医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

タミフルは翌年のインフルエンザ感染を増加させる

2025年01月16日 | 感染症
インフルエンザが流行しています。そして抗インフルエンザ薬であるタミフルが不足しています。
発症して2日以上経過しても抗インフルエンザ薬を希望する患者も少なくありません。

世界中で日本が一番抗インフルエンザ薬を使用していることも周知の事実です。
日本の医療費が安すぎるということもこの理由の一つとして考えられます。

私はそのような患者には以下の論文の内容を説明して、なるべく抗インフルエンザ薬を処方しない方向に説得することを心がけています。

Immunomodulator clarithromycin enhances mucosal and systemic immune responses and reduces re-infection rate in pediatric patients with influenza treated with antiviral neuraminidase inhibitors: a retrospective analysis.
PLoS One 2013;8:e70060


未成年を対象とした観察研究で、タミフル(オセルタミビル)、リレンザ(ザナミビル)は呼吸器系抗A型インフルエンザ特異的分泌型IgAおよび全身性抗A型インフルエンザ特異的分泌型IgGの産生を抑制する傾向がありました。

翌年のA型インフルエンザ再感染率は
未使用群、8.6%
タミフル群、37.3%
リレンザ群、45.0%
であり、タミフル群、リレンザ群で有意に高かった。


これは未成年を対象とした研究であるため成年に当てはまるのかという研究限界はありますが、要するに抗インフルエンザ薬を使用するとインフルエンザに対する抗体ができにくくしてしまうので、翌年以降の免疫がつかず、翌年にまた感染しやすくなってしまうということです。

その他に以下のような同様の結果の論文もあります。
Boost of mucosal secretory immunoglobulin A response by clarithromycin in paediatric influenza.
Respirology. 2009;14:1173-1179

未成年を対象とした観察研究で、タミフル(オセルタミビル)は抗ウイルス分泌型IgAの誘導を抑制した。


徳島大学のShinahara先生、素晴らしい論文をありがとうございました。
皆さんも抗インフルエンザ薬の無益な内服は止めましょう。

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「糖尿病の値のコントロールは早死にを招く」は誤り

2025年01月12日 | 生活習慣病
プレジデント 2023/10/13号では「健康診断のウラ側」ということを特集していました。
(ここのレビューで、1~2行でレビューを書いている人は、本人か編集関係者から高評価のレビューを書いてほしいと頼まれたサクラですよね。その他の書籍にはほとんどレビューを書いていません。この本だけにレビューを書いている人がたくさんいます)



ここで東大医学部卒の医師3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズです。

和田秀樹という精神科医は「フィンランド保険局の調査で、血圧、血糖値、コレステロール値をコントロールしないほうが、死亡リスクが減少するという結果が判明しています」「数値のコントロールは早死にを招く」(24ページ)と書いています。

以下の論文は久山町研究という観察人数も観察期間も申し分ない研究の結果です。HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)という重症度を評価する数値は糖尿病と診断されるのは6.5%以上の時ですが、この研究では6.5%以下の場合も含めて調査されている素晴らしい研究です。

上の図はその論文に掲載されている図ですが、HbA1cという糖尿病の重症度を評価する数値が高ければ高いほど、脳梗塞・脳出血・狭心症・心筋梗塞が増えていくことがわかります。


Epidemiology of Stroke in a General Japanese Population: The Hisayama Study
Atheroscler Thromb 2023 Jul 1;30(7):710-719


これは観察研究ですので、薬を飲んでHbA1cを下げた場合に死亡リスクが下がるかを示したものではありませんが、この研究には薬を飲んでいる患者も飲んでいない人も含まれていますので、薬の内服の有無にかかわらず、その時のHbA1c値で判断できるとも解釈できます。

脳梗塞や脳出血や心筋梗塞に罹患したら、寿命が縮まない患者もいますが、母集団全体を平均すれば寿命は短くなりますから「糖尿病の値のコントロールは早死にを招く」(もちろん、ある程度まで低下させる治療のことを示している)と言うのはまったく反対の誤りと言えます。

九州大学のHata先生、素晴らしい論文をありがとうございました。


一方で和田秀樹という精神科医は、「○○値の下げすぎはNG」とか「やや高めでもいい」と、批判をかわせるようなあいまいな表現をしています。
さすが「東大話法」!

東大話法その1、自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
東大話法その2、自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
東大話法その3、都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。


東大話法その12、自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する。 など、
↓ここに載っています。
東大話法


このような事例は(真実性)、たとえ悪気がなくても、国民に不利益をもたらす(公益性)(公共性)こともあるので、注視すべきことだと思います。


東大医学部卒の医師3人が、誤ったことをたくさん扇動していましたので、一つ一つ根拠を示しながら反論するシリーズ、これからも続けていきたいと思います。

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