丑三つ時に、玉子を茹でる。
茹でるまえ、冷蔵庫から出してぬるま湯に浸ける。
湯を沸かしていると、どこからともなく、チッチッチ……チッチッチ……と声がする。
これが、私の音楽です。
鳴いていたのは、ぬるま湯に浸けられた、なまの玉子でした。
白玉ふたつ、赤玉ふたつのうち、
白玉の一つを耳に近づけると、キュルキュルキュルキュル……と音がしました。
チッチッチ………と鳴いていたのは、赤玉の一つでした。
残りの二つは、無音でした。
キュルキュル……という、後ろの音に陰影を与えられて、
チッチッチ……という声が、単調でなく、それゆえ、耳をとらえたのでした。
これが私の、普段に聴いている、私にとっては、本物の音楽。
にんげんが、それらしく奏でるものを、もともと、
さほど好きではありません。
巧まざる自然の音楽に、いつも、耳を澄ませているのです。
聴き逃しては。ならないもの。
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茹でるまえ、冷蔵庫から出してぬるま湯に浸ける。
湯を沸かしていると、どこからともなく、チッチッチ……チッチッチ……と声がする。
これが、私の音楽です。
鳴いていたのは、ぬるま湯に浸けられた、なまの玉子でした。
白玉ふたつ、赤玉ふたつのうち、
白玉の一つを耳に近づけると、キュルキュルキュルキュル……と音がしました。
チッチッチ………と鳴いていたのは、赤玉の一つでした。
残りの二つは、無音でした。
キュルキュル……という、後ろの音に陰影を与えられて、
チッチッチ……という声が、単調でなく、それゆえ、耳をとらえたのでした。
これが私の、普段に聴いている、私にとっては、本物の音楽。
にんげんが、それらしく奏でるものを、もともと、
さほど好きではありません。
巧まざる自然の音楽に、いつも、耳を澄ませているのです。
聴き逃しては。ならないもの。
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