医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

高尿酸血症は体重に関係なく動脈硬化性の心臓病の危険因子になる

2005年08月27日 | 生活習慣病
Am J Med. 1980;68:401(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)
からの報告です。

前回、高尿酸血症のお話をしましたので、今回はそれに関連して尿酸値が高いと動脈硬化による心臓病(虚血性心疾患)が増えるという少し古い論文です。

対象は1967年に尿酸値が測定された1,356人で、9年間観察してそのうちの111人が高尿酸血症と診断されました。高尿酸血症と診断されたうち6人が動脈硬化性の心臓病を発症しました。動脈硬化性の心臓病を発症した人の平均体重は77.4kg、発症していない人の平均は79.7kgで有意な差は認めませんでした。また、高尿酸血症と診断されたうち25人が高血圧症を発症し、その平均体重が78.3kg、発症していない人の平均体重が79.7kgと有意差はありませんでした。しかし、1,356人全体では、尿酸値が高ければ高いほど動脈硬化性の心臓病の発症が高かったそうです。

つまり、高尿酸血症は体重に関係なく動脈硬化性の心臓病の危険因子になるという事です。
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薬を内服しなくても痛風発作を起こさない確率はどれくらいか

2005年08月26日 | 生活習慣病
前回の話の根拠を私なりに探してみました。J Rheumatol. 2000;27:1501. (インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)からの報告です。

対象は1991-1992年に無症候性(痛風発作がない)の高尿酸血症と診断された投薬がされていない223人です。その後1996-1997年まで5年間調査されました。

結果は、223人中42人(18.8%)が痛風発作を起こしました。逆に考えると、薬を内服しなくても痛風発作を起こさない確率は81.2%です。痛風発作に悪影響となったのは、もちろん尿酸値と過度の飲酒と利尿剤の使用と肥満でした。ただ、尿酸値と肥満は関連がありますから、それらの関係を考慮した多変量解析では尿酸値のみが痛風発作の危険因子でした。また、この研究の登録時には同じ高尿酸血症でも尿酸値に違いがあり、最初から尿酸値が高かった人には不利ですから、それらを補正すると痛風発作に悪影響となったのは期間中の継続的な飲酒と利尿剤の使用と体重の増加でした。

この論文は非常に示唆に富んでいると思います。明確な尿酸値はわかりませんが、痛風発作がないけれど尿酸値が7.0mg/dl以上で、投薬されていない方(8.0mg/dl以下)が将来痛風を起こす確率は約20%であり、継続した飲酒や体重の増加があれば危険率は増すという事です。

私などはひねくれていますから、禁酒、減量で痛風発作を起こさない8割の確率に賭けてもいいとも解釈できる論文と考えてしまいます。

「正しく」考える方法
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高尿酸血症にはいつから投薬が必要か

2005年08月22日 | 生活習慣病
尿酸値の正常値は、2.1~7.0 mg/dlで、尿酸値7.0 mg/dl以上を高尿酸血症といいます。尿酸はプリン体が分解してできた老廃物で、血液中の濃度が高くなると溶けきれなくなった尿酸が結晶化し、関節にたまって痛風発作の原因となります。また腎臓にたまって 腎障害を起こすこともあります。昔は帝王をはじめ、美食することのできるハイクラスの人々に痛風がよく発生したので、「帝王病」と言われた時代もありました。高尿酸血症の患者さんは約50万人(全人口の約0.3~0.5%(中年以降の男性の1.2))、いると推定されており、痛風の予備軍である無症候性高尿酸血症患者は約300万人と推定されています。

さてここで高コレステロール血症の治療薬であるスタチンと同じ疑問が発生します。尿酸値が7.0 mg/dl以上であれば全員が投薬を必要とするのか、薬を内服しなくても痛風発作を起こさない確率はどれくらいかという疑問です。

これまでは尿酸値が7.0 mg/dl以上であればほとんどが高尿酸血症という診断のもとに投薬がなされていました。上記の問題に対する明確な根拠がなかったからです。しかし2002年に「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」が確立されました。それによると、これまでのエビデンスを総合して、投薬は痛風発作がない人は8.0 mg/dlから、痛風発作がある人は7.0 mg/dlから投薬を開始することに統一されました。

健康診断で尿酸値が高いと指摘され、痛風発作もないのに8.0 mg/dl未満で投薬が必要だといわれた方は、一度医師に相談して下さい。

高血圧、高コレステロール血症、糖尿病などの生活習慣病というと、一生薬を飲み続けなければならない疾患がほとんどなのですが、痛風の場合投薬を中止できるケースが結構あります。適切な食事療法が維持され高尿酸血症が改善されるならば、その後一旦薬を中断し、それでも尿酸値が7.0mg/dl以下が維持されていれば薬は中止しても良いとされています。
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アレルギー性鼻炎は治るのか

2005年08月17日 | アレルギー
アレルギー性鼻炎はある年齢から突然発症する事はよく知られていると思います。でも逆にアレルギー性鼻炎が沈静化するのかどうかは意外と知られていないものです。J Allergy Clin Immunol 2004;114:1384(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★☆)からの報告です。

アレルギー性鼻炎の基準はIg-Eという抗体が5段階のうち2段階以上と定められ、全体の69%、15歳から69歳までの734人が1990年に登録されました。アレルギー性鼻炎は花粉によるもの、動物によるもの、ハウスダストと呼ばれる塵によるもの3つについて調査されました。アレルギー性鼻炎の軽快はIg-Eが5段階のうち1段階になったものと定義されました。

8年後の1998年に状態が再調査された結果、花粉によるアレルギーは12%、動物に対するものは19%、塵に対するものは38%(全体では17%)に軽快が認められました。これはアレルギー性鼻炎に罹患した年齢、アレルギー性鼻炎の期間、性別、喘息の有無、アトピー性皮膚炎の有無に関係はありませんでした。Ig-Eという点からみると、抗体価が低下した患者さんはアレルギー性鼻炎が軽快した患者さんの22%でした。これはアレルギー性鼻炎が軽快しなかった患者さんの7%に比べて有意に多かったようです。

本論文では、アレルギー性鼻炎の軽快はまれであると結論づけていますが、私はむしろ、一生ものという印象が強いアレルギー性鼻炎がかなりの確率で軽快しているのだという印象を受けました。みなさんはどう感じましたか?
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小児喘息における吸入ステロイド薬の重要性

2005年08月06日 | 小児科
J Pediatrics. 1998;132:472(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)からの報告です。

みなさんも「ステロイド」に対しては、「副作用が強い」などのイメージをお持ちだと思います。ところが最近アメリカでは、吸入ステロイド薬の導入により年間の喘息死亡率が20%減少したという報告があります。また、喘息の子供において、発症から吸入ステロイド薬導入の期間が長ければ長いほど呼吸機能の改善が遅れるという報告もあります。

しかし子供にステロイド薬を使う事に対する抵抗はいまも強いのです。その理由の1つに、小児の成長を抑制するのではないかという懸念がありました。以前の研究N Eng J Med. 1997;337:1659(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★☆☆)では8~11歳の軽症~中等症の喘息の小児を、吸入ステロイド薬を使用しない群(80人)と、ベクロメタゾン(商品名ベタコイド、アルデシン)と呼ばれる吸入ステロイド薬を使用する群(81人)と、ベータ刺激薬という非ステロイド性の吸入薬を吸入する群(80人)で1年間の身長の変化を比較したところ、使用しない群と非ステロイド性の吸入薬群では6cmの変化を認めましたが、ベクロメタゾン投与群では4cmの変化しか認めませんでした。つまりベタコイドやアルデシンという吸入ステロイド薬を使用すれば成長が阻害される事が証明されたのです。

しかし本研究では、12~47か月の喘息の乳幼児で、吸入ステロイド薬を使用しない群(87人)と、フルチカゾン(商品名フルタイド)という新しいタイプの吸入ステロイド薬を使用する群で成長の差が認められませんでした。このように、使用するステロイドのタイプによっても成長は抑制されたり抑制されなかったりします。ちなみに、小児では血漿コルチゾール(ステロイドの一種)濃度の低い夜間就寝後に成長ホルモンが分泌されるため、ステロイドの就寝前投与を行うと就寝中の成長ホルモンの分泌が抑制され、成長への影響が強まります。
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