医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

三菱自動車 謝罪、一方、桝添知事 どこが悪いのかと開き直り

2016年04月29日 | 雑感
(以下、朝日デジタルより引用)
三菱自動車の燃費偽装問題について、消費者庁の板東久美子長官は4月28日の記者会見で、「非常に強い関心を持っている」と述べた。燃費を実際よりも著しくよく見せることが目的であれば、景品表示法違反(優良誤認)にあたる恐れがあり、消費者庁が同社に再発防止の措置命令を出す可能性もある。板東長官は「個別の事案は申し上げられないが、景表法上の問題があれば、必要な調査を行ったうえで適切に対処する」と述べた。
(ここまで引用)

それなら、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースも景品表示法違反(優良誤認)ではないか!と思うのは私だけでしょうか?

一方、
(以下、朝日デジタルより引用)
舛添要一・東京都知事の米国出張中(12~18日)の宿泊費が計73万5600円に上り、都条例が定める1泊あたりの上限を最大で3・8倍上回ったことがわかった。都が21日発表した。舛添氏が就任した2014年以降の海外出張全9回分は29泊(キャンセル料、主催者負担を含む)で計約343万円。平均で条例の上限の3・5倍だった。

高級ホテル滞在「削減すればいい、ではない」 舛添氏
米国で舛添氏はニューヨークとワシントンを訪問。両市長らと会談したり全米桜祭りに出席したりした。都によると、計5泊した両市内の高級ホテルは会議室がついたスイートルームで、1泊あたり約14万円~15万2千円。宿泊した部屋で現地メディアの取材を受けたという。航空機代は計約225万円。日米の往復と米国内での移動で計3回搭乗し、いずれも最上位のクラスだった。舛添氏の9回分の海外出張のうち、宿泊費が最も高かったのは昨年10月のロンドン出張で、1泊19万8千円。都市によって異なる条例の規定額との比較では、14年2月のロシア・ソチが5・6倍の1泊15万1800円で、隔たりが最も大きかった。都は出張経費のあり方を精査中で、今年6月末に結果を公表するという。
(ここまで引用)

【全国知事緊急アンケート】海外出張費、舛添都知事が突出 唯一1泊10万円の上限超え ファーストクラス利用は5人

私にとってはまた東大卒か、という感じです。いつも金のこと。とほほ・・ですよね。橋下元大阪府知事(早大卒)が言うように「ルールに沿っているから大丈夫ではなくて、不合理なルールはどんどん変えないといけない」です。

プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの広告塔となって「ルールに沿って」講演料をもらい製薬会社の都合の良いことばかり言っている東大卒の医者たちにも肝に銘じてほしい言葉です。

この人たち、正義感が欠如している。受験勉強では正義感は習わないからなぁ


私のところにも製薬会社の都合の良いことだけを講演して欲しいとよく依頼がありますが(このスライドを使用して欲しいとスライドまで持ってくることもあります)、そんなことはできないと、私は断っています。すると次から依頼は来なくなります。

そうすると、都合の良いことを言ってくれる医者にその依頼が移っていくだけなのか?なかなか根深い問題です。

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心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その7)

2016年04月25日 | 循環器
以前心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

の記事で、エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。

そして前回、医療後進国の、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどが参加していない日本国内だけの研究結果を紹介しました。

Target International Normalized Ratio Values for Preventing Thromboembolic and Hemorrhagic Events in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation
–Results of the J-RHYTHM Registry–
Circ J 2013;77:2264-2270.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

無料でダウンロードできますので、原文も見てください。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/77/9/77_CJ-13-0290/_article


これは2年間の結果ですから、私が計算して年間の発生率を記載しました。ワーファリンを内服していないと年間0.15%、ワーファリンを内服して血液のさらさら度を示すPT-INRが低いと年間0.24%、PT-INRがちょうど良く1.6~1.99にコントロールされると年間0.32%です。

エリキュースの臨床試験のワーファリン群での0.47%は発症率が日本の研究の結果より1.5倍高いことがわかります。

ところが、日本国内だけの研究J-RHYTHM研究の結果を見ると、
これは2年間の結果ですから、私が計算して年間の発生率を記載しました。ワーファリンを内服していないと年間1.45%ですが、ワーファリンを少しでも内服して血液のさらさら度を示すPT-INRが1.6に達していなくても発症は年間0.87%に有意に抑制させることができているのがわかります(これは私が自分でカイ2乗検定をして確かめています)。そして、PT-INRがちょうど良く1.6~1.99にコントロールされると脳梗塞の発症率は年間0.57%です。これはエリキュースの臨床試験のエリキュース群2.16%、ワーファリン群2.66%より断然良好な数字です。

これらの結果から、本当はPT-INRが1.6~1.99が一番良い(つまり脳梗塞も抑制できているが2.0以上にすると脳出血が少し増えてくるから)し、1.6に達していなくても1.4や1.5でもワーファリンの効果は十分あるということがわかります。ガイドラインでは「1.6~1.99が一番良い」とすると、PT-INRの範囲が狭いためコントロールしにくいと苦情が出ることを予想して、少し広めの範囲で1.6~2.6と決定されたと推測できます。

私はこの研究の結果を知っているので、70歳以上の患者の場合1.5~2.0でコントロールしています。例えば1.5であってもワーファリンは増やしません。それでも私のTTRは約90%です。

今回はその研究のサブ解析で、サラサラ度を示すPT-INRをもう少し細かく分類して、どの領域が一番いいかを調べた研究です。
Warfarin anticoagulation intensity in Japanese nonvalvular atrial fibrillation patients: A J-RHYTHM Registry analysis.
Yamashita T, Inoue H, Okumura K, et al.
J Cardiol 2015;65:175.

(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

ご覧になってわかるように、脳梗塞・全身性塞栓症の予防ではPT-INR 1.8~2.0と比較してPT-INR=1.4までは効果がありませんが、1.4より上では効果が認められています。しかも前回お伝えしたように、日本人の医者が上手にコントロールしていますので、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナよりも発症率は低いのです。

脳出血の予防ではPT-INR 1.5~2.0と比較してPT-INR=2.5までは発症が増えます。

この2つの結果から、日本人の医者がコントロールすれば、1.4~2.5の間が一番予防に効果的で、その発症率はプラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナよりも低いのです。

これが私の患者でPT-INRが1.5と、1.6以下になってもワーファリンを増やさずに1回様子を見る理由です。

どうですか?医療後進国の、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなど参加させずに、日本人の医者がコントロールすればワーファリン群は脳梗塞も脳出血もエリキュース群より少ないのです。

この論文の著者は、これらの製薬会社の断トツの広告塔だったのに自分でこのサブ解析をやって、どうも自分が言っていることの間違いに途中から気がついたようで、広告塔としてのトーンを急に弱めましたよね。そう感じた医者の皆さんも多かったと思います。

プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナを販売している、日本ベーリンガーインゲルハイム、バイエル、ファイザー、第一三共が、これらの新薬はワーファリンより脳出血が少ないと宣伝しているのにはトリックがいっぱいなのです。そしてそれに乗せられた広告塔医師たちが誤った情報を流布しているのです。

国民に不利益になる(効果がそれほどでもない薬を高い値段で買わされるという(真実性))コメントが間違って公言されることがあれば、それは(公共性)(公益性)という観点からも大問題です。



まだまだエビデンスはたくさんありますので、順次お伝えします。

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心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その6)

2016年04月15日 | 循環器
以前、心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

の記事で、エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。

今回はいよいよエリキュースの臨床試験の論文と、医療後進国の、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどが参加していない日本国内だけの研究結果を比較してみます。

上の図の上は、エリキュースの臨床試験の論文に載っている結果です。
Apixaban versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation
N Engl J Med 2011;365:981-992.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

赤色で私が囲ったところが脳出血です。アピキサバンすなわちエリキュース群では年間0.24%、ワーファリン群では0.47%です。ちなみに、脳梗塞のなりやすさを示すCHADS2スコアーのこの研究での平均は2.1です。

一方上の図の下は、日本国内だけの研究J-RHYTHM研究の結果です。
Target International Normalized Ratio Values for Preventing Thromboembolic and Hemorrhagic Events in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation
–Results of the J-RHYTHM Registry–
Circ J 2013;77:2264-2270.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

無料でダウンロードできますので、原文も見てください。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/77/9/77_CJ-13-0290/_article

これは2年間の結果ですから、私が計算して年間の発生率を記載しました。ワーファリンを内服していないと年間0.15%、ワーファリンを内服して血液のさらさら度を示すPT-INRが低いと年間0.24%、PT-INRがちょうど良く1.6~1.99にコントロールされると年間0.32%です。ちなみに、脳梗塞のなりやすさを示すCHADS2スコアーのこの研究のワーファリン群の平均は1.8です。エリキュースの臨床試験より少し低いです。

これらの結果から、エリキュースの臨床試験のワーファリン群での0.47%は発症率が日本の研究の結果より1.5倍高いことがわかります。

さて、脳梗塞についてですが、
青色で私が囲ったところが脳梗塞です。アピキサバンすなわちエリキュース群では二項目合わせて年間2.16%、ワーファリン群では2.66%です。

ところが、日本国内だけの研究J-RHYTHM研究の結果を見ると、
これは2年間の結果ですから、私が計算して年間の発生率を記載しました。ワーファリンを内服していないと年間1.45%ですが、ワーファリンを少しでも内服して血液のさらさら度を示すPT-INRが1.6に達していなくても発症は年間0.87%に有意に抑制させることができているのがわかります(これは私が自分でカイ2乗検定をして確かめています)。そして、PT-INRがちょうど良く1.6~1.99にコントロールされると脳梗塞の発症率は年間0.57%です。これはエリキュースの臨床試験のエリキュース群2.16%、ワーファリン群2.66%より断然良好な数字です。

これらの結果から、本当はPT-INRが1.6~1.99が一番良い(つまり脳梗塞も抑制できているが2.0以上にすると脳出血が少し増えてくるから)し、1.6に達していなくても1.4や1.5でもワーファリンの効果は十分あるということがわかります。ガイドラインでは「1.6~1.99が一番良い」とすると、PT-INRの範囲が狭いためコントロールしにくいと苦情が出ることを予想して、少し広めの範囲で1.6~2.6と決定されたと推測できます。

私はこの研究の結果を知っているので、70歳以上の患者の場合1.5~2.0でコントロールしています。例えば1.5であってもワーファリンは増やしません。それでも私のTTRは約90%です。

医療後進国のトルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなど参加させずに、日本人の医者がコントロールすればワーファリン群は脳梗塞も脳出血もエリキュース群より少ないのです。

プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナを販売している、日本ベーリンガーインゲルハイム、バイエル、ファイザー、第一三共が、これらの新薬はワーファリンより脳出血が少ないと宣伝しているのにはトリックがいっぱいなのです。そしてそれに乗せられた広告塔医師たちが誤った情報を流布しています。


(以下、m3より引用)
非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う全身性塞栓症および大出血イベントの発生は、新規(非ビタミンK阻害)経口抗凝固薬(NOAC)によって半減する可能性が、日本人における大規模観察研究J-RHYTHM Registry 2から示された。日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科の小谷英太郎氏らが、第80回日本循環器学会学術集会(3月18-20日、仙台市)で発表した結果で、NOAC群では抗凝固療法を行わなかった群に比べ、全身性塞栓症発生リスクが58%、大出血発生リスクが47%、有意に低下した。

 2009年開始のJ-RHYTHM Registryは2011年にいったん終了しているが、同年3月に登場したNOACの影響をみるため、期間を3年延長したJ-RHYTHM Registry 2が続けてスタートした。計5年の追跡で、ワルファリン療法の長期成績とNOAC服用患者のイベント発生率についての検討を続けている。小谷氏は今回、後者について報告を行った。

 J-RHYTHM Registry 2が対象としたのは6616例。このうち976例は最終的な治療内容が把握できず、残る5640例について解析が行われた。2009年時点では約85%の患者がワルファリン療法を受けていたが、データ解析時には約60%に低下し、代わって20%近くの患者がNOACを開始していた。いずれの抗凝固療法も受けていない患者(No-OAC)は登録時で13.3%、解析時で11.4%だった。追跡期間中の治療の変遷があるため、研究では最終的な治療内容に基づく3群(No-OAC群、ワルファリン群、NOAC群)で解析を行った。

 追跡期間中の全身性塞栓症発生率はNo-OAC群6%、ワルファリン群4.9%、NOAC群2.1%、大出血発生率はNo-OAC群4.8%、ワルファリン群5.9%、NOAC群2.4%で、いずれもNOAC群で有意に低かった。全死亡あるいは心血管死も同様にNo-OAC群で最も多く、NOAC群で最も少なかった(全P<0.001)。抗血小板薬併用の有無で分けて解析すると、「ワルファリン+抗血小板薬群」では大出血が有意に多く、全死亡および心血管死も有意に高率であったが、「NOAC+抗血小板薬群」ではそうした傾向は認められなかった。

 NOAC群では他2群に比べ低リスク患者が多かったため、CHA2DS2-VAScスコアおよび抗血小板薬の有無で補正して分析を行ったところ、No-OAC群に対するNOAC群の全身塞栓症発生オッズ比(OR)は0.42 (95%CI 0.24–0.74、P=0.003)、大出血発生オッズ比は0.53 (95%CI 0.31–0.93、P=0.027)と有意に低いことが分かった。全死亡および死血管死のリスクも有意に低かった。

 一方のワルファリン群では、全死亡および心血管死のリスク低下は有意だったものの、全身塞栓症のリスク低下は有意でなく、大出血リスクは有意でないがむしろ上昇傾向にあった。

 小谷氏は「NOACとワルファリンの両方に適応のある患者に関しては、NOACが推奨されることは既にガイドラインに記されているが、日本人NVAF患者の実臨床データからもNOACの便益が裏付けられた」と結論している。

 この発表にコメントした国立病院機構大阪医療センター臨床研究センターの是恒之宏氏は、NOACの良過ぎる成績に対する疑問を提起。「何らかの理由で抗凝固療法を続けられなかった患者はリスクが高いことが知られる。本解析ではNo-OAC群にワルファリン中断患者が45%ほど含まれる上、最終的な治療内容が把握できなかった患者が1000例近いなどの限界がある。これらを加味すれば、NOACの成績はここまでは良くなかった可能性がある」として、結果を慎重に解釈する必要性に言及している。
(ここまで引用)


ここの最後の方に別の医師が述べている
「NOACの良過ぎる成績に対する疑問を提起。「何らかの理由で抗凝固療法を続けられなかった患者はリスクが高いことが知られる。本解析ではNo-OAC群にワルファリン中断患者が45%ほど含まれる上、最終的な治療内容が把握できなかった患者が1000例近いなどの限界がある。これらを加味すれば、NOACの成績はここまでは良くなかった可能性がある」として、結果を慎重に解釈する必要性に言及している。」
私も、こちらの意見に賛成です。せめてプロペンシティー・スコアで両群の背景を揃えないと、結論は出せません。もう少し統計学を勉強する必要があります。</B>


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心房細動に対する新しい抗凝固療薬イグザレルトの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その5)

2016年04月09日 | 循環器
前回、イグザレルトの臨床研究ロケット・スタディーのワーファリン群のTTRが世界全体で62%、日本だけで67%であり、ワーファリン投与群というのはほとんどワーファリン非投与群に近い群であるということをお伝えしました。

引き続き、衝撃的な事実です。BMJという信頼性の高い医学雑誌からです。

Rivaroxaban; Can we trust the evidence? BMJ 2016:352 i575

イグザレルト、私たちはその臨床試験の結果を信じられるのか?

まず、抄録の全文を記載します。

Doctors and scientists are calling for an independent investigation into the key trial underpinning use of rivaroxaban to prevent ischaemic stroke in non-valvular atrial fibrillation after The BMJ found that a defective point of care device was used in the warfarin arm of the trial.

Doctors and scientists have also told The BMJ that the validity of the trial—called ROCKET-AF and published in the New England Journal of Medicine in 20111—is in question until such independent analysis is done.

The drug was manufactured by Bayer and marketed in the United States by Janssen, part of Johnson and Johnson, and the companies relied on a single trial–ROCKET-AF—to gain approval from the US and European regulators. The trial included over 14 000 patients and found that rivaroxaban was non-inferior to warfarin for preventing ischaemic stroke or systemic embolism. There was no significant difference between groups in the risk of major bleeding—although intracranial and fatal bleeding occurred less often in the rivaroxaban group.

But there are now concerns about these outcomes. In a letter submitted to the NEJM (as yet unpublished) and shown to The BMJ, former FDA cardiovascular and renal drug reviewer, Thomas Marcinicak, says: “The care for the warfarin control arm patients [in ROCKET-AF] appears to have been compromised.”

Earlier last year, The BMJ found that the point of care device used to measure international normalised ratio (INR) in patients taking warfarin in ROCKET-AF had been recalled in December 2014. An FDA class I recall notice (the most serious kind) said that certain INR devices could deliver results that were “clinically significantly lower” than a laboratory method.

太字の箇所を私なりに意訳してみると
「イグザレルトの臨床研究ロケットAF・スタディーで使用されたワーファリンのコントロールの程度を示すPT-INR値を測定する器械はアメリカ食品医薬品局の最も重大なclass Iのリコールをしていた。その器械は実際の臨床的PT-INR値より低い値が表示されてしまい、医者の実際の診療は、患者が出血しやすい状態でコントロールされていた。」

すごい事実ですね。バイエルの社員から正直にこんな情報聴いたことないですよ。


心房細動に対する新しい抗凝固療薬の臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件シリーズを書いていますが、まだその事実を示した論文をご紹介できていない状況です。その前に予習する事項が多いのでご了承下さい。

情報の続きはまだまだありますので、次回以降もどんどんお伝えします。

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心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その4)

2016年04月07日 | 循環器
5年前に心房細動に対する新しい抗凝固療法についてお伝えしました。5年前はまだ発売されていませんでしたので、今振り返ってみると時の流れは早いものです。

心房細動に対する新しい抗凝固療法プラザキサ

薬は、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの3種類と、最近リクシアナが加わり4種類になりました。

それらの薬はワーファリンを使用するより脳出血のリスクが少ないと宣伝され、多くの医者たちもそれらの宣伝に乗せられてその情報を信じていますが、私にはどうしてもそうは思えない根拠を多くのエビデンスからお伝えしているシリーズです。

前回、心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その3)の復習です。

ワーファリンという薬を使う場合、血液検査のPT-INRという血液のサラサラ度を示す値を見ながら錠数を調節します。70歳未満では2.0~3.0、70歳以上では1.6~2.6を目標としています。そして例えば1月に1回測定して、合計10回のうち6回がその目標範囲ならTTRという指標(time in therapeutic range)は60%とされます。中には患者の方の要因でコントロールが悪くなる場合もありますが、できるだけ多くの平均を取るとワーファリンを処方する医者の「腕前」を示す指標のようなものです。

通常の専門医であれば目標のさらさら度である確率TTRという指標(time in therapeutic range)は80%はあると思います。私の診察のTTRは約90%です。

さて、上の図は、前回と同じ
Efficacy and Safety of Apixaban Compared With Warfarin at Different Levels of Predicted International Normalized Ratio Control for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation
Circulation 2013;127:2166.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)


からのものです。左から治療コントロールの善し悪しを示すTTR、上は研究全体の成績(脳梗塞、脳出血、大出血、死亡など)、下は全ての原因による死亡です。そして右の方の棒グラフは、ワーファリンの方が良いか高価な新薬の方が良いかを示すものです。

真ん中の縦棒を横棒が挟んでいれば両者引き分け、左にあれば新薬の成績が優れている、右にあればワーファリンの方が優れていることを示しています。

どうでしょうか、ワーファリンの成績を悪くしているのは、TTRが59.9%以下の群です。少なくとも「研究全体の成績(脳梗塞、脳出血、大出血、死亡など)」や「全ての原因による死亡」という項目ではTTRが60%以上あれば、両者の成績は同じです。

TTR 15.1%という、とんでもないお医者様もこの研究に参加なさっています。さぞかしこれら新薬の製薬会社の社員は喜んだことでしょう。こういうお医者様がワーファリン群の成績を下げて、新薬の成績を「勝ち」にしてくれるのですから。

そもそも、こういう臨床試験は他の臨床試験とは全く次元の異なるものです。

通常の前向き臨床試験で2種類の薬の効果を比較しようとする場合、当たり前のことですが、できるだけ両者ともちゃんと内服してくれるようにサポートします。

しかし、ワーファリンの前向き臨床試験の場合、どんなにちゃんと内服していようとも問題はTTRのコントロールがどれだけ良かったかに依存します。それから後日ご説明しますが、CHADS2スコアーといってその患者の脳梗塞になりやすさを評価したスコアーにも依存します。

以前お伝えしたように、ワーファリン群の成績を悪くしようと思えば、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルのお医者様方を参加させればよいのです。

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)でお伝えしたように、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの3種類の臨床試験でのワーファリン投与群というのはほとんどワーファリンからの利益が十分に享受できていない群であるということなのです。

先日、イグザレルトの臨床研究ロケット・スタディーのワーファリン群のTTRが平均どれぐらいであったか、バイエルの社員に尋ねてみました。たしか世界全体で62%、日本だけで67%とか。ワーファリン投与群というのはほとんどワーファリンからの利益が十分に享受できていない群であるということなのです。

情報の続きはまだまだありますので、次回以降もどんどんお伝えします。

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心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その3)

2016年04月03日 | 循環器
前回心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

の記事で、エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。

今回はその続きで、ワーファリンという薬でのコントロールの上手さ別の治療効果をお伝えしたいと思います。前回と同じ医学論文からの情報です。

Efficacy and Safety of Apixaban Compared With Warfarin at Different Levels of Predicted International Normalized Ratio Control for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation
Circulation 2013;127:2166.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

上の図の、(C)がTTRが60.6%~66.3%というあまり上手に治療できていない場合の、efficacyつまりこの場合の脳梗塞の発症率です。ご覧いただくとわかるように、エリキュースという新しくて1日約500円する薬と、以前からある1日約30円のワーファリンと、治療効果は差がありません。

上の図の、(D)がTTRが60.6%~66.3%というあまり上手に治療できていない場合の、safetyつまりこの場合の脳出血と輸血を必要とする出血の発症率です。ご覧いただくとわかるように、エリキュースという新しくて1日約500円する薬と、以前からある1日約30円のワーファリンと、治療効果はエリキュースの方が良いです。

上の図の、(E)がTTRが66.4%~71.1%という少し上手に治療できている場合の、efficacyつまりこの場合の脳梗塞の発症率です。ご覧いただくとわかるように、エリキュースとワーファリンで治療効果には差がありません。

上の図の、(F)がTTRが66.4%~71.1%という少し上手に治療できている場合の、safety脳出血と輸血を必要とする出血の発症率です。ご覧いただくとわかるように、エリキュースとワーファリンで治療効果には差がありません。

つまり、製薬会社はプラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナという高価な新薬を使用すれば脳出血の発症をワーファリンより減らすことができると主張していますが、それは医療後進国のようにワーファリンで上手にできていない場合と比較した場合のことであって、TTRが66.4%~71.1%という少し上手に治療できている以上の場合、両者に差がないのです。差がないのなら患者にとっては1日500円支払うより1日30円の方がいいに決まっていますよね。

私が患者を治療する際のTTRは約85%です。

ここでは、ワーファリンでのコントロールの上手さの層別化をしないで、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナの方がいいと言ってしまっています。


情報の続きはまだまだありますので、次回お伝えします。

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