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貴婦人の町のデェービスさん

2012-07-22 21:35:11 | イギリス一周 花の旅

 今回の旅は全行程を車で移動しますので、計画の当初から、できるだけ車の特性を生かしたいと考えていました。

    

 複数の選択肢がある場合は、公共交通機関では行き難いルートを選択しました。

    

     

 グラスゴーに植物園があるので、今日は、そこは外せませんが、途中経路として公共交通機関で行き難い場所を探すと、インヴァレリー(Inveraray)という町が面白そうです。

     

 ナビにインヴァレリーと入力してスタートしましたが、幹線道路A82を走る途中で、ナビは右折して一般道B8074へ入るようにアナウンスしました。

   

   

 四桁の番号が付いた道路は初めてで、しかも道は砂利道です。

   

 ちょっと、戸惑いました。しかし、山の稜線が進行方向に向かって下がっています。

 目的地は海に面した町ですから、地形に矛盾はありません。

   

 道の轍はある程度の交通量があることを示しています。

   

 車のガソリンメーターも数百キロは走れることを保証しています。

   

 判断はGO。

 見通しが良くないので、対向車に注意してスピードを落します。

   

 誰か個人の庭へでも入って行きそうな雰囲気の道です。

   

   

 途中から右手に、道路に平行して川が流れ始めました。

 岩の露出した場所を、鉄分を含んだような色の水が流れていました。

   

   

 流れは穏やかで、小さな関を見かけました。

   

 鱒が岩影に潜んでいそうな雰囲気です。

   

   

 小さな川は、直ぐに幅を広げて川原を見せていました。

   

   

 対岸の山裾は放牧地です。

   

 こんな長閑な道を走っていると、肩から力が抜けていくような、寛ぎに満たされます。

 やっぱりドライブは、信号も標識もない田舎道が楽しい。

   

   

 牧草地に包まれた池の畔に古城跡を見かけました。

 いいな~、こんな景色 !

   

   

 15分程度だったでしょか、案ずるようなことも無く、また幹線道路A85に合流しました。

   

 こんな些細なことが、不思議と記憶に残ります。

   

   

 目的地のインヴァレリーの街はガイドブックに「ファイン湖畔の貴婦人」と紹介されています。

   

   

 確かに気品ある街並みでした。

  

 港の帆船アークティック・ペンギン号が船底を見せていました。

   

 干満の差がこんなにあるんですね、驚きです。

   

 この船は1911年から1965年まで灯台船として、その後は観光帆船として使われていたそうです。今は船上博物館となっています。

   

   

 まだ、朝が早いので、人気のない港は静寂に包まれていました。

   

   

 この町の鐘楼は第一次世界大戦で戦死した町民を追悼して、町の創設者が建てたもので、この鐘楼の鐘は8トンもあって、世界で二番目に重いそうです。

   

   

 私は今朝4時半から動き始めましたので、今はまだ7時半。街の商店は全て閉まっていました。

 たまたま一軒だけシャッターを開け始めたパン屋さんがあったので、朝食を求めて中に入りました。

   

    

 30代と思える店主の左腕に、日本語で「デェービス」と刺青が彫られていました。

 「おお、デェービスさん」と私が声を上げると、店主は「何で分かったの?」といった怪訝な顔をします。

   

 私が「何で日本語で彫ったの?」と聞くと、彼は「これは私の名前です」と答えました。

 (それは分かってますよ)

 しかし、会話がちぐはぐなので、私は「いいねー! (It's nice!)」と応じ、親指を立てて、笑顔で祝福してあげました。

   

 店主は、はにかんだ笑顔をみせて、「サンキュー」と嬉しそうでした。

   

 「ファイン湖畔の貴婦人」の住人は、朴訥で穏やかで、平和な日々のように見えます。

   

 このパン屋さんのサンドイッチで朝食を済ますと、私は再び次の町を目指しました。

   

   

   

 補足

  地球の歩き方の「スコットランド」にはファイン湖と記載されていますが、地図で確認すると、ファイン湖の地形は日本語では湾、ないしは入江に相当します。しかし、イギリスの地図を見ると、このような地形には、多くの場合「Loch」の名が付けられていました。

 辞書には「 Loch ; n.(スコットランド語)湖、入江 」 と記載されています。

 

   

 

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スコットランドの山と谷

2012-07-22 15:37:28 | イギリス一周 花の旅

 フォート・ウイリアム(Fort William)で朝を迎えました。

     

 真っ赤な朝焼けに空が染まっています。 

 ということは、今日はあまりお天気が良くないのかもしれません。

  

   

 私は急いで出発の準備を整えると、車のエンジンをスタートさせました。

 

 フォート・ウイリアムはイギリス最高峰のベン・ネヴィス山(Ben Nevis 1355m)への登山口となっています。

   

 昨晩、通りすがりにその姿を確認したので、今朝は麓から、朝日の当たる山容をカメラで捉えようと考えていました。

   

 2~3キロ戻れば撮影ポイントが探せるだろうと考えたのですが、立木が邪魔で、思うようなポイント見つかりません。

   

 

 周囲をあたふたと走り廻っている時に、ピークが赤く染まってきました。

 

 しかし、それはほんの一瞬でした。

 次の瞬間に東の空の雲が光を遮り、瞬く間に山は平凡な表情に戻ってしまったのです。

 

 

 まあ、そんなものです。

 

 ちょこっと寄って、良い写真を撮ろうなんて、そんな都合の良いことが簡単にできるはずはありません。

 

 分かってはいるのですが、何事もチャレンジ。

 人生と同様、駄目でもともと、ダメモトです。

 

 

 再び、フォート・ウイリアムへ戻ると、港の様子や、鉄道ファン憧れのジャコバイト号という蒸気機関車が走るウエスト・ハイランド鉄道の始発駅を見学したり、もう二度と訪れることはないかもしれない街の様子を目に焼き付けました。

   

 

 

  

   

 街を離れると程なく、グレンコー(Glen Coe)渓谷へと入って行きます。

 

 この渓谷の絶景は、スコットランドの中でも3本指の中に入ると評されています。

   

   

  最初にビデアン・ナム・ビアン(Bidean nam Bian)が出迎えてくれました。

   

   

 麓に一軒の農家が見えます。

 

 

 しばらく進んで振り返れば、私は今、美しい渓谷のまただ中に居ることが確認できます。

 

 

   

 麗しい曲線が山裾をなす景観を楽しみながら、何度も路肩に車を停め、走りながらも手からカメラを放さず、シャッターを押し続けました。

   

 

 岩凌に分け入る道が、急斜面を登っています。

 

 

 渓谷の出口、曠野を目の前に見て、一軒の農家の姿を認めました。

 牧畜を生業とする人々の住処は、静かで孤独で、そして逞しくもあります。 

   

 

   

 この光景を見ていると、暖かい陽射しの中で、蛙鳴く田の傍に肩寄せ合って暮らす、陽出る國の民と、思考方法が異なるのは無理からぬことと思えてきました。

   

 美しい渓谷を抜けて、風の中に道は続き、

   

   

 ラノッホ湿原と名付けられた、湖沼の広がる光景の中へと進んできました。 

   

   

  

 そしてそこでも、ジギタリスのピンクの花群れが、静かな風の中に揺れていました。

 

 

 

 

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ネス湖で膨らむもの

2012-07-22 11:54:31 | イギリス一周 花の旅

 ネス湖(Loch Ness)湖畔のアーカート城の駐車場に車を停めたのは、アラプール(Ullapool)を出発してから一時間後のことでした。

 

 既に城跡の公開時間は過ぎておりましたが、柵の外から城の佇いを覗き見ることができました。

  

 

  

 私以外にも公開時間に間に合わなかった観光客が、中を覗く場所に代わる代わる来ては、カメラのシャッターを押していました。

   

 ネッシー君はお伽話ですから、外から想像を膨らませて楽しむ程度で、丁度良いのかもしれません。

   

 しかし、居るかもしれないと思って見ると、凡庸なネス湖の風景が何かを語りかけてくるような、そんな気持ちになるのが不思議です。

    

  

 南北に38キロもある、ネス湖西岸の道を南へ向いまいた。

  

  

 ご覧のように、特に何があるわけでもないのですが、陰鬱な風景に想像力が膨らみますます。

  

  

 日本は国策として、観光客誘致に力を入れていますが、観光施策を考える時にネス湖は、人を集めるために重要なことは、風景の中にストーリーを付加することが最も有効なのだと、教えてくれているようです。

    

 朝、インバネス(Inverness)を出発し、イギリス本土最北端の地を、海岸線に沿って一周し、私はいまフォート・ウイリアム(Fort William)の港に到着しました。

  

  

 港から北の方角へカレドニアン運河が伸び、ロッキー湖とネス湖を繋ぎ、インバネスを経て、北海に繋がっています。

 

 

 

 絶え間なく溢れ下る水の音が、永かった今日一日の時の流れを思い出させてくれます。 

 

 晴天に恵まれた、素晴らしい一日でした。

 野に咲く花は期待したほどに見ることはできませんでしたが、澄み渡った青い空と海、島影を背にした石積みの家、湖にシルエットを映す岩の嶺、お伽噺話の絵のような海辺の町、などなど、数えきれぬ程の美しい映像を脳裏に刻むことができました。

 

 きっと、芳醇なスカッチや頑固な地ビールなどを口に含むたびに、今日出会った幾つかの情景が、突然脳裏に浮かび上がってくるに違いありません。

 

 今日一日で使い切れぬ程の宝物を手にしました。 

 そうです、今でも思い出す、あの若き日の北の岩稜の、雷雨の岩壁で、ハーケンの横に咲いた赤いタカネバラの一輪のように。

 

 満ち足りた思いを胸に、今夜はこの街で夜を過ごすことに致しましょう。

 良い夢に彩られた一夜となりそうです。

 

6月20日の位置

 

 

 

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荒野の旅の終わり

2012-07-22 11:01:33 | イギリス一周 花の旅

 突然、目の前に海が広がりました。

  

  

 穏やかな砂浜が弧を描いていました。

  

  

 道なりに、小さな丘を越えると、

  

  

 絵本のような、可愛い街が、内陸深く切れ込んだ湾の畔に見えてきました。

  

 その町の名はアラプール(Ullapool)

 この町からは、ルイス(Lewis)島へフェリーが出ています。

   

 

  

 港にお瀟洒なレストランが並んでいました。

  

  

 ご婦人がお二人、フェリーの時間を待っているのでしょうか。

 暖かな陽射しの中で、ゆっくりと過ぎて行く午後の時を楽しんでいました。

  

  

 お伽噺のような光に包まれたアラプールの港では、6月の風が更紗のように頬を撫でていきます。

 

 時計は既に18時を告げていました。

 

 私も心地良い光と風の中で、寛ぎのひとときを過ごし、新たにナビへ、ネス湖の名をインプットしました。

 急げば、今日中にネッシーに会えるかもしれません。

 

 車は南東へと進路を変え、白い雲の下を急ぎます。

 

  

 インバネスの手前で南へ進路を変えると、広葉樹の並木が現れ、別世界に紛れ込んだような荒野の旅が終わったことを告げていました。

  

   

   

 

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