血糖は膵臓から分泌されるインスリンで調節されていますが、インスリンの分泌量が不足したり働きが悪くなることで血糖が上がってしまう病気が糖尿病です。糖尿病の薬の中に、インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾン(商品名アクトス)という薬があります。この薬はインスリンの分泌を促す薬と異なり、インスリンに対する体の感受性を高め糖尿病を改善させます。
この薬がどれだけ効くかという論文(PROactive試験)が昨年発表されています。
Secondary prevention of macrovascular events in patients with type 2 diabetes in the PROactive Study (PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events): a randomised controlled trial.
Lancet. 2005;366:1279.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
2型糖尿病(簡単にいえば先天的な理由などでインスリンの量が足りないのが1型、食べ過ぎで、食べた量に相当するインスリンを分泌できないのが2型です。従って、体重増加、過食により発生するのは2型です)の患者さん5,238人を対象として、アクトス(15mg~45mg:これは日本で推奨されている量と同じです))投与群2,605人と非投与群2,633人に無作為に分け3年間調査しました。
調査項目は、すべての理由による死亡、非致死性の心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、心臓の血管に対する手術、足の血管に対する手術、くるぶしより上での足の切断です。
結果を示します。
投与群 非投与群
すべての理由による死亡 110人(4.2%)、 122人(4.7%)
非致死性の心筋梗塞 85人(3.2%)、 95人(3.7%)
脳卒中 76人(2.9%)、 96人(3.7%)
不安定狭心症 42人(1.6%)、 63人(2.4%)
心臓の血管に対する手術 101人(3.9%)、 101人(3.9%)
足の血管に対する手術 71人(2.7%)、 57人(2.2%)
くるぶしより上での足の切断 9人(0.3%)、 15人(0.5%)
合計 514人(19.8%)、 572人(22.0%)
合計で22.0% - 19.8% = 2.2%の人がこれらの事態に陥ることを免れたということですが、これは統計学的に有意な差ではありませんでした(P=0.095)。差がなかったので、二次的評価項目というもので、すべての理由による死亡と非致死性の心筋梗塞と脳卒中をまとめて、301人対358人と差があった(P=0.027)と無理な結論を出しています。
それでは例のごとく、医療経済学的な効果をみてみましょう。調査ではアクトスが15mg~45mg投与されていますので、中間をとって30mgとします。アクトス30mgは202円ですから、3年間で22万円、1,000人あたり22人がこれらの事態に陥ることを免れるわけですから、これらの事態1件を予防するのにかかる金額は1,005万円です。
論文の結論とは裏腹に、これらの事象に限ってみればアクトスはほとんど効いていません。ただし、インスリン注射の開始が必要になった人の割合は投与群で11%、非投与群で21%と、アクトスはインスリン注射導入の回避には有効でした(P<0.0001)。
最近多くの方にお立ち寄り頂いております。誠にありがとうございます。ところで、ブログランキング投票をお忘れでないでしょうか。なるべく多くの方にこのブログを見ていただくためにも、ご協力宜しくお願い致します。
今は何位かな?
この薬がどれだけ効くかという論文(PROactive試験)が昨年発表されています。
Secondary prevention of macrovascular events in patients with type 2 diabetes in the PROactive Study (PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events): a randomised controlled trial.
Lancet. 2005;366:1279.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
2型糖尿病(簡単にいえば先天的な理由などでインスリンの量が足りないのが1型、食べ過ぎで、食べた量に相当するインスリンを分泌できないのが2型です。従って、体重増加、過食により発生するのは2型です)の患者さん5,238人を対象として、アクトス(15mg~45mg:これは日本で推奨されている量と同じです))投与群2,605人と非投与群2,633人に無作為に分け3年間調査しました。
調査項目は、すべての理由による死亡、非致死性の心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、心臓の血管に対する手術、足の血管に対する手術、くるぶしより上での足の切断です。
結果を示します。
投与群 非投与群
すべての理由による死亡 110人(4.2%)、 122人(4.7%)
非致死性の心筋梗塞 85人(3.2%)、 95人(3.7%)
脳卒中 76人(2.9%)、 96人(3.7%)
不安定狭心症 42人(1.6%)、 63人(2.4%)
心臓の血管に対する手術 101人(3.9%)、 101人(3.9%)
足の血管に対する手術 71人(2.7%)、 57人(2.2%)
くるぶしより上での足の切断 9人(0.3%)、 15人(0.5%)
合計 514人(19.8%)、 572人(22.0%)
合計で22.0% - 19.8% = 2.2%の人がこれらの事態に陥ることを免れたということですが、これは統計学的に有意な差ではありませんでした(P=0.095)。差がなかったので、二次的評価項目というもので、すべての理由による死亡と非致死性の心筋梗塞と脳卒中をまとめて、301人対358人と差があった(P=0.027)と無理な結論を出しています。
それでは例のごとく、医療経済学的な効果をみてみましょう。調査ではアクトスが15mg~45mg投与されていますので、中間をとって30mgとします。アクトス30mgは202円ですから、3年間で22万円、1,000人あたり22人がこれらの事態に陥ることを免れるわけですから、これらの事態1件を予防するのにかかる金額は1,005万円です。
論文の結論とは裏腹に、これらの事象に限ってみればアクトスはほとんど効いていません。ただし、インスリン注射の開始が必要になった人の割合は投与群で11%、非投与群で21%と、アクトスはインスリン注射導入の回避には有効でした(P<0.0001)。
最近多くの方にお立ち寄り頂いております。誠にありがとうございます。ところで、ブログランキング投票をお忘れでないでしょうか。なるべく多くの方にこのブログを見ていただくためにも、ご協力宜しくお願い致します。
今は何位かな?