宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

月光に鹿の呼び声

2011年12月14日 23時24分18秒 | Weblog

正満月が照らすみかんの丘は不思議色に染まっていた。空は月に近いほど暗い。だから逆に地平線にある島も、その上に掛かる雲もくっきりと見える。澄んだ空気の中で冬の星座がひときわ鮮やかだ。思い立ってカメラを三脚に取り付け、竹取庵を望む場所まで出てみた。カメラ感度1600、露出5秒。写真に撮ると分かる。やっぱりこの丘はおとぎの国。不思議に通じるワームホールの入り口だ。

同じような写真を何枚か撮って、また観測デッキに戻った。その途中に居間で入れたしょうが湯が体をほぐしてくれる。ああ、至福。とその時、隣りの尾根で細く甲高い音がした。雄鹿の雌を呼ぶ声だ。それはまるで時代劇に出てくる呼子にも似て鋭く、それでいてどこか切ない。その声に応えて、近くの山で競うように同じような鳴き声がいくつもした。声のする方角から見て雄鹿は少なくとも5頭。
「奥山にもみじ踏み分け鳴く鹿の…」という百人一首を思い出した。時期は少し遅いが、まだ繁殖期が続いているのだろうか。ただ、ここはそれほど山深くない。民家もたくさん有る。それなのにこれほどの鹿。ひょっとするとこの鹿たち、満月の夜にだけ現れるのかもしれない。

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正満月

2011年12月14日 00時44分36秒 | 

星々の間をゆっくりと移動しながら欠けていった月は、また時間をかけて輝きを増してゆく。そして午前1時20分ごろには地球の影の濃い部分を完全に抜け、さらに午前2時を過ぎると地球の半影と呼ばれる薄い影の部分とも別れを告げた。

中天に掛かる月が、今辺りを照らす。前にも書いたが、満月とは太陽と地球と月が一直線に並んだ時に地球から見た月の様子を言う。しかしほとんどの場合、地球の公転面と月の公転面とのずれなどでこの3つの星がなかなか一直線にはならない。だから望遠鏡で見ると、十五夜と言えども月はどこかが欠けているのだ。

 

しかし今は正真正銘の一直線。欠けた所がどこにも無い。まさに『正満月』だ。

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不思議の国の月夜

2011年12月13日 00時03分58秒 | 

月が欠けてゆくごとに星の数は増えていった。それは月から離れた地平線辺りから順に。皆既月食が始まる頃には一面の星空だ。暗い星までが見える。その中を赤銅色の月がゆっくりと東に動いてゆく。まるでCGで創られた御伽の国の月夜だった。
南の空にオリオンやおおいぬなど冬の星座が鮮やかだ。月は今雄牛の角の間に居た。妙な立体感がその風景を非現実なものにしている。

観測デッキの中でかぐや姫とズームカメラの載る赤道儀の間を行き来するのを止め、しばらく椅子に腰掛けて不思議の夜空に浸ることにした。

 

友人から次々にメールが届く。みんなこの空に感動しているのだ。生きていて良かった。こんな光景が見られるのだもの。と思うと同時に、母ちゃんをはじめ逝ってしまった人達に一目見せたかったという気持ちが込み上げて涙が少しこぼれた。

(星空はカメラ感度400露出25秒、月はカメラ感度2000 露出15 分の1秒で2枚の画像の精密合成です。)

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星空に浮かぶ巨大な10円玉

2011年12月12日 01時56分22秒 | 

寒い。とにかく寒い。竹取庵はスライディングルーフという、屋根がそっくり移動する形式の建物だ。完全に開いてしまうと観測デッキは吹き曝しとなる。欠け始めた月はほとんど真上だった。口径45センチF5.5というニュートン式の反射望遠鏡かぐや姫のカメラ位置はデッキの床から3メートル近く上になる。北風から身を守る術は無かった。観測デッキは土足では入れない。薄い靴下で上るアルミの脚立は、足の裏から容赦なく体温を奪ってゆく。凍える体で見上げる月は、初め左下から、やがて左上へと欠ける位置が移動していった。

 

自動追尾という便利な機能のない簡易経緯台のかぐや姫だ。月が真上になるほど扱いが難しくなる。脚立からテーブルへと足場を移しながら、望遠鏡の先端に取り付けたカメラのモニターで月を捜し、見つけてはフレームを合わせて撮影していった。
やがて…

午後11時5分。あれほど明るかった月は薄暗い赤銅色に身を染め、妙な立体感を持って空に浮かんでいた。月食は地球の影に月が入ってゆく現象だ。その地球には大気がある。太陽の光はこの大気によって青い色を奪われ、さらに大気の屈折で内側に曲げられて影の中まで赤い光が届く。だからそこに入ってゆく月は言わば夕焼け色に染まることになる。
巨大な赤い玉。望遠鏡や双眼鏡で眺めるとそうなるが、肉眼で見上げると、僕には星々の中に浮かぶ巨大な10円玉のように見える。ただ、その10円玉は、腕をいっぱいに伸ばして持った1円玉とほぼ同じ大きさだ。

不思議な光景。それは本当におとぎの国に出てくる夜空のようだった。

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欠け始めた月

2011年12月11日 05時08分26秒 | 

大きな雲がいくつも空を覆っていた。ああ、やっぱりそうか。今年はついていない。そう、今夜は皆既月食。それも欠け始めから食の終わりまでを完全に見ることのできる月食は11年ぶりだ。それだけに期待していたが、みかんの丘のポイント予報は今夜から朝方にかけて曇り。なんとなく気が乗らず、カメラを持って家を出たのは午後8時をかなり回っていた。
ところが丘に登ってみるとあれほどあった雲が消えている。あれ、見えるのかな。半信半疑で竹取庵の屋根を開ける。こんな風に撮ろうかあんな風に撮ろうか。迷っているうちに月の左下が翳ってきた。時計を見ると9時半を過ぎている。しまった、もっと早く家を出れば良かった。もう構図や技法を考えている余裕はない。とりあえず45センチかぐや姫に大きいほうのカメラを取り付けて撮影をスタート。

結局初めに考えていた目論見は潰えて、脚立に上って構えるカメラのモニターの中で、モノクロームの月がゆっくりと蝕まれていった。

 

                                     (カメラ感度200 露出時間400分の1秒)

hajimeta

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