医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

2回目の肺炎球菌ワクチンの効果を示す根拠が弱すぎる~~

2017年11月26日 | 感染症
肺炎球菌には 93 種類の血清型があり、平成26年10月からの定期接種で使用される「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」は、そのうちの23種類の血清型に効果があります。高齢者に対する定期接種は平成26年10月1日から開始されています

厚生労働省のサイト

この肺炎球菌ワクチンですが、最初の接種から5年以内に再接種すると、接種部位の腫脹や硬結などの副作用が強く出ると考えられるため禁止されていました。しかし、最近もうそろそろ最初の接種から5年間が経過して、2回目の接種時期になってきている人をちらほら見かけるようになりました。

そこで、2回目の肺炎球菌ワクチンの効果はどうなのかという問題がクローズアップされてきます。ところが調べてみると、臨床的に2回目の接種が肺炎球菌肺炎を減らすというデータはありません。

「2回目の接種で初回接種と同等の抗体応答が誘導される」というデータだけがあって、「従って初回接種と同程度の感染予防効果が期待される」と「期待」だけされている状態であることは事実です。それが示されているのが日本では下の2編の論文です。

Sustained functional serotype-specific antibody after primary and secondary vaccinations with a pneumococcal polysaccharide vaccine in elderly patients with chronic lung disease.Vaccine. 2014;32(10):1181-6.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

Revaccination with 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine in the Japanese elderly is well tolerated and elicits immune responses.Vaccine. 2016;34(33):3875-81. :
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

下の論文は8名の著者のうち4人がこのワクチンを発売しているMDS社の社員、3人がMerck社の社員です。自分たちは社員だと利益相反を表せばその論文は正義であると証明されたわけではありません。

肺炎球菌ワクチン再接種問題対策委員会の皆さんもMDS社からロビー活動されていませんでしたか??

この2編の論文の結果を受けて、「一般社団法人日本感染症学会 肺炎球菌ワクチン再接種問題対策委員会」は「23価肺炎球菌ワクチンの再接種による臨床的な有効性のエビデンスは明確になっていないが、症例によっては追加接種を繰り返すことを考慮してもよい」と発表しています。

実に控えめなコメントです。

以前私は、以下の記事を書きました。
肺炎球菌ワクチンは65歳~75歳では効いていない

1回目の接種でさえ、有効な患者は限定されるのに、2回目のこのエビデンスの弱さを考慮すると
「症例によっては追加接種を繰り返すことを考慮」って・・重症の慢性肺疾患の患者や重症疾患の寝たきり患者などに効果が限定されるのではないでしょうか。

私は最近、2回目のワクチン接種はどうなのかと患者から尋ねられると、重症患者以外には「臨床的な有効性のエビデンスは明確になっていないですよ~」と答えるようにしています。

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コレステロール低下薬 リバロは1mgがいいか4mgがいいか?(その2)

2017年11月24日 | 循環器
前回のREAL-CAD試験(コレステロール低下薬 リバロは1mgがいいか4mgがいいか?)の続きです。

上の図はインターネットでダウンロードできるものですが、リバロは1mgよりも4mg投与すると、一番割合が高いのはLDLコレステロールすなわち悪玉コレステロールの低下ですが、HDLコレステロールすなわち善玉コレステロールも1~2%上がって良い効果が認められています。さらに割合は低いですがCRPといって炎症を示すマーカーも有意に改善されています。

この臨床研究の効果は悪玉コレステロールが低下したためなのか、善玉コレステロールが上昇したためなのか、炎症が改善したためなのか、今回発表された結果からだけでは解析することができません。将来サブ解析の結果が発表されるでしょうから、それを待たねばなりません。

約4年間で「心臓血管死」「心筋梗塞」「脳梗塞」の発症率が1%低下したわけですから、1年間のnumber needed to treat(NNT)は400、すなわちこのような二次予防(一度心筋梗塞や狭心症を発症した人)は、リバロを1年間、1mg/日ではなくて4mg/日内服すると400人に1人の割合で恩恵が得られるということです。恩恵が得られる人の割合は大きくありません。

さて、今回発表されたサブ解析の結果ですが、上の右の図にあるように、65歳以上ではリバロを1mg/日ではなくて4mg/日内服する効果は得られていません。同様に「BMIが25以上の太った人」には効果がありますが、25未満の方には効果はありませんでした。「糖尿病のある方」には効果がありましたが、「糖尿病のない方」には効果がありませんでした。「男性」では効果がありましたが「女性」には効果がありませんでした。

それでは、「糖尿病のない方」で「BMIが25以上の太った」「男性」はどうか?などとさらなる細分化の結果はまだ発表されていませんが、ここから見えてきたのは、「太った男性で65歳未満の糖尿病患者」にはリバロを1mg/日ではなくて4mg/日内服するのがよいだろうということです。

そして、他のコレステロール低下薬には善玉コレステロールを改善させる効果はありませんので、今回の結果がリバロ以外の悪玉コレステロール低下薬に応用できるとは限りません。

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二次予防にコレステロール低下薬 リバロは1mgがいいか4mgがいいか?

2017年11月21日 | 循環器
学会で発表するためにアメリカのアナハイムに行ってきました。
大きな学会にはレイト・ブレイキング・セッションといって、世界に先駆けて臨床研究結果が公表されるというセッションがあり、このような発表で企業の株価が左右されたりします。

今回は日本から、私が「循環器内科の良心」であると尊敬申し上げている京都大学の木村教授からREAL-CAD試験(コレステロール低下薬 リバロは1mgがいいか4mgがいいか?)の結果がついに公表されました。

私も直接拝聴いたしました。
この試験は、これまでに心筋梗塞や狭心症を起こした患者を対象にして、コレステロール低下薬 リバロを一日1mg内服する群と一日4mg内服する群に割り付けて、その後約4年間の「心臓血管死」「心筋梗塞」「脳梗塞」「不安定狭心症」の発症率が比較されました。

上の図はインターネットからもダウンロード出来るスライドですが、4年間で1mgで5.6%の発症、4mgで4.6%の発症と、4mgを内服した方が有意に「心臓血管死」「心筋梗塞」「脳梗塞」「不安定狭心症」の発症は低くなりました。

その他、いろいろ付随情報もたくさん発表されましたが、それに関しましては明日またお伝えします。


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