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広告コミュニケーション世界の2022年の動向

2022-01-23 23:17:20 | 広告
2022年が始まってすでに一ヶ月が過ぎようとしています。昨年末に2021年のまとめを自分なりにしないといけないと思っているうちに月日が経ち、こんなタイミングになってしまいました。そうこうしているうちにオミクロン株が広がり、コロナ感染者数も急拡大の途上にあります。これからの2022年がどんな年になるのか不透明な部分がありますが、特に広告コミュニケーションの分野において予測されることを自分なりにまとめておきたいと思います。

まず、2021年の振り返りとして、GOOGLEが毎年発表している、”Year in Search 2021”の動画を見てみましょう。一年間で最も検索されたワードを集めた動画です。



2020年から世界に蔓延したコロナは、2021年になっても収束しませんでした。ワクチン接種が行われ、感染も収束するかと思われたのですが、デルタ株やら、オミクロン株やら新たな変異種が登場し、未だに感染は継続しています。

今後のトレンドは感染の状況によってわからない部分もありますが、個人的に見た世界の2022年のトレンドを10個にまとめてみたいと思います。

1.コロナ禍でも広告費は伸びてゆく



2020年はマイナス7.2%だった世界の広告費成長率は、電通グループ資料によれば、2021年に+10.4%で増加し。2021年中に、コロナ前の2019年の水準を回復、2022年には+7.2%で伸び、過去最大の約6,800億ドルに達するとの予測です。

日本市場も、2020年はマイナス成長でしたが、2021年には回復基調(日経広告研究所によれば、2021年の広告費は前年度比+10.4%)、2022年の成長率は4.2%になると見られています。

2022年のオミクロン株による感染の急拡大のため、この予測も修正が必要かもしれませんが、成長率は多少鈍化しながらも、成長は続いていくと思われます。

中でも成長が見込まれるのは、デジタル広告費。世界的に見ると、2021年には前年比+5%以上で増え、世界の総広告費に占める割合がすでに50%を超えた模様です。

日本でも、デジタル広告は2019年にテレビ広告費を凌駕。2020年はデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速が追い風となり、2021年のインターネット広告の成長率は21%と見られています。広告メディア全体の中での主導権が、主要4媒体からインターネット広告(デジタルメディア)に移りつつあると言えるでしょう。

広告に関する信頼度という点で見ると、新聞やテレビのほうが世界的にデジタル広告よりも高いというデータもあります。
ジャンル別に見ると、世界的には、シネマアド(+28.1%)、屋外広告・広告交通広告(+9.2%)の伸びが顕著です。全広告費に対するシェアは、シネマアドは0.4%と小さいですが、屋外広告・交通広告は5.6%となり、新聞(4.7%)やラジオ(5.4%)を抜いて、テレビの次の主要媒体カテゴリーとなっています。

国別に見ると、2022年に最も広告費の成長が見込まれる国はインド(+12.1%)。その次は、ラテンアメリカ(12.1%)、英国(8.5%)となっています。英国は感染がピークアウトしつつあるとか言われていますが、インド、ラテンアメリカは1月に入って感染が急拡大しているので、広告費の伸び率がいくぶんか鈍化する可能性もあります。

2.世界の広告業界の合従連衡



世界の広告業界は合従連衡が進んでいます。中国の春秋戦国時代や、三国志の時代を見ているような感じです。世界の広告業界は、いくつかの巨大グループに統合されています。

現在世界最大なのは、WPPというエージェンシーグループ。この傘下には、ワンダーマン・トンプソン(JWTがワンダーマンと2018年に合併)、オグルヴィー(オグルヴィー&メイザーが2018年に改名)、グレイ(Grey)、ヤングアンドルビカムなどの広告代理店、メディアエージェンシーのグループM(マインドシェア等)、CI/VIのランドーアソシエイツ、ヒル&ノールトンなどのPRエージェンシーなどがあります。

二番手はBBDO、DDB、TBWAなどを傘下に持つオムニコムグループ。そして三番手は、ピュブリシス、サーチ&サーチ、レオバーネット、BBH、ファロンなどを傘下に持つピュブリシスグループです。

売上規模四番手に入っているのがアクセンチュア。以前、アーサーアンダーセンと言っていたコンサルティングファームなのですが、デジタル分野を中心に広告業界の大手になってしまっているんですね。著名なクリエイティブブティックを何社も買収していて、今後さらに規模を拡大していくものと思われます。

7位のデロイト、9位のPWC(プライスウォータークーパーズ)もともに世界的なコンサルティングファームです。世界の広告業界のプレイヤーが大きく変わってきています。

5位に入っているのが電通グループ。6位がマッキャン、FCB、RG/A等を傘下に持つインターパブリックグループ(IPG)です。

8位にIBMが広告業としてランクインしてますし、10位には中国系のPR会社の藍色光標伝播集団(Bluefocus Communication Group)が入っています。世界の広告代理店地図が随分変わってきていますね。

3. SDGs(サステナビリティ)の重要度が増す



SDGsは2015年の国連サミットで採択されたもので、すでに数年の歴史があるのですが、これが広告コミュニケーションの世界でもますます重要な概念になってきます。

世界の広告クリエイティブの祭典カンヌライオンズにSDGs部門が新設されたのは2018年。日本でも、2020年に電通広告賞にSDGs特別賞が新設されました。

また2021年12月22日に電通が「サステナビリティコミュニケーションガイド」を発表し、広告表現においてもサステナビリティを踏まえた表現が重要になっています。「サステナビリティ」は、地球温暖化やカーボンニュートラルなどの環境問題だけでなく、ダイバーシティーや人権、インクルージョン等も重要なコミュニケーション課題となっています。インクルージョンとは、あらゆる人を社会や組織の一員として尊重する考え方ですね。

「人権デューデリジェンス」や、ESG(Environmental, Social, Governance)も類似の概念ですが、コーポレートコミュニケーションで重要な視点となりつつあります。

また、欧米ではDEI (Diversity, Equity, Inclusion)という言葉もよく使われるようになっています。「多様性、公平、包括」という意味ですね。DEI(デイ)という言葉が日本でどこまで広がるかわかりませんが、世界の広告業界ではこの言葉が頻繁に登場してくるのではないでしょうか。

企業コミュニケーションもこの文脈に沿ったものが求められるし、クリエイティブ表現もこれを踏まえたものにする必要があります。

4.「パーパス (Purpose) 」という言葉が流行る



海外ではコロナ前から頻繁に使われるようになった言葉ですが、企業の存在理由、ビジョン、志などを包括した概念です。日本ではカタカナ語でそのまま使われるようになるのはよくありますね。例えばオリンピックでよく使われた「レガシー」という言葉。翻訳しにくい概念だったのですが、カタカナで定着しましたね。「パーパス」も同じで、広告コミュニケーションの分野でよく使われるようになるものと思われます。

3年くらい前、シンガポールで広告業界のセミナーに参加した時、「パーパス」という言葉があたりまえのように使われていました。

広告コミュニケーションにおいても、単に商品やサービスのメリットを訴求することだけでなく、企業の「パーパス」を感じ取ってもらうことが重要なコミュニケーション課題となっています。「ソーシャルグッド」(社会によい影響を与える取り組みや活動)や、「エシカルブランディング」(倫理的ブランディング)などの言葉も流行するようになっていますが、企業は、商品やサービスを販売して利益を拡大していくということをビジョンとするのでは不十分で、その奥にあるフィロソフィーが重要になってきているんですね。

5. メタバース (Metaverse) で体験が変わる



メタバースは変化や超越を意味する「メタ」と宇宙を意味する「ユニバース」が合体してできた言葉で、インターネット上に構築された仮想空間を意味しています。

2021年10月28日、マーク・ザッカーバーグはFacebookという社名をMetaに変更することを発表しましたが、メタバースへの大きな方向展開を意図したものだと言われています。

Facebook以外にも、マイクロソフト等の企業もメタバースを強調してきていますし、アメリカのラスベガスで2022年1月上旬に開催された世界最大のテクノロジー見本市のCES(セス)= Consumer Electronics Showでもメタバースは主要テーマの一つでした。

今後、メタバースの技術革新により、展示会、屋外広告、エンターテインメントなど様々な分野でユーザー体験が進化していくものと思われます。

6. OTT/Connected TVでメディアが変わる



OTT (Over-The-Top) とは、インターネット回線を通じて配信されるコンテンツのことです。ネットフリックス、フールー、アベマ、ティーバー、スポティファイなどはみなOTTですね。

コネクテッドTVとは、コンテンツを視聴する時に使用されるデバイスを意味します。現在、日本の量販店で販売されている最新テレビはほとんどがインターネット通信機能を持つコネクテッドTVで、消費者の68%がテレビからインターネット接続可能となっています。

これに伴い、コネクテッドTV広告が増加しています。米のコネクテッドTV広告市場は2021年に113.6億ドル(約1兆1千万円)、2022年には24%超の伸びが見込まれています。

国内では2020年に102億円、2022年には58%伸びると見られています。コネクテッドTVは、従来のテレビと違い、各ユーザー特性や、場所、時間などでターゲティング可能なので、よりパーソナライズ化された広告配信が可能になっていきます。今後ますます拡大する分野と思われます。(情報ソース: https://otonal.co.jp/blog/11621

7. NFTがオンライン取引を変える?



NFTとは非代替性トークン (Non-Fungible Token)の略語で、デジタル世界でオリジナルファイルと認証する方式です。オンラインのデータは簡単にコピーできてしまうのですが、これをコピーできなくし、本物であるという鑑定書をつけるような感じがNFTです。アート、スポーツ、ゲーム、音楽、ビジネスなど様々な分野での活用が見込まれます。広告業界の動きとしては、例えば、広告枠をNFTとして販売する実験等も行われているそうです。

今後もいろいろな活用が展開されるものと思われます。

8. 韓国パワーが世界を席巻




韓国のエンターテインメントの人気は世界的に拡大しています。アカデミー賞でも「パラサイト半地下の家族」や「ミナリ」等、韓国映画の受賞が続いていますし、2022年も「イカゲーム」が世界的に話題になりました。

音楽分野では、BTSはもやは世界的なトップスターだし、他の音楽タレントも世界での存在力を増しています。

欧米のハイブランドで韓国のタレントをグローバルのアンバサダーとして起用するケースも増えています。「世界で最も美しい顔2021」(女性)および「世界で最もハンサムな顔2021」(男性)の中でも韓国勢が上位にランクされています。その数も日本のタレントの数をはるかに超えています。

ちなみに、男性の3位はBTSのVだし、5位はBTSのジョングク(2019年は一位)。女性の一位はタイ人ですが、韓国のブラックピンクのLisa、5位は韓国グループのMomolandのNancy、10位は韓国グループのAfter SchoolのNanaでした。

また、Campaign Asiaが毎年行っているブランドランキングでは、Samsungが10年間トップを維持しています。Samsungは日本のみ圏外ですが、アジアのほとんどの国で1位のブランドとなっています。

9. 世界が注目するZ世代 



Z世代とは、1997年から2012年代生まれ(1995年から2010年と定義する場合もあり)で、現時点では25歳以下の世代を指す言葉です。アメリカでは20%を超えており、マーケティング上も重要な世代となっています。世界の全人口におけるZ世代の人口比率はおよそ3分の1で、とても大きな人口規模です。日本では世界の比率とはかなり少なくて、人口の14%と言われています。

生まれた時からインターネットがあった彼らの特徴としては、マスメディア離れが顕著で、社会問題への関心が高く、ブランドに対するこだわりがあまりないと言われています。また、彼らの間では、Facebookはすでに人気がなくなっていて、インスタグラムやTikTokの人気が高くなっています。

10. 中国との距離に悩む世界



まもなく北京オリンピックですが、現地での感染拡大で心配が増えていますね。イアン・ブレマーが発表した「今年の10大リスク」のトップが、「中国のゼロコロナ政策の失敗」となっています。またリスクの4位が「習近平政権の統制強化で中国経済が低迷」となっています。これまで行け行けドンドンで拡大してきた中国に暗雲が立ち込めています。

市場としての中国の魅力はありながらも、世界はますます脱中国化を進めていくと思われます。製造業も中国依存を見直しています。ウィグル問題、香港や台湾への圧力、南シナ海の問題、中印国境問題など、周辺諸国との軋轢が強くなっており、米国をはじめ各国が中国との距離を取りつつあります。

トルコ、チェコ、リトアニア、ポーランドなども中国への反発、ないしは台湾支援を示しています。香港、台湾、タイのアジアの若者たちもオンラインで「ミルクティー同盟」を結成し、民主化で連帯。それは、ミャンマー、インドなどにも広がっています。

中国は国内では少子高齢化が今後ますます加速し、高齢化の問題が拡大しています。

中国Z世代は、一人っ子政策のため全人口の18.2%ですが、それでも2億6千万人の人口規模となっています。中国は市場としての魅力は存続しつつも、中国をめぐって世界はイライラしながら、関係を模索していくものと思われます。

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私は東南アジアやインド、バングラデシュなどに向けての広告を専門にしていますが、今後はビジネスチャンスが増えていくとを期待しています。コロナ禍が続きますが、2022年が皆様にとりましても商売繁盛の年となりますことをお祈りしております。

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