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インドのパンジャブ音楽が熱い

2020-06-21 17:39:52 | インド

昨年、インドのクリエイティブチームが、スマートフォンのRealme(インドの新進気鋭のブランドで、インドでトップ5に入る)のコマーシャルの仕事で、チャンディガルに行ってきたのですが、その時、何故チャンディガルなのかピンときませんでした。しかし、調べてみたら、いろんなことがわかりましたので、ここでその断片をご紹介します。

まずは、Realmeのコマーシャルをご紹介しておきます。



Realme 5という2019年の8月に発売されたアンドロイドフォンですが、価格の割に機能満載ということで、歌詞の中にやたら機能が盛り込まれています。

これを作ったのが、チャンディガルにあるプロダクションなのですが、この地域に音楽スタジオや、音楽産業のインフラが集積しているというのがわかりました。

チャンディガルは、パンジャブ州とハリヤナ州の州都を兼ねている都市ですが、行政上は独立した連邦直轄領になっています。ル・コルビュジェの都市計画で作られた都市として有名ですが、インドの中で最も高い生活水準の都市となっています。

昨年の11月に、”Chandigarh Mein”というボリウッド映画が封切られました。音楽はパンジャブ音楽です。



歌詞は、「チャンディガルに家を買ってちょうだい」みたいな内容のようです。

映画に関しては、ムンバイのボリウッドがインドの中心地なのですが、音楽に関してはチャンディガルが中心地なのです。

もう少し正確に言うと、チャンディガルの南西に隣接しているパンジャブ州のモハリ(Mohali)という地域です。正式名称は、Sahibzada Ajit Singh Nagarという長い名前です。一般にはモハリと呼ばれています。チャンディガルの郊外にあたり、工場跡や倉庫跡を利用して、撮影スタジオ、音楽スタジオができ、音楽インフラが集まってきました。



以前は、パンジャブ州のジャランダールという都市がパンジャブ音楽の中心地でしたが、モハリが取って変わったようですね。
モハリには、Speed Recordsや、White Hill Musicなどの有名スタジオがあり、年間何百もの音楽が量産されています。

パンジャブ音楽は、もともとインドとパキスタンにまたがるパンジャブ地域のローカルな音楽と踊りでした。この記事のトップの画像が、昔のパンジャブ音楽のイメージです。しかし、今や、ボリウッドの音楽やダンスは、パンジャブ音楽とダンスに大きく影響を受けています。また、インド国内だけにとどまらず、イギリスや、北米でも人気になっています。

実は、パンジャブ音楽に注目が集まったのは、欧米が先でした。前世紀から「バングラ」という音楽ジャンルがありました。バングラデシュとは全く関係がなく、パンジャブ舞踏音楽のことです。「バングラ」のスペルは”Bhangra”で、「バングラデシュ」のスペルは”Bangladesh”。カタカナで書くと似てますが、rとlの違いですね。”Bhangra”はパンジャブ地方で古くから行われていた、収穫を祝う歌と踊りを意味していました。

パンジャブ人は、シーク教徒(頭にターバンを巻いた姿でお馴染み)が多いですが、世界中に移民で広がっています。シンガポールのラッフルズホテルのドアマンもそうですし、以前の香港の警察にも多かったみたいですね。アメリカでは、”Bhangra Blowout”というパンジャブダンスのコンテストが定期的に行われていて、アメリカ在住のパンジャブ人たち(もともとは学生が多かったですが)が参加するコンテストになっています。今年はコロナの関係で中止になってしまいましたが。

パンジャブ音楽(バングラ)は、特にロンドンの音楽シーンで注目を集め、それがインドに逆輸入され、パンジャブ州が音楽産業の中心地として隆盛していると思われます。

インドでは、”CROSSBLADE”(クロスブレード)というパンジャブ音楽のフェスも行われています。2018年にジャイプールで行われた、イベントはこちら。



盛り上がっていますね。パンジャブ州という地域に関係なく、パンジャブ音楽はインド音楽と言ってもいいくらいの人気となっています。メインスポンサーのGaanaというのは音楽ダウンロードサイトの名前です。

パンジャブ音楽は、トラディッショナルなものから、DJラップ系のもの、パーティソング、ロマンチック系など様々なジャンルがあるようですが、ユーチューブの視聴者数でインドのミュージックビデオとして10億ビューを最初に超えたのは、パンジャブ映画の”Laung Laachi”という曲でした。



現在では、11億ビューを超えていますね。内容的には、割と伝統的な感じですが、これもパンジャブ音楽というジャンルに入るようです。インドの音楽産業に関してはまだまだ書くべきことがいっぱいありますが、きりがないので、今日のところはこれくらいに。また気が向いたら(資料が集まったら)続きを書きます。
コメント (5)
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