日記

音楽教室のことや、その日に起きた出来事をご紹介します。

読書感想文

2009-07-18 16:36:13 | Weblog
去年の冬から読んでいた長編をやっと読み終えたので、
うまくまとまる分かりませんが、読書感想文を書いてみます。
というか、本の紹介です(^-^)



辻仁成「右岸」・江國香織「左岸」

この二人はずっと前に「冷静と情熱の間」でも共作しました。
大好きな江國さんの「Red」を先に読み、続いて辻さんの「Blue]を読みました。
その時は、素人の私が言うのも何ですが、二人の力の差がハッキリしていて、
逆の順序で読めばよかったと少し後悔しました。

それで、今回は「右岸」→「左岸」の順に読みました。
隣同士に生まれた幼なじみの九とマリの人生を綴った小説です。

辻さんの文章の上達ぶりには目を見張るものがありました。
博多に生まれた少年・九が、人とは違う能力を開花させたことにより得た名声、
そして苦悩が、とても丁寧な描写で綴られていました。
哲学的・思想的な内容も充実していて、堅苦しいかと思う反面、
男性らしい情熱や、人間臭さも多分に描かれていました。

辻さんの「右岸」は、時系列に沿って丁寧に書かれていましたが、それに対して
江國さんの「左岸」は、一人の女性の半生と記憶が長編小説全体を自由に
行き来していて、その表現方法が、自由奔放に振舞う主人公「マリ」の
性格そのものという感じでした。

江國さんは、一人称の作家でした。そして、長編よりも、短編やエッセイを
得意とする作家なのかなぁと思っていましたが、
今回、初めて三人称のどっしりとした小説を読んで、読み応えがありましたが、
ファンとしてはちょっと寂しい面もありました。

九とマリは、遠くに住んでいても、互いの存在をいつも意識しています。
九のそれは恋愛感情であることがほとんどです。
九は、世界中を旅しながら、マリに手紙を出します。
どれほどマリのことを思っているかが、しつこいほど繰り返されます。
それに比べて、マリの淡白さは、読んでいて小気味良い気分でした。

「マリ」には小学生の頃に自殺をした、聡明な兄がいました。
「もっと遠くに行くんだ」という亡き兄の声が、人生の時々で聞こえてきます。
博多を飛び出し、東京やパリにまで行きますが、兄の声は常にマリについてきます。

愛する家族の死、娘の独立、恋人との破局、たくさんのことを経験して、
マリは博多に戻り、ワインバーを開きます。
そして、長年会うことのなかった九と再会します。
きっと二人は50代くらいになっている場面ですが、マリの耳に
「ずいぶん遠くまで来たね」という兄の声が聴こえたところで物語が終わります。

「遠く」というのが一体どこなのか?
それは、「生きる」ということだったのだと、最後の最後に気が付きました。

兄の自殺の真相、そして九とマリそれぞれの子どもたちの再会など、
まだ他にも興味深いシーンはたくさんありますが、
もし興味のある方は読んでみて下さい。


長くてまとまりのない日記になってしまいました。
では、みなさん良い連休をお過ごし下さい(^-^)


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