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相変わらず痛快な作風『逆ソクラテス』by伊坂 幸太郎

2021年09月14日 | 小説レビュー

『逆ソクラテス』by伊坂 幸太郎

~逆境にもめげず簡単ではない現実に立ち向かい非日常的な出来事に巻き込まれながらもアンハッピーな展開を乗り越え僕たちは逆転する!無上の短編5編(書き下ろし3編)を収録。「BOOK」データベースより

「一番好きな作家さんは?」と聞かれたら、少し迷いながらも、「伊坂幸太郎氏が3本の指に入るのは間違いないです!」と言いますね。 数えてみたら、伊坂氏の作品だけで、すでに35作読んでますもん 大ファンです。

さて、今回の作品でも、相変わらず人生訓というか、生きていくうえで当たり前に大切にしていかなければならない教訓、名言がたくさん出てきます。

本作は、5つの短編が収められているんですが、どれも繋がっているような?いないような?とても不思議な雰囲気です。主人公は小学生なんですが、これがまたエエ味を出しているんですよね。

僕自身は少数派にはなりたくないですし、できれば皆さんと共感しながら生きていけたらいいと思っています。

ダイバーシティが共通語になり、多様性を認め、「個の特性を生かそう、他人の個性を認めよう」などと声高に叫ばれていますが、日本人は特に多数派の意見に流されそうになりがちだと思いますね。そういう教育システムなんでしょうけどね。

さて、この作品の中で謳われているテーマは、「周りの人や自分自身に対して先入観やレッテルを貼らず、その個性を認め、勇気を持って自分の意見を言おう、一歩を踏み出そう」ということではないでしょうか?

例えば、担任の先生が、難しい問題を出して、優秀な生徒が正解した場合、「さすがは〇〇さんだ」と、その才能を認める発言をすると、みんなが「〇〇さんは賢い優等生」という憧れのような認識を持ちますし、解答できなかった生徒に対して、「やっぱり△△くんはダメだなぁ」と、ダメっぷりを強調すると、「△△くんはダメなやつ」と見下した付き合いになりがちです。

このように、一人の先生やクラスのリーダーが決めた価値観や、その人に対する評価・評判を持って人を判断するのではなく、そう思わないのであれば「僕はそう思わないよ」と、堂々と言える勇気を持とうではないかという話ですね。

夢を早々にあきらめるのも、「どうせ私なんか」という、自分自身に対するマイナスな先入観であきらめてしまっていませんか?もしプロ野球選手から「君は素質があるから一生懸命練習すればプロになれるよ」と言われれば、「やってみようか!」と一念発起するかもしれません。

生きている限り、前に進んでいる限り、何かが変わる可能性は誰しもが持っているはずですし、勝手に自分で自分の限界ラインを決めてあきらめることなく、小さくてもいいので、夢を持って過ごすことが大切なのでしょう。

読後感が清々しく気持ちいい作品でした。

★★★☆3.5です。