宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

贈る写真

2010年05月23日 08時30分27秒 | Weblog
今月5日の真夜中、僕は1通の携帯メールを受けた。
「夜のドライブ。ピーポーピーポー」

僕の掛け替えの無い友人。数年前携帯サイトの中で知り合ったその人と、僕は「しりとり」という他愛無い言葉の繋がりを通じて、他の仲間たちと共に互いの心を分かち合う事になる。僕がリウマチを患っている事を知ると、はるか北の大地から知りうる限りの薬や食物を送って来てくれたが、その人は僕とは比較にならない難しい病気を持っていた。
「血栓性血小板減少性紫斑病」。血管壁と血小板が反応して血栓を生み、毛細血管を詰まらせる一方で、血小板の減少から体のあちこちに内出血が起こる。原因も確かな治療法もまだ判っていない。
みかんの丘をひと目見たいというその人の為に僕はこのブログを立てた。僕が写真や記事を載せる度に、その人はいつも短く僕に感謝と感想を送ってくれた。それを糧にこのブログは続いた。
その人を発作が襲う。深夜のメールは僕への緊急通信だった。僕を心配させまいと冗談めかして…

より正しい治療を求めて大病院に移り、透析と血液交換が続く。電極と酸素チューブを体に繋ぎながら、その人は僕に毎日病状を知らせて来た。しかしそのメールが途絶えて1週間目の昼、僕はご家族から訃報を受けた。血栓が脳幹に詰まり、呼吸が止まったという。

告別式は今から1時間半後。遠すぎてそこに行くことの出来ない僕は已む無く花とメッセージを送り、愛してくれたこのブログに、その人が好きたっだ「はくちょう座」の画像を載せる。この写真、見てもらえるだろうか。

ハンドルネーム「トト子」。みんなから「母ちゃん」と慕われ、優しくて気配りが出来、そして力強いその人の、名前と山のようなメッセージを、僕もしりとりの仲間も、終生忘れることは無い。
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発展と知性

2010年05月16日 23時05分41秒 | 

この週末も天気は良かったが、土曜日の遠距離出張で溜まった疲れが翌日に響き、今日はみかんの丘にも行かず、だらだらと過ごしてしまった。日暮れになってようやく外に出て、見上げる西空に息を呑む。三日月と金星のランデブーだ。
あわてて家に取って返し、カメラと三脚を持ち出した。望遠鏡はほとんど竹取庵に置いている。手持ちと言えば口径60ミリのファミスコ60しかない。沈むなよ、沈むなよ、そう心の中で祈りながらカメラを繋いで三脚にセット。感度640露出1秒で雲に入る直前のこの光景を何とか切り取ることが出来た。
三日月と輝星はイスラームの象徴だ。満月に向けて膨らんでゆく三日月は発展と進歩を、また金星に代表される輝星は光と知性をそれぞれ表すという。イスラム国家の中にはこの二つの天体を構図に取り入れているところも多い。

発展と知性。世界を見渡したとき、この二つのバランスがきちんと取れている国がいったいいくつあるだろう。そう考えてしまう。

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空の綿菓子

2010年05月16日 00時51分07秒 | 

撮影のコントロールをコンピュータに任せて満天の星空を見上げた。天頂付近にもやもやとした光の塊がある。
かみのけ座。それは戦場から帰ったエジプト王プトレマイオス3世の無事を喜んだ王妃ベレニケが、女神アフロディーテに捧げた髪だと言う。写真に撮るとこんな風に一つ一つの星に分かれて見えるが、その淡い星たちが雲の様にまとまって、僕の目には綿菓子と映る。それに日本人の僕には髪は黒いものというイメージがあって髪の毛という呼び名自体しっくり来ない。
それはさて置き、西のしし座や東のうしかい、それに北のおおぐまがきちんとした星の連なりなのに対して、かみのけ座はほとんど形を成さない。それなのに、初夏の夜空で結構な存在感が有る。集団の力というものなのかも知れない。

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天の川から這い出すサソリ

2010年05月14日 12時23分58秒 | 

仕事を終えて建物を出ると、雲のほとんど無い夕空が広がっていた。今夜は星が見える。かなり疲れてはいたが、満天の星に囲まれたくて食事もそこそこにみかんの丘に向かった。さすがに平日は車が多い。到着したときは9時を少し回っていた。
竹取庵の鍵を開けて観測デッキに上がり屋根を開く。風が冷たかった。ダウンを着込んでカメラを用意する。
東の空にさそりが昇りかけていた。夏が近いことを教えてくれる。このサソリは狩人オリオンを殺した刺客として知られている。豪腕で腕のいいオリオンはあるとき酒の席で酔いに任せ、自分を世界一の猟師だと自慢した。これに腹を立てたのがそこに居合わせた大地の神ガイアと気位の高い女神ヘラ。元々乱暴者で人気の無いオリオンはサソリを差し向けられ、あえなく命を落とす。サソリはその功で天に上げられ星座となった。一方友人アルテミスの願いで星座に上げられたオリオンだが、その毒を恐れ、さそりが沈むのを見計らって昇って来ると言うのだ。
それにしても見事な形。神々の刺客サソリが、立ち上がりかけた夏の天の川から今這い出そうとしている。

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球状星団M13の過去

2010年05月06日 00時34分13秒 | 宇宙

翌日も何となく晴れていた。仕事を終えた夕方、カメラを持って丘に上がる。カメラの感度は前の夜月の出を撮影したままの1000だった。そう言えばこの感度で星を撮影したことが無い。感度を落とせばノイズが少なくなるのは分かっているのだが…
おばさんと少し話をした後、竹取庵に入って屋根を開いた。比較のために、以前撮影したヘルクレス座の球状星団M13をねらってみた。前回のカメラ感度は3000。また、今回は光害カットフィルターも組み込んでいる。そこで露出4分で試してみた。重ね合わせ無しの1枚。それがこれ。確かに去年6月の写真よりも細かなところまで写っている。もちろん、大口径の画像と比べるべくも無いが。
球状星団は銀河の周囲にほぼ均一に散りばめられていると言う。それを利用して、天の川銀河の中の太陽系の位置が導き出されたのは1930年代の事だった。星団を形作る星たちは総じて古く、しかもでかい。その生い立ちには様々な説があるが、このM13のように直径100光年にも及ぶものは、大昔所属する親銀河に吸収された小さな銀河系の成れの果てだとも言われる。そこではあの子持ち銀河に見られるような壮絶な光景が繰り広げられていたのだろうか。

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絵のような月の出

2010年05月04日 10時29分40秒 | Weblog
晴れているとは言えこの季節は春がすみが空を覆っている。今夜の月齢は17.5。黄砂も来ていると言うから、月が昇れば空一面が明るくなってしまうだろう。そんな事を考えながら撮影をしているうちに東の空が次第に明るくなってきた。
やれやれ、ここまでか。観念して機材を片付けながら何気なく目を海にやると、真っ黄色の月が昇っていた。あれ、月があんなところに居る。思ったより南だ。濃い黄砂がはっきりと分かる空に、妙にくっきりとした月影。まるで絵のような光景だった。
望遠鏡からカメラを外して三脚に載せ替える。カメラの感度を落として露出を色々変えてみたが、目に映るようにはどうしても撮れない。ラチチュードという、モニター上に表現できる濃淡が、人間の目に比べて圧倒的に低いのだ。目ではくっきりと見える月の模様を写し取れば周りが真っ暗になる。かと言って周りを目で見えるように明るく表現すれば月の有る辺りが白く飛んでしまう。そこで…

そう。星雲を撮影する方法を使った。まず自分の目に今の光景を焼き付ける。そして露出を変えてたくさんの写真を撮り、それを画像処理して重ね合わせた。憶え込んだ光景を何とか表現するために何時間も掛けて。
これでもなお見た目に劣る。機材が人の機能に追いつくのはまだまだ先のことだ。
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理不尽な神話

2010年05月03日 10時56分39秒 | 

子持ち星雲を撮った晩春の北の空はにぎやかだ。その主役が長い尾を持つ熊の親子。この親子には悲しい物語がある。
親熊の名前はカリスト。月の女神アルテミスに仕えるニンフだった。そのカリストが好色の大神ゼウスとの間に男の子アルカスを産む。怒ったアルテミスはカリストを熊の姿に変えてしまった。時が経ってアルカスは立派な狩人になり、ある日森でカリストに出会う。カリストは我が息子の立派な姿に思わす歩み寄るが、何も知らないアルカスは自分に向かってくる大きな熊に矢を放ち、我が母を殺してしまった。
これを不憫に思ったゼウスは息子も熊の姿に変えて空に上げ、親子熊の星座とするが、今度はゼウスの妻ヘラが怒る。ヘラは実の父で海の神でもあるオケアヌスらに頼んで、二人の星座が海に沈んで休めないようにしてもらったというのだ。だからこの二つの星座は永遠に北の空を回り、無窮の針と呼ばれている。
この話は変だ。悪いのはゼウス一人ではないか。なのに誰もゼウスは責めず、結果として悲劇が母と子に及ぶ。ゼウスが星座になって北の空でくるくる回っていればいいのだ、といつも思う。理不尽は神話の世界でも同じだ。

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略奪

2010年05月02日 12時55分05秒 | 宇宙

宇宙は広いはずなのに、そこに浮かぶ銀河同士の衝突はそこらじゅうで起こっている。

北天を巡るおおぐま座の尻尾の南。うしかい座との間に挟まれて、りょうけん座という小さな星座が有る。うっかり見落としそうなこの星座を有名にしているのが、M51「子持ち星雲」だ。大きな渦巻き銀河と小さな楕円銀河が、まるで親子のように手を繋いでいるかに見えることからそう呼ばれる。しかし現実はそんなほのぼのとしたものではない。これはまさに、二つの銀河が衝突している最中の光景なのだ。
大きいほうの銀河がその強大な重力で、小さいほうの銀河の持つ星や星間ガスを容赦なく奪い取っている。小さな銀河は持ち物を奪われるだけではない。重力のひずみが内部の星間ガスに働きかけ、爆発的に星を生み出す。銀河はその形さえ崩れ、やがて消えて無くなる。
ゴールデンウィークに入って初めての晴天、大きな月が昇るまでの時間を狙って20センチの反射を向けてみた。焦点距離はほぼ倍に伸ばして1500ミリ。光害カットのフィルターを付け、カメラの感度5000。露出は5分と8分、それに10分。そうして撮った5枚の画像を重ね合わせた。もっと淡い部分を写し出そうとしたが、これ以上の露出は春がすみに阻まれて無理だった。

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