自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
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山際淳司『江夏の21球』

2006-08-24 19:53:31 | スポーツ

『Sports Graphic NUMBER                         スポーツ・グラフィック・ナンバー ベストセレクションⅠ』(文藝春秋)

の山際淳司氏著の『江夏の21球』を読んだ。

 野球に対してはあまり特別な思いはない。しかし、幼いころに西武ライオンズのキャップを被ってハマッていた時期はあった。去年、大学の友人と西武を応援しに行き、楽しんだという程度。そしてちゃっかり、TVの上にそのときもらったカブレラの人形を飾っている程度。

 この『江夏の21球』はジャーナリスト専門学校に通っていたころに先生からその存在を教えてもらい、後にどこかの古書店で買ったもの。

 これは、あのナンバー創刊号に掲載された作品である。

 内容は1979年日本シリーズの近鉄バファローズ対広島カープ、両者3勝をあげ、決着をつけなくてはならない第7戦である。

 9回裏、スコアは4-3でカープが勝ち越している。しかしワンアウト、フルベースでピンチのカープ、そして江夏。ホームで逆転し、一挙に花を咲かせたい近鉄。ところがなんとこの状況を切り抜けるのである。怪物ピッチャーだ。

 ベンチでは監督が同点にされることを意識し、既に次の攻撃・打席の(江夏に打順が回る可能性があった)ことを考え、代えのピッチャーに準備・肩慣らし、させている状況。これを江夏はまだ信用を勝ち取ってなかったのかと心中で悔しさを爆発させる。そこにファーストを守る衣笠は、「俺もお前と同じ気持ちだ。ベンチやブルペンのことなんて気にするな」と声をかけたという。

 ラジオ、TV、観客席、ベンチですら分からない。ファーストを守り、しかも衣笠だからこそ、まさに江夏の心を汲み取った静かなコミュニケーション。この一声が、江夏を後押しする。

 そしてスクイズをアウトに討ち取る圧巻。江夏は胴上げされた直後のベンチで涙を流したという。

 確かに緊張感がひしひしと伝わってくる「見えるような」描写、迫力で、よいノンフィクション作品だった。


五條瑛『心洞』

2006-08-20 10:25:44 | 小説

五條瑛『心洞』(双葉文庫)を読んだ。

革命シリーズ第三巻(全10作予定)。

印象に残った部分

「人という動物は、欲求の塊なのよ。゛欲しい゛と思う気持ちが、どんな動物よりも大きくて強い。例えば、食べたい、寝たい、交尾したいという基本的な欲求は全ての動物にあるけれど、いずれも節度を知っている。そうすることで種のバランス、群れの秩序が保たれてきたのよ。だけど、人間は違うわ。いったん欲しいと思い始めると、それを止めることをしない。一つ手に入れば、また次を。それが手に入れば、さらに次へとね。人はその欲望を゛向上゛という言葉に置き換え、正当化してきた。そうやって節操のない欲望が秩序を壊し、自らを滅ぼしていくという現実から目を背けて・・・。果てしない欲望の先にあるのは、破滅だけよ。全てにおいて完璧である必要はないのに、それに囚われ、後退を怖れている。どこかでその欲求を捨ててしまえば、信じられないくらい楽になれるのに」


オシム監督、日本サッカー代表初勝利

2006-08-10 00:22:51 | スポーツ

 トリニダーゴ・トバゴが相手のキリンカップ。サントス選手のFKとループシュートで2:0の勝利!!ワールドカップが終了し、サッカー人気は下降局面に入ったと思ったが、オシム監督が日本サッカー代表監督に就任したことで、面白くなりそうな予感を感じさせる試合展開だった。セットプレー、ダイレクトパス、攻撃・守備の切り替え、出来すぎ?といった感じさえあった。

 しかし、オシム監督は試合後のインタビューで「今日のような内容の試合が今後も続けられるとは思わない」と、引き締めるコメントをしていた。それからインタビュアーに逆に「今日の試合にはどのような意味があったとあなたは思うか?」とたずねる場面もあり、マスメディアにも緊張感を持たせるような今までにはない試合後のインタビューだった。代表監督とメディアとの関係も今までにないようなものとなるように思う。サッカーについて勉強もしないで、代表の監督にインタビューするという失礼な態度も少しは改善されるだろう。考えるインタビュアーもでてくるに違いない。

 現時点で最高のチームをつくるため、選手の把握に何度もスタジアムに脚を運び、年齢関係なく「調子の良い選手は代表に選ぶ」という監督の意思を明確にタイミングよくファン・選手に伝え、直近のワールドカップ時と比べ、大幅に選手が入れ替えられた。そして見事初戦を勝ち取った。

 今後の活躍に期待したい。


映画『僕はラジオ』

2006-08-06 23:39:00 | 映画

久々に素直に感動できた。この話は実際にあった話。

町を徘徊するラジオ好きな通称ラジオ。あるときエドハリスが監督を務める高校フットボールチームにスタッフとして協力するようになる。

エドハリスは最後までラジオ(ラジオがお気に入りだったのでこう呼ばれる)や人間の持っているべき大切なものを守り抜くことができるのだろうか。

二人の演技にも注目。

P7088190_1

P7088191_1

(ソニーピクチャーズHP)

http://www.sonypictures.jp/homevideo/radio/index.html


恒川光太郎『夜市』

2006-08-03 11:17:02 | 小説

恒川光太郎『夜市』(角川書店)を読んだ。

1.夜市

2.風の古道

の二編構成。

P.174

「これは成長の物語ではない。何も終わりはしないし、変化も、克服もしない。道は交差し、分岐し続ける。一つを選べば他の風景を見ることは叶わない。私は永遠の迷子のごとくひとり歩いている。私だけではない。誰もが際限のない迷路のただなかにいるのだ。」


伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』

2006-08-03 00:20:31 | 小説

伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』を読んだ。

元SEの主人公は警察に追われているところを熊に似た人に助けられて、仙台の近くに位置する島にたどり着く。そこの島は、100数十年も外との交流がないところだった。

しゃべる案山子、うるさい人間を許さずすぐ鉄砲でそいつを撃ち殺す人、不器用だけど気の良いやつなどが住んでいた。

日々プレッシャーに追われて生活している人におすすめしたい。