宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

月命日

2010年06月21日 00時48分17秒 | Weblog
昨日は母ちゃんの月命日だった。ちょうど1ヶ月前、僕は職場で母ちゃんの訃報を聞いた。忘れたい。でも忘れることはきっと出来ないあの日。
そのせいでは無いのだろうが、訃報の電話を受けたちょうどその時刻、みかんの丘に激しい雨が降った。雨は2時間ほどで止み、丘は静寂を取り戻した。初々しいみかんの新葉に溜まるしずく。隣であおむしに葉を食い尽くされた小枝が痛々しい。

丘を見回ると、初夏になって植えた苗木から新芽が吹いていた。

この芽はやがて新しい枝となり、日の光を受けて苗木に息吹を送り込む。そう。失われるものばかりではない。ここには希望がある。何時までも悲しむのはよそう。そう思いながら涙がこぼれた。
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夏向きの観測デッキ

2010年06月20日 10時58分10秒 | Weblog
星を見るのは諦めざるを得なかった。梅雨の最中。それも仕方が無い。そこでとりあえずデッキの掃除をすることにした。ここはまだ屋根と壁との間が開いていてほこりが入る。いや、それだけではなく稀では有るが小鳥までが入って来る。このスペースが僕だけのものではないと主張されているようだ。そういえばジョウビタキに一階を占領されたのは2年前の秋だった。
部品箱のお古で作った大仰なやぐら炬燵は2週間前に片付けて、今はこれもお古のテーブルを置いている。改めてみるとずいぶん夏向きになったもんだ。デッキの本格的な内装は一階が終わってからだから何時になるか分からないが、このままでも悪くない。ここを訪れる人たちは隠れ家のようで結構気に入ってくれている。ただここは隠れ家ではなく、宇宙(そら)に向かって伸びるロープウェイの始発駅なのだが。
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雨上がり

2010年06月19日 22時35分09秒 | Weblog
昨日までの雨がようやく上がった。とは言うものの、もわーっとした空とかなりの蒸し暑さ。無理だろうとは思いながらもカメラを持ってみかんの丘に上がる。何となく広がる薄い青空にわずかな期待を掛けて竹取庵の三角妻を開いてみた。観測デッキを駆け抜けるさわやかな海風が心地良い。ただ、いつも通り島の輪郭は見えるものの海も丘もベールを掛けたようだ。
その景色を眺めていて改めて気付いた。みかんの木が確かに大きくなっている。おじさんを失って衰えていた丘が息を吹き返そうとしている。そこにはおじさんの跡を継いだ人たちの努力に加えて、ほんのわずか、僕の思いがあると思いたかった。そのみかんの丘で竹取庵の歴史はまもなく11年を数えようとしている。そう、この土地を使えとおじさんに案内されたのは、今日と同じ梅雨の晴れ間が広がった1999年6月21日の事だった。
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銀の川の干潟②

2010年06月11日 00時08分30秒 | 宇宙

竹取庵の屋根を開け、口径20センチの反射望遠鏡に大きいほうのカメラを取り付ける。近場の3等星でピントを合わせ、筒先を星雲に向けた。カメラ感度3200、露出7分。ガイドをコンピューターに任せて居眠りしながら写し取ったのがこれ。
淡いピンクのガスのあちこちに見える虫食いのような黒い穴は「グロビュール」と呼ばれる星の卵だ。この先端で、今まさに星が生まれつつある。

この1枚を撮ったところで時刻は午前1時を回ってしまった。もう帰ろう。と言うわけで、この画像は重ね合わせ無し。キメが粗いのはその為だが、入梅前の記念の1枚というところだろうか。

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銀の川の干潟①

2010年06月11日 00時08分30秒 | 

天の川の下流、いて座のシンボルとも言える南斗六星の柄の先から少し南に下ったところに、肉眼でもはっきりと分かる光の塊りが有る。日本から見ればまるで銀色の川の河口付近に出来た小さな干潟。 M8。この塊りに「Lagoon Nebula=干潟星雲」の名を与えたのはイギリス人女性アグネス・クラークだと言われている。1890年のことだ。
明日は仕事が有るので余り時間は無いが、せっかく夏の天の川を撮影しに来たのだからと、欲を出してこの干潟星雲も撮影する事にした。

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星の流れをバックに

2010年06月10日 12時50分06秒 | Weblog
月明かりに阻まれて丘を下りてから4日目。二つ目の高気圧が竹取庵の上を覆った。月齢は25だ。明け方になるまで月は昇らない。このチャンスを逃すと、今年はもう見ごたえのある天の川には出会えないかも知れない。週間天気予報には週末以降雨のマークが並んでいた。そろそろ梅雨に入る。梅雨が明ける頃には天の川の昇る時刻が早くなり、消え残った街明かりが銀のベールの濃淡を隠してしまう。
仕事が終わって夕飯を済ますとカメラ2台のバッテリーをチャージし、みかんの丘に上がった。午後11時。前回よりも多少靄が感じられるが、それでも堂々たる流れは充分に心に響いた。よし、気合を入れてカメラをセットする。今夜の目的は、この銀河をバックに竹取庵を撮影することだった。だから持ってきたレンズは対角線魚眼。左右にほぼ180度の視野を持つ。
みかんの木の間に三脚を立て、感度1600、露出30秒。地面が湾曲しているのは魚眼レンズのご愛嬌。なんとか思い通りのショットになったと思う。
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夏の天の川

2010年06月08日 03時42分59秒 | 

月は昇ったものの、南の天の川はまだはっきりと見えていた。今度いつこんなに晴れるか分からない。駄目で元々、撮ってみようか。カメラを望遠鏡から外し、元のレンズを付け直す。条件を「はくちょう座」の撮影に合わてフレームを南に移動。カメラのシャッターを開く間に7分。画像がモニターに現れるまでに7分。この間、空はわずかずつ明るくなってゆく。ここまでか。竹取庵の屋根を閉め、ディテールの薄らいだ天の川に別れを告げて丘を下りた。
翌々日、2枚目の天の川の画像を処理をしながら気が付いた。北の天の川と南の天の川、この二つの画像は一部重なり合っていてつなぎ合わす事が出来る。そこで数時間頑張って仕上げたのがこれ。はくちょう座からいて座までの天の川だ。地上の明かりの影響は有るものの、場所によって明らかに色が違う星の流れ。その両側で織り姫彦星が鮮やかだ。

僕らの住む銀河を真横から見た姿。それもここに写し撮ったものは一部分でしかない。その壮大なスケールの中で僕らは生きている。 いや、生かされている。その理由を尋ねるのは、未熟な人類にはおこがましい事なのだろうか。

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月が昇る

2010年06月07日 19時28分17秒 | 

天の川を堪能しながら「はくちょう座」を撮影するうち、東の山の端が次第に明るくなってきた。月が昇る。そう、今夜の撮影チャンスは、天の川が高度を上げてから月が昇るまでのわずか2時間ほどだった。その貴重な時間も家を出遅れたためにかなり喰われていた。
木立の隙間を縫って下弦を過ごした月が見る間に昇ってくる。それはまるで生き物のようだった。そうだ、この様子を撮影しよう。そう思い立ってはみたものの、カメラを雲台から外して8センチの屈折に付け替え、ピントを合わせているうちに月は木立から離れずいぶん昇ってしまっていた。
月が昇ると、澄み切っていると思われた星空のあちこちに刷毛で曳いたような薄雲が見える。そういえば月自体も羽衣を纏っていた。空全体が明るくなる。撮影もここまでかな、そう思いながらシャッターを切った。感度は「はくちょう座」の撮影と同じく1600、シャッタースピード15分の1、F値は口径8センチ焦点距離600mmだから7.5かな。
月齢22。夕方の月とは太陽の当たり方が逆さまだ。普段見慣れたクレーターもなんだか別物のようで妙によそよそしい。

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大河に遊ぶ鳳

2010年06月06日 11時22分15秒 | Weblog
母ちゃんが星になって半月が過ぎた。告別式の日に贈った「はくちょう座」の画像は、実は3年も前の、それも別の目的で撮ったものの流用だった。だから次の撮影はちゃんとしたはくちょうの姿だと決めていた。待つうちに細かった月は太り、やがて痩せて行く。そして迎えた昨日…

みかんの丘に着いたのは午後11時を回った頃だった。車を降りた僕を鮮やかな星空が迎えてくれる。満天の星を見渡す目に、くっきりとした光の帯が映った。夏の天の川。堂々とした流れの川上にその鳥はいた。いっぱいに翼を広げ、銀のしぶきを上げながら川面に遊ぶ鳳。「母ちゃんごめんね。これが本当のはくちょう座だよ。」
竹取庵の屋根を開け、赤道儀にカメラを取り付ける。ズームレンズをワイドいっぱいの28ミリにセットしてレリーズのボタンを押した。カメラ感度1600、絞り5.0、露出7分。

写し取った天の川にはおり姫と彦星の姿もあった。はくちょうの尾デネブと共に夏の大三角と呼ばれる。この二つの星を取り持つのはカササギではなくこの鳳ではないだろうか。ふとそう思った。
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