名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(72); 中飛車に持久戦

2016-02-21 | 大山将棋研究
昭和47年11月、中原先生と第11期十段戦第4局です。大山先生3連敗でかど番。


大山先生の先手中飛車。

大山先生は穴熊をやめましたね。きれいに負かされてやっと通常営業で安心できます。中原先生は位取り模様。

中原先生は思い付きでしょう。74歩と攻めを見せて大山先生は位取り拒否。

銀を繰り出せば角を引いて軽く構えます。

さらに右に金を上がりました。普通の手なのですが、大山先生なら67に上がるのもよく見ます。軽い指し方で行こうという決断です。

これは誘いの隙を見せた手。銀冠に組むほうが普通です。75歩とやってきなさいという手です。

突かせて角をまた引きます。

76歩を取り込まれて香車を上がります。軽く軽くさばきを狙います。

66銀と来なさいと催促。向い飛車でこの歩を伸ばすのは疑問手になることが多いですが。

銀交換にはもちろん飛車を回ります。

そのあと55歩同馬に角を合わせるというのはちょっと気が付きませんでした。指されてみれば当たり前ですが。

37角成を金で取って飛車を回ります。軽い指し方が続きます。44歩を見て好調。

46歩の手筋に歩を打って飛車を取りに行きます。

と金を払って好調。ただし形勢は互角です。

55歩同金として飛車を下せば56歩を見た先手です。

58飛76角の交換は香車を取った手が57香で先手になるという意味。97角成を許さないぎりぎりの手順です。

でも飛車打ちもきついと思うのですが。銀を投入して

金を取ります。でも桂香と金の2枚換えなので自信なし。

やっと金銀の活躍する大山先生らしい順になってきました。でも怖い手です。これでよいとは思っていなかったでしょう。

金の打ち込みに角の王手。歩合がないので厳しいです。

金を取らせて角を成る。互いにそっぽに行く寄せ方です。

がっちり金打に竜を引いて1手争いであることは間違いないです。中原先生は歩しか持ち駒になく、先手玉が広いので詰めろは当分かからず。中原玉が堅いのかどうかですが。

金を寄られて歩を打つ1手。同銀は43馬、同金は同銀同銀34馬。取れないのでは中原玉は堅くなかったということです。

一回早逃げから歩を成って、中原先生は下駄を預けました。先手玉はまだ詰まないので、詰めろをかければ勝ち。

銀を補充すれば詰めろなのですか。私はこういう詰む詰まないは読めません。後手玉の詰みを読み切れますか?

ここまでくればわかります。途中に紛れもなさそうですね。

振り飛車の軽い指し方というのは私には難しすぎます。仕掛け的なさい、と誘って銀をさばき角を交換して飛車を急所に回る、というのは好調です。でもそのあとは難しく、飛車角交換で飛車を打ち込んで、というのはアマチュア向きでも、形勢は互角です。中原先生は自玉の堅さについての見落としがあったのでしょう。わかっていれば47金と打ち込むところで97角成くらい。駒得で長期戦を狙えたはずです。寄せは俗手で、とは言いますが、俗手で寄せ合い勝ちかどうかはよく読まねばなりません。読み切れないときは(実際中原先生でも間違ったわけですが)俗手は危険です。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山王将
後手:中原十段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 6八銀(79)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 5八飛(28)
8 4二玉(51)
9 4八玉(59)
10 3二玉(42)
11 3八玉(48)
12 5四歩(53)
13 2八玉(38)
14 5二金(61)
15 3八銀(39)
16 1四歩(13)
17 1六歩(17)
18 4二銀(31)
19 5六歩(57)
20 4四歩(43)
21 4六歩(47)
22 4三銀(42)
23 5七銀(68)
24 7四歩(73)
25 3六歩(37)
26 8五歩(84)
27 7七角(88)
28 5三銀(62)
29 7八飛(58)
30 6四銀(53)
31 5九角(77)
32 5五歩(54)
33 同 歩(56)
34 同 銀(64)
35 5六歩打
36 6四銀(55)
37 5八金(69)
38 5四銀(43)
39 4七金(58)
40 4三金(52)
41 2六歩(27)
42 4二金(41)
43 9六歩(97)
44 4五歩(44)
45 同 歩(46)
46 同 銀(54)
47 4六歩打
48 5四銀(45)
49 7七角(59)
50 7五歩(74)
51 5九角(77)
52 8六歩(85)
53 同 歩(87)
54 8八歩打
55 同 飛(78)
56 7六歩(75)
57 9七香(99)
58 7五銀(64)
59 4五歩(46)
60 7二飛(82)
61 8五歩(86)
62 6六銀(75)
63 同 銀(57)
64 同 角(22)
65 6八飛(88)
66 9九角成(66)
67 5五歩(56)
68 同 馬(99)
69 3七角(59)
70 同 馬(55)
71 同 金(47)
72 7七歩成(76)
73 4八飛(68)
74 4六歩打
75 7三歩打
76 同 飛(72)
77 4四歩(45)
78 同 金(43)
79 6二角打
80 3三銀打
81 7三角成(62)
82 同 桂(81)
83 7七桂(89)
84 6四角打
85 5五歩打
86 同 金(44)
87 5一飛打
88 5二歩打
89 5八飛(48)
90 7六角打
91 9一飛成(51)
92 5八角成(76)
93 同 金(49)
94 7八飛打
95 6七銀打
96 7七飛成(78)
97 5六香打
98 同 金(55)
99 同 銀(67)
100 4一香打
101 4五金打
102 同 銀(54)
103 同 銀(56)
104 4七金打
105 5四角打
106 4三桂打
107 4四歩打
108 5八金(47)
109 6三角成(54)
110 7五角(64)
111 4三歩成(44)
112 同 金(42)
113 5二馬(63)
114 4二金打
115 8二龍(91)
116 4八金(58)
117 4四歩打
118 2二玉(32)
119 4三歩成(44)
120 4七歩成(46)
121 同 銀(38)
122 同 金(48)
123 同 金(37)
124 3九銀打
125 1八玉(28)
126 4七龍(77)
127 3三と(43)
128 同 桂(21)
129 3一銀打
130 同 玉(22)
131 4二馬(52)
132 同 香(41)
133 7一龍(82)
134 4一歩打
135 2一金打
136 同 玉(31)
137 4一龍(71)
138 3一銀打
139 3二銀打
140 投了
まで139手で先手の勝ち





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20160221今日の一手<その281>; 相穴熊の難しさ

2016-02-21 | 今日の一手
20160221今日の一手

12月19日の名南将棋大会からNさんとNさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さはやや後手のほうが堅いです。金の位置の違いだけですが相穴熊は堅さの差を重視します。
先手の攻め駒は77角1枚。
後手の攻め駒は22飛33角2枚。

総合すれば互角に近いですが、やや後手がリードしているか、というところです。

大局観として
通常の相穴熊は銀の位置が違うので居飛車穴熊のほうが堅いことが多いのですが、問題図では銀の位置が4筋同士。飛車も向かい合っていて、後手だけ歩を持っているのはポイントで、これを覆すには24歩から23歩成を実現できるかどうかと考えます。先手のポイントは37桂と使えていることで、45桂とはねる変化を考えたいです。角交換を挑まれたのですが、換えるか換えさせるか換えないか。玉の堅さを考えれば換えるのが普通で、でも後手にも33桂と使われるのが癪。角筋を止めると後手の角の方が働いていることになるので、それをカバーできるか。考えることはいろいろあって、その小さな差を比較検討して少しでも有利になる手順を考えねばなりません。勝負はこのあたりで決まるので、相穴熊を指すなら読みの力を試されます。


○ 実戦は33角成でした。一番自然な手です。

33同桂に45歩も自然な手です。後手が35歩と突くのもさばくための手筋。

24歩64角46角同角同銀36歩

桂馬を取られてしまいます。45歩と取ったのはまずかったようです。以下は23歩成37歩成同銀27歩同飛49角

飛車の取り合いしかありません。22と27角成48銀45桂(46桂だったか)23飛36馬47銀35馬43飛成57桂成

こんな進行で、先手は駒損は回復したのですが玉の堅さが劣るので不利なままでの終盤です。後手が押し切って勝ちました。

45歩と取らないで24歩でどうか。

46歩同銀27歩同飛49角

金の位置がたたるので実戦でも出てきましたが嫌な筋です。28飛27歩(26歩は77角で困る)48飛58角成同飛

47金は両取りでもあとで55角があるので大丈夫。24飛77角44歩55銀35歩同歩

これくらいでしょうか。相穴熊で角金交換は得ともいえないのですが、後手は歩切れですし先手の攻め駒のほうが働いています。やや先手有利です。


× 自分から角を換えないで24歩なら

77角成同銀46歩同銀27歩同飛49角

28飛26歩

33桂の形なら66角が怖くて27から歩を打つしかなかったのですが、ここでは66角には24飛ですから26から歩を打てます。48飛58角成同飛27歩成45桂52銀

後手玉が堅すぎます。24飛から攻めを見るだけですから後手が有利です。


△ 45同桂は頑張った手です。

77角成同銀37角29飛28歩39飛26角成

77角成とされると先手の穴熊がさらに弱くなるのが難点ですが、桂馬の働きに差があります。馬を作ってもたれられたら66角44馬(歩切れが痛い。44銀は35歩)同角同銀66角55角同角同銀24角

ひたすら角を打って、後手も馬を合わせ角を合わせという手順で、25飛を狙われるので今度は先手が角を打ってもたれます。これで小休止。互いに陣形整備をして、先手としては固めてから38銀49飛の後で角成を狙います。桂馬の位置の差があるので先手も指せるでしょう。

45同桂に77角成同銀44歩は

シンプルに53桂成同金24歩が最善のようです。31角とかやらないほうがよいです。

後手は歩切れなので37角29飛(27飛もあるかも)55桂56銀46角成。

23歩成28歩22と29歩成51飛

これで終盤突入です。先手の穴熊のほうが乱れているのですが、後手の55桂は不満。先手の と金は攻めに使えそうなので少しだけ先手がいいのかも、という終盤です。


× 45同歩もないことはないのですが怖いです。

77角成同銀35歩同歩64角

48金33桂36銀25桂

この桂馬が取れず(飛車交換はまずく、25同銀は36歩)88銀24歩38飛21飛

まあまあのようなのですが、後手からは37桂成同金25桂で19角成を狙えます。玉の堅さの違いを考えると先手の勝ちにくい形です。


× 86角とかわす手。(私はこれかと思いました。)

35歩なら45桂が調子よく、44角35歩

35同角24歩26歩38飛

34歩なら35飛同歩53桂成です。

これは楽勝。

でも86角に46歩同銀54銀

45桂や45銀は後手にさばかれそうです。56歩42飛45歩23歩

この後は68金寄から24歩同歩77角と攻めたいのですが、後手から47歩も嫌味ですし、銀も浮いています。やや先手が指しにくいです。


△ 66歩のほうが86角よりは良くて

後手の35歩の対応は86角より劣るとはいえ

これくらいになればまあまあ。

46歩同銀54銀56歩42飛45歩23歩のほうは

これなら駒組みがもう少し自由です。この後68金寄はいいとして、78金寄までいくと47歩が気になります。26飛から35歩というのもやりにくいでしょうか。68金寄~58飛~55歩というコースか。1局です。


金の位置が1つ違うので問題図の45歩の仕掛けは一見無理そうでも成立しそうです。うまく応対しないと簡単に負けになります。

角交換になると27歩から49角の筋があり、とても怖いです。だから86角や66歩が本筋かと思ったのですが、後手の33角が働いているのでやや先手の作戦負け。でもそれで我慢することはできるでしょう。

33角成から24歩が一番主張している手で、後手が2筋の歩を交換したのをとがめに行っています。

実戦の33角成から45歩は歩得を主張する手なのですが、後手に持ち歩があるので意味が弱く、さばかれてしまいました。

45桂で77角成と乱されるのは嫌なのですが、桂馬の働きを主張する手です。44歩で殺されても成り捨てれば桂馬と2歩の交換です。24歩からは と金がどれだけ働くかの勝負です。

どの変化も後手玉が堅いので軽くさばかれる手が多く、先手はかなり苦労をします。相穴熊は序中盤が上手く指せないと勝てません。定跡研究や深い読みが必要です。さらに終盤での経験値もものを言いますし、やはりスペシャリストのための戦法だという気がします。



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