宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

幽月(ゆうげつ)

2010年04月29日 00時07分44秒 | 

明け方の空に残る月を「有明の月」または「残月」と言う。しかし、午後のまだ明るい時間に見える月の呼び名は探したけれども分からない。ようやく見つけた言葉がたったひとつ、「昼月」。「ひるづき」と読むらしい。風情の無い呼び方だ。
そこで考えた。うっすらとして見落としそうな月、「幽(かそけ)き月」と言う事で「幽月」とはどうだろう。読みは「ゆうげつ」。
なかなかいい呼び名ではないか。今後昼下がりの空に掛かる月をそう呼ぼう、と一人悦に入った。しかし、この忙しい現代に昼間の月を眺める暇人は他にいないだろう。この言葉も僕一人の造語に終わるに違いない。
その幽月を眺めているうちに写真に撮りたくなった。かと言ってそれだけに竹取庵の屋根を開けるのは面倒だ。そこで床に転がっている口径80ミリ焦点距離600ミリの屈折を三脚に載せて持ち出し、カメラを取り付けた。
カメラ感度500、シャッタースピード350分の1。目に見える空の明るさそのままに撮影すると、月そのものが白く飛んでしまうので露出を少し短くしている。そのため記録された月は意外にくっきりと写り、それほど幽(かそけ)く見えない。

撮影した写真にかなりの画像処理を施して、見た目に近づけてみた。昼間の月に見えるだろうか。

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新緑の中で

2010年04月28日 01時39分50秒 | Weblog
翌日曜日も朝から晴れていた。家の用事をあれこれ済ましてみかんの丘に着いた時は3時もかなり回っていたが、それでも午後の陽射しが丘に降り注いで新緑が美しい。久しぶりに竹取庵を遠くから眺めたくなっておばさんの家の前を通り、谷の反対側まで行った。
ここからは海が見えない。竹取庵がまるで深い山の中に建っているようだ。ふと、建て始めた頃の事を思い出した。よくここまで来たものだ。もちろん建物自体まだ完成していない。外から見ただけでも、玄関ドアもテラスの手すりも付いていない。それでも何とか観測が出来るまでになっている。あの頃からすれば夢のようだ。
見ると東の空に月が出ている。月齢11.1。明け方に残る月は有明の月という。こんな風に夕方近くに見える月はなんと呼ぶのだろう。
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月夜のケンタウルス

2010年04月27日 08時52分53秒 | Weblog
月の撮影に飽きて観測デッキから周りを見渡した。薄いもやは有るものの星が結構数えられる。月さえ無ければ星雲も撮れそうだった。月明かりが怨めしい。南の空に目をやると、島の上にケンタウルス座が半人半馬の上半身だけのぞかせていた。
好色で酒の好きなケンタウルス。ギリシャ神話のストーリーよりも、僕は「銀河鉄道の夜」に出てくるケンタウルスのほうを思い出す。ケンタウル祭の夜、ジョバンニは町を見下ろす丘の上で銀河鉄道に乗る。そして、なぜか先に乗っていた友人カンパネルラとともに天の川に沿って星座をたどり、さらにケンタウルス座の星々をめぐって天上があると言う南十字を目指す。
ジョバンニはその手前で汽車を降ろされるが、カンパネルラの向かった南十字は、実はケンタウルス座の終点α星よりも手前にある。
ケンタウルス座のα星、「アルファケンタウリ」は太陽に一番近い星だ。この星座を見ると、なんとなく銀河鉄道の線路が見えるような気がする。その線路をたどって南十字を見に行きたい。お隣の星アルファケンタウリに逢いたい。
宮沢賢治もそうだが、僕も地平にさえぎられて見ることの出来ない南天の星たちに強くあこがれる。
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入り江の夜明け

2010年04月26日 19時08分08秒 | 

かぐや姫に取り付けたカメラのモニター。そこに映る月の中でひときわ目立つ地形がある。「虹の入り江」。餅搗きうさぎの胴体にあたる雨の海から、北西に入り込んだ直径260キロの円弧だ。
17世紀、ヨーロッパのの天文学者達は月の海が地上の天気を左右すると考えていた。だから月の海は天候にちなんだ名が多い。コンパスで引いたような美しい円弧に「虹の入り江」の名が与えられたのはこの頃かもしれない。
その虹の入り江が夜明けを迎える。朝日に映える入り江のほとり。もし僕が月に行けたなら、このほとりに立って昇り来る太陽を眺めたい。ただ、月は自転が遅い。地球なら2分で終わる日の出が1時間も掛かる。しかも、空気の無い月では日の出は赤くない。突き刺すような薄黄色だ。

虹の入り江から南へ1130キロ。雨の海を渡り切って嵐の大洋に入ると、月面で最も美しいクレーター「コペルニクス」に出会う。中学生のとき、僕が初めて憶えた月の地名だ。このクレーターは、月の海が冷えて固まったあと隕石の衝突によって出来た。だから海の上に噴石の飛び散った跡が残る。今から40億年も昔のこと。

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凍える4月

2010年04月25日 03時41分55秒 | 

異常低温と長雨。巷では野菜が高騰している。みかんの丘でも害虫が付いたり病気が出たりで苗に元気がない。そういえば去年も春に害虫が付いて苗木を何本も枯らしてしまった。異常気象も毎年となると異常とは言えない。そのうち長雨と害虫が春の季語になるのだろうか。久々に晴れた夕暮れ、そんな取りとめも無い事を考えながら観測デッキの屋根を開いた。
春の空に大きな月が掛かっている。月齢10.1。これほどの月でも透明度さえ良ければほかの天体の撮影が出来る。しかし今日は無理だろう。仕方ない。被写体は今回も月。長い間眠らせていたかぐや姫の主鏡からカバーを外してカメラを取り付けた。
モニターに現れる堂々たる月面。やはり月は見ごたえがある。しかし、それにしても気流が悪い。まだ上空に北西の季節風が吹いているのだろうか。フォーカスをあわせる手がかじかむ。ダウンを通して寒さがしみこむ。後10日もすれば立夏だというのに。

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思いがけず

2010年04月11日 09時02分42秒 | 

今年の春は天気が悪い。と毎年ぼやいているような気がする。それでもと、カメラだけは持ってみかんの丘に上がった。スピーカーの配線工事にやたら時間を費やして、気が付けばもう夕暮れが迫っている。そうだ、望遠鏡を載せ換えなければ。
観測デッキに上がってこれまでのシステムを下ろし、28センチの反射を取り付ける。遠くの家の灯で大まかなピント合わせをしようと屋根を開けると、思いがけず星がちらほらとのぞいていた。西に傾いたシリウスを視野に入れ、光軸を入念に調整していく。この望遠鏡の鏡は、カタログに書かれているほど精度が良くない。これが限界かなと空を見上げると雲はほとんどいなくなっていた。土星が輝いている。
先週のリベンジ。カメラを取り付けて火を入れ、モニターに導入。気流はそれほど悪くない。カメラ感度4000、シャッタースピード6分の1秒。うす雲の通過する合間を縫い300回近くシャッターを切ってそのうちの120枚余りを持ち帰った。その中から10枚を選び出し、画像処理して重ね合わせたのがこれ。衛星は別に30秒露出で撮影し、精密合成してある。
この口径ならもう少しはっきり写ってもいいかなと思いながら、今年の接近の記録とする。土星との距離、12億8089万キロ。


4月12日0時19分、画像を差し替えました。

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ピンボケの犯人

2010年04月08日 12時20分13秒 | Weblog
うまくいかない撮影に疲れ果て、カメラのモニターから目を離して空を見上げた。土星は相変わらずしし座の後ろに輝いている。ただ、空全体がそれほど暗くなっていない事に気付いた。星もなんとなくにじんでいる。特に土星の辺りから地平線にかけてぼんやりとうす黄色い。
そうか、こんな空だったんだ。撮影に夢中で気付かなかった。目でははっきり分からない。カメラを望遠鏡から外し、ワイドレンズを取り付けて赤道儀に載せた。露出1分でモニターに現れる春がすみ。僕はこのうす雲を通して、一生懸命写真を撮っていた事になる。土星はピンボケではなく霞んでいたのだ。
気温が次第に下がる中、しばらく待ってみたが星はくっきりするどころかいっそうにじんで行った。それにしてもこの黄色はなんだろう。地球の温暖化でゴビの砂漠が広がりつつある。そこから巻き上がった砂が偏西風に乗ってみかんの丘までやって来る。その黄砂が撮影を邪魔しているのだろうか。
仕方がない。土星はまだしばらくは楽しめる。僕はあきらめて屋根を閉め、みかんの丘を下りた。
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再会

2010年04月06日 19時49分21秒 | Weblog
黄昏時を過ぎて星がまたたき始める。オリオンはすでに西に傾き、東の空を獅子がかけ昇っていた。その後をベージュ色の星が追う。この星はまたたかない。またたかない星は惑星だと昔習った。そう、土星だ。
8センチの屈折望遠鏡をそのベージュ色に向け、カメラの電源を入れる。拡大率を高くした望遠鏡ではカメラのモニター画面に狙った星が入りにくい。さんざん苦労して土星を入れ、カメラ感度4000、露出4秒でテスト撮影してみた。モニター画面に現れる串だんご。1年ぶりの再会だった。ただ、なんとなくピントの位置がつかめない。しかも、撮影ごとに明るさが変わる。
どこが悪いのだろう。望遠鏡をシリウスに向けてピントを合わせ直し、再度土星を導入する。やはり同じだ。仕方なく、ドロチューブのフォーカスダイヤルを少しずつ前後しながら数枚撮影し、モニターで確認してはさらに数枚撮影する。これを繰り返しておよそ50枚をカメラに収めた。その中から何とか許せる範囲の画像9枚を選び出し、画像処理して重ね合わせた。
その結果がこれ。1年前の画像に比べて切れが悪すぎる。望遠鏡を換えてみようか。
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ランデブー

2010年04月05日 00時05分31秒 | Weblog
「ランデブー」と言う言葉がある。フランス語で「密会」「逢い引き」のことだ。普段の生活で使われることは少ないが、天文、殊にアマチュアの世界では、昔から二つの星の接近をそう呼んできた。

竹取庵の屋根を開けて望遠鏡の調整をしながらふと西の空に目をやると、夕空に大小二つの星が輝いていた。何だろう。大きいほうは確か金星だが… そう思いながらパソコンを立ち上げ、星空のソフトを開いて納得する。そうか、今日はまさに金星と水星のランデブーの日だった。
太陽系の中で地球より内側を回る惑星を「内惑星」と呼ぶ。太陽に近いだけに公転のスピードが速く、見かけ上接近する機会も多い。今日の二つの星の地球から見た距離はおよそ2.6度だそうだ。
それにしても、美の女神ビーナスと商売の神様マーキュリーの密会は、純愛とは別の趣きが感じられる。
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久々の観測デッキ

2010年04月04日 01時25分51秒 | Weblog
年度末は何かと忙しい。おまけにどうにか都合の付きそうな週末は雨か曇り。さもなければ強風が吹きすさぶ。気が付けば前に満月を撮影してから1ヶ月以上の時が経っていた。それだけにこの土曜日の空の青さに心が躍る。
しかし、あれこれ家の用事を済ませてみかんの丘に登る事が出来たのは午後4時近かった。竹取庵の鍵を開け、居間の工事を少し進めた後、日暮れ近く観測デッキに上がる。今夜は東の空に顔を見せ始めた土星を撮影するつもりだ。
ウインチのフックを架け替え、モーターのスイッチを握る。屋根が騒音とともに開いていった。いつもより早く屋根を開くのは望遠鏡群を外の気温に慣らすためだ。アイピースを使った拡大投影法で撮影するときは、わずかな温度差による大気の乱れも大きく影響する。
明るいうちに屋根を全開したのは久しぶり。真ん中に居座るやぐら炬燵を眺めながら、天文台とは言いがたいなと思う。そう言えば炬燵を置いてから観測デッキと言う言葉は使っていなかったような気がする。
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