宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

心去り難く

2012年08月30日 00時35分51秒 | Weblog

雲は東から西に流れていた。時計の針も11時近くを指している。帰らなければ。でも、観測デッキは月明りで足元がはっきり見えるほど明るい。もう少し居たら。月の神がそうささやいているようだ。

観測デッキ。竹取庵の屋根が出来たときここをそう名付けた。それから3年。ここは僕にとって特別な場所ではなく、居て当たり前のスペースになるはずだった。なのに、今年に入って特に、忙しくてなかなか来ることが出来ない。そう。「ここに来る」と言っている間は、竹取庵はまだ身近とは言えないのかも知れない。「丘に帰る。」「デッキに戻る」そう言って良い日はいつになるのだろうか。そんなことをぼんやりと考えながらこの光景に見とれていた。

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苦労の末の一枚

2012年08月29日 00時03分55秒 | 

夏場の月は高度が低い。身長2.5メートルと背の高いかぐや姫だが、高い脚立や机の上に上がることもなく、撮影作業そのものはむしろ楽だった。しかし何しろ風が強い。暴れるかぐや姫の筒先を抑えながら、ちゃんと固定されていないカメラを顔に押し付けて、めったやたらにシャッターを切ってゆく。しかし、モニターの上に表示される画像は、どれもどこかがボケていた。ああ、直焦点くらいにしておけば良かった。やっぱりアイピースを替えようかなと思ったとき、月面を黒いもやが通り過ぎた。見れば空をかなりの量の雲が覆っている。時計を見ると10時半。1時間以上もかぐや姫のトップリングにかじりついていた事になる。もうそろそろ終わろう。

持って帰って処理しようと開いたパソコン画面。やっぱりだめだ。画像の中がまだらにボケていた。仕方無く何とか使える3枚を切り貼りして1枚作ってみた。ひとに見せられた物では無いが、それでも久々の姫様とのデートの証拠写真になる。
ひときわ大きなクレーターをクラヴィウスという。一つの穴の中にいくつも穴が開いているクレーターだ。月の南極は穴ぼこだらけ。それもこの星の不思議の一つ。

 

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欲張りすぎた

2012年08月28日 00時40分03秒 | 

台風15号の影響で、丘にはかなりの強風が吹いていた。カメラを持って観測デッキに上がり、モーターのスイッチを入れる。屋根が動いて空が広がるごとにデッキの中のものが次々に舞い上がった。ロック機構の無いかぐや姫は、ひもで固定していなくてはふらふら揺れて壊れてしまう。
修理の為に家に持って帰っていた拡大用アダプターを取り付け、中にアイピースを入れようとして困った。はて、何ミリを使うんだっけ。たまたま手にした10.5ミリ。これは長くてアダプターに入りきらない。望遠鏡のアイピースは焦点距離が短いほど倍率が高い。しかし、その分荒も拡大されるのだ。でもせっかく手に取ったんだし、大きく撮れるに越した事は無い。ちょっと欲張ってむりやり差し込んだ。

カメラのファインダーをのぞくと案の定コペルニクスが明暗の境目にいた。ただ、月の高度が低いのと風が強いのとで月面がゆらゆら揺れる。おまけに同じ視野の中でピントの合っているところとそうでないところがある。カメラの光軸とアイピースの光軸がずれているらしい。やはり手持ちは無理か。

撮影しているうちに手順を思い出したが、いまさらアイピースを交換するのも面倒くさい。そのまま撮影を続行。しかしやっぱり欲張りすぎは良くない。焦点距離21ミリのアイピースにしておけば良かった。ピントがまだらのコペルニクス。ぼけているが右側に見えるクレーターがエラトステネスだ。

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月夜に浮かれて

2012年08月27日 00時08分03秒 | Weblog

今日の日曜日、朝から頑張って仕事をした。だから日暮れ頃には、何とかひと成果上がったぞ、多分。と自分に言い聞かせてそそくさと帰宅。実は昨日寝る前に今夜の月齢を調べてみた。9.0だ。と言う事は、ちょうどコペルニクスが欠けた部分と昼の部分との境目に来るはずだ。これは撮らなければ。と適当に理由を付け、いつも通り大小二つのカメラを車に積んで家を出発する。

竹取庵に着く頃には心配した雲もほとんど消え、月の光が煌々と丘を照らしていた。それなのに月の周りの星座がはっきりと分かる。秋が来たんだと嬉しくなった。月の真下に横たわる大サソリ。その心臓を射抜こうと矢をつがえる射手座。本当にはっきりと見える。やっぱりみかんの丘だ。よし、まずこの光景をワイド画面に収めようと小さいカメラを出して気付いた。メモリーをパソコンに残してきたのだ。これでは撮れない。ああ、またやってしまった。あわてて大きいほうのカメラのメモリーカードをチェック。あ、こっちは入っている。やれやれ。

見事な月影につい浮かれてしまった自分が情けなく思えた。

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ふたたび幽月

2012年08月26日 09時54分47秒 | Weblog

おととい自宅の窓の下でコオロギの鳴く声を聞いた。いくら残暑が厳しくても秋はきちんとやって来る。荷物の片づけがあって上がった竹取庵にも秋の気配が漂っていた。忙しくて除草もろくに出来ていない丘はまだ夏草が茂っていたが、澄んだ空気を通して島影がくっきりと浮かび上がっていた。そう言えばあれほど喧しかった蝉が声を潜めている。本来なら写真を撮る季節と言いたいが、今年は忙しくてそれが出来るかどうか分からなかった。

竹取庵の上には上弦を少し回った月が昇っている。こうした昼間の月を『幽月』と名付けて2年を超える時が経っていた。この言葉を気に入ってくれる人の思い掛けない登場で、再びカメラを月に向けてみる。

機材は前撮ったものと同じ、観測デッキから取って来た8センチの屈折と小さいほうのカメラだ。前撮った時よりも空が明るいせいか月はより幽(かそ)けく写る。この月を気に入ってくれた人が前にもいた。時の経つのは早い。あと何度この月にカメラを向けるのだろうか。

とぼんやり考えていたら携帯が鳴った。そうだ、今夜は少し離れた街の天文施設で観望会だ。訳有ってお手伝いに行かなければならない。せっかくのいい空なのに。ごめんね。望遠鏡たちにお詫びをして丘を下った。

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夢の扉

2012年08月21日 00時25分49秒 | Weblog

かぐや姫の館「竹取庵」そのドアをどんなデザインにしようか。それは建物を作り始めた時からの課題だった。姫の館が姿を顕わし、内装の工事も次第に進む中、今年に入ってようやくドアの設計と施工に手を付ける時がやって来た。ところが、それと同時に過去に無いほどの量の仕事が押し寄せていた。忙しさの予感の中で、ドアにステンドグラスを入れること、そのデザインはかぐや姫に因んだものにすることという二つだけを決めたところで工事は足踏み状態となった。そこへ会社の大先輩がステンドグラスの制作を買って出てくれたのだ。
思いも掛けない助っ人。申し訳無いと恐縮ながらも、デザインを本気で考え始める。一番大きな窓に雲間の月を置き、下の窓には斜に切った竹を、また上の窓には兎をあしらった。一番下の小窓は空だ。パソコンのモニターに現れたドアは、まるで子供の漫画に出て来る様な幼稚なデザインに思えた。しかしまあ、これが僕の頭の中なのだ。居直って型紙を作り、先輩に渡したのが一月中旬。程無く使うガラスの見本を見せてくれ、やがて「出来たよ」というメールに、専用のケースを作ってもらいに行ったのが四月の末だった。それからドアが完成し、グラスが入るまでになんと3ヶ月半も掛かってしまった。

まあいいか。先輩夫婦も喜んでくれているし、でも色合いがやっぱり派手な気がする。これでは、ドアをノックするとうさぎがひょいと顔を出しそうではないか。うさぎか。良いな。そうだ、ドアの外に兎のウェルカムボードを置こう。
みかんの丘の竹取庵。入口でうさぎ達が歓迎してくれる。そう、このドアは僕にとって「夢の扉」なのだ。

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