素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

デジブック 『旅物語ツアー 前編』鳥海山・獅子ヶ鼻湿原ハイキング

2015年09月03日 | 日記
 厳美渓と栗駒山の世界谷地第一湿原を散策した1日目、鳥海山5合目・鉾立展望台、元滝伏流水、獅子ヶ鼻湿原を歩いた2日目とよく歩いた2日間であった。ツアーだと体重が増えるのに珍しく維持されたのも運動量が多かったからだろう。

 鳴子温泉から鳥海山までの行程は「奥の細道」と重なる。車窓から眺めながら「我々はバスだが芭蕉の時代はずい分苦労しただろうな」と『奥の細道』の”尿前の関”の一文に思いを馳せた。

南部道(なんぶみち)遥(はるか)に見やりて、岩手(いわで)の里に泊(とま)る。

小黒崎(おぐろさき)・みづの小嶋(こじま)を過(すぎ)て、なるごの湯(ゆ)より尿前(しとまえ)の関(せき)にかかりて、出羽(でわ)の国に超(こ)えんとす

この路(みち)旅人(たびびと)稀(まれ)なる所(ところ)なれば、関守(せきもり)にあやしめられて、漸(ようよう)として関(せき)をこす。

大山(たいざん)をのぼつて日すでに暮(くれ)ければ、封人(ほうじん)の家(いえ)を見かけて舎(やどり)を求(もと)む。
三日(みっか)風雨(ふうう)あれて、よしなき山中(さんちゅう)に逗留(とうりゅう)す。

     蚤(のみ)虱(しらみ) 馬(うま)の尿(ばり)する 枕(まくら)もと

あるじのいふ、これより出羽(でわ)の国に大山(たいざん)を隔(へだ)てて、道さだかならざれば、道しるべの人を頼(たの)みて越(こゆ)べきよしをもうす。 さらばといいて人を頼(たの)みはべれば、究境(くっきょう)の若者(わかもの)、反脇指(そりわきざし)をよこたえ、樫(かし)の杖(つえ)を携(たずさえ)て、我々(われわれ)が先に立ちて行(ゆ)く。

今日こそ必(かなら)ず あやうきめにもあふべき日なれと、辛(から)き思ひをなして後(うしろ)について行(ゆ)く。

あるじのいふにたがはず、高山(こうざん)森々(しんしん)として一鳥(いっちょう)声きかず、木(こ)の下闇(したやみ)茂(しげ)りあひて夜る行(ゆ)くがごとし。

雲端(うんたん)につちふる心地(ここち)して、篠(しの)の中踏分(ふみわけ)踏分、水をわたり岩に蹶(つまずい)て、肌(はだ)につめたき汗(あせ)を流(なが)して、最上(もがみ)の庄(しょう)に出(い)づ。


かの案内(あんない)せしおのこのいふやう、この道かならず不用(ぶよう)のことあり。
恙(つつが)なうをくりまいらせて仕合(しあわせ)したりと、よろこびてわかれぬ。

跡(あと)に聞きてさへ胸(むね)とどろくのみなり。


芭蕉、曾良の苦労に比べれば、秋雨前線に振り回されていただけのツアーなんか極楽であった。


デジブック 『旅物語ツアー 前編』
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