宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

悪天候のわけ

2009年07月30日 00時04分11秒 | Weblog
真っ暗な中、雨脚は次第に強くなっていった。第2接触のアナウンスから5分後、ふわーっと明るくなっていく会場で見たのは、シートを頭にバスに急ぐ人たちだった。しかし、機材を広げている僕らはそれが出来ない。小さな傘では叩き付ける大量の雨粒を防ぎ切れなかった。とりあえずカメラとレンズをバッグに。そしてようやく望遠鏡と赤道儀をキャリーバッグに仕舞ってバスに戻る。その夜僕はドライヤーを手に、寝る時間を犠牲にして機材を乾かした。
翌日日本に帰ってみると、友人も職場のみんなも、テレビの中継で観測地が雨だと言う事をすでに知っていた。掛けられるのは慰めの言葉ばかり。そして分かったのは皆既日食の観測地のほとんどが全滅だったと言う事だ。
気象庁が公開した気象衛星ひまわりの影像でも、月の影が、事もあろうに梅雨前線の上をなぞるように通っている。
悪天候の原因は、この春ペルー沖で起きた海水温の上昇、エルニーニョ現象だと言う。調べてみると、エルニーニョの原因は海流の変化、そしてその大元は潮汐作用だ。

太陽と月の織り成す一大ページェントを見に、僕らは遥か異国の地に旅した。しかし、それを阻み覆い隠したのも、やはり月と太陽の引力だと言う。それほど見られたくないのだろうか。上海の広場に居合わせた人たち同様、僕も次のチャンスにリベンジを期す。
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皆既食へ

2009年07月28日 11時35分38秒 | Weblog
太陽のやせ細った姿を雲が隠して6分後、会場に第2接触1分前のアナウンスが流れた。いよいよ皆既日食に入る。黒い太陽は見えるのだろうか。そう思いながら見上げた空が暗くなっているのに気付いた。会場にどよめきが起こる。
風が吹き始めたのは皆既食30秒前。アナウンスの直後だった。それと同時に会場がみるみる暗くなる。あちこちで起こる歓声。子どもが立ってあたりを見回し、大人たちはいっせいに携帯電話を取り出してその光景を写し始めた。遠くでホテルのネオンがともる。
午前9時36分28秒、第2接触のアナウンス。皆既食に入った。もう懐中電灯無しには自分の手元すら見えない。それでいて地平線だけはほんのり明るい。不思議な光景だ。
寒い。とにかく寒い。さっきまであれほど蒸し暑かったのに。そう思いながらビデオを回す僕の耳にポツポツという雨音が聞こえ、そしてそれは次第に大きくなっていった。

掲載したのは、撮影したビデオ映像のうち皆既食30秒前から50秒間のコマを1秒ごとに取り出してGif動画にしたもので、約3倍速となっています。また、ブログの容量の関係で色数を落としており、見づらくなっているのをお許し下さい。
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食分9.1

2009年07月27日 00時15分47秒 | Weblog
小雨と薄日が交互に訪れる中、会場に食分90パーセントのアナウンスが流れる。天候は悪化の一途を辿っていた。トンボは既に地面すれすれを飛んでいる。太陽のある辺りを覆う黒雲に、諦めのため息があちこちから聞こえた。
だめだ。やっぱり見えない。そう思った直後、広場のひと隅に歓声が起こった。黒雲が割れて空が明るくなり始めたのだ。
西に流れる下層の雲と南に流れる上層の雲がちょうど隙間を作ろうとしている。あわててビデオカメラの電源を入れた。カメラのスタンバイ表示が出るまでのおよそ30秒。気が遠くなるほど長い。モニターで位置とピントを確認してスイッチを押した。時刻は午前9時29分37秒。雲の切れ間は既に閉じようとしていた。その中で、かろうじて捉えた食分91パーセントの太陽。それは三日月よりも細かった。
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食分5.5

2009年07月26日 00時07分11秒 | Weblog
天気はいつまで待っても回復しなかった。それどころか小雨さえ落ちてきて僕らの不安をあおる。ただ、時には雲を薄くして、欠けて行く太陽を垣間見させてもくれた。その度に広場に歓声が上がる。
僕が持ち込んだ機材は、一眼レフのデジタルカメラが2台とレンズ4本。それにビデオカメラとワイド、テレの2本のコンバーターだ。望遠鏡は口径6センチの屈折を小型赤道儀に載せている。
ただ、これだけの機材をひとりで扱う。ずっと晴れていればその時間も有るが、雲が薄くなるのはほんの数秒。それもその時の条件で明るさが猫の目のように変わる。結局一眼レフではたいした写真は撮れなかった。フィルターの切り替えが間に合わないのだ。

この写真はテレコンバータを付けたビデオカメラで捉えた食分5.5の太陽。現地時間で午前9時4分8秒のひとコマだ。
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赤とんぼが低く

2009年07月25日 00時57分46秒 | Weblog
ツアー会社が用意した観測地は「中国海湾風筝放飛場」。上海市中心部から南へおよそ60キロ離れた海岸べりの凧揚げ場だった。朝4時半に起こされたツアー客およそ1500人がバスで次々に到着し、一辺200メートル前後のこの広場のあちこちに陣取った。
僕らはすでに前の晩激しい雨を経験している。今朝雨がやんだのが不思議なくらいだった。蒸し暑い。昨日の最高気温は38度を上回っていたと言う。汗をにじませながら観測機材を広げる僕らのまわりでは、赤とんぼの大群が地上低く飛び回っていた。虫が低く飛ぶときは雨になる。亡くなった祖母の言葉を思い出した。

食の初まり、第一接触まであと1時間。天気は持つだろうか。
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丘を離れて

2009年07月24日 07時38分57秒 | Weblog
惑星の表面から見た母恒星とその惑星の衛星が、大きさも形も全く同じ。そんな偶然の一致がこの広大な宇宙にどれくらい存在できるのだろう。地球と太陽と月。その奇跡のような位置関係が織り成す天体ショー「皆既日食」を見るため、今月20日にみかんの丘を離れて飛行機に乗った。行く先は上海だ。
月の影が落ちるのはインド西部から太平洋の真ん中辺りまで。上海はその旅程の真ん中より少し手前にある。皆既日食はけっこう頻繁に起こるが、これまでは日本から遠くてそこに行くための時間も費用も捻り出すのは難しかった。それが今度は手の届くところで起こるのだ。心がおどった。
ただ出発の前、友人の気象予報士がすまなそうに言う。
「天気が悪いかもしれません。」
「どうして、梅雨明けたんじゃないの。」
「それが、太平洋高気圧が、ちょうどこの頃勢力弱めるんです。」
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月の地域差

2009年07月01日 19時55分36秒 | 

雨がやんだ。梅雨だから仕方が無いが、陽が射している時でも空はベールか薄綿が掛かっているようだ。このままでは欲求不満になってしまう。そう思いながら当ても無く竹取庵の屋根を開けてみた。
夕暮れの西の空、雲間に見え隠れしながら六日の月が沈もうとしている。その月にかぐや姫を向けてみた。姫には今、焦点距離が2倍近く延びるレンズが取り付けてある。いつもの倍近い大きさで陽炎に揺れる月を眺めながら思う。
月はなぜ北と南でクレーターの様子が違うのだろう。南半球のクレーターは底まできちんと見えるのに、北半球のそれはマグマに埋もれて縁しか見えない。地域差かな。そう言えば同じ日本でも地域によって地形が違う。山の鋭さも違う。勢いそこに住む人の気性も変わってくる。
月のうさぎも北と南で性格が違うのかな。方言もあるのだろうか。ひょっとすると搗く餅の種類にも北と南で違いが有るかも知れない。逢ってみたいが、人類が月のうさぎに会えるのはまだ遠い先のことだ。

コメント (1)
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