上の図は左がマイルドな子宮頚部細胞異形成、右がシビアーな子宮頚部細胞異形成の発症率です。
1990年に生まれた女性以前は子宮頚癌ワクチンが接種されなかったのですが、子宮頚癌ワクチンの接種が開始され、1991年に生まれた女性以降から徐々に効果が高まり、紫ラインの非接種群より黄色ラインの接種群の方が、子宮頚部細胞異形成が約3分の1になっていることがわかります。
ご存じのように、現在新型コロナウイルスワクチン完成が期待され、開発に成功したらほとんどの問題が解決されるかのように加熱報道されています。
私は以前、インフルエンザワクチンはほとんど効いていないということをお伝えしました。
性質が知り尽くされているインフルエンザウイルスでさえこの結果ですから、新型コロナウイルスワクチンは私の私見では発症を予防できる効果はないと思います。発症したあとに症状を軽くする効果は期待できると思います。
でも、よく考えてみて下さい。「症状を軽くする効果」を証明するにはあと5年はかかります。
以下に理由を述べます。
(1)まず、この研究は「ワクチンを接種した群と接種しない群両方に、新型コロナウイルスを漂わせた家に1ヶ月間ぐらい住んでもらい、発症率や症状の重症度を調査する」方法ができません。当たり前のことです。ワクチンを接種しようがしまいが、人々は新型コロナウイルス感染に相当の注意を払っており、その有病率は0.1%ぐらいです。それに対してインフルエンザの有病率は平均5%もあります。研究方法としては新型コロナウイルス感染よりインフルエンザ感染の方がワクチンの有用性を証明することが断然簡単です。そんなインフルエンザワクチンでさえ、このありさまです。
(2)この効果を証明する医学研究の方法は、厳密には時間的に前向きでなければなりませんが「前向き研究」であれば、まずこの研究に参加する人を募り、参加した人をランダムに「接種する群」と「接種しない群」に分ける必要があります。皆さんだったらこの研究に参加するでしょうか、という問題があります。アメリカが多くの臨床試験でやっているように参加者に10万円ぐらい研究協力金を支給するのなら、まだ可能性はあります。
(3)それなら厳密ではなくなるけれど過去を振り返る「後ろ向き研究」で、接種した人と接種しなかった人を比較し、発症率や症状の重症度を調査する必要があります。それこそ5年かかります。そして「後ろ向き研究」では、たとえ接種した群の発症率が低くても、それは「ワクチンを接種するなどという人々は他にも発症予防に十分留意していて、それが発症を低下させたのではないか」などの交絡因子を除外することが難しいです。数字をあつかう医学研究では交絡因子の排除はそれほど難しくありませんが、「発症予防への留意度」をどのように評価するか(数値化するか)という困難もつきまといます。
本日、大阪の企業が、新型コロナウイルスワクチンの治験を30人で始めると報道しました。30人では統計学的に副作用の有無さえ証明するのは不可能です。
現在、私たち人類は、このように有用性も証明されていない、副作用もどれくらいあるか分からない新型コロナウイルスワクチンに殺到しなければいけない状態に陥っているのです。
以下は、それなら、若い女性は子宮頚癌ワクチンも接種して下さいという話です。
子宮頚癌は罹患すれば女性の闘病生活に大きく影響し死亡率も高い疾患です。日本では実際には接種と関連がない症状が過熱報道され、ネットなどで反ワクチン活動などが広がり、未だに子宮頚癌ワクチン接種率は非常に低い状況が続いています。しかし、国民は冷静な情報収集と判断が必要です。
私は以前、こんな騒動で日本から子宮頚癌ワクチンがなくなってしまうのではないかと危惧し、私の娘やその友人たちには速攻で規定どおり3回接種させました。私は教え子を子宮頚がんで亡くすという辛い体験もしています。
海外では接種が開始され長期間経過したため、その有用性が徐々に明らかになってきています。
海外では子宮頚癌ワクチンの有効性は広く受け入れられているため、「接種しない」群を人為的に設定するのが倫理的に難しく、新型コロナウイルスワクチンの臨床研究方法で前述したように、「後ろ向き研究」しか不可能です。
Prevalence of cervical disease at age 20 after immunisation with bivalent HPV vaccine at age 12-13 in Scotland: retrospective population study
BMJ 2019;365:1161
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
子宮頚癌ワクチンの接種率が高いスコットランドでは、1988~1996年生まれの女性138,692名を対象にした調査で、グレード3以上の子宮頚部病変が89%、グレード2が88%、グレード1が79%減少したことが報告されています。特に、17歳で接種した人よりも12~13歳での接種した人の方が有効性は高く、若いうちの接種がより有効であることも示唆されています。
もちろん癌になるまで待っているわけにはいかないので、細胞が異形成を起こしてくることで評価している論文です。
そして昨年、ついに日本でもその有効性を示す結果が発表されました。
20歳~24歳の1,814人を対照に接種群と非接種群を前向きに比較したところ、HPV16/18型感染率が有意に低下しており(p=0.01)、子宮頚癌ワクチン有効率は91.9%でした。
(J Infect Dis 2019;219:382-390)
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1990年に生まれた女性以前は子宮頚癌ワクチンが接種されなかったのですが、子宮頚癌ワクチンの接種が開始され、1991年に生まれた女性以降から徐々に効果が高まり、紫ラインの非接種群より黄色ラインの接種群の方が、子宮頚部細胞異形成が約3分の1になっていることがわかります。
ご存じのように、現在新型コロナウイルスワクチン完成が期待され、開発に成功したらほとんどの問題が解決されるかのように加熱報道されています。
私は以前、インフルエンザワクチンはほとんど効いていないということをお伝えしました。
性質が知り尽くされているインフルエンザウイルスでさえこの結果ですから、新型コロナウイルスワクチンは私の私見では発症を予防できる効果はないと思います。発症したあとに症状を軽くする効果は期待できると思います。
でも、よく考えてみて下さい。「症状を軽くする効果」を証明するにはあと5年はかかります。
以下に理由を述べます。
(1)まず、この研究は「ワクチンを接種した群と接種しない群両方に、新型コロナウイルスを漂わせた家に1ヶ月間ぐらい住んでもらい、発症率や症状の重症度を調査する」方法ができません。当たり前のことです。ワクチンを接種しようがしまいが、人々は新型コロナウイルス感染に相当の注意を払っており、その有病率は0.1%ぐらいです。それに対してインフルエンザの有病率は平均5%もあります。研究方法としては新型コロナウイルス感染よりインフルエンザ感染の方がワクチンの有用性を証明することが断然簡単です。そんなインフルエンザワクチンでさえ、このありさまです。
(2)この効果を証明する医学研究の方法は、厳密には時間的に前向きでなければなりませんが「前向き研究」であれば、まずこの研究に参加する人を募り、参加した人をランダムに「接種する群」と「接種しない群」に分ける必要があります。皆さんだったらこの研究に参加するでしょうか、という問題があります。アメリカが多くの臨床試験でやっているように参加者に10万円ぐらい研究協力金を支給するのなら、まだ可能性はあります。
(3)それなら厳密ではなくなるけれど過去を振り返る「後ろ向き研究」で、接種した人と接種しなかった人を比較し、発症率や症状の重症度を調査する必要があります。それこそ5年かかります。そして「後ろ向き研究」では、たとえ接種した群の発症率が低くても、それは「ワクチンを接種するなどという人々は他にも発症予防に十分留意していて、それが発症を低下させたのではないか」などの交絡因子を除外することが難しいです。数字をあつかう医学研究では交絡因子の排除はそれほど難しくありませんが、「発症予防への留意度」をどのように評価するか(数値化するか)という困難もつきまといます。
本日、大阪の企業が、新型コロナウイルスワクチンの治験を30人で始めると報道しました。30人では統計学的に副作用の有無さえ証明するのは不可能です。
現在、私たち人類は、このように有用性も証明されていない、副作用もどれくらいあるか分からない新型コロナウイルスワクチンに殺到しなければいけない状態に陥っているのです。
以下は、それなら、若い女性は子宮頚癌ワクチンも接種して下さいという話です。
子宮頚癌は罹患すれば女性の闘病生活に大きく影響し死亡率も高い疾患です。日本では実際には接種と関連がない症状が過熱報道され、ネットなどで反ワクチン活動などが広がり、未だに子宮頚癌ワクチン接種率は非常に低い状況が続いています。しかし、国民は冷静な情報収集と判断が必要です。
私は以前、こんな騒動で日本から子宮頚癌ワクチンがなくなってしまうのではないかと危惧し、私の娘やその友人たちには速攻で規定どおり3回接種させました。私は教え子を子宮頚がんで亡くすという辛い体験もしています。
海外では接種が開始され長期間経過したため、その有用性が徐々に明らかになってきています。
海外では子宮頚癌ワクチンの有効性は広く受け入れられているため、「接種しない」群を人為的に設定するのが倫理的に難しく、新型コロナウイルスワクチンの臨床研究方法で前述したように、「後ろ向き研究」しか不可能です。
Prevalence of cervical disease at age 20 after immunisation with bivalent HPV vaccine at age 12-13 in Scotland: retrospective population study
BMJ 2019;365:1161
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
子宮頚癌ワクチンの接種率が高いスコットランドでは、1988~1996年生まれの女性138,692名を対象にした調査で、グレード3以上の子宮頚部病変が89%、グレード2が88%、グレード1が79%減少したことが報告されています。特に、17歳で接種した人よりも12~13歳での接種した人の方が有効性は高く、若いうちの接種がより有効であることも示唆されています。
もちろん癌になるまで待っているわけにはいかないので、細胞が異形成を起こしてくることで評価している論文です。
そして昨年、ついに日本でもその有効性を示す結果が発表されました。
20歳~24歳の1,814人を対照に接種群と非接種群を前向きに比較したところ、HPV16/18型感染率が有意に低下しており(p=0.01)、子宮頚癌ワクチン有効率は91.9%でした。
(J Infect Dis 2019;219:382-390)
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