インフルエンザの流行が何歳から始まるかを明らかにした興味深い論文があります。
Identifying pediatric age groups for influenza vaccination using a real-time regional surveillance system.
American Journal of Epidemiology. 2005;162:686.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)
今回の調査は米国バイオテロリズム症候群サーベイランスプロジェクトとボストン小児病院救急部が開発した自動疫学地理・時間統合サーベイランスシステムというシステムで解析されました。2000年1月から2004年9月の間にボストン地区の病院に訪れたインフルエンザ様症状の患者さんにつき、年齢、来院時期、重症度などが詳しく調べられました。
結果は、年齢が発症時期と相関していて(P=0.026)、3~4歳の小児が有意に最初に来院していました(P<0.001)。しかも、毎年3~4歳の小児がコンスタントに最初に来院していました(P=0.0058)。5歳以下では、年齢が重症度と相関していました(P=0.036)。
3~4歳の小児は9月下旬から来院し、2歳以下の小児の来院はそれから1~2週間あとでした。一方、年長児(5歳)が受診するのは10月に入ってからで、成人の場合は通常11月初旬からでした。
上の図は、インフルエンザの流行を年齢別に時期的に示したもので、右から流行することを示しています。右から見ていくと、3~4歳児がprediatiric emergencyすなわち小児救急を受診するのが最初で、その後の順番は、5~10歳が小児救急、3~4歳がambulatory careすなわち歩いて受診し、次に3歳未満が小児救急、歩いて一般に受診、次に64歳以上が歩いて受診、そしてこの頃、3~4歳児の最初の受診より18日ほど遅れてやっと11~17歳が受診のピークを迎えていることがわかります。
縦軸はデータのばらつきを表していて、下の点ほどばらつきが少ないことを表しています。
たしかに、6~23カ月の乳児がまだ母親のもとで過ごす事が多いのに対して、3~4歳の小児は感染に関する予防策を知らないにもかかわらず、幼稚園やディケアセンターといった密集した場所に集まっています。また5歳以上は予防策を身につけられる時期でもあります。
アメリカでは現在、生後6~23カ月の乳児、65歳以上の高齢者、疾患や免疫不全のため感染リスクが高い患者が優先的にワクチンを受ける事になっているのですが、この結果をうけて、ボストン小児病院のマンドル博士は、「小児のくしゃみが高齢者死亡の前触れとなる事を示しており、将来鳥インフルエンザの拡大を防ぐためにも、この優先順位を考え直すべきだ」と言っています。</B>
過去に来院した患者の年齢、来院時期、重症度などをまとめるだけで、こんな素晴らしい研究ができてしまうなんて、このあたりはさすがアメリカと言わざるを得ません。日本では、マスゴミが中心となって感情的に騒ぐだけで、こういう科学的なデータはなかなか公表されません。
原文はこちらから
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Identifying pediatric age groups for influenza vaccination using a real-time regional surveillance system.
American Journal of Epidemiology. 2005;162:686.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)
今回の調査は米国バイオテロリズム症候群サーベイランスプロジェクトとボストン小児病院救急部が開発した自動疫学地理・時間統合サーベイランスシステムというシステムで解析されました。2000年1月から2004年9月の間にボストン地区の病院に訪れたインフルエンザ様症状の患者さんにつき、年齢、来院時期、重症度などが詳しく調べられました。
結果は、年齢が発症時期と相関していて(P=0.026)、3~4歳の小児が有意に最初に来院していました(P<0.001)。しかも、毎年3~4歳の小児がコンスタントに最初に来院していました(P=0.0058)。5歳以下では、年齢が重症度と相関していました(P=0.036)。
3~4歳の小児は9月下旬から来院し、2歳以下の小児の来院はそれから1~2週間あとでした。一方、年長児(5歳)が受診するのは10月に入ってからで、成人の場合は通常11月初旬からでした。
上の図は、インフルエンザの流行を年齢別に時期的に示したもので、右から流行することを示しています。右から見ていくと、3~4歳児がprediatiric emergencyすなわち小児救急を受診するのが最初で、その後の順番は、5~10歳が小児救急、3~4歳がambulatory careすなわち歩いて受診し、次に3歳未満が小児救急、歩いて一般に受診、次に64歳以上が歩いて受診、そしてこの頃、3~4歳児の最初の受診より18日ほど遅れてやっと11~17歳が受診のピークを迎えていることがわかります。
縦軸はデータのばらつきを表していて、下の点ほどばらつきが少ないことを表しています。
たしかに、6~23カ月の乳児がまだ母親のもとで過ごす事が多いのに対して、3~4歳の小児は感染に関する予防策を知らないにもかかわらず、幼稚園やディケアセンターといった密集した場所に集まっています。また5歳以上は予防策を身につけられる時期でもあります。
アメリカでは現在、生後6~23カ月の乳児、65歳以上の高齢者、疾患や免疫不全のため感染リスクが高い患者が優先的にワクチンを受ける事になっているのですが、この結果をうけて、ボストン小児病院のマンドル博士は、「小児のくしゃみが高齢者死亡の前触れとなる事を示しており、将来鳥インフルエンザの拡大を防ぐためにも、この優先順位を考え直すべきだ」と言っています。</B>
過去に来院した患者の年齢、来院時期、重症度などをまとめるだけで、こんな素晴らしい研究ができてしまうなんて、このあたりはさすがアメリカと言わざるを得ません。日本では、マスゴミが中心となって感情的に騒ぐだけで、こういう科学的なデータはなかなか公表されません。
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