藤原正彦『国家の品格』(新潮新書)
を読み終えた。新潮新書が創刊されて
から初めて買った同社の新書が、この藤原氏の
著書となった。
論理、市場主義、外国語、情緒、感性、国際人、武士道など
がキーワード。
同著者の
『遥かなるケンブリッジ』(新潮文庫)
『若き数学者のアメリカ』(新潮文庫)
が読まぬまま本棚に眠っていたが、
あれも読んでみようと、思わせる内容だった。
講演を基に再構成したようなので、
笑わせて会場を和ませるためか、極端な
表現もあったが、こうした表現も本が売れる要因と
なったのだろう。
論理が全てではないということを非常に論理的に
明快に説明している。読み進めていくうちに変わるものと変えてはいけない守っていくべきものが浮き彫りになっていく。
武士道の精神や、もののあわれといった感性、情緒を
養う視点をもっともっと大切にするべきと説いている。
小学校から公教育として英語を教えることがいかにばかげた
ことか、ではどういった人物が国際的に認められるのか、という
視点で、著者の経験(日本、アメリカ、イギリスで暮らした経験)や著者が学んだ書物などを挙げて説明している。
『若いときにはできる限り、感性を養うように文学など(主に古典)』に親しんだほうが、学校で週に数時間という中途半端な時間をかけて外国語を学ぶより、よっぽど意味深い』いうこと。
●日本は治安が良く、それは世界に誇れることであり、魅力的なところ。
●いずれ散り行く桜、夏の鈴虫の鳴き声、蛙が池を跳ねる音などに思わず感動してしまうのが日本人。
●法律は必要だが、個々人それぞれが礼儀作法を心がければ用いなくてはならない状況は減るだろう。
個人の集団により形成される国家という主体から個人そのものの主体に眼を移し、自分は品格ある人間か。感受性豊かな人間か。人の気持ちを察することができる人間か、自然の躍動に心奪われ、時に恐れ敬う人間か。
考えてしまう内容だ。