自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
哲学・ビジネス・雑記・洒落物など等

伊坂幸太郎『SOSの猿』中公文庫

2013-02-10 23:45:58 | 小説

エクソシスト(悪魔祓い)と斉天大聖 孫悟空と株式の誤発注、ひきこもりとユングとフロイトがうまくミックスブレンドされて面白い。

こんな具合に。

エクソシストは、家電屋でアルバイトしている。彼はイタリアに絵をかくために勉強しに留学するもなんとエクソシストの神父と同行して本格的にサポート役として悪魔に憑かれたという家々を回る。副業でそのアルバイターはひょんなことからひきこもりの子供の相談に乗ることに。なんと憑いていたのは孫悟空の身外身、つまり孫悟空の髪の毛による分身。

一方で、誤発注の原因を調べるためシステム会社の品質管理部の五十嵐真。彼は、田中徹が入力ミスにより株を誤発注してしまった原因を探る。睡眠不足?と一つを突き止め、今度は睡眠不足の原因を調べる。そして今度はさらに隣家がうるさかった原因を探っていく。・・・・と孫悟空と出会う。

えっ???でしょ。続きはご購入あれ。何ポンかのラインがあるとき交わって結論へたどり着く。伊坂氏はこれが絶妙にうまい。

「うっかりミスに動機はありません。必要なのは謝罪と反省。それだけですよ」

「いえ、うっかりミスを食い止めるのは難しいのです。『うっかりミスには寛容に。規律違反には厳格に』です」

旨い事いうね~。

それと、ひきこもりの子供がいて、四苦八苦している方へ。

子供がひきこもりになってしまった理由は何でしょうか。

話しかけ続けるのはいいそうです。なぜなら家だけが自分以外との接点のため異常に気になるようです。家の中が。話しかけるのは天気の話とか。でも今日は晴れているねというだけ言ってしまうと外に出なさいとも言われたほうは思ってしまうそうで注意が必要だそうです。

それと自分(母親自身、父親自身)が楽しそうに生活を送る、楽しんでいる、面白おかしく生きている、のであれば、子供はあまりひきこもりにはならないようです。つまり、自分がまず楽しむことも重要だそうです。子供が心配なのは全母親父親同じですよね。四六時中心配していても、されているほうは鬱陶しいっ!!これが普通のようです。逆に母親に四六時中心配されている自分を想像してみてください。そうです。確かに鬱陶しい。

こういう本、読む人によっては心理学の本より、参考になるのでは?と思い、ご紹介。


伊坂幸太郎『あるキング』(徳間文庫)

2012-09-18 22:01:55 | 小説

本当に生まれた時から野球しか知らない人生を歩む王球という超天才野球少年の話。

自分の努力が実るとき、自分が思う以上に、他人も巻き込んで幸福にしているのかもしれません。

って思いました。それから、罪と認識しない個の集合体による集団暴力を作品・作品の合間に挟むのが天才的。

当時、「殺人犯の息子は、超高校級の高校球児」と週刊誌やテレビ局は騒いだ。お前の住むマンションの周辺を囲み、さまざまな、真偽不明の証言を流したが、あの時、おまえはどういう気持ちだったのか。お前はいつも堂々としていた。カメラを担いだ男たちが駆け寄ってきて、リポーターがマイクを突き出し、記者を名乗る男が近づいてきても、顔を背けずしっかりと向き合い、質問に答えたではないか。お前の年齢のこともあるため、放送はされなかったが、あの態度を皆が知れば、その立派な姿に感心したものも現れたのではないか。

「今、どういう気持ちですか」という問いかけは漠然としている上に、無意味この上ない。が、意外に多くの人間がその問いかけを口にした。そして、お前はそのたび、答えを真剣に考えたはずだ。

 そう、「気持ち」というものは言葉で表現できるのかどうか、それ自体が難問だ。「複雑です」お前の言葉は素晴らしかった。これ以外にない、というほどの正さだった。(p165-p166)


運命の人Ⅱ

2012-09-03 23:58:01 | 小説

弓成、一審勝訴から一転、高裁敗訴、そして、上告棄却。

検察庁の上役連中の密談の描写が出てくるが、公的組織は恐ろしい。悪も正義に変わる。まーそれが政治的暴力なのかもしれないけど。マックスウェーバーも言ってますものね。

そして、無念の渦中の中で父親の死。そして、弓成青果は、ライバル九州青果へと売却。

きれいな奥さんと二人の子にも恵まれた毎朝新聞の敏腕記者が不当と呼べる裁判判決によって、一転して、転がり落ちていくが・・・・・。

数年後に沖縄にて、苦労を掛けたまま別れた奥さんへ、と元敏腕記者が持った筆で書いた手紙には、涙が落ちた。


運命の人

2012-09-02 23:16:16 | 小説

10年ぐらい前?に読んでから

・沈まぬ太陽

・大地の子

・二つの祖国

・白い巨塔

・不毛地帯

と大作ばかり、長編で読み応えがあって、面白いです。弓成氏三木氏、変な関係を結んでしまったがゆえにものすごい運命にもてあそばれる羽目に。もうすぐ最終の4巻目突入です。


上橋菜穂子

2011-12-03 12:19:58 | 小説

『獣の奏者 Ⅱ 闘蛇編』(講談社文庫)

久々にかなり面白い読書。人間と獣の生き方、共生の仕方が物語として描かれている。

Production IGによって映像化された『精霊の守り人』の原作者。

著者はアボリジニの研究者で教授。こういう物語を描ける大学教授というのもすごいですね。

やはり、原住民の研究というのも役になっているのでしょうか。

児童文芸作品もいくつかでていますが、物語の中では、指導者が主人公の才能を開花させるように守るように助けるように接している姿が描かれていて感動しました。

この方の講義は、人気がありそうですが、実際のところ、どうなのでしょうか。


恒川光太郎『草祭』

2011-06-04 21:04:35 | 小説

この著者が書いた本を読んでいてイメージするのは、『蟲師』や『夏目友人帳』。

違いがあるのは、人間の住む世界とは微妙にずれた異世界に迷い込んでしまい、その場所のほうがメインとなっている点。

その場所で繰り広げられる世界は面白かった。


海辺のカフカ

2009-07-16 00:16:47 | 小説

読んでいる途中だが、老人ナカタさんと長いハットがトレードマークのジョニー・ウォーカーさんとのやり取りの場面、

猫が取り上げられ、ひどい惨ったらしい描写がある。ナカタさんの背中を押すためのトリガーの役割を果たすがそれにしてもむごい。

よくこうした描写がある本が売れると思う。たぶん、猫を飼っている人はページを閉じたんじゃないだろうか。フィクションなのだが・・・。


東野圭吾『百夜行』

2009-03-19 23:26:40 | 小説

約800ページの大作。幼少期の少年と少女。少女は、変態の大人に買われていた。しかし、その変態は、少年のおやじだった。この物語のすべてはこの不幸から始まっている。その変態が誰かに殺された。この犯人が誰だったのか。未解決のまま少年と少女は成長していくが、このときのことが原因か、彼らと親しくなった人々が皆不幸になっていくのだ。


東野圭吾『手紙』

2009-03-09 22:45:20 | 小説

人間は、きれいで、耳に聞こえがよいような善き世界しか「想像」しない、なんてことはない。

むしろ、他人に対して自分の都合のいいように発揮する「想像」力たるや絶大、といってもいいだろう。

欲望、犯罪、陰険、世間の眼、他人、引っ張り合い、傲慢、無知、憎しみ、矛盾。

愛、純粋、気遣い、組織の力、応援、支え、無知の知、希望、夢、矛盾。

すべて想像世界のものだったなら。

Mr.Children 「Imagin」を聴きながら。


長編を書く作者の方へ

2009-02-15 00:31:44 | 小説

○山崎豊子氏(『沈まぬ太陽』、『大地の子』、『白い巨塔』他)、

○天童荒太氏(『家族狩り』『永遠の仔』他、

○茅田砂胡氏(『デルフィニア戦記』他)、

○吉川栄治氏(『宮本武蔵』、『三国志』他)(故)、

○司馬遼太郎氏『数知れず・・・』

○北方謙三氏(『水滸伝』、『三国志』他)

○村上龍氏『愛と幻想のファシズム』、『半島を出よ』、『五分後の世界』他

○村上春樹氏『ねじまき鳥クロニクル』、『ノルウェイの森』『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』他

○菊池秀行氏『吸血鬼ハンターD』他

○栗本薫氏『グイン・サーガ』他

上記皆さん他、長編を書く方や漫画家の方々へ

シリーズものだと先が読みたくてたまらなく思う人たちが

いて、自分もその一人ですが、その中には心許ないことをいう・書く

人もいるでしょう。

すでに想像を絶するほど頑張っている人たちなので、

「~ばれ!」とは言いません。

もうすこし気楽にいきましょう。。。

みつを流にいえば、

「人間だもの」


伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』

2008-11-11 22:24:36 | 小説

祥伝社文庫刊。

銀行強盗で4000万円を奪うが逃げている走行中、横から激突されて、銃を突きつけられて、それを強盗に奪われるというすごい、起承。

転結の結、

強盗の親玉が、裏をかいて、待ち伏せして車の中で待機していた仲間の女性運転手を脅しているときに、そのさらに警官の格好で裏をかき、ドストエフスキー・カーであるグルーシェニカーという外から閉めると絶対に開かないカーの中に親玉一人、閉じ込めてしまう。顔を真っ赤にして、ドン!ドンッ!とガラスを半端なく叩く親玉。裏の裏をかく鮮やかさ。そう、成瀬に驚くね。

ここは、電車の中で大笑いしそうになったった。


京極夏彦『姑獲鳥-うぶめ-の夏』

2008-09-15 20:38:23 | 小説

ネタバレ 

多重人格と憑物と共同体と富と収穫。収穫が富だった時代は、文字通り共同体、運命共同体だったが、貨幣が流通するようになると、富に格差が生まれた。

というような部分は、見事なロジックだった。人間の都合の良いように祟りだとか神話が一部の人間に有利なように作られて、噂となって広がってその犠牲になった人は、きっとこの世にたくさんいるんだろうなと感じた。

こういった共同体についての説明が憑き物の説明とセットで何度か出てくるが、著者が真剣に伝えたい部分なのではないか。

初めて京極氏の本を読んだのだが、興味深い本だった。


小説『クライマーズ・ハイ』

2008-08-17 13:45:50 | 小説

横山秀夫『クライマーズ・ハイ』(文春文庫)

 日本航空のジャンボジェット機が群馬山中に、
500人以上を乗せて墜落した。
その群馬県の地元新聞北関東新聞、通称北関の記者
悠木は、日航機墜落事故の全権デスクになり、事故
の無惨さをすこしづつ仕事を通じながら理解する。

 同時に家族関係、社内の政治圧力などの話が混じり
ながら展開される。

 タイトルは、内容中に出てくるもので、登山中に、

脳が興奮状態になるというもの。エンドルフィンだか、

アドレナリンだかが分泌されている状態か。

 実際に起こったことなのでなんとも言いようがない。

読み進むスピードは速かった。

本の内容のような

親子関係の状況の人には、感慨深いだろうし、

登山が好きな人には読みやすいだろう。

だが、遺族にはリアルなので読みづらいだろう。


五條瑛『R/Evolution 5th 愛罪』

2008-07-13 01:45:45 | 小説

p72

「誰かを憎むとどうして人間はとんでもない力を発揮するのかな」

「俺にもよく分からないが、ただ1つ言えることがある。愛を糧にして生きていくことは難しいが、憎悪を糧にすることはラクだ。愛には常に疑いがつきまとうが、憎しみに疑惑はない。愛を失うことは苦痛だが、憎しみは失っても困らない。-お前に理解できるかな。つまり人間っていうのはどんなときでも卑怯なんだよ。無意識に、無邪気に、自分にとって一番ラクで安全な道を選ぶ。復讐って感情はな、自分を被害者に見立てることで生まれる感情だ。加害者という自覚がある人間は、誰かを憎んだりしない」