不美人な妾ばかりを囲う六兵衛。その一人、先行きに不安を覚えていたりきは、六兵衛が持ち込んだ張形に、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。それは、かつて手酷く捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。もしや己の子ではと声をかけるが―(「はじめましょ」)他、全六編。生きる喜びと哀しみが織りなす、渾身の時代小説。「BOOKデータベース」より
本当に久しぶりに、「小説レビュー」をアップします

昨年から全く本を読む時間が無かったので、ようやく図書館での貸し出しを再開することが出来ました!本当にうれしいです



さて、西條奈加さんの作品は、江戸の人情噺かと思いきや『まるまるの毬』by西條奈加、以来ですが、とても読みやすく美しい時代小説を書かれます。
『まるまるの毬』でも感じたのですが、ストーリーのプロットがとても上手く構成されていて、読んでいて「ん?」と感じる箇所がほとんどないですし、中だるみすることなく、スラスラ読めてしまいます。
今回の『心淋し川(うらさみしがわ)』は、【第164回直木賞受賞作】であり、ずっと読んでみたいと思っていました。
内容は、連作短編集で、「心町(うらまち)」という一つの集落で、貧しくとも強く生きようとする人たちの人間模様を描いてあります。
その貧乏長屋集落の中心にいる差配(所有主にかわって貸家・貸地などを管理すること。また、その人。差配人)の茂十という男が、物語のカギを握っており、段々と色々なことが明らかになっていく様は読んでいて気持ちいいです。
色々な登場人物が出てきますが、それぞれに一生懸命に生き抜いており、それが西條さんの筆によって、生き生きと描かれています。
久しぶりに小説を読破し、しかも良い内容だったので、心がとても豊かになりました。
★★★☆3.5です。