せない(と思うのですが78とのほうがいいのかも)ので73角に

82歩が手筋。82同飛は83歩から連打。なので と金を入って寄せ合いです。

81歩成が角取りになるので72歩が必要なのは痛いです。だから73角は問題なのかも。大山先生は取った桂馬をすぐに使います。芹沢先生は銀を逃げる我慢はできなかったのでしょうか。

期待した飛車成も底歩で止まっては大勢が決しました。あとはどう寄せるかです。

角を覗いて24歩を強要。

金を上ずらされては桂馬を打つしかないです。

この銀打ちが決め手です。

投了図。大山先生の寄せは速いです。
力の差が出たような中終盤戦でした。形勢互角のような局面で、いつの間にかリードしてしまうのは大山先生の強いところです。時間の短い将棋のほうが互いにミスをしやすいのですが、大山先生は長くなるのをいとわないので平均点以上の手を積み重ね、相手はどこかでミスをして差が開いていきます。仕掛けの56銀に同銀は正解か、75歩に54歩が正解か、最初の15角に24歩は正解か、と3回は分岐点があり、どれも芹沢先生が悪手にはみえないけれど間違えたのかな、という将棋です。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山王将
後手:芹沢8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八銀(79)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 6八飛(28)
8 4二玉(51)
9 4八玉(59)
10 3二玉(42)
11 3八玉(48)
12 5四歩(53)
13 2八玉(38)
14 7四歩(73)
15 1八香(19)
16 5二金(61)
17 1九玉(28)
18 4二銀(31)
19 2八銀(39)
20 5三銀(42)
21 6七銀(78)
22 8五歩(84)
23 7七角(88)
24 6四銀(53)
25 7八金(69)
26 5五歩(54)
27 3九金(49)
28 5三銀(62)
29 3六歩(37)
30 5四銀(53)
31 3八飛(68)
32 4四角(22)
33 5九角(77)
34 4二金(41)
35 4六歩(47)
36 6二角(44)
37 5八銀(67)
38 4四歩(43)
39 4七銀(58)
40 4三金(52)
41 6七金(78)
42 5三銀(64)
43 3五歩(36)
44 同 歩(34)
45 同 飛(38)
46 3四歩打
47 3八飛(35)
48 4五歩(44)
49 同 歩(46)
50 同 銀(54)
51 4六歩打
52 5四銀(45)
53 7八飛(38)
54 8四角(62)
55 8八飛(78)
56 6二角(84)
57 3七角(59)
58 6四歩(63)
59 5六歩(57)
60 同 歩(55)
61 7五歩(76)
62 同 歩(74)
63 6五歩(66)
64 同 銀(54)
65 4五歩(46)
66 7六歩(75)
67 5八飛(88)
68 8四角(62)
69 5六銀(47)
70 同 銀(65)
71 同 飛(58)
72 4七歩打
73 7五歩打
74 5四歩打
75 7六飛(56)
76 3三桂(21)
77 2六角(37)
78 4八歩成(47)
79 同 角(26)
80 5五歩(54)
81 5七金(67)
82 4五桂(33)
83 4六金(57)
84 4四銀(53)
85 2六角(48)
86 3五銀打
87 同 金(46)
88 同 銀(44)
89 1五角(26)
90 2四歩(23)
91 3六歩打
92 4四銀(35)
93 2四角(15)
94 3三銀(44)
95 7九角(24)
96 9五角(84)
97 8六歩(87)
98 7八歩打
99 4六角(79)
100 6五金打
101 7八飛(76)
102 5六金(65)
103 4七歩打
104 5七桂成(45)
105 3七角(46)
106 8六歩(85)
107 7四歩(75)
108 8七歩成(86)
109 7三歩成(74)
110 8六飛(82)
111 7四飛(78)
112 7三角(95)
113 8二歩打
114 7八と(87)
115 8一歩成(82)
116 7二歩打
117 4五桂打
118 8九飛成(86)
119 3三桂成(45)
120 同 金(42)
121 5九歩打
122 4七金(56)
123 1五角(37)
124 2四歩打
125 4四歩打
126 同 金(33)
127 2四角(15)
128 3三桂打
129 4五歩打
130 同 金(44)
131 7三飛成(74)
132 同 歩(72)
133 5二銀打
134 4四金(45)
135 4一銀打
136 4二玉(32)
137 3一角打
138 投了
まで137手で先手の勝ち