宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

試練をくぐったみかんの実

2011年09月29日 00時18分00秒 | Weblog

三連休の初日に午前2時半まで竹取庵にいて、帰って画像処理をしたら寝たのが4時。とても次の日には丘に上がれなかった。そのままでは悔しいので3日目の25日に丘に戻ったが、その頃には西から延びてきた前線の雲が空を覆い始めていた。この雲は夜になっても消えてくれない。星を撮るのはあきらめて、大工仕事や観測デッキの掃除に時間を使った。

初夏にいっぱい花を付けていたみかんの木は、毛虫やアブラムシ、カビなどの試練をくぐりぬけてたくさんの実を付けていた。実をたくさん付けると木は弱る。弱ったら幹の中にいるカミキリムシの幼虫が動き出し、それが元で枯れてしまう。丘にはもうすでに力尽きたみかんの木も出ていた。枯れた木の跡には来春新しい苗を植える。そしてそれが育ってゆく。 だって、ここはみかんの丘だから。

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気が付けば冬星座

2011年09月28日 00時10分43秒 | 

木星の撮影に一生懸命になっているうちにかなり時が経っていた。初め立った姿勢で覗いていたカメラのモニターを、気が付けばひざまずいて見上げている。時計の針は午前零時近くを指していた。
北の空ではカシオペアが高みに昇り、その右がペルセウス。妻のアンドロメダはもう中天に差し掛かっている。星空だけは一足先に初冬の景色だった。  あ、また流れ星だ。でもカメラの視野の中には流れてくれない。
それにしても冷えるよ。電気毛布を敷いてダウンジャケットを羽織っていてもなお寒い。ごぞごぞと毛布を出してきて膝にかけた。え、まだ9月でしょ。思い立ってお湯を沸かし、温かい紅茶をすすってみる。ああ、良い感じ。帰りたくないなあ。でも眠いし…  
ぼーっと空を眺めていた視線を観測デッキに落とすと、かぐや姫が手持無沙汰そうにこっちを見ている。ん?そうだ。木星の大赤班をこれで見てやろう。45センチ鏡のカバーを外し、固定していたひもを解いて筒先を木星に向けてみた。しかし、大赤班は脇に回ってしまっていてほとんど見えない。やっぱり帰ろうか。ごめんね、帰るよ。星空に別れを告げて屋根を閉め、時計を見ると2時半だった。

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一つ目の大入道

2011年09月27日 00時34分57秒 | 

いるかと遊んだ後は西に動いて行く天の川をぼーっと眺めていた。その空を大きな流れ星がいくつか横切る。そう言えばアメリカの観測衛星が落下すると言う。その前触れだろうか。
そんな事をなんとなく考えているうちに東の木立ちの向こうから明るい星が昇って来た。木星だ。そう。この星を撮影するためにここにやって来たんだった。星野撮影のガイド鏡に使っていた8センチフローライト屈折からWebカメラを外して、大きいほうのカメラEOS5DmarkⅡを取り付ける。まだ低いから滲むかな。案の定カメラを通して見た木星は上が青く下が赤い。(写真の右側が上です。)大気のプリズム効果だ。しかも気流が悪くて激しくさざめいている。まるで風にたなびく旗だ。こんな状態でちゃんと写るのかな。

でも、えっ、あれ、木星の縞が二つある。そう。去年の今頃撮影した木星は縞が一本しかなかった。1年の間に元に戻っている。しかも、今日はこの時刻、南のほうの縞の中に大赤班がはっきりと見える。気流のせいでぼやけてはいるが、大赤班の両側に小さな赤い渦も見える。正直に言おう。長く星を眺めていながら、これほどはっきりと大赤班を意識したのは初めてだった。いつも脇のほうや後ろ側にいて、面と向かった事が無かったのだ。

前にも言ったが、僕の写真は惑星の場合その星の北極が上に来るようにしてある。だから去年消えたのは南の縞。ただ、2010年8月31日の写真を見ても分かるが、縞は消えても右端に赤班だけは残っていた。それが今年は堂々と幅広の縞の真ん中に鎮座している。そう。これでこそ木星だ。

続けざまに50枚ほど撮影したが、木星の自転は早い。10時間足らずで一回りするのだ。だから重ね合わせようとすると一気に撮影した写真でなければならない。上の木星は2011年9月23日午後11時10分の1分間に撮影した7枚を合成してある。(衛星と本体は露出時間が違います。)

太い縞の中に赤い目。ひっくり返った一つ目の大入道は、目をゆっくりと左に転じていった。

 

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詩人を救ったいるかのお話

2011年09月26日 00時48分44秒 | 

天の川に遊ぶ鳳の少し下、七夕で知られる彦星の近くに「いるか座」という小さな星座がある。写真に撮ると星に埋もれて分かりにくいが、実際の空では結構見つけやすい。6つの星の連なりが、水の上で跳ねるいるかの形をしていて本当に愛らしい。僕はこの星座が大好きだ。


いるかが星座になったいきさつには二つの説が有る。一つには、もともと大地の神だったポセイドンが、海も支配しようと、海神オケアノスの娘アンピトリーテに求婚した。目論見を見てとったアンピトリーテは遥か西の海にあるオケアノスの館に身を隠すが、その隠れ場所を1匹のいるかがポセイドンに教えたため、アンピトリーテは見つけ出されてポセイドンの妻となる。ポセイドンは願いどおり海を支配下に入れ、その功績でいるかは星座になったというのだ。これはひどすぎる。これではいるかはただのチクリ魔ではないか。

僕が好きなのはもう一つのお話。
詩人であり、琴弾きの名手でもあったアリオンがシチリア島の音楽会で優勝し、多額の賞金を手に船で故郷を目指していた。ところがこの賞金を我が物にしようと船乗りたちがアリオンを襲う。甲板に引き出されたアリオンは、最後の願いに琴を弾かせてくれと頼んだ。船乗りがこれを許し、アリオンが琴を弾き始めると、どこからともなくたくさんのいるかが船の周りに集まってきた。アリオンはそのいるかの群れに身を投げ、いるか達はアリオンを背に乗せて無事故郷に送り届けた。その功績によって天に上げられたというのだ。



いるか座のあたりを写真にとっても星雲や星団は見当たらない。ただ、天の川から打ち寄せられた星屑がまばらに写るだけだ。それでいい。無邪気ないるかはただ星屑の大海を跳ねて遊ぶだけ。きっと詩人アリオンを助けたこともとっくに忘れているに違いない。僕はその、天衣無縫の小さないるかの姿に強く惹かれてしまう。


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天の川を泳ぐペリカン

2011年09月25日 00時06分08秒 | 

秋の空 釣瓶落としの夕陽かな 


本当に秋は陽が沈み始めると速い。そして瞬く間に暗くなる。ところどころに雲が残っているが、まあこれもそのうち消えてなくなるだろう。さあ何を撮ろう。とりあえずごにょごにょと星がいっぱい出てくる前に赤道儀の極軸を合わせておかなくては。それにしても冷えるぞ。まだ9月なのに。


頭の上には天の川。上流にどっぷりと白鳥が浸かっている。そうだ、ペリカンを撮ってみよう。ペリカン星雲は白鳥のお尻。デネブのすぐそばにある散光星雲だ。このあたりは星の元になるガスがたくさん塊っている。そのガスの中の水素が放つ赤い光がペリカンの形をしているという。ペリカン星雲という名はもちろんその形からきている。そういえばそんな風にも見える。写真の右下二つの明るい星に挟まれた赤いモヤモヤがそうだ。目が有るし、くちばしも有るし、頭の後ろの逆立った毛もペリカンのようだ…が、なんとなくペリカンの骸骨のように見えなくもない。と言ったら叱られるだろうか。直径は満月のほぼ倍。お隣りに有る北アメリカ星雲はあまりにでかすぎて僕の20センチニュートンでは入りきらなかった。


久々にコンピューターに火を入れて、望遠鏡にカメラをセット。ガイド鏡を生かして… あ、手順を忘れかけている。そういえば長い間星雲なんか撮っていなかった。苦笑いしながら何とかコントローラーをデスクトップに張り付けて撮影を始めた。
僕のカメラは星の撮影専用では無い。だから赤色に特化した天体カメラのような色は出ない。カメラの回路が、目で見た通りに見えるよう補正を掛けるし、赤外領域はカットしてある。どこまで写るかな。露出を8分、10分、12分、15分と変えながら4枚。光害カットフィルターは入れているが、空にはまだ昼の明りの名残りが少しあるようだ。15分が限度。埋もれた星雲を、画像処理で無理やり出してみた。苦しいかな。とりあえずこれが天の川を泳ぐ「ペリカン星雲」です。

それにしてもまだ星が流れている。どこが悪いのだろう。

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楽しみな黄昏

2011年09月24日 02時45分53秒 | Weblog

日本列島をむちゃくちゃにした台風15号が去って2日が過ぎた。9月2度目の三連休だ。それも月の無いお休み。仕事は相変わらず立て込んでいたが、ここで写真を撮らなければ今度いつ撮れるか分からない。そう思ってカメラを2台とも持って上がったみかんの丘は曇り空だった。
大丈夫、この雲は夜には消える。そう確信して大工仕事を進め、もう頃合いと外に出てみた。あれほどあった雲が消えかかっている。やった、思った通りだ。望遠鏡の温度を安定させるために早めに屋根を開ける。丘を渡る風が少し強いが、まあいい。今夜は撮るぞ。今日の被写体は木星だ。と、わくわくしながら望遠鏡の整備に掛かった。それにしてもこんなきれいな黄昏は本当に久々だ。気持ちのいい秋の夕暮れ。ああ、やっぱりここは僕にとって一番気の休まる場所なのだと思う。

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仲秋の名月

2011年09月12日 21時04分18秒 | 

この写真だけは出来るだけ早くアップしなければ腐る。

という訳でさっき撮ったばかりの仲秋の名月だ。もちろん今日は平日なので撮影場所はみかんの丘では無い。自宅の庭だ。機材も中国製のタムロン300ミリ+小さいほうのカメラキャノンEOSX4。このレンズはピントがシビアでシャッターを切るごとにピントが狂う。まあ、月は真っ暗な空の中で煌々と輝いている。焦る事は無い。

というわけで時間をかけて撮った1枚。今日の仲秋の名月は6年振りの満月だ。きっとまん丸に違いない。と、思ったのだが、下のほうがほんの少し欠けている。まあ、これくらいなら満月のうちかな。今お団子も食べたし、今年はちょっとだけ秋の気分だ。

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幽月十三夜

2011年09月11日 00時22分23秒 | 

以前僕は昼間に高々と昇っている月を幽月と名付けた。午後4時、久々に竹取庵の屋根を開けた僕の前にその幽月が掛っている。今日は十三夜だ。


もう2ヵ月近くみかんの丘に上がっていなかった。その間に二つの台風が襲来し、丘のふもとにある海岸べりの集落も高潮の被害を受けた。心配していた竹取庵だが、1階は全く被害が無く、2階の観測デッキも木の葉が何枚か吹き込んだ程度だった。青空に期待してカメラを二つ持って上がった今日の午後。被写体は月では無い。そろそろ高度を上げ始めた木星だった。しかし…


幽月を撮影した頃から西の空に雲の厚い層が現れ始め、夕暮れ時には空の大部分を覆ってしまった。かろうじて月だけがくっきりと見える。この雲が夜半に消える事は知っていたが、明日は仕事だ、遅くまで居る事は出来ない。仕方がない、仕舞おう。屋根を閉じ始めた所で下のほうから声がした。おばさんの娘さんだ。何か持って来てくれたらしい。応対したついでに「月が見えますよ」と水を向けてみた。本当は半月の頃のほうが見映えがするが、まあ満月よりはましだろう。
娘さんは遠慮がちに観測デッキに上がると、僕が用意した8センチ屈折望遠鏡を覗いて予想通り声を上げた。あわてて携帯を取り出し、おばさんの家に居る家族を呼ぶ。その間に僕は、45センチのかぐや姫にアイピースを付けて拡大した月を呼び込んでいた。



急いでやってきたおばさんの家族が45センチをのぞきながら本物だ本物だと騒いでくれた。そう、本物です。テレビの画面でも写真でも、ほとんどの人が月の表面は見て知っている。しかし肉眼で直接見ることに大きな意味がある。それをこの人たちが僕に証明してくれた。


おばさんの親族たちと別れ、家に帰って用事を済ませた。ブログを書いている途中にふと思い立って外に出てみる。雲ひとつ無い空に煌々と輝く月。そしてその東には木星が煌いていた。今度撮るからね。そう約束して星空に別れを告げた。

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誕生日の贈り物

2011年09月07日 20時48分17秒 | Weblog

仕事に追われ追われて日々が過ぎ、どうしているのかとみかんの丘のおばさんが電話をしてくるくらい行けていない。いや、行く事が出来ない。その仕事にようやく区切りが付いて家に帰り、寝床に入ったもののなかなか寝られない。仕方なく起き出して、猫と一緒に庭に出た昨日の午前2時。

えっ…
びっくりするくらい綺麗な星空。あの台風が塵も埃もみんな拭い去ったのだろうか、これほど透明度の高い星空を自宅で見上げた事は久しくなかった。寝る前は確か雲だらけだったと思うのに。
誕生日。そう、昨日は僕の誕生日だった。僕が生まれたのは9月6日の午前3時だという。それに合わせて空が晴れたのだろうか。ふふふ、なんとなく母ちゃんのにおいがする。これは母ちゃんの僕への誕生日プレゼントかな。そうだろうな、そんな気がする。どうしてこの時刻が分かったんだろう。ちょっぴり悲しいけれど嬉しかった。

街中の、建物の屋根と電線に区切られた秋の星空。その中にもアンドロメダとペガサスが織りなす秋の矩形がちゃんとあり、傍でプレイアデスの七姉妹が踊っている。、雄牛は角を振り立て、ペルセウスはメデューサの首を掲げていた。一段と明るく輝くのは木星だ。ずいぶんご無沙汰だね、星たちが笑う。そうだね、僕は一体どうしちゃったんだろう。僕は僕に戻らなくちゃ。

今月は12日が中秋の名月。今年こそ正真正銘の満月だという、でも、行こうかな、この星空に招かれて。僕が僕に戻るために。

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