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夕闇の迫る道を北へ

2012-07-13 18:53:38 | イギリス一周 花の旅

 湖水地方で「ハイ・アドベンチャー」を体験し、私はすっかり満足していました。

 

 ワーズワースやピーター・ラビットに関する施設を見たかった訳ではなく、それらの作品の背景となった、木や花や湖など、湖水地方の自然に触れて見たかっただけなのです。

 

 短時間でしたが、湖水地方を車で廻り、イギリスという国の中で、この地方ならではの、柔らかく、湿潤な自然を肌で感じることができました。

  

 

  

 ガイドブックに、湖水地方の見所としてアンプルサイドの北のグラスミア湖が記されていました。

 

 湖水地方を去るに際して、その湖を経るルートを選定しました。

  

 既に20時30分を過ぎ、昼間の明るさは失われていました。

  

  

  

 西の山に陽が沈み始めていました。

    

  

 真正面から照らす夕日の中で、グラスミア湖畔の朽ち果てた城跡が、ドラマのエンディングシーンのような姿で、北へと走り進む私に別れを告げていました。

  

  

 茜色に染まった雲を見ながらスコットランドとの国境の町、カーライル(Carlisle)を目指します。

  

 

 光が少しでもあるうちに前へ進んでおこう。

  

 動けるうちに少しでも先へ、距離を稼いでおこう。

  

 それだけを考えていました。

  

  

 イギリスに上陸してから5日目の夜、旅の枕を得たのは23時過ぎのカーライル郊外。

 

 朝5時半にウエールズのクリクキエフ(Criccieth)を出発してから17時間半後のことでした。

  

  

  

6月17日の位置

 

 

 

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峠の斜度は30度

2012-07-13 14:45:46 | イギリス一周 花の旅

 農家の横を過ぎると、稜線を越える峠が見えてきました。

   

 緑の大地と空の接点に向かって、道が伸びていきます。

  

 

  

  

 谷の底に細流が光り、その脇に石壁が牧柵となって続いていました。

  

 この場所が人の住む地域からかなり離れていることを考えると、イギリス人の農地に対する執念のようなものを感じます。

  

 人里離れたこんな場所で、営々と石を積む作業を、この国の人々は何百年も繰り返してきたのでしょう。

 

 私が見ている緑の草地は、もしかしたら人間が作り出したのかもしれない、と思い始めていました。

  

 

  

 ここは標高が千メートルにも足りませんので、森林限界以下のはずです。

  

 先程の民家の横に木を見ましたから、間違いはありません。

 

 注意して見ると、水の流れる所々に、一定の樹高の木々を認めます。

 

 それらの木々が育つエリアは植裁されたのではなくて、切り残されたと考えるべきかもしれません。

 

 周囲は全て牧羊地でした。

  

 

 視野の中に、北海道の高層湿原にも似た光景が広がっていました。

  

  

 しかし、大きく異なるのは植物種が少ないことです。

 

 羊の捕食が影響しているかもしれません。

  

  

 樹木がなく、岩が剥き出しとなった光景は、一見すると北海道の大雪山などの景観と似ていますが、バックグラウンドは似て非なるものかもしれません。

 

 

 太陽が下がり始めた空に、白い雲が浮かんでいました。

  

  

 多分、ここがワイノーズ峠なのでしょう。

 

 眼下の斜面を過って細い道が下って行きます。

  

  

 道路の横に、羊が食べ残したと思うシダ類が繁茂していました。

  

  

 細くて険しい、それでいて恐怖心を感じさせない、緑溢れるハイ・アドベンチャーのコースは私を十分に楽しませてくれます。

  

  

 天気もすっかり回復しました。

 

 遠回りするアクシデントもありましたが、結果的に効率良いルート選定となったようです。

  

  

 やがて、視界の中に人家が近いことを示す、橋や木陰が現れました。

  

  

 名も知らぬ小さな湖の畔に白い家がポツンと見えます。

  

  

 斜度を落とす陽の光の中で、山と湖と緑の陰影がより鮮やかになってきました。

  

  

 ハイ・アドベンチャー・コースの最後、一軒の民家の脇を抜けたT字路に、次のような標識が掲げられていました。

  

  

 ワイノーズ峠、ハードノット峠

  

 斜度30度

 

 細心の注意が必要です。  道は狭く、厳しい急カーブが多数あります。

 冬季は危険なことがあります。 キャンピングカーは通行不能です。

  

 確かに、その通りでした。

  

 車のナビを制作したメーカーは、クレームを恐れ、通常はこの峠を通らないプログラムにしているのでしょう。

  

 

 

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峠で出会った白い顔の黒羊

2012-07-13 13:11:25 | イギリス一周 花の旅

 レイベングラス(Ravenglass)に着いても、はたして山岳道路を通ってアンプルサイド(Ambleside)まで行けるのか確信は持てませんでした。

  

 しかし、もし何処かで通行禁止になっていたとしても、戻って来れば良いだけのことです。

 

 宿を予約しているわけでもなし、事故さえ起こさなければ、男一匹どうにでもなります。

  

 持参した地図を見て、取り敢えず、希望ルート上で一番近いブート(Boot)をナビに入力しました。

 何の不都合もなく、ナビに到着予定時刻が標示されました。

 

 正面に小高い丘のような峰々がみえています。

  

  

 両側を丘に挟まれた、農道のような道へ車を進めました。

  

  

 どの丘の斜面にも、牧草地の境界を示す石壁が認められました。

  

  

 道路脇には背の高いシダが茂っていました。

  

 何の問題もなくブートに到着しました。

   

 ナビに次の暫定目的地としてハードノット(Hardknott)を入力します。

 

 道は狭くなり、目に見えて標高を上げていきます。

  

 振り返れば、今来た道が牧草地の中に見えています。

  

  

 この先に道は続いているのか? と心配になる程の幅で、道は斜面を登ってゆきます。

  

 和歌山県や静岡県の蜜柑畑で、農作業用に作られた農道、あるいは、田圃と田圃の間に作られた搬出用の畦道を思い浮かべてみて下さい。

 目の前に、農作業用の軽トラックがやっと通れる程の幅の道が続いていました。

   

 

 斜面は急ですが、全体が比較的フラットなので、路肩を外しても谷底へ転落するような恐怖感はありません。

  

 勿論、脱輪したら無事では済まないでしょうが。 

  

  

 ネパールで標高6千mの峠を越えるバスの映像などから比べれば、遊園地でジェットコースターにでも乗っているような気分です。

  

 もう一度、振り返ってみました。

 

  

 もうすぐ、ピークに到着します。ハードノット峠でしょうか。

  

  

 空が綺麗ですね。晴れてくれて本当に良かった。

  

  

 ピークからは、その先の道が目先の崖の下へ隠れるほどの斜度です。

  

 赤い車の先客が、路肩に車を停めて、景色を楽しんでいました。

 それとも、先へ進むのを逡巡していたのでしょうか。

  

 道の横では黒羊が白い顔で、東洋から来た、物好きな観光客を見つめていました。

  

  

 そうなんです、この辺り一帯は全て牧羊地なのです。

  

 湧き水が流れる、簡易舗装の道を更に谷へと下って行きます。

  

  

 谷の底にポツンと一軒の農家が見えてきました。

  

 その先に見える峠が多分ワイノーズ峠だと思います。

  

  

 農家の横では小川に石橋が掛かり、

  

  

 白い石の家が木立の横で、ひっそりと窓を閉じていました。

  

 

 

 

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思惑違い

2012-07-13 10:24:59 | イギリス一周 花の旅

 フェリーでウィンダミアへ戻って来ました。

  

 湖水地方の大雑把なイメージを把握することができましたが、もう一つやっておきたいことがあります。

  

 それは「ハイ・アドベンチャー」

 ウィンダミア湖北端のアンプルサイド(Ambleside)から西に向い、ワイノーズ(Wrynose)、ハードノット(Hardknott)、ブート(Boot)を経てアイリッシュ海に面したレイヴェングラス(Ravenglass)へ至る、山岳道路のスリリングなドライブです。

  

  

 フェリーを降りてからナビへ、ハイ・アドベンチャーの最終目的地であるレイヴェングラスを入力しました。

  

 ウィンダミアから湖端のアンプルサイドまでは10分も掛かりません。

 湖の畔には古木が茂り、静かな時が流れていました。

  

  

 アンプルサイドの湖畔を散策してから、再びハンドルを握ります。

 木立の中に気持ちの良い田舎道が続いていました。

  

  

 左手の小さな湖が木々の緑を映し出していました。

 今朝見てきた、スノードニアの湖とは異なる表情を見せています。

  

  

 豊かに葉を茂らせた牧草地が見えます。

 これほど草丈高く牧草が茂っているのはイギリスに来てから初めて見るかもしれません。

  

 今まで牧羊地で見た背の高い植物は、シダの類ばかりだったような気がします。

  

   

 相変わらず、道の横には石壁が続いていました。

  

  

 車は順調に田舎道を走り、以前より視界が広がった所に出てきました。

  

  

 しかし、まてよ!

 この光景は、どう考えても山岳道路とイメージが違います。

  

  

  車を停め、ナビの地図の縮尺を変えて、ルートを確認してみました。

  

 ガーン! でした。 

 何と、ナビはあろうことか、意図する山岳道路ではなくて、南に迂回する道を選択していたのです。

  

 何で?

 

 

(注:非営利目的で使用フリーの地図を加工しています)

 

 上の図をご覧く下さい。

 さっきナビに、目的地のレイベングラスを入力しました。

 てっきり、ナビはアンプルサイドからレイベングラスへの最短距離である山岳道路を選択するとばかり思い込んでいました。

  

 しかし、実際には、南へ大きく迂回する、U字型のルートを走っていることになります。

  

 どうして?

 山岳道路は通行禁止なのかな? 何故だろう?

  

 戻ることも考えたのですが、既にU字型の半分程の所に来ているようでもあり、海沿いの景色を見ておくのも悪くないと思い直し、このままレイベングラスを目指すことにしました。

  

  

 小さなアップダウンを繰り返し、のどかな農村風景の中に道は続いていました。

  

  

 典型的なイングランドの田舎道を先へと急ぎます。

  

  

 海沿いの道へ出ると、牛と羊が仲良く放牧されていました。

  

  

 多分、牛のほうが生産性が高いはずです。

  

 しかし、牛は羊より多くの飼料を必要とするはずなので、この付近は牧草の生育が良いのかもしれません。

  

 白い雲を浮かべた空の下で、気持ちの良い道が目的地へと続いていました。

  

 

 

 

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