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『シェエラザード(上・下巻) 』by浅田次郎

2019年12月09日 | 小説レビュー
『シェエラザード(上・下巻) 』by浅田次郎


~昭和二十年、嵐の台湾沖で、二千三百人の命と膨大な量の金塊を積んだまま沈んだ弥勒丸。
その引き揚げ話を持ち込まれた者たちが、次々と不審な死を遂げていく―。
いったいこの船の本当の正体は何なのか。それを追求するために喪われた恋人たちの、過去を辿る冒険が始まった。
日本人の尊厳を問う感動巨編。「BOOK」データベースより


本好きの職場の同僚と話をしていて、「浅田次郎なら、『シェエラザード』やで!」と聞いたもんですから、早速、図書館で借りてきました。

上下巻750頁超えで、なかなかの読みごたえでした。

出だしから、中々のハードボイルド感が満載で、大いに期待しながら読み進めました。

が、途中から何となく物語にダイブしきれなくなり、「この違和感は何やろ?」と、モヤモヤした気持ちになってきました。

一応、最後まで読了しましたが、読み終えてみてわかったことは、「全てが浅い」ということでした。

戦時中と現代とのストーリーが行き来する中で、戦時下における日本の危機的な状況を見事に描きながら、打ってかわって現代になると現実味が失われていきました。

現代版の主人公の二人(かつての恋人同士である軽部順一と久光律子)と、男の仕事のパートナーのヤクザ、そして謎の老人(台湾人マフィアのような)、そして日本の政財界の大物、さらにフィクサーと呼ばれる老人などが絡んで、とても面白味がありそうな展開なんですが、全てにおいて薄く、浅いんですよね。

登場人物の思考や、背景、相関関係など、どこをとっても、「そこまでなるか?」という感じで、説得力不足で描ききれてません。

クライマックスからエンディングにかけての流れも「んで、引き揚げたんかい?」、「どうやって引き揚げんのよ!?」と、中途半端な終わりかたですし、律子の軽部のエンディングにも「そうなるの?」と、何か釈然としませんでした。

戦時下における、兵士たちと弥勒丸の乗務員たちとのハートウォーミングなエピソードは、なかなか読みごたえがあっただけに残念でした。

★★★3つです。