17日にキイロスズメバチの巣を撤去して6日が経っていた。もうそろそろ覗いても良いだろう。そう思いながら上がったみかんの丘には青空が広がっていた。透明度は良くないが、撮影は十分に出来そうだ。小さいカメラとコンデジを持って来ているが、今夜はゲストがやって来る。日暮れまで居ることは無理かもしれない。
竹取庵の周囲を回って蜂の羽音がしないことを確認し、恐る恐るドアの鍵を開けた。一階の居間や通路のあちこちに蜂の死骸が落ちている。そっと観測デッキに上がってみると、そこには天文教室に使う赤道儀を大慌てで持ち出した時放置した機材がそのまま転がり、床には蜂の死骸や巣のかけらが一面に散らばっていた。
業者の人がセットしてくれた粘着板には20匹以上のキイロスズメバチが貼りついていた。「板に数匹の生きたスズメバチを付けておくと、その蜂が出すSOSのシグナルを聞いた仲間の蜂が次々にやって来て捕まるんです。」彼がそう言っていたのを思い出す。粘着板の傍には業務用の昆虫忌避剤が吊り下げてある。
観測デッキの片付けと掃除は今度に回して、一階増築部分のコーキングに手を付けた。本格的なログハウスは壁板と壁板の間を苔で埋めると言うが、ホームセンターにはコーキング剤という便利な物が有る。
部屋の中に西日が差し始めた。時刻は5時。そろそろ片付けなければ夕方までに家に帰れない。空は相変わらず晴れている。外に出てみると南の空に月齢9に近い月が掛かっていた。
せっかく晴れているのに。幽月にそう不服を言われながら丘を下りる。今日も星は撮れなかった。