京都府長岡京市長法寺地区固有の通過儀礼「ビシャ」が営まれ、長老格の「十二人衆」の前で矢を放った青年が、家の跡取りとして認められた。観光案内や報道上はあまり知られていないなか、地域の担い手を育む行事が受け継がれている。
天台宗の長法寺は平安前期に創建され、往事に7堂12坊があったと伝わる。十二人衆は、12坊にちなんで12人が終身制で担う。制度上の宗教法人役員や自治会、財産区などとは別格的な存在として、「じゅうにしさん」と呼ばれる。うち年長者4人は「よったりぼうさん(4人の僧侶)」と尊称される。
長岡京市史で「備射」との表記が添えられるビシャは、長男など家の跡取りを認める行事で、十二人衆もこの儀式を経ている。地域住民としての自覚を促す要素もあったのだろう。かつては大勢の人たちが本膳やすき焼き料理で盛大に祝ったという。豊作祈願や厄よけで矢を射る神事は多いが、住民が寺院で自治的な儀式を営む例は珍しい。
会社員山下宏暢さん(27)と大学生藤井一範さん(19)が臨んだ。元長岡京市消防長の白井勇さん(83)ら十二人衆と杯を交わす前儀「御座」を正月に終えている。境内では10日に十二人衆が集まって的や砂、供物などの準備を整えた。
11日朝、当日は烏帽子、かみしも、はかま姿の2人は川西延隆住職(29)による読経の後、杯に酒を注がれて弓を授かった。家族も見守る。弓矢を扱うのは初めてという2人は直前、「どうしていいかよくわかりません」と戸惑い気味に話した。試射の動作も危うい。違う方向に矢が飛んだり空振りし、うつむき首をかしげる。
しだいに的をみすえる2人の顔つきが締まり、背筋も伸びる。引き絞る右腕の力がこもって飛ぶ矢に強さが増した。本番では、東西南北・天地に矢を向ける所作が落ち着いている。りりしく自信に満ちて放たれた矢は鋭く的に向かった。柔らかなまなざしで見守っていた十二人衆がうなずく。儀式後、2人の父親が「町内の一員としてよろしくお願いします」と、本堂の座敷に並んだ十二人衆にあいさつした。
長法寺地区は、明治初頭の学校開設を住民が支え、神社の初午行事を盛大に営むなど絆が強い。寺の本堂建て替えも住民の力で実現した。地域の担い手を年長者が見守り、育てる自治文化が脈々と受け継がれている。
【 2013年02月15日 10時40分 】
天台宗の長法寺は平安前期に創建され、往事に7堂12坊があったと伝わる。十二人衆は、12坊にちなんで12人が終身制で担う。制度上の宗教法人役員や自治会、財産区などとは別格的な存在として、「じゅうにしさん」と呼ばれる。うち年長者4人は「よったりぼうさん(4人の僧侶)」と尊称される。
長岡京市史で「備射」との表記が添えられるビシャは、長男など家の跡取りを認める行事で、十二人衆もこの儀式を経ている。地域住民としての自覚を促す要素もあったのだろう。かつては大勢の人たちが本膳やすき焼き料理で盛大に祝ったという。豊作祈願や厄よけで矢を射る神事は多いが、住民が寺院で自治的な儀式を営む例は珍しい。
会社員山下宏暢さん(27)と大学生藤井一範さん(19)が臨んだ。元長岡京市消防長の白井勇さん(83)ら十二人衆と杯を交わす前儀「御座」を正月に終えている。境内では10日に十二人衆が集まって的や砂、供物などの準備を整えた。
11日朝、当日は烏帽子、かみしも、はかま姿の2人は川西延隆住職(29)による読経の後、杯に酒を注がれて弓を授かった。家族も見守る。弓矢を扱うのは初めてという2人は直前、「どうしていいかよくわかりません」と戸惑い気味に話した。試射の動作も危うい。違う方向に矢が飛んだり空振りし、うつむき首をかしげる。
しだいに的をみすえる2人の顔つきが締まり、背筋も伸びる。引き絞る右腕の力がこもって飛ぶ矢に強さが増した。本番では、東西南北・天地に矢を向ける所作が落ち着いている。りりしく自信に満ちて放たれた矢は鋭く的に向かった。柔らかなまなざしで見守っていた十二人衆がうなずく。儀式後、2人の父親が「町内の一員としてよろしくお願いします」と、本堂の座敷に並んだ十二人衆にあいさつした。
長法寺地区は、明治初頭の学校開設を住民が支え、神社の初午行事を盛大に営むなど絆が強い。寺の本堂建て替えも住民の力で実現した。地域の担い手を年長者が見守り、育てる自治文化が脈々と受け継がれている。
【 2013年02月15日 10時40分 】
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