大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米中貿易摩擦の現状: トランプ大統領、22兆円の追加関税を数日内に発表予定?

2018年09月16日 | 日記

 2018年9月15日(土)、ウォールストリートジャーナルは、ホワイトハウスは数日内に中国に対し2千億ドル(22兆円:1ドル=110円)の追加関税を発表する予定だと報じた。ただし、関税率は当初予定されていた25%でなく10%になるとされている。

 米政府内では、米中交渉を穏健な形でまとめようとするムニューシン財務長官、クドロー国家経済会議委員長と対中強硬派のライトハイザー合衆国通商代表、ナヴァロ国家通商会議代表がするどく対立。

 今年に入ってからトランプ大統領は、前者が交渉をまとめかけるとそれを突然ちゃぶ台返しするということが続いている。

 アメリカでは関税を引き上げてもGDPやインフレ率にほとんど影響がでていないことから(洗濯機など個別製品については小さくない影響が出ているが)、大規模関税を容認する意見も散見されるようになってきており、今後の行方が注目される。

 ちなみに日本でもアメリカでもほとんど忘れられているが、2016年の大統領選挙において共和党の主流派ポール・ライアン下院議長が中心になってまとめた減税案は、すべての輸入品に20%の国境調整税をかけて減税の財源にするというものであった。共和党の主流派から保護主義的高関税政策が出されるほどにアメリカで貿易不均衡への不満が大きくなっていることは、ほかの国ではいまだになかなか理解されていない。こうした認識ギャップは大きな行き違いをうみだしかねず懸念されるところである(アメリカ政府の真剣さを見誤り、妥協すべきところで妥協せず、交渉を決裂させてしまう危険がある)。

9月18日追記

 2018年9月17日(月)、米政府は9月24日から中国からの輸入2000億ドル(22兆円:1ドル=110円)分についてあらたに10%の関税を発動することを明らかにした。

 2019年から関税は25%に引き上げられるとされている。


ECB、6月発表通り、今年で国債買い入れ終了

2018年09月16日 | 日記

 私個人としては重要と思っても、日本のメディアではスルーされる情報が多い。

 そんな今週の備忘録。

 2018年9月13日(金)、ECB(欧州中銀)は2018年のユーロ圏19か国の経済成長率の見通しを2.1%から2.0%に、2019年のそれを1.9%から1.8%に引き下げた

 しかし、今年の6月に発表したテーパリング(金融緩和の縮小)のスケジュールについての変更はなく、ECBは現在月300億ユーロ(約4兆円:1ユーロ=130円)おこなっている国債買い入れを来月(10月)から150億ユーロ(2兆円)に減額し、今年をもって国債の買い入れを停止する。ただし利上げは少なくとも2019年夏まではおこなわない。

 


トルコ中銀、6.25%の利上げ

2018年09月13日 | 日記

 2018年9月13日(木)、トルコ中銀は1週間のレポ金利を17.75%から24%に引き上げた

 その直前にはエルドアン大統領がドルやユーロ相場と連動させた家賃や小売価格の設定を禁止する決定をおこない、リラが下落。

 しかしトルコ中銀の利上げを受けて、リラは上昇に転じた。

 トルコでは国内での資金調達が難しく、海外から資金を借りて土地開発や投資をおこなうことが多く、しばしば家賃が為替相場と連動するようになっている。

 今後の焦点は、高インフレ率や金利上昇により景気減速がどこまで進むか、また外貨建て債務の返済、借り換えがスムーズに進むかどうか。

 なおしばらくトルコの経済状況には十分な注意が必要である。


USW(全米鉄鋼労組)、USスティールでスト権を確立

2018年09月12日 | 日記

 2018年9月10日(月)、USスティールと労使交渉をおこなっているUSW(全米鉄鋼労組)は圧倒的多数の賛成でスト権を確立した。この結果、USWは48時間前に事前通告すればいつでもストライキに突入できる体制となった。

 USWは今年の7月からUSスティール(組合員1.6万人)およびアルセローナ・ミッテル(同1.5万人)と労使交渉をおこなっている。しかし、9月1日に両社の労働協約が期限切れとなっても交渉はまとまっていない。

 ウォールストリートジャーナルによれば、USスティールは1年目に4%、2年目と3年目に3%、4年目に1%の賃上げをおこなうとともに、税引き前利益と連動して上下するボーナスを新設することを提案している(ちなみに2018年8月のインフレ率CPIは3%、平均時給の上昇率は2.9%)。同紙は、これが実現するとボーナスを除く最低賃金が現在の年6万3千ドル(約700万円:1ドル=110円)から2024年には7万2千ドル(約800万円)にアップするとしている(あくまで同紙の試算)。

 これに対しUSWは、過去3年間、賃上げが凍結されてきたことから、より高い賃上げを求めるとともに、USスティールが要求している医療保険の負担増や職場ルールの柔軟化に強く反対している。

 WSJによれば、トランプ大統領が主導した輸入鉄鋼への25%の関税により、今年に入って鉄鋼価格は30%上昇。USスティールは、今年、税引き前利益が60%増加するとみられている。

 減税などにより米企業の税引き前利益は大きく上昇しているが、それに反してこれまで賃金上昇はおだやかなものにとどまってきた。とくに製造業で賃金の停滞が目立っている。今回の労使交渉で、こうした傾向をうちやぶるような動きが生まれるかどうか注目される。

参考:WSJによれば、USスティールとアルセローナ・ミッテルは圧延鉄鋼でアメリカの40%のシェアを握っている。

2018年9月19日追記

  2018年9月18日、USWはアルセローナミッテルでもスト権を確立した。

 


香港ハンセン指数、弱気相場入り

2018年09月12日 | 日記

 2018年9月11日(火)、香港のハンセン指数1月につけた直近高値から20%の下落を記録し、弱気相場入りした。

 欧米では、直近高値から20%下落を弱気相場入りと定義している。

 フィナンシャルタイムズは、米中貿易摩擦の解決の糸口がみえないなか、テンセントなど中国本土のハイテク企業でとくに株価の下落が目立つとしている。