明け方の空に残る月を「有明の月」または「残月」と言う。しかし、午後のまだ明るい時間に見える月の呼び名は探したけれども分からない。ようやく見つけた言葉がたったひとつ、「昼月」。「ひるづき」と読むらしい。風情の無い呼び方だ。
そこで考えた。うっすらとして見落としそうな月、「幽(かそけ)き月」と言う事で「幽月」とはどうだろう。読みは「ゆうげつ」。
なかなかいい呼び名ではないか。今後昼下がりの空に掛かる月をそう呼ぼう、と一人悦に入った。しかし、この忙しい現代に昼間の月を眺める暇人は他にいないだろう。この言葉も僕一人の造語に終わるに違いない。
その幽月を眺めているうちに写真に撮りたくなった。かと言ってそれだけに竹取庵の屋根を開けるのは面倒だ。そこで床に転がっている口径80ミリ焦点距離600ミリの屈折を三脚に載せて持ち出し、カメラを取り付けた。
カメラ感度500、シャッタースピード350分の1。目に見える空の明るさそのままに撮影すると、月そのものが白く飛んでしまうので露出を少し短くしている。そのため記録された月は意外にくっきりと写り、それほど幽(かそけ)く見えない。
撮影した写真にかなりの画像処理を施して、見た目に近づけてみた。昼間の月に見えるだろうか。