バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

今は無き寝台列車への追憶@長崎

2009-09-24 09:10:16 | ☆バスde温泉(九州)

《この記事は3年前のもので、現在、更新が滞っているワタシのホームページ「バスと温泉の旅日記」からの焼き直しです。寝台列車にどうしても乗りたくて、当時、大阪と長崎を結んでいた特急あかつきに乗って、長崎と軍艦島を訪問したときのものです。惜しくも特急あかつきが廃止になってしまったり、限られた区域とはいえ、なんとあの軍艦島に上陸できるようになった今、状況は大きく変わっているが、寝台列車の在りし日を偲んで、再びここに掲載しますね。》

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仕事帰りの都会の駅のホーム。疲れた足を引き摺りながら電車に乗り込み、ただ寝るためだけに家に帰るのはいつものこと。でも今日は違います。夜のプラットフォームに入ってきたのはいつもの通勤電車ではなく、「EF66」型電気機関車に引かれた寝台特急「あかつき」です。

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この「あかつき」は京阪神から長崎までおよそ 13時間かけて走り抜ける特急列車で、いわゆるブルートレイン。しかし、いっときのブームはどこへ行ったのやら、このブルートレインも今では年々数を減らしており、東京と九州を結ぶ「あさかぜ」「さくら」などの有名列車も、いまや過去帳入り。この列車も、今こそ乗っておかないといつ廃止になるやら…ということで、今回のバスde温泉は寝台列車のB個室からスタートです。

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20時過ぎに京都を発った列車は20時41分に大阪駅に入線します。大多数の乗客が乗り込む大阪駅では、6分もの比較的長い停車時間が充てられています。B個室寝台「ソロ」は上下二段になっているため天井が低いものの、扉を閉めると完全な個室空間。個室の窓から外を見やると、通勤の人々で賑わう駅は日常そのもの。そしてガラスの内側は狭いながらも非日常の空間。このギャップこそ旅情っていうものですよ…

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程なくして列車はプラットフォームからするすると離れていきます。電車と違って、静かでふんわりとした走り出しですね。室内は空調も個別で調節できるし、ポップスかクラシックのBGMも聴くこともできる。しょぼい音質なのは列車内ということで許してやろう。ベッドに横たわり、流れてくるショパンの音色とレールの規則的なジョイント音を聴きながら目を閉じると、程なく夢心地に…ZZZzzz

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走行音がしなくなったので目を開けると、外は未だ暗いがすでに本州最西端の下関に着いています。そして、ここから関門トンネルを抜けると九州。列車の先頭では機関車を付け替えているようです。電車の電力は九州に入ると交流に変わるため、それに合わせて機関車も交換が必要だからですね。

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しばらくウトウト寝て、再び目覚めると夜が明けており、鳥栖に着いていました。この鳥栖でここまで併結されていた熊本行きの特急「なは」と分割されます。ここから列車は長崎本線を快走するものの、肥前山口から単線になるとともにガックリと速度を落としてしまいます。そして、とうとう田舎の駅で止まってしまいました。車内放送で特急列車の通過待ちのため15分ほど停車するとのこと。「オイオイ!!この列車も特急やがな」と、独りでアナウンスにつっこみを入れてたら、猛スピードで特急「かもめ」が追い抜いていきました。特急に抜かれる特急って…グッスリ寝れたので長時間の乗車にも疲れることなく、列車は15分遅れで長崎駅に着きました。列車の先頭は赤い機関車「ED76」です。この機関車が九州内を引張ってきたようです。

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長崎駅は大規模なショッピング街になっていて、以前来たときとはがらりと変わっています。ふと時計を見ると、長崎港クルーズの出発時間が迫っている。予定では充分に時間があったのだが、列車が遅れた所為ですね。長崎港のターミナルまで速足で歩くが、こういうときに限って焦って道を間違える。汗ダクダク、息絶え絶えで乗船場にたどり着いて乗船。ワタシの乗船と同時にタラップが外されました。

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やまさ海運の遊覧船は意外に高速で長崎湾内を駆け抜ける。湾の両岸には造船所が密集しています。特に、市街の対岸には三菱造船の巨大施設があり、新造中のイージス艦やメインテナンス中の護衛艦が並んでいます。日米の開戦直前、この造船所の船台から戦艦「大和」の姉妹艦「武蔵」が進水しました。ところがこの「武蔵」があまりに大きすぎて、進水で巻き起こった波で、対岸が水浸しになったとのこと。

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湾口に架かる「女神大橋」は昨年末に完成したばかり。長崎港に入る巨船を通すため、橋桁は水面から65mもの上空となり、これが日本一の高さだそうで、この橋をくぐると水平線が開け、視界が広がります。伊王島を横目にさらに進むと、沖のほうに異様な構造物が見えてきました。

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海の中からニョッキリと構造物が浮かび上がっている端島は、軍艦島とも呼ばれ、廃墟に魅入られた者にとっての聖地。崩落の危険があるので、現在この島には立ち入りできない(今は限定的ではあるが上陸できるようになった)が、以前から憧れだったこの島を実際にこの目にすることができて感激です。

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乗船時には賑やかだった観光の家族連れも、息を呑んでこの島を眺めています。この島にはひとを黙らせるほどの圧倒的な「滅び」の美しさがありますね。この島をユネスコの世界遺産にしようとの動きがあるとのこと。なるかどうかは別として、日本の貴重な産業遺産であることは確かです。この軍艦島の写真は、ここに収めるのは不可能なので、別ページをご覧ください。

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港に戻ってきたのはお昼前。朝から何も食べていないのでお腹もペコペコです。今回、長崎で食べるのはちゃんぽんでも皿うどんでも、ましてや卓袱料理でもなく、トルコライスと決めてました。事前に調べておいたお店まで、これまた長崎を象徴する市電、長崎電気軌道に乗って向かいます。この市電は頻繁に走っていて、料金も一律100円なのでタイヘン便利。実際多くの乗客で賑わっています。考えてみるとよくできたシステムですね。複雑な料金体系にするよりも、100円のほうが収受も楽だし、ましてやカードリーダーなんかの設備投資する必要もない。黒字経営のミソはこんなところにあるのかもしれません。大波止から乗った電車は出島を通って終点の正覚寺下の電停に着きました。

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ガイドブックで目星をつけていたお店を探します。商店街を少し下ったところの目立たないビルの2階にありました。奥ゆかしすぎて危うく通り過ぎるところでした。「レストラン金子」というお店です。小さい店内には他のお客はいません。壁面にはこのお店を賞賛する色紙がビッシリ飾られています。(こういうのはあまり好きではないが…)迷うことなくトルコライスを注文。
トルコライスというのは、焼飯ととんかつとスパゲティを一皿に持った料理のことで、長崎が発祥らしい。名前の由来は西洋風のスパゲティと東洋風の焼飯が合わさったので、中を取ってトルコにしたとかしないとか…諸説あるようです。手間がかかるのか、けっこう待たされたものの、運ばれてきた料理は想像以上にボリューム感たっぷり。とんかつはさっくりとしていてデミグラスソースは上々。下のご飯は焼飯に限りなく近いピラフです。そしてケチャップ味のスパゲティは口当たりも柔らか。「アルデンテ?・・・ハァ?・・・んなもん知るか!」ってな感じの昔なつかしのスパゲティですね。(今は閉店しているようです)

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満腹で苦しいが、再び市電に乗って長崎原爆資料館に向かいました。戦争の悲惨さにに打ちひしがれてしまいます。水や食糧を求めてさまよう被爆者の写真・・・それを見てるのは胃の中に充満するトルコライスに苦しむ旅行者。神様、そんなC調なヤツには罰を与えてやってください!

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再び市電で長崎駅に戻ります。電停に向かう坂道の途中、履いていたサンダルの底がとれてしまって歩けなくなりました。仕方ないので駅前のショッピングセンターで新しいサンダルを購入。予定外の買う羽目になるわ、これ以後靴づれに苦しむことになるわ、早くも罰がやってきたようです。

《っと、ここまでがプロローグ、この後、小浜温泉、雲仙、嬉野温泉、武雄温泉を巡る「バスde温泉」が続くんだが、小浜と雲仙は最近になって再訪しているので、その新しい方をご覧ください。

嬉野、武雄はそのうちに掲載するつもりです。》

  • 訪問日:2006年8月20日
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