4年ほど前、子宮頚部ガンの原因ウイルスに対するワクチンで子宮頚部ガンの発症を減らすことができることをお伝えしました。
日本でも今年やっとこのワクチンが一般の医療機関で使用可能となり、女子中学生への接種が推奨されています。商品名はサーバリックスです。しかし約1%の自治体のみが公費で行っているだけで、ほとんどの場合は私費で接種しなければなりません。3回分(初回,初回から1カ月後,初回から6カ月後)で約4万円かかります。
この論文によると16型/18型ヒトパピローマウイルスの感染が4年間で、ワクチン接種群で0.9%、非接種群で14.8%と13.9%抑制できています。
その後、この報告よりもさらに大規模でしかもDNA解析を加えた研究結果が発表されています。
Efficacy of a prophylactic adjuvanted bivalent L1 virus-like-particle vaccine against infection with human papillomavirus types 16 and 18 in young women: an interim analysis of a phase III double-blind, randomised controlled trial.
Lancet. 2007;369:2161.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
この研究では15歳から25歳までの女性18,644例をランダム化し、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチンを受ける群(n=9,319)とA型肝炎ワクチンを受ける群 (n=9,325)に分け、試験の0カ月、1カ月、6カ月の時点でワクチンが投与されました。
使用された16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチンはHavrixワクチン(GlaxoSmithKline Biologicals社製)を基にした試験製剤でした。18,644例のうち、細胞診の結果が高度異形成であった88例と、結果を紛失した31例を除外し、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチン接種群9,258例とA型肝炎ワクチン群9,267例が解析されました。
ワクチン投与をした対象には、試験採用時に発癌性ヒトパピローマウイルスに感染している者および細胞形態が低度異形成の異常を示した者も含まれました。子宮頚部の細胞診と生検では、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて14種類の発癌性ヒトパピローマウイルスについて分析されました。
追跡期間は14.8 ± 4.9カ月でした。結果は、16型ヒトパピローマウイルスまたは18型ヒトパピローマウイルスのDNAを伴う子宮頚部の異型性数は、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチン群が2例であったのに対し、対照群(A型肝炎ワクチン接種群)では21例でした。これら23例のうち14例(ワクチン群が2例と対照群が12例)では、発癌性ヒトパピローマウイルスの型が複数存在していました。
ヒトパピローマウイルスの16型/18型DNAを持つ子宮頚部の異型性に対するワクチンの有効性は90.4% (信頼区間は 53.4-99.3%、P<0.0001)でした。16型/18型ヒトパピローマウイルスの持続性感染に対する有効性は6カ月で80.4%、12カ月で75.9%でした。安全性は両群で統計学的に差がありませんでした。
論文の著者は「ヒトパピローマウイルス感染と子宮頚癌の高リスクには貧困が強く連関しており、ヒトパピローマウイルスワクチンのような高度に有効な介入手段を貧困生活者が利用できなければ、格段に格差が広がる可能性がある」とも述べています。
ワクチン接種によって、ヒトパピローマウイルス感染は4年間で13.9%予防され、そのウイルスによって子宮頚部の細胞がガン細胞に近づくのは1.2年で0.1%予防されるということです。子宮頸ガンの発現は数十年かかることが少なくないので、このような短期間では結論は出せませんが、仮に12年で(接種は繰り返す必要がないので期間の概念は費用の算出には不要です。あくまでも4万円です)1.0%の予防が可能なら、4万円÷1.0%=400万円で1人の罹患が予防できることになります。
現在、日本では1年間に女性約4,000人に1人が罹患し(0.025%:20年だと200人に1人ということです)、その4人に1人が死亡しています。
罹患者の4人に1人が死亡しているということは、400万円x4=1,600万円で子宮頚癌による死亡を予防できることになります。
これをコレステロールの治療の場合と比べてみましょう。
一般の「悪玉コレステロールが高い人」→心筋梗塞の発症率は6年間で2.7%→「悪玉コレステロールが高い人」は疾患と見なされる→1人の発症(死亡ではない)予防に3,000万円必要→悪玉コレステロールを改善させるのに健康保険が効く
「ヒトパピローマウイルス感染リスク者」→子宮頚ガンの発症は6年間で0.15%→「ヒトパピローマウイルス感染リスク者」は健康保険で予防対象と見なされない→1人の子宮頚ガンによる死亡を予防するのに1,600万円でよい→ヒトパピローマウイルスワクチンには健康保険が効かない
一般の「ピロリ保菌者」→胃ガンの発症率は5~8年間で平均3%→「ピロリ保菌者」は疾患とみなされない→1人の発症予防に46万円でよい→しかし胃潰瘍か十二指腸潰瘍(先日、少しだけ適応が拡大されました)でないと保菌を改善させるのに健康保険が効かない
コレステロールの治療がいかに優遇されているかが一目瞭然です。
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日本でも今年やっとこのワクチンが一般の医療機関で使用可能となり、女子中学生への接種が推奨されています。商品名はサーバリックスです。しかし約1%の自治体のみが公費で行っているだけで、ほとんどの場合は私費で接種しなければなりません。3回分(初回,初回から1カ月後,初回から6カ月後)で約4万円かかります。
この論文によると16型/18型ヒトパピローマウイルスの感染が4年間で、ワクチン接種群で0.9%、非接種群で14.8%と13.9%抑制できています。
その後、この報告よりもさらに大規模でしかもDNA解析を加えた研究結果が発表されています。
Efficacy of a prophylactic adjuvanted bivalent L1 virus-like-particle vaccine against infection with human papillomavirus types 16 and 18 in young women: an interim analysis of a phase III double-blind, randomised controlled trial.
Lancet. 2007;369:2161.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
この研究では15歳から25歳までの女性18,644例をランダム化し、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチンを受ける群(n=9,319)とA型肝炎ワクチンを受ける群 (n=9,325)に分け、試験の0カ月、1カ月、6カ月の時点でワクチンが投与されました。
使用された16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチンはHavrixワクチン(GlaxoSmithKline Biologicals社製)を基にした試験製剤でした。18,644例のうち、細胞診の結果が高度異形成であった88例と、結果を紛失した31例を除外し、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチン接種群9,258例とA型肝炎ワクチン群9,267例が解析されました。
ワクチン投与をした対象には、試験採用時に発癌性ヒトパピローマウイルスに感染している者および細胞形態が低度異形成の異常を示した者も含まれました。子宮頚部の細胞診と生検では、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて14種類の発癌性ヒトパピローマウイルスについて分析されました。
追跡期間は14.8 ± 4.9カ月でした。結果は、16型ヒトパピローマウイルスまたは18型ヒトパピローマウイルスのDNAを伴う子宮頚部の異型性数は、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチン群が2例であったのに対し、対照群(A型肝炎ワクチン接種群)では21例でした。これら23例のうち14例(ワクチン群が2例と対照群が12例)では、発癌性ヒトパピローマウイルスの型が複数存在していました。
ヒトパピローマウイルスの16型/18型DNAを持つ子宮頚部の異型性に対するワクチンの有効性は90.4% (信頼区間は 53.4-99.3%、P<0.0001)でした。16型/18型ヒトパピローマウイルスの持続性感染に対する有効性は6カ月で80.4%、12カ月で75.9%でした。安全性は両群で統計学的に差がありませんでした。
論文の著者は「ヒトパピローマウイルス感染と子宮頚癌の高リスクには貧困が強く連関しており、ヒトパピローマウイルスワクチンのような高度に有効な介入手段を貧困生活者が利用できなければ、格段に格差が広がる可能性がある」とも述べています。
ワクチン接種によって、ヒトパピローマウイルス感染は4年間で13.9%予防され、そのウイルスによって子宮頚部の細胞がガン細胞に近づくのは1.2年で0.1%予防されるということです。子宮頸ガンの発現は数十年かかることが少なくないので、このような短期間では結論は出せませんが、仮に12年で(接種は繰り返す必要がないので期間の概念は費用の算出には不要です。あくまでも4万円です)1.0%の予防が可能なら、4万円÷1.0%=400万円で1人の罹患が予防できることになります。
現在、日本では1年間に女性約4,000人に1人が罹患し(0.025%:20年だと200人に1人ということです)、その4人に1人が死亡しています。
罹患者の4人に1人が死亡しているということは、400万円x4=1,600万円で子宮頚癌による死亡を予防できることになります。
これをコレステロールの治療の場合と比べてみましょう。
一般の「悪玉コレステロールが高い人」→心筋梗塞の発症率は6年間で2.7%→「悪玉コレステロールが高い人」は疾患と見なされる→1人の発症(死亡ではない)予防に3,000万円必要→悪玉コレステロールを改善させるのに健康保険が効く
「ヒトパピローマウイルス感染リスク者」→子宮頚ガンの発症は6年間で0.15%→「ヒトパピローマウイルス感染リスク者」は健康保険で予防対象と見なされない→1人の子宮頚ガンによる死亡を予防するのに1,600万円でよい→ヒトパピローマウイルスワクチンには健康保険が効かない
一般の「ピロリ保菌者」→胃ガンの発症率は5~8年間で平均3%→「ピロリ保菌者」は疾患とみなされない→1人の発症予防に46万円でよい→しかし胃潰瘍か十二指腸潰瘍(先日、少しだけ適応が拡大されました)でないと保菌を改善させるのに健康保険が効かない
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