陶芸をやる者にとって、土は何より大切なものです。
一子相伝の土だけでなく、使う土を掘り尽くせばいつかなくなる・・・・・
私たちが好んで使っていた栃木県の茂木の土も、数年前に採土が中止されました。
そのお知らせを受け取った時、限られた粘土の貴重さをあらためて実感しました。
どんなに腕があっても、どんなにセンスがあっても、どんなに情熱があっても、
土が無ければやきものはできないんだから、土を粗末に扱ってはいけない・・・
師匠に言われた言葉も忘れたことはありません。
作品は、成形した後少し乾いたところで削りをかけ、さらに乾燥させて素焼きとなります、
素焼き前のものは、いつでもまた土へと戻ります。
また、削り取った粘土も水分を加えて使える状態に戻します。
作業台や道具やぞうきんは必ずバケツの中で洗い、その洗い水に含まれる粘土も
沈殿させて、濾してまた土へと再生します。
成形するのと同じくらい、粘土を再生することに時間がかかるわけですが、
師匠が黙々と行っていた姿を思い出し、これを怠ってはいけないと、自分を戒めています。