宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

囚われの銀河たち

2014年10月27日 00時01分02秒 | 宇宙

こと座は西に傾いて、替わって秋の星々が舞台に上がってきた。ただこの季節の空には、夏や冬のような目立ったスターが多くない。有名なアンドロメダ座の大星雲は何度も撮ったし、M33も二重星団もファイルに有る。何にしようかと迷った挙句、カシオペア座の南の端に有るNGC147、NGC185という二つの星雲を狙う事にした。資料で見るとこの二つはアンドロメダ星雲の伴星雲だという。伴星雲と言う事は小さく淡い楕円星雲だろう。そう思いながら筒先を向けた。

カメラ感度1600、露出6分20秒。これでは露出が足りないのかな。カメラのモニターを見た時は何も写っていないと思った。分かるだろうか。左上にうっすら見えるのがNGC185。右下にもう少しはっきりしているのがNGC174だ。伴銀河にもいろんな歴史が有るが、多くは独立した銀河だったものが近くを通ったより大きな銀河に取り込まれ、重力の鎖で繋がれ、自分の持つ星やガスを吸い取られて、中心に有った僅かな星の固まりだけになったかわいそうな星雲。言わば囚われの銀河だ。50億年後には僕らの天の川銀河にも同じ運命が待っているかも知れない。

空はいつまで経っても曇りそうにない。時刻は午後10時前。東の空には冬の星座が顔を出し始めていた。帰りたくはないが、明日はゲストを連れてこのデッキに戻ってくる。いい加減には仕舞わないと。

最後に今夜の記念ショットを撮ってみた。なんだかどこかの天文雑誌の表紙のようだ。明日もどうぞ晴れますように。

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夕暮れ時の天の川

2014年10月26日 01時26分22秒 | 宇宙

日が沈み、空の明るさが褪せて来るにしたがって、星が少しずつ現れはじめた。今日の一番星は頭の真上、こと座のベガだ。やがてデネブ、アルタイルと、夏の主役が次々にステージに登場する。天の川は今頭の真上に横たわっていた。望遠鏡の背中の雲台には、魚眼アタッチメントを載せた小さいほうのカメラが構えている。天空にまっすぐ伸びた天の川を撮るためだ。本当は真っ暗な空でこれを狙いたかった。しかし天候がそれを許してくれなかった。黄昏は残っていたが、今撮らなければもう今年のチャンスは無い。粒子を抑えるためにカメラ感度は800とし、少しでもボケを減らすために親レンズの絞りは8まで絞っている。これで露出は4分だ。淡いけれども何とか写し取れた。

さあ、次は何を撮ろう。コンピュータ画面の星図を眺めながら考えたが、なかなか決まらない。うちの子はどう。少し西に傾いた織り姫が声を掛けてきた。そうか、ドーナツ星雲M57。小さ過ぎて今までターゲットに入れていなかったが、試しに撮って見よう。大きいほうのカメラを20センチ反射に取り付けて、織り姫の機の向こうに遊ぶ娘を探した。

この星雲は平行四辺形の形をした織り姫の機の向こう側、二つの星のちょうど中間に居る。太陽くらいの大きさの星が一生を終えて、身の回りのガスを吐きだした姿。まるで卵の殻のような綺麗な形のガスは、横から見るとドーナツやリングのようにも見える。この望遠鏡の直焦点では小さくしか撮れない。

このままではつまらない。拡大撮影をしようと観測デッキの引き出しを探したが、暗がりの中では見つからなかった。いい加減にデッキの機材も整理しなければ。まあいいか、来年提出の宿題としよう。と言う訳で、宿題ばかりが増えてゆく。さあ、次は何を撮ろう。

 

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超巨大黒点

2014年10月25日 02時07分17秒 | Weblog

少し前からネットで騒がれていた。テレビでも紹介されていた。太陽に巨大な黒点が出現したと言う。2年前の5月にも大きな黒点が現れたが、今度の物はその倍近くある。早く撮影したい。しかし撮影できるのは当然昼間。と言う訳で、晴れ渡った今日、平日にもかかわらず休んでしまった。大工仕事はしない。すればきっとシャッターチャンスを逃す。そう決めて竹取庵の屋根を開けた。しばらく放置していた太陽撮影用の望遠鏡に火を入れる。久々の出番だ。アルミ蒸着フィルターに錆が出てコントラストが落ちていたが何とか使える。今回は黒点をはっきりさせるためにアンバーのフィルターを使ってみた。結果はまあまあかな。いつかはHαフィルターを使いたいが高価すぎて手が出ない。

文句なしの晴天は久しぶり。靄もほとんど無い。こんな天気はひょっとすると今年初めてかも知れない。それほど今年は天気が悪かった。これならきっと落日が見られるだろう。あれだけ大きいときっと肉眼で見える。そう思いながら夕暮れを待った。

そして…

見える。写真に写し取れたのは日没直前だったが、肉眼ではもっとずっと前から見えていた。黒点の形もはっきり分かった。超巨大黒点の撮影。何とか目的を果たしたが、空に雲が出る気配はない。このまま帰る手は無いだろう。機材は一式持ってきている。

 

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靄のグラデーション

2014年10月21日 00時05分12秒 | 

雲の塊がいくつも丘の上を過ぎてゆく。その度ごとに靄は濃くなっていった。それでもと竹取庵の屋根を開ける。頭の上にはかろうじて星が見えるが、西に行くほど靄が厚く、まるでグラデーションだ。こんな空で撮れるかな。淡い星雲は無理だろう。アンドロメダ座のM31でも狙ってみよう。20センチ反射も考えたが、迫りくる雲と靄の合間を縫っての撮影だ。あれこれ調整している時間が無い。月食を撮った後そのままにしていた8センチ屈折に、大きいほうのカメラを取り付けて東の空を狙う。ファインダーを覗いたが、コントラストが悪くてよく判らない。感度を6400にアップして試し撮りをしてみた。露出18秒だ。

カメラのモニターに現れた星雲の中心が視野の中心から少し外れている。位置を修正して本撮影だ。感度を2000に落として赤道儀の準備を終え、再度ファインダーを覗いたが灰色の空しか見えない。見上げると望遠鏡の筒先あたりに幅の広い帯状の雲が横たわっていた。この雲の通過を待つうちに西から新しい雲が押し寄せてくる。とうとう空一面べた曇りになってしまった。だめだ、帰ろう。それでも少しは楽しめた。また今度。今度こそ良い空を。

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牡蠣の筏の季節

2014年10月20日 00時55分02秒 | Weblog

今日の日曜日、みかんの丘は朝からさわやかな秋晴れ。少し靄の掛かる海に今年も牡蠣筏が現れた。海の穏やかな入江や島影で過ごしてきた筏は、種付けから3年たった秋、台風の季節が過ぎるのを待って漁船に曳かれながら外に出る。潮の流れが少ない場所では大きくなった牡蠣が窒息してしまうためだ。筏は日を追って数が増える。そしてここから見た海が筏でいっぱいになる頃牡蠣は出荷のシーズンを迎える。

実は昨日も丘に上がって大工仕事をした。空は今日よりもずっと澄んでいて絶好の撮影日和だった。そんな日に何故か飲み会。後ろ髪を惹かれる思いで丘を後にした。そのリベンジと、今日は思い付く撮影機材をすべて持って来ている。ただ、日本を覆っていた移動性高気圧は東に去ろうとしていた。この好天は夜まで続かないだろう。

案の定午後から靄が濃くなり始め、夕方近くには怪しげな筋雲も現れ出した。やっぱり駄目かな。大工仕事をしながら空が気になった。

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なぜ左下から欠けて左から出てきたのか

2014年10月12日 22時04分47秒 | 

今回の月食の書き込みは昨日で終わりにするつもりだった。でも、下から欠けたので下から明るくなるだろうと思ったと言われる書き込みを頂いたため、月食について簡単に説明してみようと思う。

この画像は今回の月食の画像を元に作ったシミュレーションで、下敷きにした星野写真も月も実際の物ではない事をお断りしておく。

地球は太陽に照らされている。だからその反対側には丸い影が出来るけれども、太陽が大きいせいで、完全に太陽が見えない場所と、少しだけ太陽が覗いている場所が出来る。この完全に太陽が見えない場所を「本影」と呼び、少しだけ見えている場所を「半影」と呼ぶ。それがこのシミュレーション画像で真ん中に見える薄暗い部分だ。半影は内側に行くほど暗い。
夜空には普段見えないだけで、この影が星空の彼方にずーっと続いている。その影の中を月が横切ると月食が起こる。8日の月食では、月は薄い矢印のように影の右上から左下に動いて行った。

みかんの丘の月の出の時、月はすでにこの半影部分に差し掛かっていた。その1時間後、月は本影に入って行く。この時の本影の位置はみかんの丘から見て月の左下だった。その後月は本影の中をくぐって影の左側から抜けた。

地球の影も月の通り道も動いている。だから欠けてゆく場所も輝きが戻る場所も毎回違う。また、この地球の本影は地球から近いほどくっきりしていて暗く、遠いほどぼやけていて小さく明るい。過去に1度だけ経験があるが、月が地球に近いとき起こった月食で、しかも本影のど真ん中を通った事が有る。その時は月が真っ暗になって、肉眼では見えなくなった。珍しい経験だったが、8日のように美しくは無かった。
今回の月食でも、赤銅色の美しい皆既月食が見られたが、それは輝く月が地球の影に入って明るさが極端に落ちたため、瞳が開いて目の感度が上がり、地球の大気で屈折した僅かな赤い光でも識別できるようになったためだ。今回の皆既食の月が下の方ほど暗いのは、赤色の光の回り込みに限界が有る事を示している。

同じように見える天文現象も、条件によって毎回変わる。だから不思議。だから面白い。

 

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大星雲とツーショット

2014年10月12日 00時10分56秒 | 

赤い月を堪能しているうちに皆既月食は終わり、月は地球の影の左側から外に出始めた。明るさが増してゆく。そうだ、空が完全に明るくなる前にアンドロメダ星雲とのツーショットを撮っておこう。

大きいカメラを望遠鏡から外してズームレンズを取り付け、赤道儀に載せる。あの辺りかな、肉眼ではもうほとんど分からなくなったが、アンドロメダ座の星を辿って星雲のある辺りに目星を付けた。焦点距離28ミリ、カメラ感度800、絞り3.5、露出50秒。撮影後、カメラを外してモニターを見ると、何とか両方がフレームに入っている。まずまずの成功。空のコンディションから見てこれ以上は無理だろう。残りの星空を見渡して思う。今夜はもう撮れるものは無いかな。

地平線の雲がかなり厚くなってきた。時刻は午後9時前。そろそろしまおうか。無理やり休んだ平日。明日はもちろん仕事だ。今夜も堪能できた。ありがとう星たち。次は澄み切った夜空を期待しています。

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浮かび上がる天の川

2014年10月11日 00時12分53秒 | 

空には相変わらず薄い靄がかかっていた。それでも、黄昏が失われ月が明るさを落とすに連れて星がはっきりし始める。西の空で天の川がぼんやりと浮かび上がった。小さいほうのカメラに付けた対角線魚眼で、天の川と月の両方を狙う。目では判りづらいが、撮影してみるとそこここに薄雲が確認できた。街明かりを反射して薄茶色に染まる雲に対して、天の川はあくまでも白く青い。この画角で月の赤銅色を写し撮れないかと露出を落としてみたが、月を赤く写すと星は全く写らない。僕の目には十円玉のような月と天の川が両方見えるのに。人の目の性能の良さに改めて感心した。

 

月の赤色を見ていてふと思いついた。そうだ。外に出てこの月と一緒に竹取庵を撮ってみよう。小さいカメラのレンズを普通のズームに付け替えて外に出た。

 

 

ドアに輝くステンドグラスの月と、その上に掛かる月食の月。なんだか現実離れした不思議な光景だ。思い付いて少し近づき、月と望遠鏡にズームしてみた。

 

 

寄るとさらに現実感が無い。まるでジオラマの空だ。3年前、月食の夜は月から不思議が降ってくると書いたが、今改めてそれを実感する。何故自分がここに立っているのか、それさえ不思議に思えてきた。

 

 

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隠されてゆく月

2014年10月10日 02時09分11秒 | 

遠く離れていても太陽は大きい。だから地球の影には真ん中の濃い部分と周囲の薄い部分が出来る。月の出の時左下が薄暗く見えたのは、この半影と呼ばれる薄い影の中に月が差し掛かっていたからだった。それからおよそ20分後、月はいよいよ濃い影の部分、本影に入って行った。僅かな靄をまといながら煌々と輝いていた月が、左下からゆっくりと消えてゆく。それは昔の人ならずとも畏怖を抱かせるに充分な光景だった。

せっかくの機会だと言うのに今竹取庵の主砲かぐや姫は休暇中だ。だから今夜は赤道儀に載せた8センチを主力にすることに決めていた。大きいほうのカメラを取り付けたクリーム色の望遠鏡がわずかなモーターの音とともに昇る月を追う。女神アルテミスは今、秋の四辺形と呼ばれる4つの星の真下、うお座の中に居た。

牡牛の角の間を移動していた3年前の月食に比べて、この辺りは目立った星がほとんど無い。まるで波静かな海を航海する船を見ているような気がした。地球の自転とともに空の星たちは東から西へと動いてゆく。その流れに逆らうように、女神は星々の間を東へと移動する。衣の裾が陰り始めておよそ1時間後、月はどっぷりと地球の濃い影に身を落とした。

濃い影と言っても地球の大気による吸収と屈折で、太陽の赤い光だけは回り込むために真っ暗ではない。赤銅色に身を染めて空に浮かぶ月。それは、明るく輝く月とは全く違う、怪しげな光景だ。

 

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台風一過の月食

2014年10月09日 00時04分33秒 | 

この秋最大と言われた台風18号は各地に大きな被害をもたらし、また何人もの人が犠牲になった。なのにその後を、さらに巨大な19号が近づきつつある。本当に今年の天気はどうかしている。その18号が去ったあと、次の19号接近までの狭間が爽やかな秋晴れとなった。今日の月食がどうなるかと心配をしていたが、ここまで晴れるとは思わなかった。

 とは言うものの、きっと晴れる。そう期待して実はきょう休みを取っていた。星の撮影で仕事を休んだのは初めてだ。しかし週半ばなので遅くまでは撮影できない。早めの午後2時過ぎに家を出て準備に掛かった。
月食そのものは3年前の暮れにきちんと撮影出来た。だから今夜は景色の中の月食を撮りたい。あれこれ設定を考えて、満を持したつもりのみかんの丘に陽が沈む。月食だからこの太陽のちょうど反対側に月が居るはずだ。 夕日を撮って後ろを振り向くと、10分もしないうちに東の山の端に黄色い光がチラチラと見え始めた。午後6時。今夜の主役のお出ましだ。ゆっくりと本当にゆっくりと月が昇る。コンパスを手に、あらかじめロケハンしていた場所からそれを狙う。

 

 

半影の月食は午後6時15分ごろと聞いていたが、昇って来た月は左下が何となく薄暗い。そう言えば3年前にもそんな事を思った気がする。地球温暖化のせいで、大気の屈折率が変わったのかも知れない。いずれにしても、幕が上がった時ショーはすでに始まっていた。

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