医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

便潜血検査は大腸・直腸ガンによる死亡を減少させる

2025年02月08日 | 消化器
プレジデント 2023/10/13号では「健康診断のウラ側」ということを特集していました。

ここで東大医学部卒の医者3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズです。

養老孟司という解剖学者ですが、東京教育大学卒の池田清彦という生物学者との対談でそそのかされたということもありますが、
「僕は医者にかかって薬を毎日飲んでいます。たぶん意味がないけど、飲まないと医者の期限が悪くなるから仕方がない。医者に気を使っているわけじゃないですよ。池田君が指摘したように、システムの問題で、薬を出さないと医者は食べていけません。僕がずっと病院に行きたくないと言っていたのは、一度医者にかかるとそのシステムに否応なく巻き込まれるからでした。」
と言っています。

彼は以前から抗がん剤に対して否定的で、「ガンになっても抗がん剤治療は受けない」と公言していましたが、このほど小細胞肺ガンステージIIであることが判明し、抗がん剤治療+放射線治療を受けていると、以下の本に書かれています。

養老先生、ガンになる

プレジデント 2023/10/13号にはその他に東大卒の和田秀樹という精神科医は「コレステロール数値のコントロールは早死にを招く」(24ページ)などと言っているし、同じく東大卒の大脇幸志郎という医者は「大腸ガン検診を受けても99%以上の人には意味なし」(32ページ)などと言っています。これも誤りです。

大腸ガン検診である便潜血検査の有用性は以下の論文で公表されています。

Randomised controlled trial of faecal-occult-blood screening for colorectal cancer
Lancet 1996;348:1472


1981年から1991年まで、イギリスのノッティンガム地方の45歳~74歳の住民のうち研究への参加を同意した約15万人が、隔年で便潜血検査を受ける群と、便潜血検査を全く受けない群に分けられ、平均約8年間追跡調査されました。

結果は、上の右図のように、全ての理由による死亡は両群で12,624人対12,515人と差がなかったのに、大腸・直腸ガンによる死亡は、便潜血検査を受けた群で360人、受けなかった群で420人と、便潜血検査を受けた群で有意に少なくなりました。その比は0.85(95%信頼区間:0.74~0.98)でした。

左の図は便潜血検査を受けないコントロール群と検査を受けたスクリーニング群の経時変化による死亡率のグラフです。便潜血検査を受けた群では15年間で大腸・直腸ガンによる死亡は1,000人あたり約4.5人(約0.45%)で、受けない群では約5.5人(約0.55%)ですから、便潜血検査は15年で大腸・直腸ガンによる死亡を1,000人に1人減らすことになります。

便潜血検査のコストが1,000円と仮定すると、2年に1回1,000円がかかるので、15年で1人8,000円、8,000円x1,000人=80万円で1人の大腸・直腸ガンによる死亡を減らせることができます。

便潜血検査のコストを2,000円としても、160万円で1人の大腸・直腸ガンによる死亡を減らせることができます。1人の死亡を160万円で減らせるなんて、便潜血検査は大変有用な検査ではないでしょうか。


東大三羽カラス、カラスは鳥類の中でとても知能が高いらしいですが、彼らこそが「現代人がいかに考えないままに、己の周囲に壁を作っているか」と書かれてあった「バカの壁」なのではないでしょうか。

私はこれまで数千人以上の患者を数十年間以上続けて診てきましたが、東大三羽カラスの皆さんは「机上の空論」論者、数千人以上の患者を数十年間以上続けて診たことがないのだと思います。

車を運転していて交通事故に遭う確率は1000分の1以下だそうです。大脇幸志郎という医者が「大腸ガン検診を受けても99%以上の人には意味なし」と言うのは、「シートベルトをしても99.9%以上の運転者には意味なし」と言うのと同じ、まさに「バカの壁」です。

このようなことを週刊誌に載せるということは(真実性)、たとえ悪気がなくても、国民の健康に不利益をもたらす(公益性)(公共性)ので、注視すべきことだと思います。それにしても、「プレジデント」は昔は「1分で伝わる話し方」だとか「一生ものの勉強法」だとか、ためになる記事が多かったのですが、今や「週刊ポスト」並みに堕落してしまいましたね。

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タミフルは翌年のインフルエンザ感染を増加させる

2025年01月16日 | 感染症
インフルエンザが流行しています。そして抗インフルエンザ薬であるタミフルが不足しています。
基礎疾患がなく発症して2日以上経過しても抗インフルエンザ薬を希望する患者も少なくありません。

世界中で日本が一番抗インフルエンザ薬を使用していることも周知の事実です。
日本の受診料が安すぎるということもこの理由の一つとして考えられます。

私はそのような患者には以下の論文の内容を説明して、なるべく抗インフルエンザ薬を処方しない方向に説得することを心がけています。

Immunomodulator clarithromycin enhances mucosal and systemic immune responses and reduces re-infection rate in pediatric patients with influenza treated with antiviral neuraminidase inhibitors: a retrospective analysis.
PLoS One 2013;8:e70060


未成年を対象とした観察研究で、タミフル(オセルタミビル)、リレンザ(ザナミビル)は呼吸器系抗A型インフルエンザ特異的分泌型IgAおよび全身性抗A型インフルエンザ特異的分泌型IgGの産生を抑制する傾向がありました。

翌年のA型インフルエンザ再感染率は
未使用群、8.6%
タミフル群、37.3%
リレンザ群、45.0%
であり、タミフル群、リレンザ群で有意に高かった。


これは未成年を対象とした研究であるため成年に当てはまるのかという研究限界はありますが、要するに抗インフルエンザ薬を使用するとインフルエンザに対する抗体ができにくくしてしまうので、翌年以降の免疫がつかず、翌年にまた感染しやすくなってしまうということです。

その他に以下のような同様の結果の論文もあります。
Boost of mucosal secretory immunoglobulin A response by clarithromycin in paediatric influenza.
Respirology. 2009;14:1173-1179

未成年を対象とした観察研究で、タミフル(オセルタミビル)は抗ウイルス分泌型IgAの誘導を抑制した。


徳島大学のShinahara先生、素晴らしい論文をありがとうございました。
皆さんも抗インフルエンザ薬の無益な内服は止めましょう。

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「糖尿病の値のコントロールは早死にを招く」は誤り

2025年01月12日 | 生活習慣病
プレジデント 2023/10/13号では「健康診断のウラ側」ということを特集していました。
(ここのレビューで、1~2行でレビューを書いている人は、本人か編集関係者から高評価のレビューを書いてほしいと頼まれたサクラですよね。その他の書籍にはほとんどレビューを書いていません。この本だけにレビューを書いている人がたくさんいます)



ここで東大医学部卒の医師3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズです。

和田秀樹という精神科医は「フィンランド保険局の調査で、血圧、血糖値、コレステロール値をコントロールしないほうが、死亡リスクが減少するという結果が判明しています」「数値のコントロールは早死にを招く」(24ページ)と書いています。

以下の論文は久山町研究という観察人数も観察期間も申し分ない研究の結果です。HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)という重症度を評価する数値は糖尿病と診断されるのは6.5%以上の時ですが、この研究では6.5%以下の場合も含めて調査されている素晴らしい研究です。

上の図はその論文に掲載されている図ですが、HbA1cという糖尿病の重症度を評価する数値が高ければ高いほど、脳梗塞・脳出血・狭心症・心筋梗塞が増えていくことがわかります。


Epidemiology of Stroke in a General Japanese Population: The Hisayama Study
Atheroscler Thromb 2023 Jul 1;30(7):710-719


これは観察研究ですので、薬を飲んでHbA1cを下げた場合に死亡リスクが下がるかを示したものではありませんが、この研究には薬を飲んでいる患者も飲んでいない人も含まれていますので、薬の内服の有無にかかわらず、その時のHbA1c値で判断できるとも解釈できます。

脳梗塞や脳出血や心筋梗塞に罹患したら、寿命が縮まない患者もいますが、母集団全体を平均すれば寿命は短くなりますから「糖尿病の値のコントロールは早死にを招く」(もちろん、ある程度まで低下させる治療のことを示している)と言うのはまったく反対の誤りと言えます。

九州大学のHata先生、素晴らしい論文をありがとうございました。


一方で和田秀樹という精神科医は、「○○値の下げすぎはNG」とか「やや高めでもいい」と、批判をかわせるようなあいまいな表現をしています。
さすが「東大話法」!

東大話法その1、自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
東大話法その2、自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
東大話法その3、都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。


東大話法その12、自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する。 など、
↓ここに載っています。
東大話法


このような事例は(真実性)、たとえ悪気がなくても、国民に不利益をもたらす(公益性)(公共性)こともあるので、注視すべきことだと思います。


東大医学部卒の医師3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズ、これからも続けていきたいと思います。

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「血圧値のコントロールは早死にを招く」は誤り

2024年12月30日 | 循環器
プレジデント 2023/10/13号
では「健康診断のウラ側」ということを特集していました。

ここで東大医学部卒の医師3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズです。

和田秀樹という精神科医は「フィンランド保険局の調査で、血圧、血糖値、コレステロール値をコントロールしないほうが、死亡リスクが減少するという結果が判明しています」「数値のコントロールは早死にを招く」(24ページ)と書いています。

以下の論文は久山町研究という観察人数も観察期間も申し分ない研究の結果です。

上の図はその論文に掲載されている図ですが、血圧が高ければ高いほど、脳梗塞・脳出血・狭心症・心筋梗塞が増えていくことがわかります。

Epidemiology of Stroke in a General Japanese Population: The Hisayama Study
Atheroscler Thromb 2023 Jul 1;30(7):710-719


これは観察研究ですので、薬を飲んで血圧を下げた場合に死亡リスクが下がるかを示したものではありませんが、この研究には薬を飲んでいる患者も飲んでいない人も含まれていますので、薬の内服の有無にかかわらず、その時の血圧で判断できるとも解釈できます。

脳梗塞や脳出血や心筋梗塞に罹患したら、寿命が縮まない患者もいますが、母集団全体を平均すれば寿命は短くなりますから「血圧値のコントロールは早死にを招く」(もちろん、ある程度まで低下させる治療のことを示している)と導くのは誤りと言えます。

一方で和田秀樹という精神科医は、「○○値の下げすぎはNG」とか「やや高めでもいい」と、批判をかわせるようなあいまいな表現をしています。
さすが「東大話法」!

東大話法その1、自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
東大話法その2、自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
東大話法その3、都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。


東大話法その12、自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する。 など、
↓ここに載っています。
東大話法

同じく東大卒の大脇幸志郎という医者は「大腸ガン検診を受けても99%以上の人には意味なし」(32ページ)とか、「子宮頚ガンワクチンで子宮頚ガンを減らせるのか、この議論もまだ決着がついていません」(33ページ)などと言っています。

このようなプレジデントの記事は(真実性)、たとえ悪気がなくても、国民に不利益をもたらす(公益性)(公共性)こともあるので、注視すべきことだと思います。

東大医学部卒の医師3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズ、これからも続けていきたいと思います。

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「数値のコントロールは早死にを招く」は誤り

2024年11月28日 | 生活習慣病
プレジデント 2023/10/13号
では「健康診断のウラ側」ということを特集していました。

ここで東大医学部卒の医師3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズです。

和田秀樹という精神科医は「フィンランド保険局の調査で、血圧、血糖値、コレステロール値をコントロールしないほうが、死亡リスクが減少するという結果が判明しています」「数値のコントロールは早死にを招く」(24ページ)と書いています。上の図の赤線の部分です。
何もコントロールしない群と、intervention群すなわち治療介入する群を比較したら、18年間のフォローで何もコントロールしない群で1000人あたり31.1人、治療介入する群で63.7人で、治療介入する群の方が多く死亡しているではないか!と言いたいようです。
これも誤りです。

彼は以下の論文と上の図を日本語に訳してプレジデント 2023/10/13号に載せています。
Mortality in participants and non-participants of a multifactorial prevention study of cardiovascular diseases: a 28 year follow up of the Helsinki Businessmen Study.
Br Heart J 1995;74:449-54.


そこで私はその論文の原文を読んで確かめてみました。
原文には以下のように書いてありました。
Total deaths were significantly predicted by age (RR 1.48, 95% CI: 1.31-1.66), systolic blood pressure (RR 1.18, 95% CI: 1.13-1.24), serum cholesterol (RR 1.11, 95% CI: 1.04-1.19), and smoking (RR 1.87, 95% CI: 1.55-2.25).; coronary death by age (RR 1.44, 95% CI: 1.19-1.75), systolic blood pressure (RR 1.26, 95% CI: 1.15-1.34), and cholesterol (RR 1.26, 05% CI: 1.13-1.41).

補足してまとめますと、
死亡は、年齢が5歳増えると1.48倍、血圧が10mmHg増えると1.18倍、総コレステロールが約38mg/dL増えると1.11倍、喫煙があると1.87倍増える。狭心症や心筋梗塞で死亡するのは、年齢が5歳増えると1.44倍、血圧が10mmHg増えると1.26倍、総コレステロールが約38mg/dL増えると1.26倍増える。
と書いてありました。

そして結論に以下のように書いてありました。
In conclusion, this study shows that the traditional cardiovascular risk factors are also important predictors of mortality among men of the highest social class.
「結論として、(教育を受けた)高いクラスの男性の間でも、(血圧、血糖、コレステロール値という)伝統的なリスク因子は死亡リスクを評価するのに重要な因子である。」

また、18年間のフォローで何もコントロールしない群より治療介入する群で多く死亡している点について、
「However, the important questions remain: what is the optimal treatment to lower the risk factors in primary prevention and what are the target levels for intervention? Apparently the intervention methods were not optimal in the Helsinki Businessmen Study.」

「適切な治療介入とは何であるか、どこまで治療介入するかは未だ不明であり、この研究での治療介入は適切でなかった」と書かれています。

「適切でない治療介入だった」とはどういう方法だったのか、この論文で2番目に引用されている論文に、この論文の研究方法が詳しく書かれていましたので、原文を読んでみました。
血圧の治療薬は、日本でも第一選択薬ではない、「利尿薬」と「ベータ・ブロッカー」でした。また、コレステロール低下薬は、現在はコレステロール低下作用以外にも抗炎症作用、抗酸化作用を併せ持つ「スタチン」が使用されるのに、この研究では「フィブラート系」が使用されていました。

つまり、適切でない治療介入で調べられたこの研究の結果から「数値のコントロールは早死にを招く」と導くのは誤りと言えます。

一方で、「○○値の下げすぎはNG」とか「やや高めでもいい」と、批判をかわせるようなあいまいな表現をしています。
さすが「東大話法」!

東大話法その1、自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
東大話法その2、自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
東大話法その3、都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。


東大話法その12、自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する。 など、
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東大話法

このような誤りの記事は(真実性)、たとえ悪気がなくても、国民に不利益をもたらす(公益性)(公共性)こともあるので、注視すべきことだと思います。

東大医学部卒の医師3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズ、これからも続けていきたいと思います。


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東大三羽カラスによる困った扇動

2024年10月31日 | 生活習慣病
査読員から修正を求められていた2編の論文のリバイスに四苦八苦しておりましたので更新が遅れていましたが、無事に2編ともアクセプトされました。求められる修正に1つ1つ対応するのは大変でしたが、その度に論文の内容が良くなっていったので、本当にありがたいことです。


さて、それで少し前の話ですが、プレジデント 2023/10/13号では「健康診断のウラ側」ということを特集していました。

ここで東大医学部卒の医師3人が誤ったことをたくさん扇動していましたので、今後一つ一つ根拠を示しながら反論したいと思います。

まずは、養老孟司という解剖学者ですが、東京教育大学卒の池田清彦という生物学者との対談でそそのかされたということもありますが、

「僕は医者にかかって薬を毎日飲んでいます。たぶん意味がないけど、飲まないと医者の機嫌が悪くなるから仕方がない。医者に気を使っているわけじゃないですよ。池田君が指摘したように、システムの問題で、薬を出さないと医者は食べていけません。僕がずっと病院に行きたくないと言っていたのは、一度医者にかかるとそのシステムに否応なく巻き込まれるからでした。」(14ページ)
と言っています。

彼は以前、「血圧が160 mmHg以上あるけれど薬を飲まなくてもこのようにピンピンしているから、本当は血圧なんて160 mmHgでもいい」というようなことを言っていました。

上の図は下に示した論文から引用した、血圧が上がるにつれて死亡率が上がるので、(110 mmHg以下になるとふらついて転倒したり腎臓への血流が低下したりする場合があるのでその限りではありませんが)110 mmHgまでは低い方がいいという根拠です。

私は日頃の診療でこの図を患者に見せて、説明しています。もちろんこれは観察研究ですので、薬を飲んで血圧を下げた場合に死亡リスクが下がるかを示したものではありませんが、この研究には薬を飲んでいる患者も飲んでいない人も含まれていますので、薬の内服の有無にかかわらず、その時の血圧で判断できるとも解釈できます。

皆さんも以下の論文を参考にしてみて下さい。

Age-specific relevance of usual blood pressure to vascular mortality: a meta-analysis of individual data for one million adults in 61 prospective studies
Lancet 2002;360:1903-13.


During 12·7 million person-years at risk, there were about 56 000 vascular deaths (12 000 stroke, 34000 ischaemic heart disease [IHD], 10000 other vascular) and 66 000 other deaths at ages 40–89 years.
Blood pressure and cardiovascular disease in the Asia Pacific region
Journal of Hypertension 2003;21:707


彼は以前から抗がん剤治療に対しても否定的で、「ガンになっても受けない」と公言していましたが、このほど小細胞肺ガンステージIIであることが判明し、抗がん剤治療+放射線治療を受けていると、以下の本に書かれています。きっと東大の良心である中川恵一先生にエビデンスを丁寧に説明してもらったのだと思います。

「養老先生、ガンになる」

プレジデント 2023/10/13号にはその他にも東大卒の和田秀樹という精神科医が「コレステロール数値のコントロールは早死にを招く」(24ページ)などと言っているし、同じく東大卒の大脇幸志郎という医者は「大腸ガン検診を受けても99%以上の人には意味なし」(32ページ)とか、「子宮頚ガンワクチンで子宮頚ガンを減らせるのか、この議論もまだ決着がついていません」(33ページ)などと言っています。

東大三羽カラス、カラスは鳥類の中でとても知能が高いらしいですが、彼らこそが「現代人がいかに考えないままに、己の周囲に壁を作っているか」と書かれてあった「バカの壁」なのではないでしょうか。


私はこれまで千人以上の患者を十年以上続けて診てきましたが、東大三羽カラスの皆さんは千人以上の患者を十年間以上続けて診たことがないのだと思います。

東大三羽カラスに一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズは今後も続けます。

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精神・人格異常(その32)環境省官僚の場合

2024年09月23日 | 雑感
2021年4月7日 環境省官僚たちのやり取りです。
水俣病患者連合・松崎重光副会長「水銀を垂れ流さんと、こういうことにはならんかったがね…と私はいつも家内と話していました」
環境省担当者「申し訳ございません。話をおまとめください」
水俣病患者連合・松崎重光副会長「妻の・妻の…」
別の参加者「切られた、スイッチ」

この懇談では、持ち時間の3分が過ぎると、環境省側によって一方的にマイクが切られ、参加者から批判があがりました。

環境省担当者「事務局の不手際でございました。誠に申し訳ございません」
参加者「不手際ということはやった(音量を下げた)ということだね」
伊藤環境相「私はマイクを切ったことについて認識しておりません」
参加者「すみません、認識できたでしょ?」

私のブログを昔から読んでくださっている方々はもうお分かりだと思いますが、この環境省官僚はアスペルガー症候群ですよね。
この環境省官僚は、「持ち時間は3分」という規則に従ってスイッチを切っただけなのに、その行為のどこが悪かったのか本当に分からなかったのだと思います。

これらの環境省官僚はその後配置換えになったそうです。優秀なのですから、接遇が必要な部署ではなく、プログラムを開発したりする部署の方が向いていると思います。

さて、2024年6月4日に行われた学校健診の時に小学生のパンツを下げて問題となった医者がいましたね。

彼は小児内分泌学の専門家であり、国立大学教授、日本小児内分泌学会会長、日本小児保健学会会長も歴任しています。

彼は記者会見で「パンツを開いて陰毛が生えてるか見ただけだが、女の子にとってはかなりショックだったと思う。それほどショックを受けると思ってなかったけど」と述べました。人とのコミュニケーション能力が彼には欠けていたと言わざるを得ません。

私が以前からアスペルガー症候群に関して記載している「他人が~と思うとは思わなかった」というフレーズです。
あの厚労官僚たちは一般の人々がどう思うのか本当に分からなかったのだと思う

五輪コロナ風刺エンブレム、アスペルガー症候群の場合こうなる

一部の小児科専門医から、「思春期早発症の早期発見は非常に重要である」と、彼を擁護する意見も出ましたが、そもそも「思春期早発症の早期発見が非常に重要であり、これまで当該診察をしてこなかったことによる見逃しが看過できない」のであれば、全ての医者向けの「対応マニュアル」を作成して全国で実施する必要があるし、事前に小学生やその保護者に対する十分な説明が必要だったのではないでしょうか。

また、それほど重要だと主張するのならば、なぜ日本全体で行われないのでしょうか?

決して悪気はなかったと思いますが、アスペルガー症候群の、ちょっと困った事例を書いてみました。このような事例は(真実性)、たとえ悪気がなくても、国民に不利益をもたらす(公益性)(公共性)こともあるので、注視すべきことだと思います。

最近では、アスペルガー症候群の原因としては、「空気を読むことを司る」内側前頭前野の障害、表情の認知に関わる扁桃体・視線処理に関わる紡錘状回の体積の減少が挙げられることが明らかになっています。
Reduced gray matter volume of pars opercularis is associated with impaired social communication in high-functioning autism spectrum disorders
Baiol Psychiatry. 2010 Dec 15;68(12):1141-7


また、米国マウントサイナイ医科大学シーバー自閉症研究センターで3万人以上の自閉スペクトラム症を調査した結果では、自閉スペクトラム症にかかわる遺伝子はPCDH10やPAX6など102個にも及ぶことが明らかになっています。
Rare de novo and transmitted copy-number variation in autistic spectrum disorders
Neuron 2011 Jun 9;70(5):886-97.


最近は、治療法も研究されていて、共感を司るホルモンであるオキシトシンを鼻腔に投与すると、「空気を読む能力」が増すことも明らかになっています。
Effect of intranasal oxytocin on the core social symptoms of autism spectrum disorder: a randomized clinical trial
Mol Psychiatry. 2020 Aug;25(8):1849-1858.


アスペルガー症候群の治療法が早く開発されるといいですね。


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北海道が激しすぎる

2024年08月20日 | 雑感
             とても当たり前のことがスローガンとして掲げられている北海道 白石署


お盆休みに起こったある事故の事を調べていたら、北海道が激しすぎることに気がついてしまいました。
以下はお盆休みの8月14日、15日、16日に北海道で起きた事件です。


8月14日、知人の女性宅に不法に侵入したとして、35歳の男が逮捕されました。住居侵入の疑いで逮捕されたのは、札幌市南区に住む会社員の男(35)です。

8月14日、北海道札幌市で不法に刃物を所持していたとして34歳の男が銃刀法違反の現行犯で逮捕されました。男は「私がしたことで間違いありません」などと話しています。警察によりますと、別件で男を捜査していた警察官が施設内で声をかけると、男はバッグの中から刃物を取り出したということです。男はその場で逮捕され、ケガ人はいませんでした。

8月14日、インスタグラムで知り合った10代の女性にいかがわしい行為をしてその状況をスマホで撮影したとして、26歳の男が逮捕されました。不同意性交等・児童買春、児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)の疑いで逮捕されたのは、札幌市白石区に住む配送業の男(26)です。

女湯の脱衣場に侵入し、女性(40代)に背後から抱きつきケガを負わせたとして、北海道上川町の無職の男(20)が不同意わいせつ致傷の疑いで8月15日逮捕されました。

面識のない20代女性にわいせつな行為をしたとして、北海道旭川市に住む40歳の無職の男が8月15日逮捕されました。男は5月5日午前1時ごろ、函館市石川町の路上で、20代女性の胸を触るわいせつな行為をした不同意わいせつの疑いがもたれています。

北海道千歳市の複合商業施設で下半身を露出したとして、市内の60歳のアルバイト従業員の男が公然わいせつの疑いで8月15日逮捕されました。警察によりますと、8月14日午後0時20分ごろJR千歳駅前の複合商業施設「千歳ステーションプラザ」で、待ち合わせをしていた女子高校生2人が、ズボンのチャックから下半身を露出している男を目撃。近くの交番に駆け込みました。

札幌市北区の自宅で、小学校高学年の10代の娘を自宅の階段から落としてケガを負わせたとして、父親で30歳の自営業の男が傷害の現行犯で逮捕されました。男は8月15日午後3時50分ごろ、札幌市北区の自宅で、小学校高学年の娘の足を引っ張って階段から落とし、右足に擦り傷を負うケガをさせました。

8月15日同居する30代の女性の首を絞めたなどとして44歳の男が現行犯逮捕されました。逮捕されたのは北海道美唄市に住む自称・会社員の男(44)で、警察によりますと男は14日午後10時すぎ、自宅で同居する30代の交際相手の女性をソファに押し倒し、髪をひっぱり首を絞めるなどの暴行をしました。

特別養護老人ホームで、高温状態のお湯に入浴させ、やけどを負わせて死亡させたとして男性職員が書類送検されていたことが8月15日わかりました。業務上過失致死の疑いで書類送検されたのは、札幌市豊平区の特別養護老人ホーム「羊ヶ丘陽光苑」に勤務する40代の男性職員です。男性職員は3月下旬、入居者の88歳の女性を入浴させる際、お湯の温度管理を怠り、全身やけどを負わせて死亡させた疑いがもたれています。

北海道苫小牧市で8月16日、119番通報で駆けつけた救急隊にビンタするなどしたとして、33歳の女が逮捕されました。公務執行妨害の現行犯で逮捕されたのは苫小牧市に住む無職の女(33)です。

北海道札幌市白石区のアパートに忍び込み、腕時計7本とクレジットカードや靴など合計10点(時価合計33万4300円相当)を盗んだとして、札幌市白石区に住む44歳の無職の男が窃盗の疑いで8月16日逮捕されました。

会社の事務所に侵入し軽乗用車などを盗んだとして8月16日、59歳の男が逮捕されました。建造物侵入と窃盗の疑いで逮捕されたのは住所不定・無職の男です。男は8月3日午後5時20分ごろから5日午前7時10分ごろまでの間、北海道厚真町にある会社事務所に侵入し、軽乗用車など3点(時価合計約121万5255円相当)を盗んだ疑いがもたれています。

10歳未満の女の子を殴ったとして8月16日、28歳の母親と交際相手の29歳の男が暴行の疑いで逮捕されました。逮捕されたのは、北海道小樽市に住む会社員の女と、苫小牧市に住む自称・整備士の男です。2人は8月15日、苫小牧市の男の自宅で、10歳未満の女の子を殴った疑いがもたれています。

他人の敷地内に侵入し、10代女性の下着姿を盗撮したとして、函館新聞の記者の男(40)が性的姿態等撮影の疑いで逮捕されました。小林容疑者は8月16日、函館市の住宅敷地内に侵入し、居間に下着姿でいた女性の姿を持っていたスマートフォンで動画撮影した性的姿態等撮影の疑いがもたれています。

時期は異なりますが、こんな事件が関連事項として掲載されていました。
ビルのトイレに少女を連れ込み、わいせつな行為をした疑いで、8月4日19歳の男が逮捕されました。男は7月31日午後9時ころ、札幌市中央区内の飲食店ビルで、10代の少女を男子トイレに連れ込み、わいせつな行為をした疑いが持たれています。

人気アニメのフィギュア2点を盗んだとして、北海道函館市に住む52歳の女が8月17日逮捕されました。窃盗の現行犯で逮捕されたのは、函館市に住む無職の女(52)です。


人口で補正したとしても、変質者の事件が多くないですか?私の住んでいる都府県では、こんなことは1週間に1件ぐらいです。これでは北海道警の留置所が足りなくなってしまいませんか?

2021年、北海道旭川市で集団でいじめを受けた中学2年生が凍死した事件

2022年5月、市内の駐車場に止めた車の中で、帯広市の高校の教諭だった男が交際相手で不倫関係にあった女性の首を絞めて殺害した事件

2023年7月、北海道の歓楽街・ススキノのラブホテルで頭部を切断された男性の遺体が発見された事件

2023年、クレジットカードを無断使用していたことが交際相手の女性に発覚し、絶縁されことに怒りを覚え包丁でめった刺しにして殺害した事件

2024年4月、北海道・旭川市で17歳の女子高校生が橋から落とされて殺害された事件

なども、同時に思い出してしまいました。

私は今、橘玲氏の「運は遺伝する」を読んでいます。大変興味深い本でお勧めです。

75ページにこんなことが書かれています。
「就活中の女子大生が、羽田空港のトイレで産み落とした赤ちゃんを殺して埋めた事件では、裁判で被告が境界知能であることが示されました。世の中には発達障害とは認定されないものの、社会生活に困難が生じている境界知能の人たちが一定数いて、「障害者」として支援を受けられないまま放置されています。」

回転寿司店で醬油さしを舐めてSNSに投稿したペロリストも境界知能ではないかと書かれています。

「境界知能」も社会的に大きな問題だと思います。


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認知症治療薬メマリーへの疑念

2024年07月14日 | 神経
上の図は、2024年7月6日号の東洋経済、
不安につけ込む医療情報の罠の56ページからの引用です。皆さんも購入して読んでみて下さい。


前回、「認知症治療薬メマリーの問題点」で、認知症治療薬メマリーは、6ヶ月間でSevere Impairment Battery(SIB)とよばれる評価方法の日常生活の全ての認知能力の中で、青色を青色と言えなくなるのを予防し、赤色を赤色と言えなくなるのを予防すれば、4点低下しなかったということになるのが、日常生活で本当に有用な薬といえるのか?ということをお伝えしました。

Efficacy and safety of memantine in patients with moderate-to-severe Alzheimer's disease: results of a pooled analysis of two randomized, double-blind, placebo-controlled trials in Japan
Expert Opin Pharmacother 2014 May;15(7):913-25.


無料でダウンロードできますので、皆さんもダウンロードしてみて下さい。

この論文の著者が、上記の図にある6行目の人です。メマリーの発売元、第一三共株式会社から3005万円を受け取っています。

企業側にも責任があると思います。特定の人物に特定の薬の、主に講演料として3005万円支払って、これは宣伝や利益誘導とは関係ないといっても、それは「武士道」でいう「卑怯」というものです。

私の愛読書、「武士道」の39ページ、第三章「義」に、
「武士にとりて卑劣なる行動、曲がりたる振舞いほど忌むべきものはない」と書かれています。

以前は「ワセダクロニクル」と呼ばれ、今は「Tansa」と名称を変更した探査報道機関に、実はこんな報道がありました。

香川大教授、認知症薬の製薬6社から年間1900万円超の副収入(7)

第一三共の認知症薬を「ごまかし」評価、香川大教授が論文で(8)

これでは、6ヶ月間で4点低下しなかったというのが、本当に有用といえるのか?という疑念をもたれてしまいますね。

循環器分野での臨床研究で、エンドポイントを「入院」とするのは担当者の判断でどうにでもなってしまうので、勧められていないのですが、赤色を「赤色」と言える時の1点って、評価担当者の判断でどうにでもできてしまうし、その「言語」分野の評価のみで、差があるというのも、私は怪しく感じてしまいます。

私は、これらの理由でこの薬を患者に処方していません。

私は「Tansa」を応援しています。


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認知症治療薬 メマリー の問題点

2024年07月03日 | 神経
私の愛読書「聖書」の「詩編」の第一章にはこのように書かれています。
これはなんとカトリックとプロテスタントの「共同訳」で、31年ぶりにゼロから翻訳された最新版です。

聖書 聖書協会共同訳 旧約聖書続編付き 引照・注付き 中型 SIO43DC
ここの820ページです

幸いな者
悪しき者のはかりごとに歩まず
罪人の道に立たず
嘲る者の座に着かない人

悪しき者は違う
風が吹き払うもみ殻のよう
悪しき者は裁きに
罪人は正しき者の集いに耐えられない


前回、認知症に対するメマリーと呼ばれる薬を評価した臨床研究で使用されたSIB-Jと呼ばれる指標で、メマリーを内服すると6ヶ月間で4点低下しなかったというのが、本当に有用といえるのかということをお伝えしました。

Efficacy and safety of memantine in patients with moderate-to-severe Alzheimer's disease: results of a pooled analysis of two randomized, double-blind, placebo-controlled trials in Japan
Expert Opin Pharmacother 2014 May;15(7):913-25.


無料でダウンロードできますので、皆さんもダウンロードしてみて下さい。

上の図がこの論文の図です。

これを見ると、前回お伝えしたSIB-Jと呼ばれる指標で主に差があるのは「言語」の2点だけです。赤色を「赤色」と言えたら2点らしいですが、それでは1点ってどういう状態?と思いませんか。
その他の能力は、多くても0.5点しか差がついていません。

循環器分野での臨床研究で、エンドポイントを「入院」とするのは担当者の判断でどうにでもなってしまうので、勧められていないのですが、赤色を「赤色」と言える時の1点って、評価担当者の判断でどうにでもできてしまうし、その「言語」分野の評価でのみ、ある程度の差があるというのも、私は怪しく感じてしまいます。

以前は「ワセダクロニクル」と呼ばれ、今は「Tansa」と名称を変更した探査報道機関に、実はこんな報道がありました。

香川大教授、認知症薬の製薬6社から年間1900万円超の副収入(7)

第一三共の認知症薬を「ごまかし」評価、香川大教授が論文で(8)

これでは、6ヶ月間で4点低下しなかったというのが、本当に有用といえるのか?という疑念をもたれてしまいますね。

私は、これらの理由でこの薬を患者に処方していません。

この薬も大丈夫かなぁと思います。
lecanemab、FDAがアルツハイマー病治療薬として迅速承認/エーザイ・バイオジェン|医師向け医療ニュースはケアネット (carenet.com)


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認知症の臨床研究の評価方法

2024年07月01日 | 神経
皆さんもよくご存じのパスカルの「パンセ」の250ページ、断章347にこんな一節があります。

「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。これをおしつぶすのに宇宙全体が武装する必要はない。一つの蒸気、一つの水滴もこれを殺すのに十分である。しかし宇宙がこれをおしつぶすとしても、そのとき人間は、人間を殺すこのものよりも、崇高であろう。なぜなら人間は、自分の死ぬことを、それから宇宙の自分よりずっとたちまさっていることを知っているからである。宇宙はなにも知らない。だから我々のあらゆる尊厳は考えるということにある。我々が立ち上がらなければならないのはそこからであって、われわれの満たすことのできない空間や時間からではない。だからよく考えることを努めよう。ここに道徳の原理がある。」

上の図はメマリーと呼ばれる認知症に対する薬を評価した臨床研究で使用されたSIB-Jと呼ばれる指標です。メマリーを内服すると6ヶ月間で4点低下しなかったというものです。

この評価指標で4点低下しなかったって、本当に有用でしょうか?。


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魚の油 EPAの製剤、宣伝されている割には効果がない

2024年06月23日 | 生活習慣病
今からちょうど10年前、魚の油 EPAの製剤エパデールに関して以下の記事を書きました。

エパデールの効果 JELIS study、やはり、「狭心症による入院」というエンドポイントはダメでしょう

エパデールの効果、二次予防に対するJELISサブ解析

これらに関して、興味深い論文が先月発表されました。

Regular use of fish oil supplements and course of cardiovascular diseases: prospective cohort study
BMJ Med . 2024 May 21;3(1):e000451.


【方法】
対象は、英国で2006〜10年に実施された英国バイオバンクの参加者41万5,737人(平均年齢55.9歳、男性45%)です。

タッチパネル方式で魚の油 EPAの製剤を内服しているかどうかを含め、各項目がアンケートにて(平均12年間)調査されました。

健康な状態から心房細動(推移A)、
健康な状態から心血管疾患(推移B)、
健康な状態から死亡(推移C)、
心房細動の患者が心血管疾患(推移D)、
心房細動の患者が死亡(推移E)、
心血管疾患の患者が死亡(推移F)の6つの推移が調査されました。

全てのモデルで年齢、性、民族、油分の多い魚の摂取、油分の少ない魚の摂取、喫煙、飲酒、肥満、高血圧、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎不全、スタチン・糖尿病治療薬・降圧薬の使用が多変量解析で補正されました。

【結果】
健康な状態から心房細動(推移A)、1.13倍、悪化した
健康な状態から心血管疾患(推移B)、1.00倍、効果なし
健康な状態から死亡(推移C)、0.98倍、効果なし
心房細動の患者が心血管疾患(推移D)、0.92倍、改善した
心房細動の患者が死亡(推移E)、0.91倍、効果なし
心血管疾患の患者が死亡(推移F)、0.99倍、効果なし

健康な状態の人が魚の油 EPAの製剤を内服しても、心房細動が増えるという悪化作用だけでした。
心房細動の患者が内服すると、心血管疾患を8%減らせました。

41万5,737人を解析して様々な因子で補正され、前向きに調査されているので、結果にはかなりの重みと信頼性があります。

魚の油 EPAの製剤、いろいろと宣伝されている割には効果がないです。
少なくとも、健康な状態の人が内服してもお金の無駄ですね。



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新型コロナ治療薬 ラゲブリオはもはや効果がない

2024年06月02日 | 感染症

現在新型コロナウイルス感染症の内服治療薬としてラゲブリオという薬があります。
しかしこの薬は高価で、1カプセル2,357円、1回4カプセル、1日2回、5日間内服しないといけないので、薬剤費は合計94,280円かかります。

ラゲブリオが効果があると根拠になったのは以下の論文です。
調査の対象となった条件に注意して読んでみて下さい。

Molnupiravir for Oral Treatment of Covid-19 in Nonhospitalized Patients
N Engl J Med 2022;386(6):509-520.


【方法】
試験期間の2021年5月~11月当時は、デルタ株を中心に高病原性の変異株が流行中で入院例や死亡例が多く、また新型コロナウイルスワクチンの接種も開始されたばかりであったことから、対象はワクチン未接種で重症化リスク(高齢・肥満・担癌など)を少なくとも1つ以上持つ新型コロナウイルス感染患者とされました。
1,433人がラゲブリオ内服群と非内服群に無作為に割り当てられ、内服後29日後までの入院or死亡が調査されました。

【結果】
その結果、これら重症化リスクが高い患者ではプラセボ群(9.7%)に比べモルヌピラビル内服群(6.8%)は入院や死亡が有意に減少しました。

しかし最近は新型コロナウイルスも当時より弱毒化しワクチン接種も施行され、市民の背景も変わってきました。そこで条件を最近の状態で調査した論文が発表されました。

Molnupiravir plus usual care versus usual care alone as early treatment for adults with COVID-19 at increased risk of adverse outcomes (PANORAMIC): an open-label, platform-adaptive randomised controlled trial
Lancet 2023;401(10373):281-293.


【方法】
オミクロン株流行初期の2021年12月~22年4月に新型コロナワクチンの接種が進んでいた英国を中心に行われた試験で、登録者の94%に3回以上の接種歴がありました。
対象は50歳以上、または18歳以上で新型コロナ感染関連の危険因子あるいは併存疾患があり、市中で発症後5日以内の入院していない患者とされました。

主要評価項目は、登録時点から28日以内の入院 or 死亡とされました。26,411例が標準治療+ラゲブリオ併用群と標準治療単独群に1:1でランダムに割り付けられ、このうち併用群12,529例と標準治療群12,525例の間で主解析が行われました

【結果】
その結果、入院 or 死亡の頻度は、併用群が1%(105例)、標準治療群も1%(98例)で有意差はなく重篤な有害事象はそれぞれ0.4%、0.3%で、ラゲブリオを併用する・しないにかかわらず効果は変わらないことが示されました。


今や、効き目がなく値段も高いラゲブリオは、かなり使用対象者を絞り込まなければ使えませんね。



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精神・人格異常(その31)「川勝平太」の場合

2024年04月08日 | 神経
皆さんご存じのように、2024年4月1日の訓示で、川勝平太静岡県知事は「県庁というのは、別の言葉で言うとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいは物を作ったりとかということと違ってですね、基本的に皆様方は頭脳、知性の高い方々です。それを磨く必要がある」と発言し、県には「農業や畜産に携わる人々の知性が低いというのか」といった抗議が殺到したのを受けて、川勝知事は「問題となっていることに驚いている。職種が違うことを述べたまでだ」と反論しました。

そして、「傷つけたことについては、私の心も傷ついていますので、申し訳ないと思っています」 と釈明しました。

私は、川勝平太は自閉スペクトラム症の中で、昔で言うところの(*)アスペルガー症候群ではないかと思います。「傷つけたことについては、私の心も傷ついていますので、申し訳ないと思っています」という発言に関しても、どこがおかしいのかわからないのだと思います。


(*)(米国精神医学会(APA)は2012年「精神障害の診断と統計の手引き第5版(DSM-5)」の診断基準においては、従来のDSM-IVで「広汎性発達障害(PDD)」と診断されていたほとんどを、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」として診断するようになるとした。従来PDDは、自閉症、アスペルガー症候群、特定不能のPDD(PDD-NOS)を含んでいたが、DSM-5の診断基準では、アスペルガー症候群やPDD-NOSという疾患領域をなくして、ASDという大きい概念で置き換える方向となった。)

アスペルガー症候群を報告したアスペルガー博士はナチスの協力者ということで、最近この名称が避けられたそうです。でも私は、自閉スペクトラム症というとても広い症状を説明する際の、特徴的な症状を限定する有効な名称だと思っています。

以前、私はこんな記事を書きました。

あの厚労官僚たちは一般の人々がどう思うか本当に分からなかったのだろう思う

以前お示ししたように、アスペルガー症候群の症例はこんな感じです。

(大人の例)
部下:「あの~、少しお聞きしたいことがあるのですが、今お時間ありませんでしょうか?」
上司:「ごめん、いま手が離せないんだ。あと10分後にこちらからかけ直すよ」
部下:「わかりました」
10分後
上司:「ごめん、先ほどは手が離せなくて」
部下:「いいえ、気にしなくていいですよ」

この「いいえ、気にしなくていいですよ」という発言は、川勝平太の「傷つけたことについては、私の心も傷ついていますので、申し訳ないと思っています」の「私の心も傷ついていますので」の箇所ととても類似しています。

アスペルガー症候群の診断には「サリーとアン課題」が有名です。

サリーとアン課題

簡単に例えてみると、小児に次の4コマ漫画を見せて質問するとします。
1「夏の暑い日、太郎君が帰宅し、チョコレートを台所の引き出しにしまい去っていきました」
2「母親が夕食の準備をしようと台所にきました」
3「母親は引き出しのなかのチョコレートを見つけ、引き出しの中では溶けてしまうと思い冷蔵庫に移しました」
4「それから太郎君はチョコレートを食べようと台所にもどってきました」


アスペルガー症候群の小児に「太郎君はどこを探すでしょうか?」と質問すると、「冷蔵庫!」と答えます。太郎君の立場を推測することができないのです、

著名人たちは、「本音なのかリップサービスなのか分からないですけど、ものすごく腹立たしい発言ですよね。どれだけ自分のことがすごい人なんだろうって勘違いしているのかなって」と川勝知事を批判しましたが、「自分のことがすごい人なんだろうって勘違い」という批判は的外れです。

川勝知事は「県庁というのは、別の言葉で言うとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいは物を作ったりとかということと違ってですね、基本的に皆様方は頭脳、知性の高い方々です。それを磨く必要がある」という発言のいったいどこが悪いのか、本当に理解できていないのだと思います。

きっと川勝平太は、自宅に戻ってからアスペルガー症候群でない家族から、「お父さん、あれはまずいよ」とさんざん批判と説明を受けて諭されているのでしょう。こういう人は本来、人の上に立つ役職になるべきではなく、私たちもそう選ぶべきではなかったのです。

私はアスペルガー症候群を批判しているわけではありません。
私たちは、ブドウ糖75gという一定量のブドウ糖ジュースを飲んだ際に、ある一定以上の血糖値になってしまう人を「耐糖能異常」と診断して、本人やその周りの人に今後不利益が生じないように留意します。精神や人格の異常も同じで、皆が早くそういう人たちを診断してあげて、何らかの対策をとらないと、周りにも本人にも不利益が広がるばかりなのです。

そしてもう一つ私が感じることは、川勝平太というのは「スパイト行動」人間だということです。
皆さんの職場にもいませんか?こういう人間。

スパイト行動(論文)

スパイト行動

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心房細動のカテーテル治療成功後に血液さらさら療法が必要な患者とは

2024年01月07日 | 循環器
心房細動という脈の乱れに対するカテーテル治療の成功後に血液さらさら療法を継続することの有効性や安全性はこれまで明らかになっていませんでした。

最近、この未解決問題に客観的な結論が出されました。
この研究は日本で施行された大変素晴らしい研究です。

Oral anticoagulation after atrial fibrillation catheter ablation: benefits and risks.
Eur Heart J. 2024;45:522.


【方法】
2014年~2021年に心房細動に対するカテーテル治療が行われた患者のデータをレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)から抽出し、後ろ向きに解析されまた。

カテーテル治療後、心房細動の再発がない患者23万1,374例を対象として、カテーテル治療後6ヵ月時点の抗凝固薬の継続の有無で2群に分類されました。

さらにCHADS2スコアで3群(1点以下、2点、3点以上)に分類し、抗凝固薬の継続の有無と血栓塞栓症、大出血の発生の関連が検討されました。

【結果】
CHADS2スコア別に血栓塞栓症リスクを検討した結果、CHADS2スコア3点以上の患者では抗凝固薬の継続により有意に血栓塞栓症リスクが低下しましたが、CHADS2スコア1点以下、2点の患者では低下しませんでした。

CHADS2スコア別に大出血リスクを検討した結果、CHADS2スコア1点以下、2点の患者では抗凝固薬の継続により有意に大出血リスクが上昇しましたが、CHADS2スコア3点以上の患者では上昇しませんでした。

【結論】
つまり、CHADS2スコア2点以下の患者では、カテーテル治療成功後に血液さらさら療法を継続するのはよくないことが判明しました。


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