宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

ゴールデンウィークがやってきた

2009年04月30日 12時33分49秒 | Weblog
今年は黄砂の来た日が少なかった。そのせいか春のかすみが薄らぐのも早かった。雨と風の激しかった連休最初の塊りをやし過ごし、「昭和の日」の昼下がりにみかんの丘に登る。頭の上には真っ青な空が広がっていた。天気予報は当分快晴。今夜は星が見えるぞ、そう思いながら大工仕事に精を出した。
日が西に沈む頃、月齢4の月が真上に掛かる。結構明るい。期待しながら屋根を開けた。そういえばかぐや姫の光軸を正確には取っていなかった。まあいいか、そこそこには合っているんだし。
頭の上にはしし座、その足元に土星。南の空には歪んだ台形からす座が見える。どれから見よう。いや、順番順番。
僕はわくわくしながら姫を傾けた。
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ガラスは液体?

2009年04月27日 20時49分02秒 | Weblog
水は液体、氷は固体。ではガラスは?
そう、ガラスは液体だと言う。固体なら持っているはずの決まった分子構造がガラスには無く、熱を加えると次第に熔けてゆく。だからガラスの板は片方だけを固定しているとだれてくる。そう教えられた。僕自身はだらりと垂れ下がったガラスを見た事は無いが、そうなのだそうだ。
直径45センチのかぐや姫の主鏡はガラス。重さは18キロある。この液体の鏡をどの角度に傾けても、凹面のカーブの精度を保たなければ、星はきちんと見えてくれない。そこでかぐや姫の主鏡は、ツルツルすべるシールを貼り付けた18個のコインが支えている。コインは全てシーソーの上に載っていて、1個のコインに付き1キロの加重が掛かるように配分されている。そして、どの角度にも自由に傾くようになっている。

これを設計し、製作するのに4ヶ月も掛かった。本当にそこまで必要だったのだろうか。それは考えない事にしている。
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玄関灯が付いた

2009年04月23日 10時48分42秒 | Weblog
竹取庵は工事中の建物だ。だからドリルや丸鋸はもちろん、観測デッキの望遠鏡駆動まで、長い間工事用電源をキャプタイヤで引っ張って使ってきた。電気工事も自分でやってやれないことは無いが、無資格で行うと法律に触れる。そこでここはプロに頼むことにした。
配線図面を引いて数ヵ月後、やっとお互いの予定が噛み合って工事屋さんが来た。もちろん内装はまだ途中。天井の胴縁も張ってない。だから第一期の工事は配電盤の設置と配線だけだが、さすがはプロだ。僕と話をしながら1日半で済ませてしまった。
室内の灯具はまだ決めていなかったが、玄関灯とテラスの照明だけはこれにしようと決めたものをかなり前から買っておいた。それを付けてもらう。

電気屋さんが帰った夜、明かりを入れて外に出て思う。 おお、ぐっとヒュッテらしくなった。
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これから始まる宇宙(そら)の冒険

2009年04月16日 12時40分29秒 | Weblog
かぐや姫は無事竹取庵に落ち着き、これから活動を始める。しかし玉座自体はまだ仮の形で、これから本当の赤道儀を設計していかなければならない。目指すのは姫の巨体を正確に回転させて、しかも押しても引いても動かない、精密で岩のような架台。
それが完成すれば、かぐや姫は単に目で見て楽しむだけでなく、分光観測や写真観測など様々な活動が出来るようになる。

星空に目を向けた中学時代の思い出から始まったブログは、出来るだけ2日に1度のペースで書き進み、姫の設計、おじさんおばさんとの出会いから竹取庵の建設まで、僕が辿ってきた宇宙(そら)への道のりを紹介してきた。それから8ヶ月。ようやく現在まで行き着いた。姫のファーストライトは実は今月11日のことだ。
僕はこれから姫やその仲間の望遠鏡たちと共に宇宙(そら)への冒険に旅立つ。その中で、なにかお知らせできることが見つかれば、ここにアップしようと思う。
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ファーストライトはシリウス

2009年04月13日 00時03分02秒 | Weblog
それからさらに1週間が経った。今日こそは光軸を合わせてかぐや姫で星を見なければ。そう思いながらみかんの丘に行く。自家製のレーザーコリメーターを当て主鏡と副鏡を動かしながら、鏡の軸を合わせていった。
実は、僕には大変な不安があった。今更言うのもなんだが、かぐや姫の主鏡の公称は、直径453ミリ、F値5.5。つまり焦点距離は2491ミリだ。これをずっと信じて鏡筒の設計から製作まで行ってきた。もしこの値に偽りがあれば、かぐや姫はピントの合わない出来損ないになってしまう。それだけはいやだ。
光軸をそこそこに合わせて屋根を開く。薄雲のたなびく春らしい空が広がっていった。ファーストライトにはどの星を通そう。そんな僕に天狼星が名乗りを上げた。そうだ、全天一の輝星、シリウスこそファーストライトにふさわしい。ひとり納得して筒を傾けた。40ミリのアイピースを差し込み恐る恐るのぞく。丸い視野にちらほら見えるピンボケの星たち。ドロチューブを動かしてピントを合わせてゆく。かみさまぁ…

ほどなくピタリ。シリウスが視野の中央でわずかに十字の光芒を放ちながら輝いた。主鏡の焦点はちゃんと設計値の場所にあった。
何年も何年も頑張った、その苦労が報われた。そんな気がした。
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姫を組み上げる

2009年04月11日 10時26分47秒 | Weblog
次の週、みかんの丘は高曇り。春の風が吹いていた。屋根をほぼ一杯に開けてかぐや姫の組み立てにはいる。
まず下半身を真上に向けて架台に固定した後、上半身を持ち上げて下半身の上部に取り付けてある4つのジョイント部にそっと載せる。言うのは簡単だが、軽いとは言え15キロある。しかも頭でっかちで持ち上げると重心は僕の頭よりかなり上だ。一つ間違うと長年の苦労と高額の投資が消え失せる。慎重に慎重に、フラフラしながらそれでも何とかジョイント部にあわせて上半身を載せた。
かぐや姫はトランクルームにかくまわれていた頃、室内で光軸をきちんとあわせていた。それを隠れ家へ移動するにあたって、組み立てのとき間違えないようにとジョイント部に印をつけて上下分離したのだ。
しかしその時から何年も経っていた。セロテープで貼り付けていた紙の印はとっくにはがれている。組み立ては正しかったのだろうか。接眼部からのぞいて見ると案の定、ジョイントの場所が違う。光軸が大幅にずれていた。

まあいいや。見た目姫は元通り。観測デッキに鎮座ましましている。軸合わせは後日やろう。この日は姫の姿を携帯で写メって大工仕事に入った。
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かぐや姫遷座⑧ 獅子の祝福

2009年04月09日 10時41分28秒 | Weblog
観測デッキの中を片付けてホッと一息付き、時計を見たら午後7時半を回っていた。正午から作業を始めてなんと7時間半。緊張に続く緊張でへとへとになっていた。やっぱり今日は帰ろう。そう思いながら外に出た。
もうすっかり日が暮れて、海には島の明かりがぽつぽつと見え、そこが海岸線であることを教えてくれる。見上げるとしし座が昇っていた。東天に堂々と寝そべる獅子。この春を代表する星座が、かぐや姫の遷座を祝福してくれているようだった。
望遠鏡を設置して、初めて星の光を通すことをファーストライトという。しかし、姫にはそこまで行くまでにまだ数多くのステップがある。移動でガタガタになったであろう主鏡のスタビライザー、副鏡の取り付け部の調整、それよりも、上半身と下半身が設計どおり繋がるのか。

どうぞ上手くいきますように…  見下ろす獅子に手を合わせた。

(しし座の星座絵はステラナビゲーター8を借用しました)
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かぐや姫遷座⑦ 次はいよいよ下半身

2009年04月06日 23時22分35秒 | Weblog
上半身が上がって一息つく。さて、次は下半身だ。ハッチの下でトラスに布ベルトを掛けてデッキに上がり、ウインチを少し動かした後下に降りてバランスを見る。これを繰り返して吊り位置をきめた。
モーターのボタンを押す。ウインチから伸びたワイヤーが途中でロープに中継され、滑車をくぐってハッチの下に伸びる。それが少しずつ引き上げられ、姫の心臓部が床から離れていった。竹取庵の中で一人感動。
上半身の引き上げで慣れたせいもあり、下半身は比較的簡単にデッキに姿を現した。宙吊りとなった下半身の下で慎重にハッチの蓋をずらし、そーっと閉める。そして閉めた蓋の上に姫を降ろした。

成功!とりあえずすべてのパーツをデッキに持ち上げた。組み立ては後日する。
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かぐや姫遷座⑥ まず上半身を上げる

2009年04月05日 03時32分21秒 | Weblog
かぐや姫の上半身、トップリングに布ベルトを掛け、屋根を動かす片方のウインチと滑車を使って引き上げる。少し上がったところでもう片方のウインチで屋根を移動させ、引き上げたトラスの部分をハッチの角に掛けて全体を傾ける。これの連続で、かぐや姫の上半身は次第に観測デッキに姿を現した。
本当は屋根を全開した上で、背の高い櫓を組んで引っ張り上げれば早いのだろうが、まあそこは現有機材で頑張ろう。二つのウインチを交互に動かし、上半身はおよそ30分で観測デッキに引き上げられた。
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かぐや姫遷座⑤ ハッチを開ける

2009年04月04日 00時12分20秒 | Weblog
竹取庵の観測デッキには、かぐや姫を運び上げるためのハッチがある。すぐ傍の階段は斜めになっているため、大きいものは通らないのだ。
これを作ったのはもう何年も前だった。ここを姫が通る。その情景を思い浮かべてわくわくしながら作業したのを思い出す。それから長い年月が経ち、雨に遭い陽にさらされてハッチの受け金具はかなり錆びていた。蓋がちゃんと外れるかどうか心配だったが…
下からそっと持ち上げて安心した。大丈夫、何の問題も無く使える。

ハッチの蓋を外して上からのぞいてみた。下に姫が見える。そう、とうとうその時が来たのだ。
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かぐや姫遷座④ 台車にゆられて

2009年04月02日 16時50分24秒 | Weblog
姫の上半身は軽い。トラックの荷台にスロープを掛けて地面に降ろした後、トラスの部分を持ち上げれば楽に竹取庵に運べる。問題は下半身だ。隠れ家で積み込むとき、布団にくるんで台車に載せ、ロープで固定してある。とりあえずそのままの状態でスロープから降ろした。ただ、竹取庵の裏口まではかなりの坂だ。しかも雨水が地面を削ってでこぼこ。小さく切った板を2枚、交互に台車の前に置きながら、少しずつ少しずつ前進していった。
板を移動させる時には台車から手を離さなければならない。そうすると小さな台車はいつ倒れるか分からない。後ろに転がるかも知れない。倒れてしまえば長い間の苦労がすべて水の泡だ。
こんなもの二人掛かりなら訳は無い。いつもそう思う。そして、それをあえて一人でやっている自分に笑いが出てしまう。
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