連休中に湯沢へ遊びに行きました。
トレッキングコースを歩いている時の写真です。
雪の影響で、「根曲がり」の杉が多く見受けられました。
根曲がり杉の林
これだけの斜面だと、手入れの作業や伐採作業も難しいでしょう。
冬は雪も深そう・・
斜面に沿って生えた木は途中で真上に伸びるため、根曲がりになります。
このあたりは、豪雪地帯で、冬場は積雪が3m以上になります。
その雪が上からのしかかるために、根元から折れないように自ら幹の外側を補強していくので、こういった形になります。
通常、根曲がり部分は、伐採のときに切り捨てられます。
上の真っ直ぐな部分しか売り物にならず、曲がった部分を積むとトラックにいくらも積載できないために、山に切り捨てられてしまうのです。
実は、この部分が木で一番強い部分でもあります。
昔の大工は、こういった根曲がり材を使って、屋根を支える梁にしていました。
「あて」と言われて、狂いやすい部分でもありますが、それを逆に利用して、屋根の荷重を支える方向に使ってやれば、強いものできあがります。
「適材適所」で、どんなものも無駄にしない・・
経済的でもあり、環境負荷も少ない方法です。
そういった、知恵と工夫を学んでいくのも楽しいものです。
このコースは苗場スキー場から二居(ふたえ)までのトレッキングコースです。
まだ、新緑には早い時期でしたが、森林の清々しい空気は味わえました。
写真右側は根曲がり杉の林が広がり、左側は天然林が広がります。
山道を挟んで、天然林と人工林の境界がみごとに出ていますが、こんな標高の高く雪深い所でも植林が行われていたのにも驚かされます。
戦後、
「何が何でも杉」
ということで、役所や森林組合が率先して杉を植えたわけですが、30年以上経っても間伐が行き届かない林が目立ち、育っても細い木となっていて、更に曲がっている、節もあり、色も悪い。急斜面なので出すのに手間がかかり、値段も高くなるとあっては、輸入材や他県の質のよく安い材料に押されるのも無理はありません。
県産杉の流通も滞り、材木屋さんも見向きもしない、地元の大工も狂うのでは嫌がる・・・
それでは、どんどん地元の林業は衰退するわけで、山が荒れ、果ては乱開発が進み、水源としての山林も維持できなくなってしまいます。
蛇口をひねれば水が出るのが当たり前に思っていますが、我々が口にする水は、元をたどれば上流の森林の恩恵なのです。
中国では砂漠化が進み、黄河さえも枯れる状態が続いています。
農地には水が行き届かず、塩害が出てくる始末。ただでさえ食糧難な地域に追い討ちをかけるように農作物の採れない田畑が広がってしまう。
(中国はアメリカから農産物を輸入するまでになっています)
大陸に比べて、島国という特性はあるものの、酸性雨や地下水の汚染が深刻になっている日本にとって、地元の山を守ることは、水資源や食料の源を確保することにつながります。
その、林業を活性化するためにも、地元の木を使うことは、我々大工の使命だと思っています。
昔から、日本の家は地元の木で、ゆっくりと自然のサイクルに沿って建てられてきた・・伝統構法は金物も無い時代に、木を組み合わせることで地震や災害に強い家に経験を積んで、発展してきた日本の伝統文化でもあります。
そういった、地元に根付いた職人達の造る衣食住文化が廃れて、グローバルスタンダードが進んで合理化や儲けに走ってしまっている・・
そのツケは、国土の荒廃と、社会の荒廃・病気として、我々に降りかかってきています。
遠くの国はきらびやかに見えて良さそうに思えますが、足元である近所の何でもない、でも地元に根付いているものの価値を発掘し、日本を再発見するのも楽しいと思うのですが・・どうでしょうか?
そんなことを思いながら、湯沢の山、晴れ晴れした山道を歩いていたのでした。
山の木の話へ・・
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