先月のJ Epidemiol Community Health. 2005;59:502.(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★☆)からの報告です。
以前から、牛乳摂取は脳卒中や心筋梗塞などのリスクに悪影響を及ぼすとの懸念がありました。しかしその理由の主なものは次の2つです。第一には、牛乳はコレステロール値を上昇させる食品に分類されること。第二には、国を単位としてみた場合に、1人あたりの平均牛乳「製造量」と、同じ国における心疾患死亡率の間に、正の相関が認められていることです。今まではこれらの結果から、牛乳の摂取は脳卒中や心筋梗塞などのリスクを上昇させるだろうと「推測」されていただけにすぎません。
この研究では、最初に被験者に7日間食事摂取を記録し体重を測定するよう依頼しました。依頼した男性のうち665例(87%)から、解析に申し分のない食事記録が返送され、それに基づいて牛乳の総摂取量などが計算されました。初回調査時は1979-1983年で、被験者の年齢は45-59歳でした。その後20年間にわたる追跡調査で、すべての死亡、虚血性脳卒中および虚血性心疾患に関する詳細な情報が得られました。牛乳摂取量が中央値以上(473ml/日以上)であった男性を牛乳摂取量が少ない患者と比較した結果、虚血性脳卒中については0.52倍、虚血性心疾患イベントについては0.88倍でした。その反面、両群における全死因による死亡率は1.08倍と同様でした。
「これらの結果から、牛乳の飲用による血管疾患リスクの増加を裏付ける説得力のある根拠は得られない。むしろ、牛乳摂取量が中央値以上であった被験者は虚血性脳卒中のリスクが減少しており、虚血性心疾患イベントのリスクもおそらく減少したものとみられる。これらの結論は、以前、食品摂取頻度記録に基づく10件の大規模長期コホート研究に関して報告された概要の結果と一致する」と著者らは述べています。
この研究には、牛乳摂取量が最も少ない男性はアルコール摂取量が最も多い傾向がみられたという問題点があります。つまり脳卒中・心筋梗塞のリスクは牛乳の摂取と関係するのではなくアルコールの摂取と関係があるという可能性を否定できない事です。このような現象は「交絡」と呼ばれています。しかし、適度のアルコールの摂取は脳卒中・心筋梗塞のリスクを減少させるという研究結果がありますから、これは交絡ではないと思われます。
現時点で脳卒中・心筋梗塞に罹患した患者さんが過去にどのような食生活を送っていたかを調べる方法を「後ろ向き」と呼ぶのに対して、本研究のように20年前から食生活を調べ続けその結果被験者がどれくらい病気になったかを調べる方法は「前向き」と呼ばれ、結果の信憑性が高いと言われています。著者らは「牛乳が心血管リスクの増加に関して有害であるという現在の認識には異議を唱えるべきであり、健康的な食事の中での牛乳の正当な位置づけを取り戻すためにあらゆる努力がなされなければならない」と結論づけています。
牛乳には危険がいっぱい?
この本どう思いますか?
以前から、牛乳摂取は脳卒中や心筋梗塞などのリスクに悪影響を及ぼすとの懸念がありました。しかしその理由の主なものは次の2つです。第一には、牛乳はコレステロール値を上昇させる食品に分類されること。第二には、国を単位としてみた場合に、1人あたりの平均牛乳「製造量」と、同じ国における心疾患死亡率の間に、正の相関が認められていることです。今まではこれらの結果から、牛乳の摂取は脳卒中や心筋梗塞などのリスクを上昇させるだろうと「推測」されていただけにすぎません。
この研究では、最初に被験者に7日間食事摂取を記録し体重を測定するよう依頼しました。依頼した男性のうち665例(87%)から、解析に申し分のない食事記録が返送され、それに基づいて牛乳の総摂取量などが計算されました。初回調査時は1979-1983年で、被験者の年齢は45-59歳でした。その後20年間にわたる追跡調査で、すべての死亡、虚血性脳卒中および虚血性心疾患に関する詳細な情報が得られました。牛乳摂取量が中央値以上(473ml/日以上)であった男性を牛乳摂取量が少ない患者と比較した結果、虚血性脳卒中については0.52倍、虚血性心疾患イベントについては0.88倍でした。その反面、両群における全死因による死亡率は1.08倍と同様でした。
「これらの結果から、牛乳の飲用による血管疾患リスクの増加を裏付ける説得力のある根拠は得られない。むしろ、牛乳摂取量が中央値以上であった被験者は虚血性脳卒中のリスクが減少しており、虚血性心疾患イベントのリスクもおそらく減少したものとみられる。これらの結論は、以前、食品摂取頻度記録に基づく10件の大規模長期コホート研究に関して報告された概要の結果と一致する」と著者らは述べています。
この研究には、牛乳摂取量が最も少ない男性はアルコール摂取量が最も多い傾向がみられたという問題点があります。つまり脳卒中・心筋梗塞のリスクは牛乳の摂取と関係するのではなくアルコールの摂取と関係があるという可能性を否定できない事です。このような現象は「交絡」と呼ばれています。しかし、適度のアルコールの摂取は脳卒中・心筋梗塞のリスクを減少させるという研究結果がありますから、これは交絡ではないと思われます。
現時点で脳卒中・心筋梗塞に罹患した患者さんが過去にどのような食生活を送っていたかを調べる方法を「後ろ向き」と呼ぶのに対して、本研究のように20年前から食生活を調べ続けその結果被験者がどれくらい病気になったかを調べる方法は「前向き」と呼ばれ、結果の信憑性が高いと言われています。著者らは「牛乳が心血管リスクの増加に関して有害であるという現在の認識には異議を唱えるべきであり、健康的な食事の中での牛乳の正当な位置づけを取り戻すためにあらゆる努力がなされなければならない」と結論づけています。
牛乳には危険がいっぱい?
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