京都府長岡京市などに事業所を構えるサントリーグループが、自然環境の保全・再生に力を入れている。商品に欠かせない天然水の水源を守るため、本 年度から社員約6000人を対象にした森林整備研修に取り組む。先月末には社員約40人が新緑の西山(同市奥海印寺)に入り、常緑樹の除伐作業に汗を流し た。
サントリーは2003年から、地下水を育む豊かな森づくり活動「天然水の森」を開始した。現在13都府県の17カ所で活動し、水源涵養面積は7600ヘクタール超に上る。国内工場で使う地下水量の2倍の水を養い育てることを目標に掲げている。
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「天然水の森 きょうと西山」は民有林約60ヘクタール。12年3月に市森林組合と協定を結んで活動を始めた。
西山はもともと薪炭(しんたん)林だったが、石油燃料への転換に伴い50年ほど前から手入れがされなくなった。近年はナラ枯れやマツ枯れ、シカによる下層植生の衰退といった問題を抱えている。
植生調査などを行っている「里と水辺研究所」の赤松弘治さんによると、常緑樹のサカキやヒサカキ、ソヨゴが増えたことで日光が遮られ、林床で植物が育ちにくい状況にもなっている。
地下水を育むためには、落ち葉や草の根などの有機物が供給された、ふかふかの土壌を持つ森にすることが大切で、常緑樹の除伐によって日光が差し込む「明るい森林」にする必要があるという。
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西山での作業には、京都ビール工場(同市調子)やサントリービア&スピリッツ京都支店(京都市下京区)などの社員が参加した。気温30度前後の暑さの中、長岡京市職員とともに山を登った。
社員らは約1時間半、作業を実施。高さ20メートルほどの常緑樹を次々と切り倒し、樹木を短くして雨で流れないよう地面に積んだ。暗かった作業場周辺は明るさを増した。樹木は地面に置いておくと土から菌が入って肥料になり、落葉広葉樹など下層植生の回復を促すという。
京都ビール工場に勤める樋口雅美さん=同市奥海印寺=は「水を扱う仕事をしているので、普段から水のことを意識している。きれいな水が将来、もっときれいになれば」と笑顔を見せた。
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サントリーグループは今後約3年をかけ、西山を含む天然水の森7カ所で社員の森林整備研修を行う予定。サントリーホールディングスの内貴研二エコ戦略部長 は「天然水を育む自然を守っていくことが使命であり、責務。体験型の研修を通じて『自然との共生』という価値観の共有化を図りたい」と話している。
【 2014年06月10日 12時13分 】
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