医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

東大三羽カラスによる困った扇動

2024年10月31日 | 生活習慣病
査読員から修正を求められていた2編の論文のリバイスに四苦八苦しておりましたので更新が遅れていましたが、無事に2編ともアクセプトされました。求められる修正に1つ1つ対応するのは大変でしたが、その度に論文の内容が良くなっていったので、本当にありがたいことです。


さて、それで少し前の話ですが、プレジデント 2023/10/13号では「健康診断のウラ側」ということを特集していました。

ここで東大医学部卒の医師3人が誤ったことをたくさん扇動していましたので、今後一つ一つ根拠を示しながら反論したいと思います。

まずは、養老孟司という解剖学者ですが、東京教育大学卒の池田清彦という生物学者との対談でそそのかされたということもありますが、

「僕は医者にかかって薬を毎日飲んでいます。たぶん意味がないけど、飲まないと医者の機嫌が悪くなるから仕方がない。医者に気を使っているわけじゃないですよ。池田君が指摘したように、システムの問題で、薬を出さないと医者は食べていけません。僕がずっと病院に行きたくないと言っていたのは、一度医者にかかるとそのシステムに否応なく巻き込まれるからでした。」(14ページ)
と言っています。

彼は以前、「血圧が160 mmHg以上あるけれど薬を飲まなくてもこのようにピンピンしているから、本当は血圧なんて160 mmHgでもいい」というようなことを言っていました。

上の図は下に示した論文から引用した、血圧が上がるにつれて死亡率が上がるので、(110 mmHg以下になるとふらついて転倒したり腎臓への血流が低下したりする場合があるのでその限りではありませんが)110 mmHgまでは低い方がいいという根拠です。

私は日頃の診療でこの図を患者に見せて、説明しています。もちろんこれは観察研究ですので、薬を飲んで血圧を下げた場合に死亡リスクが下がるかを示したものではありませんが、この研究には薬を飲んでいる患者も飲んでいない人も含まれていますので、薬の内服の有無にかかわらず、その時の血圧で判断できるとも解釈できます。

皆さんも以下の論文を参考にしてみて下さい。

Age-specific relevance of usual blood pressure to vascular mortality: a meta-analysis of individual data for one million adults in 61 prospective studies
Lancet 2002;360:1903-13.


During 12·7 million person-years at risk, there were about 56 000 vascular deaths (12 000 stroke, 34000 ischaemic heart disease [IHD], 10000 other vascular) and 66 000 other deaths at ages 40–89 years.
Blood pressure and cardiovascular disease in the Asia Pacific region
Journal of Hypertension 2003;21:707


彼は以前から抗がん剤治療に対しても否定的で、「ガンになっても受けない」と公言していましたが、このほど小細胞肺ガンステージIIであることが判明し、抗がん剤治療+放射線治療を受けていると、以下の本に書かれています。きっと東大の良心である中川恵一先生にエビデンスを丁寧に説明してもらったのだと思います。

「養老先生、ガンになる」

プレジデント 2023/10/13号にはその他にも東大卒の和田秀樹という精神科医が「コレステロール数値のコントロールは早死にを招く」(24ページ)などと言っているし、同じく東大卒の大脇幸志郎という医者は「大腸ガン検診を受けても99%以上の人には意味なし」(32ページ)とか、「子宮頚ガンワクチンで子宮頚ガンを減らせるのか、この議論もまだ決着がついていません」(33ページ)などと言っています。

東大三羽カラス、カラスは鳥類の中でとても知能が高いらしいですが、彼らこそが「現代人がいかに考えないままに、己の周囲に壁を作っているか」と書かれてあった「バカの壁」なのではないでしょうか。


私はこれまで千人以上の患者を十年以上続けて診てきましたが、東大三羽カラスの皆さんは千人以上の患者を十年間以上続けて診たことがないのだと思います。

東大三羽カラスに一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズは今後も続けます。

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