宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

壁から先に

2008年09月29日 13時50分33秒 | Weblog
普通の住宅は、まず柱を立ててその上に屋根を葺き、雨仕舞いが良くなったところでそこから下を作る。しかし、天文台である以上屋根は開かなければならない。つまり、屋根は最後となる。いや、最後でなくても良いのかも知れないが、材料を探しながら作っていく僕の方法では、最後にならざるを得ない。勢い、材料には耐水性が求められる。

濡れてもいい木材を探すうち、防腐剤を注入した松の板が見つかった。柱に溝を切り、板をはめて行く。工事の進行速度は財布との相談。幅13センチ長さ3.6メートルの板が一枚およそ2,100円である。




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柱がすべて立った

2008年09月27日 11時08分55秒 | Weblog
仕事の合間合間に柱を立て始めて3ヶ月。ようやくすべての柱が立った。
おじさんはこれも使えと、周囲の杉の木を次々に切っていく。しかし、防腐処理をしていない生木を掘っ立て柱に使うのは危険だと思い、乾燥を理由に転がして置く。
全てを有りものの丸太で賄う訳には行かない。設計図では壁材は無垢の松板を使うことにしていたが、果たしてそんな都合のいい材料が有るのか。ここからホームセンター通いが始まった。
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初の立柱 建設の第一歩

2008年09月24日 12時48分13秒 | Weblog

「この柱を使おう。」
敷地が広がった後、おじさんが突然言った。
敷地に向かう道の横に、木製の電柱が何本も転がっている。
近くの電話電柱を差し替えたとき、古いものを置いて行ってもらったのだと言う。
天文台はしっかりしたものにする為にブロック造りにする予定だった。設計変更だ。

二ヵ月後、作業が始まった。穴の深さは80センチ。栗石を入れて柱を立て、垂直を出した後コンクリートで固める。穴を掘るのも柱を立てるのもおじさんとおばさんが手伝ってくれた。
夕方近く、6本の柱のうちの最初の1本が立った。

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運河 思い込みの産物

2008年09月21日 23時44分36秒 | Weblog

多くの天文家が待ち受ける中、また火星が近づいてきた。
最近の機材はすごい。比較的小さな望遠鏡でも昔の大型望遠鏡を凌駕する写真が撮れる。しかし、いくら頑張っても、かつて存在が信じられていた運河は写らない。

火星に運河があるという話は誤訳から始まる。しかし、それを仮説の領域まで押し上げたのは19世紀の天文学者パーシパル・ローウェルだった。口径61センチの屈折望遠鏡を駆使し、彼は往復2本の運河が星全体をおおう火星のスケッチをいくつも残した。すべては思い込み。それから70年後、地球から送り込まれた探査機によって、運河はあえなく葬り去られた。火星人とともに。
ローウェルは、水星の運河のスケッチも残している。もちろん、水星にも運河は無い。

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戦の星 火星

2008年09月19日 21時29分24秒 | Weblog
太陽系。内側から数えて4番目の惑星。火星。
地球のどの地形にも負けない壮大な渓谷をを持つ。しかし、その谷を刻んだ水が干上がって久しい。鉄分を多く含む土壌は砂漠化し、赤茶けた色が陽の光を反射して地球に届く。赤は血の色。だから、この星は戦の神。不吉の象徴。
その星が2年に一度地球に近づく。僕らにもたらすのは災いではない。興奮だ。
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まずは整地から

2008年09月18日 20時51分14秒 | Weblog
お借りした土地は狭い上にかなりの急傾斜。
しかも杉の木が立っている。
もっとなだらかな土地も見せられたが、僕はここからの眺めが気に入っていた。

さて、これだけの土地でどうしよう。
悩んでいる僕をよそに、おじさんはチェーンソーで杉の木を切り始めた。
この杉はみかんの防風林のはずだ。
「え、切らないで下さい。みかんに影響が出るでしょう。」
おじさんは騒音の向こうで答える。「ええんじゃ。」

気が付けば広い土地が出来上がっていた。
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安住の地の建設

2008年09月16日 21時58分23秒 | Weblog
かぐや姫安住の地を求めて各地を転々とするうち、子供の頃から天文台の用地として夢に見ていた「遠くに海の見える丘」を見つけた。家からは車でおよそ1時間の距離。まわりはみかん畑だ。島も見える。

土地の持ち主と交渉して貸してもらう事になった。土地代は無し。その代わり、建設に参加すると言う。おじさんは80が近かった。これから館の建設が始まる。
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神秘の星 土星

2008年09月14日 23時19分06秒 | Weblog
星になじみの無かった人に天体望遠鏡を見せたとき、驚嘆するのは月面のクレーター、見入るのは土星。
15センチや20センチの望遠鏡では倍率もせいぜい300倍程度。それほど大きく見えるわけではない。しかし、漆黒の宇宙に浮かぶこの星は人を惹きつける。

しばらく眺めた後必ず聞くのは、「何で輪があるんですか。」
「回ってた衛星が土星に近づきすぎて壊れちゃったみたいです。」「壊れたんですか。」「お互いの引力ですよ。潮の満ち干と同じです。地球の海のように水ならいいけど、硬い岩や氷だと割れちゃうでしょ。割れてバラバラになって回ってるんですよ。」「へえぇ」また望遠鏡に戻る。今度はしばらく戻ってこない。
ロッシュの限界、羊飼い衛星、そんな難しい話は要らない。「へえぇ」が不思議の扉を開く。
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月、不思議な天体

2008年09月12日 21時37分37秒 | Weblog
世の中に、電灯と言う物が無かったころ、人はもっと月と親しかった。
朝な夕な月を眺め、時の流れを知り、季節の移り変わりを感じていた。
だから、月には月齢によってみんな名前がある。満月の呼び名も季節季節で違う。
兎も住んでいる。かぐや姫の館もある。
それなのに、
人が月を見上げなくなって久しい。

昼でも月が出ている事がある。有明の月。このことを知らない現代人は意外に多い。
その月の裏と表に、随分な違いのあることが分かったのは20世紀半ば。なぜか月の裏側に大きな海は無い。あばただらけだ。人の心に裏表があるように、月の様子にも裏と表がある。
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トランクルームへの疎開

2008年09月11日 22時04分34秒 | Weblog
社命には従わなければならない。そこで思いついたのがトランクルームだった。
僕の部屋の機材一式、とりあえずトランクルームへ。
ここでかぐや姫は仮組み立てを終え、巨大な姿を現す。
なぜトランクルームへ?こんな大きな物普通の家には入らない。
トップリングの真ん中。斜鏡のキャップのところにかぐや姫のエンブレムが見えるだろうか。
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降って沸いた災難?

2008年09月08日 13時26分31秒 | Weblog
期待の望遠鏡「かぐや姫」は、僕の小さなマンションで少しずつ仕上がっていった。そして、あと少しで上半身と下半身がドッキングと言う時、会社から辞令が下った。
「本社勤務を命ずる」

そんな馬鹿な。これでは夢が潰れてしまう。会社にあと1年延ばしてくれるよう掛け合ったが、転勤拒否の理由を僕が言わないため、いや、言えないため、上司はただ笑うばかり。
僕の部屋のこの状態をどうすればいいのか…
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取り敢えずの玉座

2008年09月06日 13時19分44秒 | Weblog
身長250センチ、ウエスト190センチ、体重60キロ。巨大な姫君の体を支える玉座をどうするのかはまだ考えていなかった。しかし、とりあえずは何かで支えなければ空を向ける事が出来ない。
そこで、白木を使って鏡筒バンドと経緯台を作る事にした。問題は摺動しながらここと言うところでピタリと止まらなければならない。しかも、最後はちゃんとした玉座に収まらなければならない。資金は無い。いろいろ考えながら、形はずいぶん平凡な物になって行った。
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お隣の銀河

2008年09月04日 22時32分35秒 | Weblog
お隣の銀河M31が肉眼で見える事を知ったのは高校のときだった。
空のいい時、高感度のフィルムを使えばわずか20秒ほどの露出でその存在が判る。だから、口径の大きい望遠鏡をこの星雲に向けたときの期待は大きかった。しかし、その見栄えは想像したほどではない。真ん中が楕円形にぼーっと見えるだけ。
それでもこの銀河を眺めるのが好きだ。光の速さで230万年もかかるすぐお隣の島宇宙。
(写真は15センチ反射の直焦点にISO400のフィルムを置き30分露出した3枚の写真を重ね合わせたものです。)
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まるでガリレオのように

2008年09月03日 00時57分14秒 | Weblog
かぐや姫の製作中、撮影の出来る望遠鏡はミザールの15センチ反射。
それでも、この高精度鏡は僕に多くのことを教えてくれた。
たとえば、ペルセウス座の二重星団。冬の天の川に浮かぶこの天体は同じ時に生まれたはずなのにそれぞれ色が違う。生まれたときから寿命が違う。まるで地球の生き物のように。
15センチ反射を通してみた宇宙(そら)は、僕にとって全く新しい世界。まるでガリレオのそれのように。
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