素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

柿の実をむくと入院生活を思い出す

2015年11月07日 | 日記
 近所から「たくさんなったのでどうぞ」と柿の実を20個余りいただいた。のんびりしているとじゅくじゅくしてくるので、せっせとむいては食べている。皮をむくのはちっとも苦にならない。果物の皮を上手にむけるようになったのは中学2年生の秋である。

 走り幅跳びの練習で踏み切った時に右大腿骨を剥離骨折をした。瞬間、痛い!と思ったが歩くことはできたのでチクチクする痛みを我慢しながら1週間近く生活をしていた。なかなか快方に向かわないので志摩病院の整形外科に行ったら、筋肉に引っ張られて大腿骨が剥離していた。即、腰から膝上にかけてギブスを巻き1ヶ月の入院生活に入った。8人部屋であった。

 私以外は皆大人だった。内科とは違って整形外科はカラッとした雰囲気であった。よくトランプ遊びに誘われ楽しく暮らしていた。勉強のべの字も頭になかった。お気楽だったと思う。

 見舞いにいただいた柿やリンゴを最初は同室の付き添いのおばさんにむいてもらっていたが、いちいち頼むのも悪いと見よう見まねで自分でむこうとした。危なかしい手つきだったのだろう、見かねて「皮むき教室」が始まった。毎日、みんなの分をむかせてもらった。最初の頃の不出来なものを我慢してよく食べてくれたと思う。おかげで、皮むきは上手になった。りんごや柿の皮を切らずにできるだけ長くむくという競争をやっても負けないようになった。

 今でも果物の皮をむいているとふとあの頃のことが浮かんでくる。教室では学べないものを学んだ。

 松本清張の推理小説に出会ったのも病院の簡易図書室だった。身近に「死」というものを感じたのもあの時だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする