医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

意外に多い、治療費の未払い

2006年05月30日 | 総合
病院などの医療機関で治療を受けても治療代を払わない。常識的には考えにくいが、そんな患者が増えている。未払いの治療代は病院の経営を揺るがしかねない規模になっているという。今のところ有効な解決策は見当たらず、病院側は焦りを強めつつある。

一般の患者は公的医療保険で治療を受けると、費用の七割は保険から支払われるが、三割は患者が払う。未支払いとなるのはこの患者負担分のほか、出産、差額ベッドなど保険が利かない部分の費用など。

全日本病院協会など四つの病院団体で作る四病院団体協議会はこのほど、未支払い金についての初の調査結果をまとめた。全国約三千三百病院からの回答を集計すると、全体の九割以上の病院で未支払いが発生しており、2004年度一年間の金額は一病院あたり平均716万円だった。2002年度から2004年度の三年間の累計では一病院あたり1,620万円に達する。病院の収入となる診療報酬は政府の医療費抑制政策で抑えられており、ぎりぎりの経営をしている病院が多い。そんな状況の中での未支払い金は想像以上の負担になっている。今後の展望が開けずに閉鎖や身売りする病院も出ている。未支払いが増える直接の原因は患者の経済状態の悪化だ。病院関係者によると、生活保護とまではいかないが、治療代を払うと生活が苦しいというレベルの人が目立つ。患者の意識が変化していることも原因とされる。「治療に納得できなければ代金を支払う必要がない」と考える患者もいる。

一方、病院は患者を選べない。医師法で「治療の求めがあったときは、正当な理由がなければ、拒むことはできない」と定められているためだ。治療費の不払いは「(医療を拒む)正当な理由」には当たらないと解釈される。医療界からは「治療を義務づけておいて、不払いが出たときは知らん顔というのはひどい」と怒りの声があがっている。

多くの医療機関はこれまで費用の内容を患者に丁寧に説明することはなかった。治療費をめぐるトラブルの責任を患者ばかり押しつけるのも問題だ。ただそうはいっても、病院が次々経営難で診療ができない状態になれば患者が困る。行政も交えて本格的な対策の検討が必要になっている。(以上、日本経済新聞より引用)



「多くの医療機関はこれまで費用の内容を患者に丁寧に説明することはなかった」、「治療を義務づけておいて、不払いが出たときは知らん顔というのはひどい」など、この問題は今の病院・患者の現状を如実に表しています。

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病院・診療所の診察料(画像検査料)

2006年05月28日 | 総合
前回まで、医療機関で必要になる診察料についてお伝えしました。今回はレントゲン検査などの画像検査料に関してです。

風邪をこじらせた時は胸部のレントゲン写真を撮り肺炎がないか確認することもありますし、頭痛がひどい場合は脳腫瘍ができていないか頭部CTを撮ることもあります。この時、私たちはただ医者に言われるままの検査(医療サービス)を受けることになるのですが、そのサービスの値段がいくらなのか、全く知らされません。実際、医者でさえ正確に知らないことが多いのです。それって、おかしいと思いませんか?

まず、最も身近なレントゲン検査についてお話します。
単純レントゲン写真ですが、病院では、単純X線、あるいはX-pと言われたり書かれたりします。X-pのpはplainの頭文字で「プレーン」つまり「ありのまま」という意味で、造影剤を使う造影レントゲン写真と区別されます。単純レントゲン写真は、骨折が疑われた場合はその患部で、腹痛の場合は腹部でと様々な用途があります。

それに、例えば七五三の記念写真などの場合は、他人が見る場合はともかく、その家族が見る場合は「この子は太郎君と考えていいだろう」などという写真の解釈など必要がないですね。でも病院で行う画像検査では、「この影は肺炎と考えていい」とか「腸閉塞をおこしている」とか、写真を解釈(診断)する必要があります。そのままではただのフィルムなのです。そこで撮影料と同時に診断料がかかることになります。

最近は病院のレントゲン写真もデジタル化されてきており、デジカメで撮った写真のように、クッキリ鮮やかに見えます。デジタル画像処理されている場合は600円が加算されます。高いお金を出してデジタル画像処理できる装置を買ったのだからと、その原価償却のためです。

単純レントゲン写真(1枚の場合):撮影料650円+画像診断料850円+デジタル画像処理600円=2,100円
単純レントゲン写真(2枚の場合):撮影料650円X1.5+画像診断料850円X1.5+デジタル画像処理600円=2,850円


同じ場所を方向を変えて撮る場合は2枚目からは半額で、6枚目以上は料金を加算できなくなっています。そりゃそうでしょうね。患者さん(消費者)にその枚数を選ぶ権限がないのですから、レントゲンを撮ったら撮っただけ料金が取れたら、不必要な撮影が増えてしまいます。ただし、上限が6枚なのか、5枚に引き下げられるのか、こういったところで医療関係者と厚生労働省の攻防が繰り広げられることになるのです。

次に、バリウムを飲んで胃の検査をする場合ですが、これは透視といってX線を一定時間連続して使うことになりますから、値段は少し高くなります。

透視レントゲン写真:撮影料1,100円、画像診断料1,100円、デジタル画像処理600円

もちろん、バリウムを飲んで胃の検査をする場合、これらの料金以外にバリウムの料金や終わった後の下剤の料金がかかるのは言うまでもありません。


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医療費の行方

2006年05月24日 | 薬・総合
前回、病院・診療所の診察料についてお伝えしました。情報がそろってきたところで、少し具体的に考えてみましょう。

高血圧症と糖尿病でタナトリルというACE阻害薬を朝1錠、アマリールという糖尿病の薬を朝昼1錠ずつ1月分処方されている場合を考えてみましょう。タナトリル(5mg)が82円、アマリール(1mg)が23円ですから、1月の「薬剤費」は2,296円+1,288円=3,584円です。

前回お伝えしたように、病院に支払う診察料は月1回の再診を受け2種類の薬を28日処方してもらう場合は570円(再診料)+420円(処方料)+650円(加算料)=1,640円です。

次に処方してもらった処方箋を持って薬局に向かいます。
大きな病院の近くの薬局に行けば「調剤基本料」は210円です。2種類の薬を28日分調剤してもらうわけですから、「調剤料」は800円x2=1,600円です。さらに薬剤服用歴管理・指導料 170円、特別指導加算 280円、薬剤情報提供料 170円を加算して合計2,430円です。

つまり診療所・病院に1,640円、製薬会社に3,584円、薬局に2,430円のお金が流れていることになります。

「薬剤費」は製薬会社に支払われるのですが、製薬会社もその薬の開発費や宣伝費などの経費が必要です。会社四季報を見ますと2005年の時点での大手製薬会社の利益率(経常利益を売り上げで割ったもの)の平均は約20%ですからこの場合3,584円のうち20%の717円が製薬会社の利益、80%の2,867円は薬の開発や宣伝に必要な経費です。利益率といえば、あのトヨタ自動車でさえ9%ですが、武田薬品工業はなんと39%です。

この場合、2種類も処方されているからだとか、高い薬を例にだしているからだとか、病院で検査する場合が考慮されていないなどと言わないで下さい。そういう事は承知で、あくまでも1つのモデルとして計算しています。実際にもっと高い薬はたくさんありますし、毎回検査するわけでもありません。

診療所・病院、薬局の利益率はそれぞれの経営状態によって異なるため一概には言えないのですが、一連の受診行為で支払う合計額7,654円のうち21%が病院や診療所、47%が製薬会社、32%が薬局に流れます。もちろん実際に支払うのはこの額の3割なのですが、何度も言っているように、残りの7割も私たちの税金や保険料から支払われるのですから、私たちが支払っているのと同じことです。むしろ自己負担が3割であるがために、私たちは医療費の流れを深く考えないように仕向けられているとも解釈できます。

一部のマスコミがいまだに病院は儲かっているから医療費を削減するにはまず診療報酬を下げることが必要などと言っていますが、これらの数字をみるとそれが全く的外れであることがわかります。特に、お金が診療所や病院よりも薬局に流れていることには私自身も今回初めて知りとても驚きました。

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病院・診療所の診察料(その2)

2006年05月22日 | 総合
医薬分業が進んだために私たちの医療費がどこでどれだけ使われるかが明らかになってきました。これまで薬剤料、薬局で支払う調剤料などについてお伝えしてきました。今回は病院や診療所に支払う診察料についてです。

まず初診料です。
初診料は2,700円で、6歳未満の子供の場合はこれに720円加算されます。もちろん患者さんが支払うのはこのうちの3割です。

深夜(午後10時から午前6時)や休日の初診の場合はこれに次の料金が加算されます。
平日深夜 850円
休日深夜以外 2,500円
休日深夜 4,800円

小児科分野での激務が原因で小児科医の需要と供給のバランスが崩れていることを是正しようと、小児科を標榜している病院や診療所での6歳未満の子供の場合は、上記の料金ではなく次の料金が加算されます。
平日深夜 2,000円
休日深夜以外 3,650円
休日深夜 6,950円


次は再診料です。
再診料は病院と診療所で料金が違います。病院の場合は570円で、診療所では経営に配慮されているために710円と設定されています。6歳未満の子供の場合はこれに350円加算されます。

深夜(午後10時から午前6時)や休日の再診の場合はこれに次の料金が加算されます。
平日深夜 650円
休日深夜以外 1,900円
休日深夜 4,200円

初診料の場合と同様に、小児科を標榜している病院や診療所での6歳未満の子供の場合は、次の料金が加算されます。
平日深夜 1,350円
休日深夜以外 2,600円
休日深夜 5,900円


次は処方箋を出した場合の処方料です。
処方料は調剤料とは異なり処方箋という書類の交付料です。血液検査や画像検査をした場合はこれらの料金以外に検査料がかかりますが、それらについては別の機会にお伝えします。

処方料は、7種類以上の薬を処方した場合は290円、7種類未満の場合は420円です。この設定には、多くの薬を処方した場合の病院や診療所のもうけを少なくすることで、多くの薬を処方することを抑制しようとする厚生労働省のねらいがあります。さらに診療所と200床未満の病院では、28日以上の処方に対して月1回に限り650円を加算することができます。これは長期処方を推進して再診料など医療機関に入る医療費を抑制するためです。

病院で月2回の再診を受け2種類の薬を14日処方してもらう場合は570円(再診料)+420円(処方料)+570円(再診料)+420円(処方料)=1,980円であるのに対して、月1回の再診を受け2種類の薬を28日処方してもらう場合は570円(再診料)+420円(処方料)+650円(加算料)=1,640円と医療費を抑制することができるからです。ただし、医療機関側からみれば月に2回来院させることもできるわけで、このあたりは医療機関の裁量にまかされているため、患者さんの側から1か月分処方して下さいとか、2か月分処方して下さいと意思表示しないといけないことになります。

3歳未満の子供への処方では30円が加算されます。

これらの料金体系を知れば、どのように診療所・病院にかかれば経済的(効率的)かがおわかりになるかと思います。

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ニューロタン、糖尿病における腎症に適応拡大

2006年05月20日 | 生活習慣病
ニューロタン(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)という高血圧症の薬がありますが、最近この薬の適応症に「高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症」が追加されました。つまりこの状態には効き目があるから保険を使って処方してもいいと認められたということです。

以前、糖尿病による腎不全には薬剤の選択よりも血圧を下げる事ができるかの方が重要であるとお伝えしました。そうすると今回の適応症の拡大はその結果と矛盾する事になります。しかし、これはアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害剤)とアンギオテンシンII受容体拮抗薬という薬を使った大規模臨床試験を総合して判断されたものでした。アンギオテンシンII受容体拮抗薬であるニューロタンだけの結果はどうなのかということで、今回はその論文を調べてみました。

Effect of losartan on renal and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes and nephropathy
Lancet. 2001;345;861.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

対象は2型糖尿病と診断され、腎機能の指標である血中クレアチニン値が1.3~3.0mg/dl(体重が60kg以上の場合は1.5~3.0mg/dl)で(平均1.9mg/dl)尿中クレアチニン値に対する尿中アルブミン値の比が300以上の患者さん1,513人で、従来の高血圧治療薬(ACE阻害剤とアンギオテンシンII受容体拮抗薬を除く)にニューロタン50mg/日を追加する群(751人)とプラセボを追加する群(762人)に無作為に分けられ4年間調査されました。

この研究では、従来の高血圧治療薬にニューロタンを追加するということが重要点で、有効という結果がでれば従来の高血圧治療薬が持っている有効性に追加して新たな有効性が認められることになります。

調査項目は全ての原因による死亡と血中クレアチニン値が開始時と比較して2倍になることと末期腎不全で、心筋梗塞、脳卒中、心不全、不安定狭心症による入院、冠動脈または末梢の動脈の血行再建術、心血管系が原因の死亡も同時に調べられました。

結果ですが、死亡に関しては投与群で158人(21.0%)、プラセボ群で155人(20.3%)と有効性は認められませんでしたが(p=0.88)、血中クレアチニン値が開始時と比較して2倍になることに関しては投与群で162人(21.6%)、プラセボ群で198人(26.0%)(p=0.002)、末期腎不全に関しては投与群で147人(19.6%)、プラセボ群で194人(25.5%)(p=0.006)と有効性が認められました。

心筋梗塞、脳卒中、心不全、不安定狭心症による入院、冠動脈または末梢の動脈の血行再建術、心血管系が原因の死亡に関しては、不安定狭心症による入院(11.9% vs 16.7%)以外では違いは認められませんでした。

有効性が認められた項目はそれぞれ約5%のリスク軽減ができており、これは20人に1人の患者さんがこの薬の恩恵を得られるという事に匹敵します。4年間で5%ということはニューロタンが50mgで186円ですから、1人の血中クレアチニン値が開始時と比較して2倍になることと、末期腎不全、不安定狭心症による入院を予防することに関しては543万円かかるということです。しかしコレステロールを下げる薬が1人の有害事象を予防するのに1,000万円以上かかっているのと比較すれば医療費が少なくすみます。

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小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005(長期管理)

2006年05月17日 | 小児科
「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005」の中で喘息発作時の治療についてお伝えしました。今回は小児喘息の普段の治療についてお伝えします。

ガイドラインでは、喘息の程度は軽い方から間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型に分けられています。

15歳までの全年齢で、間欠型に対する常用薬は使用せず、発作時のみ程度に合わせた治療が推奨されています。

軽症持続型では2歳未満では抗アレルギー薬が常用薬として使われることになります。抗アレルギー薬にかんしては以前アレルギー性鼻炎の薬でお伝えしました。2歳以上では抗アレルギー薬あるいはフルタイドなどの吸入ステロイド薬(小児喘息における吸入ステロイド薬の重要性)が推奨されています。

中等症持続型では全ての年齢で吸入ステロイド薬を日常的に用いることが推奨されています。そしてβ2刺激薬の貼布剤、気管支拡張薬テオフィリン、オノン・アコレート・シングレア・キプレスなどのロイコトルエン受容体拮抗薬の併用が推奨されています。

乳幼児期の喘息の経過は個人によって差があり、一過性で消失するタイプや乳児期に消失するタイプ、長期にわたり持続するタイプがあります。発症時には区別ができないため、一過性のタイプに長期投与にならないよう、3か月をめやすに投薬のステップダウンを行うことが推奨されています。ただし、以前お伝えしたように6歳児の小児喘息の状態はその後も10年間不変ですから、6歳時の状態からステップダウンするのは難しいと考えられます。

小児気管支喘息治療・管理ガイドライン (2005)

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小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005

2006年05月10日 | 小児科
このほど「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2002」が3年ぶりに改定されました。このガイドラインを見ると、喘息のお子さんをお持ちの方にとっては、発作時に病院を受診してどういう治療が施されるかがわかりますし、逆に医者にとってはどういう治療を施すべきかがわかります。今回は急性発作時の治療についてお伝えします。

ガイドラインでは、発作は小発作、中発作、大発作、呼吸不全に分けられています。

小発作(2~15歳)
気管支を拡張させる薬であるβ2刺激薬の吸入が推奨されています。
病院で使われるβ2刺激薬の吸入薬には以下のものがあります。
アロテック、アスプール、イノリン、ベネトリン、メプチン

中発作(2~15歳)
20~30分ごとに3回までのβ2刺激薬の吸入が行われます。β2刺激薬が効いたかどうかの判定時間は15~30分後として、1回目あるいは2回目の吸入で、発作の改善を認めるが、まだ残存している状態では3回目で吸入を反復することになります。しかし、3回行わなければ次の治療に進めないというわけではありません。

3回のβ2刺激薬の吸入が無効な場合は、ステロイド薬(静注か内服)とアミノフィリン(気管支を拡張させる薬)点滴静注のいずれか、あるいは両者を追加することになります。これらの追加治療によっても改善が認められない場合はさらに酸素投与などが必要となるために入院が考慮されます。


小発作(2歳未満)
気管支を拡張させる薬であるβ2刺激薬の吸入が推奨されています。

中発作(2歳未満)
20~30分ごとに3回までのβ2刺激薬の吸入が行われるのは2~15歳の場合と同じですが、2~15歳の場合と異なるのは、これらの吸入が無効である場合には、ステロイド薬(静注か内服)とアミノフィリン(気管支を拡張させる薬)点滴静注のいずれかが次に考慮される前に入院が考慮されるということです。

大発作(2歳未満)(2~15歳)
この場の治療は入院により行われることになります。酸素投与に加えてアミノフィリン(気管支を拡張させる薬)とβ2刺激薬の持続点滴静注が行われます。


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病院・診療所の診察料

2006年05月07日 | 総合
この4月から診療報酬が改定されました。これまでは初診料、再診料ともに診療所やクリニック(入院ベット数が19床以下)の方が病院(入院ベット数が20床以上)よりも高めに設定されていました。一般的に考えると診療所よりも病院の方が高度な医療が受けられると期待できるのに診療所の診察料の方が高く設定されていたのは、厚生労働省が診療所の経営に考慮していたためです。改定により初診料は診療所と病院で統一され2,700円になりました。それでも再診料はまだ診療所・クリニックの方が高く設定されています。

身近な歯科医師制度として設けられていた「かかりつけ歯科」としての初診料・再診料はそれぞれ2,740円・450円であったのが、患者の負担を増やすだけであまり意味がないと廃止され、従来の1,800円・380円に戻されました。

また、新たに保険適用となるものとして禁煙指導の指導管理料があります。禁煙の指導を受けると12週間で初回に2,300円、2回目から4回目は1,840円、5回目は1,800円かかります。この解釈は微妙です。指導で禁煙ができればいいのですが、指導で禁煙ができなくても支払った金額が戻ってくるわけではないからです。そういう契約書をかわせばいいのでしょうが、医療機関はこの場合は債務不履行(民法415条)、タバコを吸う本数が減ったけれど禁煙できなかった場合は不完全履行(民法415条)ということになってしまいます。

臓器移植の保険適用も拡大され、心臓の脳死移植の場合、約半年間の入院で400万円ほどかかっていましたが、1カ月間の患者負担上限を設けた高額医療費精度が適用されることになり1カ月53万円の負担で済むようになりました。半面、コンタクトレンズの定期検診などに保険が適用されていましたが、初診料を除き廃止となりコンタクトレンズの定期検診料は全額自己負担となりました。

また、患者が別の医療機関から治療方針などのアドバイスを受けるセカンドオピニオンの費用はこれまで医療機関でまちまちだったのですが、文書として患者に提供した場合、「診療情報提供料」として5,000円に統一されました。

重労働のために医師不足が深刻な小児科と産科については、少しでも労働に見合うようにと診療報酬が引き上げられました。深夜に乳幼児が医療機関にかかった場合、初診料以外に乳幼児加算720円、深夜加算4,800円、乳幼児加算の時間外評価分430円の合計5,950円かかっていたのですが、それが1,000円値上げされました。産科でも40歳以上の初産や妊娠22週~27週の早産などのハイリスク分娩で1万円値上げされました。

初診料 
病院  2,550円→2,700円
診療所 2,740円→2,700円

再診料
病院  580円→570円
診療所 730円→710円


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心房細動そのものを予防した方がいいのか、心房細動でもいいから血液の塊を予防した方がいいのか

2006年05月04日 | 循環器
前回お伝えしたように心房細動という不整脈は致死的な不整脈ではありませんが、心臓内で血液の塊(血栓)が生じやすくなり、その結果脳梗塞になりやすくなります。65歳以上の方の約20人に1人は心房細動であるといわれています。

これまでは心房細動も不整脈であるから、薬を使ってできるだけ予防した方がいいという意見が大半でしたが、明確な根拠は示されていませんでした。そこで、心房細動そのものを予防した方がいいのか、心房細動でもいいから血液の塊が形成されるのを予防した方がいいのかを調べるAFFIRMという研究がなされました。

A comparison of rate control and rhythm control in patients with atrial fibrillation.
New England Journal of Medicine. 2002;347:1825.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

対象は一過性の心房細動の患者さん4,060人(平均年齢70歳)で、抗不整脈薬の投与や電気的除細動を行いあくまでも心房細動を治療・予防する群と、心房細動のままでワーファリンという薬によって心臓内で血液の塊が形成されるのを予防する群にわけられ、死亡率について5年間調査されました。ワーファリンは心房細動を治療・予防する群でも使っていいことにしました。

全体の70.8%に高血圧症があり、38.2%に狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性心疾患がありました。

心房細動を治療・予防する群の5年間の死亡者数は356人(23.8%)、血液の塊が形成されるのを予防する群では310人(21.3%)で両群に違いは認められませんでした(p=0.08)。

心房細動を治療・予防する群では血液の塊が形成されるのを予防する群と比較して、入院者数が多く、抗不整脈薬による副作用(心不全)が多くなりました。また、ワーファリンの内服をやめてしまった事により脳梗塞の発症が増えました。

これまで心房細動は抗不整脈薬を使ってできるだけ予防した方がいいと考えられていたのですが、そこまで躍起にならなくても、心房細動のままで血液の塊の形成を予防する療法と予後が変わらないことがわかったのです。

ただし、この研究では心房細動を治療・予防する群では、アンカロンなどという副作用として比較的心不全が発生しやすい強い薬が使われ、そのために死亡率が高くなったとも解釈されています。日本ではアンカロンという薬は心房細動の治療にはあまり使われていないので、この研究の結果をそのまま日本にあてはめることは難しいようです。


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心房細動に対するワーファリンの効果

2006年05月01日 | 循環器
心臓の不整脈の一つに心房細動があります。心房というのは心臓の上部にある部屋のことで、通常は拍動にあわせて規則的に拍動しています。心房細動では、その名のごとく、心房が拍動するのではなく細かくブルブルと震える状態になっています。

心房細動では心臓の中の血液の流れが緩やかになり、たとえ心臓内であっても、血液の塊(血栓)が生じやすくなります。血液の塊が生じると一部が脳などに流れ脳梗塞を起こしやすくなります。特に高齢者では心房細動でなくとも多発性の脳梗塞を認めますが、 心房細動の人の脳のMRI検査を行うとほとんどの人で多発性の脳梗塞を認めます。

心臓の中で血液の塊ができないようにするのがワーファリンという薬で、高齢者の心房細動の方には脳梗塞を予防するためにワーファリンが処方されます。

今回は、脳梗塞はどれくらいの確率で起きているのか、またワーファリンがどれくらい脳梗塞の予防に有効かという論文を紹介します。

Warfarin in the prevention of stroke associated with nonrheumatic atrial fibrillation. Veterans Affair Stroke Prevention in Nonrheumatic Atrial Fibrillation Investigators.
New England Journal of Medicine. 1993;327:1406.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★☆)

対象はリウマチ熱による弁膜症が原因でない心房細動の患者さん571人で、ワーファリン内服群と非内服群に無作為に分けられ2年弱調査されました。571人のうち525人は過去に脳梗塞を発症しておらず、46人は過去に脳梗塞を発症していました。

過去に脳梗塞を発症していない方のワーファリン非内服群では265人中19人(4.3%/1年)が脳梗塞を発症(4.3%/1年)したのに対して内服群では260人中4人(0.9%/1年)が脳梗塞を発症しました。70歳以上の年齢では非内服群では4.8%/1年の発症率が0.9%/1年に改善されました。

血液の塊ができないようにすると逆に出血性の病気が増えるのではないかと、その件に関しても調査されましたが、脳出血は内服群の中で1人発症しただけでした。他の出血性の疾患、例えば胃や腸からの出血は内服群では6人(1.3%/1年)で、非内服群の4人(0.9%/1年)と比較して違いはありませんでした。

調査期間に脳梗塞を発症したのは、過去に脳梗塞を発症していない群と比べて過去に脳梗塞を発症した群で多かったのですが、ワーファリン内服群で6.1%/年、非投与群で9.3%とワーファリンの内服が脳梗塞の発症を予防していました。

まとめますと、心房細動の患者さんは、脳梗塞の予防のためにワーファリンを内服する事が必要で、特に70歳以上の方では年間4.8%の発症率を0.9%に改善します。また、過去に脳梗塞を発症した方では年間9.3%の発症率を6.1%に改善します。


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