「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

賢治のイーハトーブ(理想郷・世界観)『銀河鉄道の夜』by宮沢賢治

2019年12月10日 | 小説レビュー
『銀河鉄道の夜』by宮沢賢治

~貧しく孤独な少年ジョバンニが、親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って美しく悲しい夜空の旅をする、永遠の未完成の傑作である表題作や、「よだかの星」「オツベルと象」「セロ弾きのゴーシュ」など、イーハトーヴォの切なく多彩な世界に、「北守将軍と三人兄弟の医者」「饑餓陣営」「ビジテリアン大祭」を加えた14編を収録。賢治童話の豊饒な味わいをあますところなく披露する。「BOOK」データベースより


小学校の国語の教科書で読んだかも知れませんし、アニメを観た事もあります。でも、生まれてこの方48年、手にとって初めて『宮沢賢治』をちゃんと読みました。もちろん『銀河鉄道の夜』や、『よだかの星』、『オツベルと象』、『セロ弾きのゴーシュ』というタイトルは聞いたことがありますし、あらすじならストーリーも知っています。でも手にとってじっくり読むのは初めてだったんですね。読書家としては恥ずかしい限りです。

さて、メインディッシュともいえる『銀河鉄道の夜』は、すぐに猫のアニメの映像が浮んできますよね。



私が借りたこの単行本の中には、『双子の星』、『カイロ団長』、『黄いろのトマト』、『ひのきとひなげし』、『シグナルとシグナレス』、『マリヴロンと少女』、『猫の事務所』、『北守将軍と三人兄弟の医者』、『饑餓陣営』、『ビジテリアン大祭』が収録されていて、お得感がありますね。

短編集なので、少し時間があるときにサラッと読めそうですが、なんせ、この文庫版は「字が小さい!」ただでさえ『賢治ことば』で紡がれる文章を読み解くのに時間がかかるのに、フォントが小さくて、とっても読みにくいです。

逆にいえば、「物語の深いところまで、じっくりと読ませる為の作為なのかも知れないなぁ」とも思ったりします。

どの短編にもキラキラとした哀愁が漂い、どことなく薄ら寒くなるようなお話が多いのですが、中には賢治特有のユーモアが織り交ぜてあり、なかなか楽しめました。

僕のお気に入りは『カイロ団長』、『セロ弾きのゴーシュ』、『ビジテリアン大祭』ですね。



特に『カイロ団長』は絵本にもなっているので、子どもと読んでも楽しいですよ。

宮沢賢治は、動物や植物、太陽や月、星、そして信号機や屋根までにも心と言葉を持たせて、とても不思議な「イーハトーブ」の世界観を広げています。

こういう作家さんが、37歳という若さで早世してしまったことは残念でなりません。

この単行本は沢山の短編が収録されていてお得感もあるので、「賢治のイーハトーブ」に浸りたい方にはオススメです。

★★★☆3.5です。