ペンブルック(Pembroke)の町を抜けると、雨足が更に強まってきました。
しかし、しばらくすると雲の下に明るい空が覗きます。
地形の変化に応じて、雲の流れが変わるようです。
牧草地の中へ、開放感に溢れる道が、旅情深める曲線を描いていました。
その先に待っていたのがフィッシュガード(Fishguard)の町です。
この街もパステルカラーでした。
街に入ってから、気分のままにハンドルを操り、住宅街の中に続く路地へ入って行きました。
こんな時はナビを止めて、散策でもするような気分で、車をはしらせます。
街は台地の上にあり、住宅街を抜けて坂を下ると、海岸に出ました。
波打ち際に水溜まりを見せる、砂利敷きの小さな駐車スペースがありました。
車を停めて、小雨の中を波打ち際へ足を運ぶと、目の前をフェリーが遠ざかって行きます。
フェリーの行く先は、多分アイルランドでしょう。
台地の上にフィッシュガードの街が見えていました。
フィッシュガードという名は漁村を想わせます。
しかし、この外洋に面した漁業の町は、海辺を避けて、見晴らしが効く丘の上に、用心深く居を構えます。
それなりに、訳がありそうな光景です。
再び街を貫く幹線道路へ戻り、進路を北へ進みました。
街外れで坂を下ると、その先で古風な石橋が待っていました。
石橋を渡ると、数えるほどの家々が肩を寄せ合って、海と川と台地の狭間で小雨に濡れていました。
その地区で下町(Lower town)の表示を目にしました。
どうやらこの場所がフィッシュガードの旧町区のようです。
漁村の雰囲気に浸された家並が、寂しく佇んでいました。
日本でいえば、伊豆半島西海岸の、海に迫る山稜から小川が海に流れ出す狭間の井田、北海道の暑寒別岳が海に落ち込む崖にはりついた浜益、そんな寒村が思い出されます。
50mほどの短い路地を抜けると、小さな河口が、狭い入江に注ぎ込んでいました。
そこには案の定、砲台が置かれ、
据えられた岩の上では、魚が群れをなしていました。
岩に嵌め込まれたプレートには、それらが鰊と記されていましたから、魚の群れは「群来」そのものです。
だとすれば北海道の浜益村と瓜二つではありませんか。
岩の上の鰊の群れ
下町フィッシュガードから坂道を登り、台地の上に出ると、細い入江を挟んだ新市街が望めました。
足元では、シシウドにも似たセリ科の白い花とキンポウゲの黄色い花が、朴訥な面持ちで海を眺めていました。
下町に宿を求めればきっと、群来に湧いた古の話と、漁師達が砲台を操った、夜を徹する勇猛な問わず語りの物語が、聞けたに違いありません。
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