住みこみ*著書:『住みこみ』(2007年/ラトルズ刊) 戸田家の一年を写真とエッセイで綴った本のタイトルです。

人の暮らしは時間と共に変化します。それを調整しつつ自在に手を入れられる、ゆるやかな設計を心がけています。

推理作家か探偵か

2016-10-19 15:21:59 | 建築設計

現在のお住まいは幾度となくリフォームを繰り返していた末の形。

そこで昔の書類や図面をひも解きながら、新たに、現在の住まいに至るまでの変遷を追ってみました。この作業、現場の痕跡や、間取りのズレから当時、どのような要望だったのか?に始まり、作り手は何を考え、どのように手を入れたのかを推測しながら、工事の足取りをたどる…それはまるで、真実を追求しようと奮闘する刑事や探偵の様で、何かを創り出すというのとはちょっと違うのもしれないが、心が躍る作業です。

 今回、2度のリフォームを把握できて、参考図面として施主にお渡しすることが出来た。その、かつての図面を見るなり、「あっ、子供の時にはここにアトリエがあり、絶えず人が出入りしていて、父親を囲みたびたび議論を交わしていたなー」とか、「食事は家族勢全員この3畳の部屋でしていたなー他にもっと広い部屋があるのに…」とか、その図面を囲み、施主家族の足跡(ストーリーというべきか)の話に花が咲いた。

 また、それらの図面を基に、奥様が部品ごと切り分け、紙の上で並び替えながら、住まいに対する「思い」をいろいろお話してくれた。身近な家具や空間の絵なので、より一層リアルなスケール感が身についている様でした。

 あれこれ楽しそうに並び替えている姿を見ていると、こちらも楽しくなりますし、計画案もぐっと密度が増します。

 心が躍っているのは、設計者だけではないようです(笑)